【No.219 2017年5月1日】
《 「テロ等準備罪」法案について 》
皆さん、こんにちは。谷合正明です。新緑の美しい5月に入りました。皆さん、いかがお過ごしでしょうか。
後半国会で最大の重要法案が、組織犯罪処罰法改正案(「テロ等準備罪」法案)です。
この法案の目的は、テロなど組織的な重大犯罪を防止することです。日本は、東京オリンピック・パラリンピックを迎えますが、テロの標的にさせてはなりません。
テロリストは国境を超えて活動していますが、組織的犯罪を未然に防いでいくためには、国際社会の連携が必要です。現在、世界187カ国・地域が加盟しているのが、国際組織犯罪防止条約(TOC条約)です。
日本は、TOC条約そのものを国会で承認しているものの、国内の法律が整備されていないため、加盟できていません。未加盟国は、国連加盟国全体で11カ国、G7の先進国では日本だけです。
日本がテロ対策の「穴」になってはいけません。そこで、政府はTOC条約にもとづき、「テロ等準備罪」を新設する法案を国会に提出、現在、国会での審議が続いています。
「テロ等準備罪」法案は、過去に廃案になった「共謀罪」法案とは違います。
適用の主体は、共謀罪の時は単なる「団体」でしたが、テロ等準備罪は「組織的犯罪集団」に限定。テロ組織、暴力団、麻薬密売組織、振り込め詐欺集団が典型で、NPOや労働組合は対象になりません。
対象犯罪は、共謀罪の時の600以上から、犯罪主体を組織的犯罪集団に限定したことで、ハイジャック、覚せい剤の輸出入、人身売買など、277にまで大幅に絞り込みました。
共謀罪は、犯罪の「計画(合意)」があれば処罰できるとしていましたが、テロ等準備罪は、「計画」に加え、資金または物品の手配、関係場所の下見など、犯罪を実行するための具体的な「準備行為」があって初めて処罰対象となります。
したがって、テロ等準備罪は内心を処罰するものではありません。「居酒屋で上司を殴ってやろうと話し合っただけで犯罪になる」などといったことは起こりえません。
捜査の対象は、一般の人には及びません。国会でも明言されています。「組織的犯罪集団」が対象犯罪を「計画」し、「準備行為」を実施した段階で、初めて嫌疑が生じ捜査の対象となるからです。
民進党は、民主党政権時代に、共謀罪がなくてもTOC条約に加盟すると公約に掲げましたが、結局実現できませんでした。
「テロ等準備罪」法案は、人権を守ると同時に、テロなどの重大犯罪を未然に防ごうとするものです。今国会での成立を期してまいります。
(谷あい)