【No.178 2015年9月9日】
《 平和安全法制 参議院の審議から No.1 》
皆さん、こんにちは。谷合正明です。
先週、中東のヨルダン大使、イスラエル大使、パレスチナ大使と懇談しました。今起きているシリア・パレスチナ難民問題に関して、日本や公明党の人道外交への期待の高さというものを実感しました。
現在、国会で議論されている平和安全法制は、そうした国際社会の平和と安全を目的とするものと、我が国の平和と安全を目的とするものに分けられます。特に、後者について、参議院で審議されている論点にしたがって述べます。
議論の出発点は、厳しさを増す現在の安全保障環境の中で、外交努力を尽くすことを大前提に、憲法9条のもと、どこまで自衛の措置が可能なのか、ということです。
そして、この法案の目的は、日米同盟の抑止力、対処力を強化することで、あくまでも戦争を未然に防ぐ、戦争防止法案であるということです。
以下、もう少し詳細に書きます。
厳しさを増す我が国周辺の安全保障環境の典型例として、北朝鮮の弾道ミサイルの脅威があげられます。北朝鮮は、日本の大半を射程内にいれる数百発もの弾道ミサイルを配備していますし、すでに10回以上発射実験を繰り返しています。
こうした弾道ミサイルの脅威に対して、自衛隊は米軍との共同の防衛システムを構築し、我が国を守っています。
そうした中、公海上で日本防衛のために弾道ミサイルの警戒監視をしている米艦船に武力攻撃があった際に、日本は何ができるかが問われています。
法案にある存立危機事態とは、「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」を指します。
国会では、政府与党の案に対して、別法案や対案、修正案を出す政党と、そもそも現在の自衛隊は憲法違反であり、「戦争法案」だと批判する共産党や社民党に分けられます。
ほとんどの政党が、厳しさの増す安全保障環境では、日米共同で対処しなければならないという認識で一致しています。
問題はここからで、存立危機事態に取りうる選択肢は3つしかありません。1つ目は現行制度、2つ目は個別的自衛権の拡大、3つ目は限定的な集団的自衛権、による対応であります。
1つ目の現行制度での対応ですが、個別的自衛権や海上警備行動等で対処することを主張するのが民主党です。国会では、「警察活動において米国の艦隊を防護することは、ピストルでミサイルに立ち向かうようなもので、現実的に実施困難。海上警備行動といった警察活動は、あくまで犯罪など不法行為への対応を主な目的とした仕組み」と政府は否定しています。
関連して、邦人輸送の米艦防護に関し、小野寺元防衛大臣が衆議院質疑で、自衛官の言葉を紹介しています。「現場の隊員は、攻撃を受けている艦船の間に自分の船を割り込ませ、まず自分が敵に攻撃を受け、自分が攻撃を受けたことをもって反撃をし、この艦船を守る」。現行法の限界であります。
2つ目の個別的自衛権拡大による対応は、維新が主張しているものですが、政府は「本来、集団的自衛権で対処すべき事例について、個別的自衛権を我が国の考えで拡張して説明することは国際法に違反する恐れがある。また、国際法上禁止されている、いわゆる先制攻撃を日本が行ったとの評価をされかねない」と否定しています。
また、維新の法案提案者は国会で、「国際法上、集団的自衛権の行使であるという評価を受け得ることを否定するものではない」とあいまいな答弁をしています。
以上のように、1つ目、2つ目の対応では、隙間のない対応はできません。
3つ目の選択肢が、限定的に集団的自衛権で対処することです。あくまで自国防衛の措置でありますが、「これまで個別的自衛権では出来なかった弾道ミサイルの警戒にあたっている米国のイージス艦の防衛を実施することが可能」となります。
その限定的の範囲を、無制限に広がらないよう、かつ恣意的に決められないように、新3要件として明確にしているのが、昨年7月の閣議決定です。
(No.2へ続く)