2021年7月23日 3面
急な病気やけがで、救急車を呼ぶべきかどうかの判断に迷った時、無料で電話相談に応じる行政サービスとして「救急安心センター事業(#7119)」がある。既に17地域で実施されているが、公明党は全国への展開を訴えている。救急医療に詳しい、帝京大学医学部付属病院長の坂本哲也・同大教授のコメントと共に紹介する。
全国で最も早く#7119を導入したのは東京都。2007年から始めた。軽症者の救急車利用が拡大し、重症者の搬送が遅れる事態を改善するのが狙いだった。開設後、都の救急車の軽症者割合は約6ポイント低下(19年)し、「救急出動件数の伸びも全国と比べて抑えられた」(東京消防庁)。
都が公表している19年の相談件数は約41万件に上る。そのうち救急相談は約23万件で、相談後に救急車が出動したケースは約5万件。医療機関の案内は約18万件を数える。
相談事業の対応に都では看護師ら延べ約100人で当たる。昨年来、新型コロナウイルスに関する発熱や副反応の電話相談窓口が混雑している時はこれらの相談にも応じている。
#7119が利用できる地域は現在、東京都など12都府県と、横浜市など5市地域の全国17地域【左表参照】。直近では昨年10月に京都府が始め、今年10月には新たに岐阜市など4市1町(約54万人)のエリアでも開設される。
導入済みのエリア人口は全人口の5割弱に当たる約5841万人。これ以外に、#7119と番号は異なるが、厚生労働省の補助金などを活用して同種のサービスを行う千葉県、栃木県、香川県、山形県を含めるとエリア人口は約6869万人で、5割を超す人口をカバーしていることになる。
■隠れた重症者救う、家族に安心感も
隠れた重症者の発見にも#7119は役立っている。夜中に胸が苦しいと感じた60代男性は、119番通報をためらい#7119に相談。その後、救急搬送となり病院で急性心筋梗塞と診断されたが、素早い処置を受けたことで九死に一生を得た。
いざという時の対応に迷う家族にも#7119は頼りになる存在だ。深夜に熱を出した子どもの対応で同サービスを利用した母親は「看護師の助言で安心感を得られた」と語っている。
■公明、拡充を重ねて訴え
公明党は、医療サービスの地域間格差の解消へ、#7119の全国での展開を主張してきた。
1月28日の参院予算委員会で谷合正明参院幹事長は、病院が少ない地方で同サービスのニーズが高まっていることを指摘し、「(導入の)ネックになっている都道府県の財政負担を措置すべき」と強調。これに対し、武田良太総務相は市町村に対する現行の普通交付税措置を見直す意向を示し、「今年度からは都道府県、市町村の財政負担に(直接、支給される)特別交付税措置を講じていく」と応じた。
6月11日の参院本会議で質問に立った安江伸夫氏も導入効果に言及し、「全国展開を一層、推進するべきだ」と重ねて訴えている。
■広域的な仕組みづくり重要/帝京大学医学部付属病院長 坂本哲也教授
このサービスは、救急車の適正利用だけでなく、迅速で適切な医療提供という観点からも有効だ。
不必要な救急外来受診を抑制し、必要性の高い人に受診を促すだけでなく、コロナ禍の現在では発熱電話相談などの受け皿にもなっている。
全国展開に向けては、都道府県と市町村が共同でコストを負担し、広域的に運営できる仕組みづくりが重要だ。地域の医療や消防、自治体の関係者が定期的に協議する場も求められる。
有意義なサービスの認知度を一層、高めるためには、駅などの公共交通機関で動画を流したり、母子手帳に案内を掲載するなどの工夫のほか、LINEや動画投稿サイト「ユーチューブ」も積極的に活用してほしい。