2018年10月17日 3面
日本ユニセフ協会と外務省が制作した「持続可能な開発目標(SDGs)」(メモ)の副教材が今月から、全国の中学校(約1万校)へ配布が始まり、子どもたちの学習に活用される。副教材を使った初の公開授業と、専門家の見解などから、SDGsを教育に取り入れる意義を探った。
■副教材が完成、全国で活用へ
「世界の格差をなくすため、国と国が交流を続けていくことが大切だよね」
9日、東京都板橋区立赤塚第二中学校で行われた公開授業の教室は、議論する生徒たちの声が響いていた。これは、3年生の約30人がSDGsを学ぶ社会科の授業で、机にはカラー刷りの真新しい副教材が並ぶ。授業には、ユニセフのヘンリエッタ・フォア事務局長が視察に訪れた。
副教材は、貧困撲滅や気候変動への対応などSDGsで掲げる17項目の目標を、図表や写真を用いて解説している。副教材を使った授業は、<持続可能な世界にしていくために、これから何が必要か>という議論へ展開していく。
まず、生徒全員が17項目の目標について「何を優先すべきか」の順位をつける。そして、その理由を3、4人の班に分かれ、互いの意見を発表。担当教諭は「友人の考えを聞いて、自分の意見を新しくしていこう」と呼び掛けた。
話し合った内容を受け、生徒は、自分が取り組んでいきたい目標や課題を整理する。最終的に、「今できることは何か」、あるいは「将来取り組みたいことは何か」などの視点からレポートをまとめる。このレポートを基に生徒一人一人がSDGsの達成をめざす「行動宣言」を作成する。
■貧困、環境問題など知る契機に
授業では、フォア事務局長も登壇し、「若い皆さんがSDGsを推進する力になる」と期待を寄せた。授業を終えた成田彩楽さんは「今回の授業で、貧困に関する現状などを知った。学んだことを多くの人へ伝えていきたいと思った」と感想を語った。
2017年に日本ユニセフ協会と外務省は、専門家会議を立ち上げ、同年5月から1年間、教材の方向性や内容などを検討してきた。副教材は、主に中学3年生の社会科(公民的分野)での活用を想定している。
教材の作成作業に携わった赤塚第二中学校の中野英水教諭は「興味や関心を高められるよう、内容とともにレイアウトにも力を入れた。彼らが高校生になり、将来にわたり追求したいと思うテーマを見つけてほしい」と述べていた。
■公明、教育の重要性を強調
今回、新しく制作された副教材は、政府が2016年12月に決定した「SDGs実施指針」に基づいている。
日本ユニセフ協会が取り組んでいたSDGsの学習を推進するための事業などが契機となり、同協会が外務省とともに新たな教材づくりに取り組んだ。
実施指針の策定に先立ち、公明党SDGs推進委員会(座長=谷合正明参院議員)が政府に要望。この中で、日本が国際協力で主導的役割を果たすよう訴えていた。さらに、17項目の目標の中で、子どもの貧困対策を優先して取り組むべきだと主張し、未来を担う子どもたちにSDGsを根付かせるため、「教育に取り込むことが重要」と強調していた。
(メモ) 持続可能な開発目標 国連が2015年9月に採択。世界が2030年に向けて取り組むアジェンダ(課題項目)をまとめたもの。「誰一人取り残さない」という理念のもと貧困撲滅や資源保全など17の国際的な目標が掲げられている。