谷合正明参院議員が取り組む自殺対策に関する記事が、このたび公明新聞に掲載されましたので、転載します。
地域で取り組む自殺予防
「総合相談会」が効果 東京・足立区
都道府県や市町村に自殺対策の計画づくりを義務付ける改正自殺対策基本法(参院先議)が22日、衆院本会議で全会一致で可決、成立した。4月1日から施行される。深刻な自殺問題への取り組みを前に進めることが狙いで、地域の実態に合った対策が期待される。
『対策計画、自治体に義務付け/改正基本法が4月から施行』
現行の自殺対策基本法は公明党など超党派による議員立法で、2006年に成立、施行された。政府に自殺対策の大綱づくりを求めている一方、自治体の取り組みは自主性に委ねられ、地域によって温度差が生じていた。
今回の改正では、国だけに課していた自殺対策計画の策定を、全ての自治体に義務付ける。自治体は、自殺者の年代や性別、職業といった傾向を分析し、地域の実情に応じた対策計画をつくることになる。また、若者の自殺防止に向けて、学校や保護者、地域の三者協力体制を一層強化するよう促している。
政府は、対策に掛かる経費を交付金で支援する。分析の基になるデータの提供や先進例の紹介といった情報面でも、自治体をバックアップする体制を整える。
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こうした中、既に独自の対策を実施している、東京都足立区の取り組みが注目されている。
同区は06年、区内の自殺者数が161人となり、東京23区内でワースト1となったことを受け、08年から対策に着手。警察庁などの統計から自殺者の年代や職業などによる傾向性の分析を始めた。
その結果、40〜50代で失業中の単身男性の自殺リスクが高いことが浮き彫りに。そこで区は09年から、自殺対策に取り組むNPO法人「自殺対策支援センター ライフリンク」(清水康之代表)と連携し、働く世代などを対象とした「雇用・生活・こころと法律の総合相談会」を開始した。
相談会を利用した一人、区内在住のAさんは多重債務で苦しんでいた。「不安で夜も眠れなくなった。寝てもすぐに目が覚め、もう死ぬしかない」と思い詰めていたときに、区の広報で相談会の存在を知った。わらにもすがる思いで相談会へ行き、自らの窮状を話すと解決の糸口が見えたという。「気分が晴れ、今ではよく眠れるようになった」とAさんは話す。
こうした孤立させない取り組みが功を奏し、区内の40〜50代を中心に男性の自殺が減少し、14年の自殺者は142人となった。
同区はこのほか、若者向け自殺対策として、保健師が区内の公立高校や中学校へ出向き、特別授業を実施している。「こころとからだの健康づくり課」の馬場優子課長は、「自治体ができる対策はどうしても限られてしまう。だからこそ、関係機関とのネットワーク強化に力を入れている。民間団体や地域と共に対応していきたい」と話す。
『若い世代の死因トップ/先進7カ国で最悪水準』
国内の自殺者数は1998年から14年連続で3万人を超えた。その後は減少を続け、2015年は2万4025人(暫定値)に。18年ぶりに2万5000人を下回ったものの、毎日66人が自殺で命をなくしていることになる。人口10万人当たりの自殺者数を示す自殺率は、米国の2倍近く、英国の3倍以上で、先進7カ国で最悪の水準となっている。
また、若者の自殺も深刻で、13年の15〜39歳の死因は自殺がトップ。20代前半では死因の5割を超えた。
今月19日、都内で開かれた民間団体などでつくる「日本自殺総合対策学会」のフォーラムで、ライフリンクの清水代表は、地域によって自殺者の傾向が異なる点を紹介【グラフ参照】。
職業別の地域特性として、京都市左京区では学生・生徒らが多く、愛知県豊田市では被雇用者・勤め人が上位を占めるという事例を挙げた。一方、年代別の事例として、東京都新宿区では20〜30代が多く、秋田県由利本荘市では70〜80代が多い点を指摘した。
自殺対策に詳しい京都府立医科大学の本橋豊特任教授は、「それぞれの地域の実情に応じてきめ細かく、より具体的な対策を」と訴えた。
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公明党は自殺対策基本法の制定に尽力したほか、同法改正も積極的に推進。谷合正明参院議員(参院選予定候補=比例区)は、超党派の国会議員でつくる議員連盟「自殺対策を推進する議員の会」の若者自殺対策ワーキングチーム座長として、改正案の取りまとめにも加わった。
(公明新聞:2016年3月26日(土)付より転載)