2020年4月28日 3面
27日の衆参両院本会議で行われた公明党の北側一雄副代表、谷合正明参院幹事長の2020年度補正予算案に関する代表質問の要旨は次の通り。
■衆院/北側一雄副代表
■緊急事態宣言
4月7日の発令から20日が経過しました。この間、政府は、感染症の拡大を防止するため、国民の皆さまへの外出自粛要請をはじめ、さまざまな対策を実施してきました。
その効果も含め、現状をどのように認識していますか。また、5月6日に緊急事態宣言の期限が到来しますが、宣言を解除するかどうか、その見通しと判断基準は何なのか、見解を伺います。
■医療崩壊の防止/検査体制強化へ支援急げ
医療崩壊を防ぐための取り組みが今、何よりも重要です。
全国的にクラスター(感染者の集団)や院内感染が相次いで報告され、まさに医療現場は危機的状況にあります。この危機に立ち向かい、その最前線で奮闘している医療従事者の方々へ、医療用のマスクやガウンなどの増産・優先配布が進められています。
しかし、依然として、こうした防護具不足は解消されていません。過酷な環境で働く医師や看護師への支援は、待ったなしの最優先課題です。医療現場で働く方々への支援について見解を求めます。
日本の感染拡大の状況は、いまだ予断を許しません。都市部では、感染経路が不明な感染者が増加しています。院内感染を防ぐ上でも、検査体制の強化が急務です。しかしながら、全国の保健所の業務は急増し、その負担は極めて過重となっています。保健所や検査機関に対する支援を強化しなければなりません。
一方で、PCR検査を必要とする患者に対して、検査を迅速に実施できていない状況にあります。幾つかの地方自治体では、地域の医師会などと連携し「PCR検査センター」を設置する動きがあります。国は、検査センターの設置や運営などへの支援を通じて、可能な限り多くの地域でこうした取り組みが実施できるようにすべきです。
新型コロナウイルスの対応が急増し、がんなど重篤な患者への医療提供の遅れや、救急医療体制にも深刻な問題が出ています。それぞれの医療機関の役割を明確にし、地域全体で医療提供体制を確保する必要があります。
さらには、重症化を防ぐと期待されているアビガンなどの治療薬の開発を、安全性を確保しつつも、迅速に進めていかなければなりません。
■特別定額給付金/市町村の実施に万全を期せ
4月7日の緊急事態宣言後、日々の経済活動への影響、また、日常の生活への影響は、全国すべての人々に深刻に及んでいます。
こうした状況の大きな変化を敏感に受け止め、日本全体でこの危機を克服しようとの、連帯のメッセージを送る意味も込めて、安倍首相は、所得制限なく、一人当たり10万円の給付を実行するとの判断をしました。公明党は首相のこの決断を高く評価致します。
その上で今後は、お一人お一人に、いかに迅速に給付できるかが重要です。そのため、事業の主体となる市町村に対して、必要な支援を行い、円滑な実施体制を整える必要があります。また、給付金の申請について、国民に分かりやすく周知するとともに、すべての人に給付漏れが生じないよう、万全を期していただきたい。
■事業継続、雇用維持/制度の広報、分かりやすく
今般の感染症の影響は特定の業種にとどまらず、広範かつ甚大なものとなってきています。政府は、雇用を維持するための雇用調整助成金の拡充、事業者の資金繰りを支援するため、日本政策金融公庫などに加え、民間金融機関を通じた実質無利子・無担保の融資、事業者を支える持続化給付金の支給、無担保かつ延滞税なしの納税等の猶予など、財政・金融・税制のあらゆる政策手段を総動員して事業者を守り抜くこととしています。
しかし、融資の窓口には相談、申請が殺到し、雇用調整助成金の現時点での支給件数は、極めて低調です。いま現場が一番求めていることはスピードです。利用する事業者の立場に立ち、各種制度の分かりやすい広報に努めていただきたい。
その上で、事業継続、雇用維持のためには迅速に、事業者の皆さんに資金を届けることが急がれます。先例にとらわれず、申請手続きの大胆な簡素化を図るべきです。申請に必要な提出書類も、可能な限り事後の提出でも構わないといった対策を取るべきです。人員の確保など執行体制の強化を図り、迅速な融資・給付を実現していただきたい。
外出の自粛要請や休業要請など、多くの事業者の売り上げが急減しています。持続化給付金は、事業全般に幅広く活用できるため、事業者からは、いつから支給が始まるのかといった声が数多く寄せられています。申請手続きや給付の開始時期などについて伺います。
不動産を賃借して飲食店などの事業を営む中小事業者の中には、売り上げが大幅に減少し、主要な固定経費である賃料の支払いが困難になっている事業者が多い。持続化給付金や無利子無担保の融資、さらには国税・地方税等の納付猶予などの支援策だけで事業の継続が図れるのか、さらなる対策の検討が必要です。
休業要請に応じた事業者に、多くの地方自治体が協力金などの支給を決定しています。その財源として、今回の補正予算案に盛り込まれた1兆円の地方創生臨時交付金を活用できるとの政府方針も示されました。
