2021年2月27日 3面
新型コロナウイルスの感染拡大が続く中で自殺者数が全国で増加している。政府は公明党の主張を受け、1月に成立した2020年度第3次補正予算、今国会で審議中の21年度予算案で対策費を拡充した。3月の「自殺対策強化月間」を前に、自治体の先行事例も追った。
■補正、本予算案で対策打ち出す
自殺者数は近年、減少傾向だったが、コロナ禍の20年は一転し、前年比で908人増の2万1077人(暫定値)に上った【グラフ参照】。世界同時不況を招いたリーマン・ショック直後の09年以来11年ぶりのプラスとなり、女性や小中高校生が多い点が特徴。男性は11年連続で減ったが、女性は7025人で2年ぶりに増え、小中高校生も19年比で約4割増の479人となっている。
自殺者増の要因について、厚生労働省自殺対策推進室の担当者は、コロナの影響による経済的な困窮や外出自粛による不安、ストレスを指摘。女性や小中高校生の増加についても「生活への影響によるしわ寄せが社会的に弱い立場にある人に向けられ、孤立、孤独化したことが遠因では」と推察する。
こうした動向を踏まえ、政府は随時、対策を講じている。20年度の第1次、第2次補正予算では経済的支援として給付金を充実させる一方、計11億円を投じて民間支援団体の相談員などを拡充。第3次補正予算では「新型コロナウイルス感染症セーフティネット強化交付金」140億円を確保。自治体での電話、SNS(会員制交流サイト)による相談体制などを強化した。
19日には、公明党の訴えで、自殺を考える人らの社会的孤立に省庁横断で対応する「孤独・孤立対策担当室」を政府内に新設。21年度予算案では「地域自殺対策強化交付金」を増額させた。
■(自治体の取り組み)ツイッター利用、24時間化も
国の対応を受け、都道府県別で自殺増加率が最も高かった神奈川県とそれに次ぐ富山県は、電話相談体制を拡充した。
神奈川県は女性や若年層対策へSNS(会員制交流サイト)上で電話相談につなげる取り組みを拡充させる。同県では、昨年9月から行ってきた、自殺などに関わる相談窓口の電話番号一覧をツイッター上の広告に掲載する取り組みを4月以降も続ける。
具体的には、ツイッターで「死にたい」など自殺をほのめかす語句を頻繁に投稿したり、検索する人には相談を呼び掛ける画面を表示。その画面をクリックすると、いじめや心の健康問題など内容別の電話番号が表示される。昨年4月から始めたLINE相談も含め、国の21年度予算案の「地域自殺対策強化交付金」を原資にする。
同県の小泉遵子・精神保健医療担当課長は「生きづらさを感じている人が一人で悩みを抱えず、支援につながることが重要。県として、相談窓口の確保や相談先を積極的に知らせる取り組みで適切なケアにつなげたい」と話す。
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富山県は他の都道府県と比べ高齢者の自殺増加率が高いことを受け、平日の日中のみ開設していた「こころの電話相談」を21年度からは休日を含む24時間365日体制に変える。支援を行うNPO法人などと協議を重ね、施策を検討した。
メールに比べ電話で話す方が便利と感じる主に60代以上の世代に配慮。受け付け時間も自殺者の多い深夜から早朝にも対応し、相談しやすい環境にする。3次補正の交付金を活用する。
富山県の霜鳥裕一郎副主幹は、「曜日や時間を問わずに相談対応することで、自殺を考える人の孤立化を防ぎ、必要な支援につなげたい」と語っている。
■公明の主張反映し、交付金増額/党自殺防止対策プロジェクトチーム(PT)・谷合正明座長(参院幹事長)
公明党は、コロナ禍の自殺者増を深刻に受け止め、民間支援団体などと意見交換を重ね、実態把握に努めてきた。昨年11月と今年1月、党PTなどは政府に相談体制や心のケアなどの支援に向けた緊急提言を申し入れるとともに、国会質疑でも対策強化を訴えてきた。
20年度第3次補正予算や21年度予算案では、公明党の主張が随所に反映され、交付金が増額。相談から具体的援助につながる各種支援機関の連携や、不足する相談員の育成強化も前進する。より多くの自治体で交付金が活用されるよう周知も促していきたい。
16日には、党内に「社会的孤立防止対策本部」(本部長=山本香苗参院議員)が設置され、地域の実情を踏まえた生活困窮などへの支援策を提言する方針だ。今後も、悩みを抱える人の孤立化を防ぎ、相談者本位の自殺防止対策が前進するよう、党を挙げて取り組んでいく。