2021年11月30日 3面
――国連はNGOをどのように位置付けているのか。
谷合正明・国際委員長 国連は憲章第71条(メモ)でNGOと協議しながら課題の解決を進めると規定しており、発足当初からNGOについて国連と市民社会を結び付ける貴重な存在と見ていた。こうした中、日本のNGOは1990年代から増加し、国際貢献を加速させてきたが、欧米のNGOより歴史が浅いこともあり、課題は少なくない。
まずは、財政や人材の手薄さであり、さらなる後押しは喫緊の課題だ。もう一つは、医療支援や食糧支援といった事業の実施を得意とするNGOが多い一方、アドボカシー(政策提言)に関わるNGOが少ない点だ。米国などではこうしたNGOが多く、政府や国連の政策決定にも関与している。日本のNGOも政府とパートナーシップを結びながら、草の根から生まれた知見に基づく的確なアドバイスをしていくことが、国際貢献のさらなる進化につながる。
――NGO強化へ求められることは何か。
谷合 NGOの強みは、政府とは異なったきめ細かな取り組みができる点だ。実際、国家間の関係が硬直して政府が相手国を直接支援できない局面でも、人道支援のニーズに対してNGOであれば入っていけるケースは多い。政府がNGOの存在を上手に生かすことが大事だ。
ただ、人道支援のニーズがある地域は安全に懸念があることが少なくないが、日本は他国に比べて安全基準が非常にセンシティブ(繊細)で、私自身もよく「退避せよ」と言われて困った経験がある。安全には十分配慮しつつも、政府はNGOの危機管理、安全管理の向上をサポートしながらNGOが活躍できるようもう少し信頼していく姿勢が必要ではないか。
――公明党はNGOとどのような関係を築いてきたか。
谷合 近年、党内に持続可能な開発目標(SDGs)推進本部や核廃絶推進委員会、地球温暖化対策推進本部といった国連が取り組む課題に対応する組織を設置。NGOの皆さんと共に会合を開き政府への提言や世論の喚起に努めてきた。
例えば今年7月、SDGsの2030年目標に対する進捗を国連に示す報告書を政府が策定する際、従来の政府による自己採点方式からNGOの意見を反映させる方式へと変更して、より現場の声に基づいた評価を行うよう国会質問などで提案し、実現を後押しした。
今後も公明党は、NGOの力が最大限に発揮できるよう取り組みを強化していく。