2022年1月27日 1面
公明党の山口那津男代表は26日、米IT大手マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏と新型コロナウイルス対策をはじめ、途上国を置き去りにせずに全世界で保健衛生の向上に取り組む「グローバルヘルス」を巡り、オンラインで会談した。古屋範子副代表、谷あい正明参院幹事長が同席した。ビル・ゲイツ氏は、世界最大の慈善団体「ビル&メリンダ・ゲイツ財団」の共同議長。「全ての生命の価値は等しい」との理念の下、全世界の病気や感染症と闘い、貧困の根絶や不公平の是正に取り組んでいる。会談での主なやり取りは次の通り。
■公明の「人道主義」に感銘(ゲイツ氏)
■「人間の安全保障」を推進(山口代表)
――ビル・ゲイツ氏は、公明党が掲げる「人道主義」などの理念を評価。その上で、両者はグローバルヘルスへの貢献に協力し合うことを確認した。
山口 「財団がグローバルヘルスに対して多大な貢献を続け、リーダーシップを発揮してきたことに対し、心から敬意を表したい。これまで2年間余り、日本をはじめ、世界は新型コロナの感染に苦しんできた。現在もオミクロン株という新しい変異株によって、日本でも感染者が急増している。何としても、新型コロナのパンデミック(世界的大流行)を乗り越え、さまざまな感染症に対する強い国際社会をつくるため、日本も努力していきたい」
ビル・ゲイツ 「公明党が政党として『人道主義』や人間の価値を重視していることに非常に感銘を受けた。当財団の価値観と合致している」
山口 「感染症のように、国境を越えた人類の脅威を克服していく理念として『人間の安全保障』は重要な考え方だ。公明党は『人間の安全保障』の理念の下に、感染症対策に取り組む国々や、ゲイツ財団をはじめとする民間団体と協力関係を深めてきた」
■コロナ克服へ途上国支援を(ゲイツ氏)
■国際社会全体の協力後押し(山口代表)
――コロナ対策を巡って両者は途上国支援の重要性で一致した。
ビル・ゲイツ 「感染症は、その対策を通じて、多くの人々の命を救えることに留意していかなければいけない。コロナ禍で世界の国々が大きな影響を受けた。特に途上国では非常に大きな問題だ。その対策で日本は主導的な役割を果たした。特に(途上国も含め世界に公平にワクチンを分配する国際的な枠組み)『COVAXファシリティー』では、日本の尽力がなければ、必要な資金を確保することができなかった。大変に感謝している」
「今年、『CEPI』(感染症流行対策イノベーション連合)や『AMC』(COVAXの途上国向け枠組み)といった国際的なパートナーシップで資金拠出が必要になっている。日本は他国に先駆けて活動に参加し、大きな成果が生まれているが、増資が依然として必要だ」
山口 「コロナ禍で公明党は、CEPIや(途上国でのワクチン接種を支援する)『Gaviワクチンアライアンス』と協力しながら、COVAXファシリティーに日本が寄与できるようにさまざまな手だてを尽くしてきた。現在の新型コロナを乗り越えること、そして将来のパンデミックにしっかり備えるため、国際社会全体が協力し合っていく道を推進したい」
ビル・ゲイツ 「コロナ禍を踏まえ、グローバルヘルス分野におけるODA(政府開発援助)を大幅に増やすことが非常に大きな意味を持っている」
山口 「パンデミックに日本が巻き込まれた状況を考えると、グローバルヘルス分野のODA拠出を日本政府も増やす努力をしていく必要がある。岸田文雄首相にもよく相談し、日本政府の役割を拡大していきたい」
■将来の大流行に対策必要(ゲイツ氏)
■日本も戦略を立て貢献(山口代表)
――両者はコロナ後の世界における感染症対策でも日本が貢献していく重要性を確認した。
ビル・ゲイツ 「パンデミックを乗り越えた上で、将来、新しいパンデミックが到来することのないよう、それを防止する施策を実施していかなければならない。それには、より良い計画を策定することが必要だ。そのために全てのリソース(資源)を投下し、今ある世界の格差を是正しなければならない」
山口 「コロナ禍を契機に、日本でもグローバルヘルスの重要性が認識された。人々の健康への影響のみならず、国家の安定や繁栄にも影響を与え、人類の存続にも影響を与える重要な課題である」
「これから日本政府がグローバルヘルス戦略を組み立てた上で、それぞれの国際機関の取り組みに対する日本の貢献のあり方について、具体的な回答を出していくことになる。日本にふさわしい貢献をしていきたい」
「ゲイツ氏は、ポリオ撲滅にも努力されてきた。これらをやり遂げるためにも、一層協力を深めたい」
ビル・ゲイツ 「新型コロナだけではなく、エイズ・結核・マラリアといった三大感染症や、ポリオにも精通していることに感謝申し上げたい。ポリオ根絶の取り組みについて、日本は非常に強力なパートナーだ。日本に協力を再開していただければ幸いだ」