皆さん、こんにちは。
先の通常国会では改正入管法が成立しました。
日本人と外国人が互いを尊重し、安全・安心に暮らせる共生社会を実現していくためには、ルールにのっとって外国人を受け入れるとともに、ルールに違反する者に対しては厳正に対応していくことが重要です。今回、そのための法改正を行いました。
法案に反対した立憲、共産、また一部のマスメディアから、日本に来た難民を追い返すことになり、人権侵害だと批判する声がありますが、決してそうではありません。
現在、日本には約300万人の外国人が在留しています。
一方、不法残留状態の者が8万3000人います。観光、技能実習、留学などの目的で入国した後に、オーバーステイなどにより不法滞在、不法就労となっている者です。こうした外国人に対しては、退去強制手続きに入りますが、多くは帰国します。
しかし、どうしても出国を拒む者がいます。送還忌避者と言い、約3100人います。送還忌避者のうち、薬物事犯、強盗など有罪判決を受けている者が約1000人います。
こうした送還忌避者等が、退去を避ける目的で着目したのが難民認定制度です。
難民認定制度は、出身国で迫害を受けた者が、我が国に避難し、難民としての保護を求める制度で、認められた場合に定住資格が付与されるものです。現在、1回の審査に2年以上の時間を要しています。
これまでの入管法では、難民認定手続き中の外国人は、申請の回数や理由を問わず、我が国から退去させることができませんでした。一部の外国人は、これに着目し、難民該当性がなくても、難民認定の申請を繰り返すことで退去を回避しようとしていました。
送還忌避者3000人のうち2000人が難民認定申請中です。
そこで改正法では、3回目以降等の難民認定申請に関して送還停止効(申請中は退去させない仕組み)に例外を設けることにし、濫用防止を図ることにしました。
今回の法改正の目的は保護すべき者を保護し、送還すべき者を送還するというものです。ただ送還する者の中に、保護すべきものが万が一にも含まれないようにしなければなりません。
昭和57年の難民認定制度創設以来、3回目以降の申請で難民と認められたケースは0.003%であり、そのケースも日本滞在中に本国事情が変更になったものです。今回の法改正では、こうした場合、3回目以降の申請であっても送還停止効が継続されるようにしました。万が一にも保護すべき事情のあるものを送還しない仕組みと言えます。
また、送還停止効の例外に該当するものであっても、ノン・ルフ―ルマン原則により、入管法第53条3項に定める送還が禁じられる国に送還することはできません。
公明党の働きかけで、現在、日本に在留するミャンマー人、アフガニスタン人、シリア人は、本国事情の悪化に伴い、難民認定申請の有無にかかわらず、送還忌避者であれ、本人の意に反して、送還することはしない措置を取っています。
よく我が国の難民認定率は極端に低いと指摘されますが、昨年の我が国の難民認定と人道的配慮による保護率は約30%で欧米諸国並みです。またミャンマー、アフガニスタン、ウクライナ避難民などへの特別措置を含めれば、広義の庇護率は約70%であります。
戦争から逃れてくる方は、難民条約上、難民ではないのですが、保護する必要があります。今回の法改正では、ウクライナ避難民のように、戦争から逃れた方を難民と同等に保護する補完的保護制度も導入しました。
また、今回の改正で、難民認定制度と切り離して、在留特別許可の申請制度を創設したことは重要です。退去強制手続の対象となった者であっても、どのような場合に我が国の社会に受け入れるかを明らかにするために、判断に当たっての考慮事情を明文化することになりました。
送還忌避者3000人の中には、送還忌避者の親のもと、日本で生まれ育った子どもたちも200名以上存在しており、そうした帰責性のない子どもたちには特別に在留を認めるなどの配慮が必要と考えますが、この判断は法施行までに大臣が検討を進めているところです。
※文中の数字は、令和2年の入管庁統計が中心です。
(谷あい)
【メルマガ】 改正入管法について 難民を追い返す法律ではない