2020年8月6日 1面
被爆75年となる「広島原爆の日」を前にした5日、公明党の山口那津男代表は広島市を訪れ、同市南区にある市内最大級の被爆建物「旧陸軍被服支廠」を視察した。斉藤鉄夫幹事長、谷合正明参院幹事長、党広島県本部(代表=田川寿一県議)の議員が同行した。=関連記事2、6、7面
原爆の爆心地から南東2・7キロにある被服支廠は、軍服や軍靴を製造していた軍需工場の倉庫群。1913年に完成した日本最古級の鉄筋コンクリート造建築で、4棟の赤れんが倉庫が約470メートルにわたって並び、ゆがんだ窓の鉄扉は原爆の威力を今に伝えている。被爆直後は臨時救護所となり、負傷した多くの人が助けを求めて押し寄せ、この地で亡くなっていった。
昨年12月、全4棟のうち3棟を所有する広島県は、地震による倒壊の危険などを理由に「2棟解体、1棟の外観保存」とする安全対策の原案を公表した。
これに対し、全棟保存を求める党県議団(栗原俊二団長)はいち早く「反対」を表明。さらに、斉藤幹事長が今年1月の衆院代表質問で「全てを残してこそ、被爆の実相を後世に伝える訴求力がある」と主張し、国に被服支廠の保全に向けた支援策を講じるよう求めた。安倍晋三首相から「県の議論を踏まえて国としてしっかり対応していく」との答弁を引き出した。
こうした公明党の取り組みや被爆者団体の猛反発に加え、意見公募(パブリックコメント)でも6割が県方針に「反対」だったことなどを受け、県は今年度の解体着手を先送りした。ただ、解体の計画自体は撤回していない。
視察を終え、山口代表は「原爆遺構を後世に残し、伝えていくことは、核兵器のない世界をつくるための推進力として、大変重要な意義を持つ」と強調。その上で「市民の皆さまの意見を尊重しながら、市と県と国とで今後の合意をつくり出し、具体的な支援措置を確立すべきだ」と述べた。