谷合正明参院議員へのインタビューの模様が、このたび公明新聞に掲載されましたので、転載します。
労働基準法改正案 働き過ぎの抑制が狙い
仕事と育児・介護の両立へ 柔軟な働き方も推進
党・雇用労働問題 対策本部事務局長 谷合正明 参院議員 に聞く
長時間労働を抑制し、多様で柔軟な働き方を推進するための労働基準法改正案が、今国会に提出される予定です。改正のポイントについて、公明党雇用・労働問題対策本部の谷合正明事務局長(参院議員)に聞きました。
有給休暇 年5日の取得を義務付け
月60時間超の残業 中小企業も賃金5割増へ
フレックスタイム 労働時間を3カ月で調整
高度プロフェッショナル制度 平均年収の3倍超に限定健康確保する措置も実施
―改正の目的は。
谷合正明事務局長 ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)の観点から働き過ぎを是正するとともに、多様なニーズに応じた柔軟な働き方の選択肢を増やすことが狙いです。労働者の健康確保など、公明党が政府に申し入れてきた内容も反映されています。
―働き過ぎを抑えるための具体策は。
谷合 年次有給休暇の取得率は2013年で48.8%にとどまっています。このため年次有休10日以上の労働者については、年5日の取得を企業の義務とし、企業が労働者の希望を踏まえて休暇を指定するなど、確実に休めるようにします。
また、月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率について、中小企業は25%に据え置いてきた猶予措置を廃止。19年4月からは大企業と同じ50%に引き上げます。ただし、この規定は時間外労働が特に多いトラック運転業務への影響が大きいため、施行までの間に、適正な発注促進などの荷主対策をしっかりと進めます。
―1カ月の枠内の総労働時間を決めた上で、出退勤の時間を労働者が自由に選べる「フレックスタイム制」も見直されますね。
谷合 労働時間を調整できる期間を3カ月まで延ばします。これにより、子どもが夏休みの8月は終業を早めて、その分の仕事を前後の月に回すといった、仕事と育児・介護の両立が進むことが期待されます。
―高度な専門職を対象に、時間外・休日・深夜の割増賃金などの適用外とする「高度プロフェッショナル制度」が創設されますが、狙いは何ですか。
谷合 高度専門職の人が意欲や能力を存分に発揮できる環境づくりをめざすものです。対象者は今後、具体化されますが、世界レベルの研究者や金融市場で働くディーラーなどで高収入の人が、必要な時に集中して働き、その後は十分に休むなどのケースが考えられています。
―対象が無制限に広がる恐れはありませんか。
谷合 対象については、法案に▽高度の専門的知識を必要とする▽労働時間と成果との関連性が高くない―などの考え方を明記。年収の要件も「平均給与額の3倍を相当程度上回る水準」と明記され、厚生労働省令で1075万円に定める予定です。法改正しない限り、対象の大幅な拡大はできません。
また、高度プロフェッショナル制度の適用には本人の同意も必要です。
―この制度については「労働時間の規制がなくなって過重労働に陥る」との指摘もありますが。
谷合 公明党の主張で、企業が対象者に、終業から次の始業まで一定時間を空けるなどの健康確保措置を講じることが法案に盛り込まれました。長時間労働になった場合は、医師の面接指導も義務付けられます。
―仕事の進め方や時間配分を労働者に委ねた上で、一定時間働いたとみなした額の賃金を支払う「裁量労働制」で、営業職の対象が広がるそうですが。
谷合 取引先のニーズを聞いて新商品の企画立案や開発などを行う営業職が追加されますが、ノルマを課されるような、労働者自らの裁量で仕事ができない業務は対象外となります。
―公明党の今後の取り組みは。
谷合 ワーク・ライフ・バランスの推進は、労働者と企業の双方に利益をもたらすものです。成長戦略を進める上でも、労働者が働きやすい企業こそ、成長産業をけん引していく企業であるといえます。
公明党は昨年、過労死等防止対策推進法の早期制定に力を尽くすなど、働き方の“質”の改善を一貫して進めてきました。今回の改正についても、国会審議を通じて国民の皆さまの懸念を払拭するとともに、労働者が守られる制度となるよう引き続き取り組んでいきます。
(公明新聞:2015年3月30日(月)付より転載)