医療提供体制の確保をはじめ、国民の生活を守る最前線に立っているのは、都道府県であり、市町村です。地方自治体との緊密な連携をさらに進めるとともに、予備費の活用も含め、さらなる財政支援が今後とも必要です。
■安倍首相の答弁
一、(緊急事態宣言)早期収束に向け、今が非常に重要な時期だ。宣言の解除は専門家の提言などを基に判断する。まずは接触機会の8割低減を徹底する。
一、(医療崩壊の防止)医療従事者の処遇改善へ、重症者治療への診療報酬を倍増する。自治体の病床確保やPCR検査機器の整備などを、緊急包括支援交付金で支援する。
一、(特別定額給付金)この難局を共に乗り越えるため全国すべての人を対象に1人10万円の給付を行うことにした。5月中の早い時期の給付開始を目標に、準備をしていく。
一、(事業継続と雇用維持)実質無利子・無担保の融資を、補正予算案成立後、早ければ5月1日にも、民間金融機関でも受け付けを開始する。持続化給付金は補正予算案成立の翌日から申請受け付けを開始し、早ければ5月8日の給付をめざす。
■参院/谷合正明参院幹事長
■緊急経済対策
政府は、今月7日に緊急経済対策を取りまとめました。しかし緊急事態宣言を境に、国民生活を取り巻く状況は激変しました。国民からは窮状を訴える厳しい声が相次ぎました。非常時に際し、事態の変化に政治が機敏に対応していかなければなりません。異例なことですが「国民のために」との一点で、この補正予算案はより強力に組み直されました。速やかな成立をもって、国民に一日も早く支援を届ける必要があります。
本補正予算案では家計への支援として、一律に1人当たり10万円の給付を行う「特別定額給付金」、児童手当の対象児童1人当たり1万円を上乗せする「子育て世帯への臨時特別給付金」が計上されました。また、住居確保給付金による支援の拡充が講じられるほか、既に個人向け緊急小口資金などの特例措置も講じられています。
事業者向けには、資金繰り対策の強化、雇用調整助成金の特例措置の拡大、売上減少した中堅・中小企業や個人事業者に給付する「持続化給付金」が計上されたほか、総額26兆円規模の税・社会保険料の猶予措置など、前例にない対策が講じられます。これらはまさに命綱です。迅速に、確実に届くよう、当事者に寄り添った周知や相談体制の強化を急ぐべきです。
■DV被害者対応、詐欺警戒も
定額給付金はすべての人を対象としたもので、「先が見通せず困っている状況に、皆で一緒に乗り越えるというメッセージ」と公明党は考えており、迅速な支給が何よりです。いつ、どうすれば給付を受けられるのかなど、国民に向けて丁寧にご説明ください。またDV(配偶者などからの暴力)被害者への対応、給付金を狙った詐欺への対応も合わせて、説明を求めます。
先が見えない状況の中、事業継続に困っている事業者、特に休業要請を受けた事業者への支援は、継続的に実施・強化する必要があります。
地方公共団体への支援について伺います。本補正予算案では「新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金」、また1兆円の「地方創生臨時交付金」が計上されています。感染症対策に自治体との連携は欠かせません。柔軟な使途の確保と、財政面での力強い下支えは不可欠です。加えて、国と自治体の緊密な連携、国による自治体間の広域調整などに積極的に取り組んでいただきたい。
■休校・就職活動/学力確保、新規採用に全力
学校休業の長期化・拡大により、児童生徒の多くは自宅学習を余儀なくされ、特に受験生やその保護者からは、学習遅れや学習環境の格差に不安の声が上がっています。オンライン学習の整備、夏休みの対応を含め、児童生徒の学力確保に向けた対策について、首相の見解を伺います。同様に、大学生らの今後の就職活動にも深刻な影響が表れています。既に内定の取り消しも発生する中、新規採用人数を抑制する動きも増えています。第2の就職氷河期世代を生まないために、官民挙げた対応が必要です。現状をどう認識しているか、また今後の見通しおよび対策も伺います。
■特定業種、人への偏見・差別を懸念
新型コロナウイルスは、世界中の人々の生活に影響を及ぼしています。この未知の感染症が怖いのは、病気から生まれる「不安」が社会全体に広がり、特定の「人」「地域」「職業」に向けられる「嫌悪」「偏見」「差別」につながっていくことだといわれます。
このウイルスとの闘いは長期戦になるかもしれません。だからこそ国民の連帯や協力、国際的な協調を通じて、この危機を乗り越えていかなければなりません。明けない夜はない。私たち公明党も国と地方議員が結束し、必ずやこの国難を克服していくことをお誓いし、質問を終わります。
■安倍首相の答弁
一、(DV被害者への対応、詐欺対策)家庭内暴力で住所を実態通りに登録できない人も、一定の手続きを経て、給付金を受け取れるよう対応していく。給付金に乗じた詐欺被害の防止へ、関係省庁が連携し、SNSなどで注意喚起に取り組んでいる。
一、(児童生徒、就職活動の学生支援)子どもたちが自宅で活用できる教材や動画をインターネットで提供するとともに、1人1台の端末の早期実現や、通信環境の整備を推進する。
企業側に中長期的な視点に立った採用を要請。雇用調整助成金に特例措置を設け、新入社員を助成の対象にした。