谷合正明参院議員が取り組む、農福連携についての記事が、このたび公明新聞に掲載されましたので、転載します。
農福連携で地域を元気に
障がい者の働く場を拡大
農作業の担い手も確保
香川県
農作業の現場で汗を流す障がい者が増えている。香川県では、農家と障がい者施設をつなぐという全国でも珍しい仕組みをつくり、注目されている。農業と福祉が連携する“農福連携”の現場を追った。
温暖な気候が特徴の香川県では、レタスやブロッコリー、ニンニクなどの露地栽培が盛んだ。しかし、近年は高齢化に伴う労働力不足や、栽培面積の縮小、耕作放棄地の増加が課題となっている。
また、障がい者の自立には経済基盤の確立が欠かせないが、厚生労働省の2013年の調査では、就労支援施設の工賃は全国平均で月額1万4437円。障害基礎年金などと組み合わせても、生活保護の水準に届かないのが現状だ。
こうした課題を解消しようと、同県は08年、農業分野への障がい者の参加を盛り込んだ「工賃増額支援計画」を策定。09年には、人手が不足している農家と障がい者施設とをマッチングする事業を試験的に実施。「かんきつ類やニンニクの収穫作業は、思った以上に好感触だった」(県農業生産流通課)ことから、11年度からは本格的に取り組み始めた。
この事業の特徴は、NPO法人「香川県社会就労センター協議会」が共同受注窓口となって、農家やJA(農協)から農作業の依頼を一括して請け負うこと。
具体的には、作業を依頼したい農家が直接またはJAを通して、同協議会に伝達。協議会は農作業の日程や内容などの明細を作り、障がい者施設に働き掛けて、参加が確定した施設と業務契約を結ぶ。その後、契約に基づいて、各施設の障がい者が現場で農作業を実施。作業完了後は、施設に報酬を出来高で支払い、施設が作業者に工賃として還元する。
同協議会でコーディネーターを務める阿部隆弘さん(64)は、「共同受注にすることで、大口の依頼も複数施設で引き受けることができ、農家の要望に合わせて柔軟に対応できる」と話す。
『年間延べ1万人が従事し工賃も上昇』
現在、県内で農作業に参加する障がい者施設は28カ所で、14年度は延べ約1万人が従事した。事業を本格的にスタートさせた11年度に比べて、14年度の作業実施面積は4・6倍の46ヘクタールに広がり、作業工賃の総額は7倍超の約1300万円に拡大した。作業内容も増え、収穫に加えて苗の定植や除草などを行っている。
阿部さんは「作業の種類や量が拡大したのは、農家側の障がい者に対する理解が深まったから」と分析する。中には、障がい者が農業に従事することで、農作業の効率性が向上した例もあるという。
同県観音寺市の株式会社Growble農人では、業務契約に基づいて、ほぼ毎日、障がい者が農作業を行っている。代表取締役の近藤芳臣さん(36)は「人員不足を補える上に、継続して農作業をしてくれている人は作業のスピードも早く、精度も高い。安心して仕事を任せられる」と語っている。
同協議会では、農福連携における農家側のメリットとして、
(1)栽培面積も増え、農繁期や重量作物などにおける労働力確保につながる
(2)農作物の適期に短期間で収穫ができるので品質向上につながる――ことなどを挙げ、「農家の収益も向上する」(阿部さん)という。
また、障がい者施設のメリットとしては、
(1)障がい者の工賃の引き上げにつながる
(2)汗をかく喜び、体力づくり、自然との触れ合いなど、内職的な作業にはないものを享受できる
(3)共同作業による施設間での助け合いや仲間づくりができる――ことなどを挙げている。
『政府、16年度 技術伝授や販路開拓で支援』
政府は16年度から、農業分野に参入する障がい者施設を支援する。
具体的には、農業の専門家を派遣し、付加価値が高い農産物の育成方法を伝授する。また、生産から加工まで手掛ける6次産業化をめざし、新たな販路開拓についても助言する。
定期的に大規模なマルシェ(市場)を開き、障がい者が生産した農作物を販売する機会もつくる。関連経費として、16年度予算に1・1億円を計上した。
公明党は、農福連携について積極的に推進。谷あい正明参院議員(参院選予定候補=比例区)は14年5月の参院本会議で、「障がい者就労の受け皿として農業を活用する余地は大きい。こうした取り組みが裾野を広げ、多様な担い手確保にもつながる」と指摘。また、山本博司参院議員が15年3月の参院予算委員会で取り上げるなど、農福連携の強化を訴えてきた。
(公明新聞:2016年4月6日(水)付より転載)