消費者法ニュース87号に、参院消費者問題特別委員長として谷合正明参院議員が寄稿しました。以下、全文を転載します。
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(東京事務所)
消費者教育の充実めざす
参議院消費者問題特別委員長(公明党) 谷合正明
昨年7月に参議院の消費者問題特別委員長に就任いたしました。この特別委員会は、消費者庁関連3法を審議する際に衆参両院に設置され、法案成立後も消費者庁はじめ消費者行政が国民の期待に添う形で進展しているのかを監視していく意味もあり、今日まで存続しているものです。私自身、昨年より国民生活センターや、県・市町村の消費生活センターを視察し、適格消費者団体とも意見交換もさせていただき、消費者行政に関する課題などを探ってまいりました。
率直に言って、現場で汗を流す相談員の皆様のご奮闘には頭が下がるばかりです。本稿のテーマではありませんが、消費者行政を充実させていくために、相談員の確保、待遇改善は待ったなしと感じています。
その相談員の皆様との意見交換では、消費者被害をなくしていくためには、やはり消費者自身が賢くならなければならず、消費者教育の推進が今後より重要であるとの認識で一致します。
例えば、昨年9月に訪れた水戸市の消費生活センター。消費者庁発足から1年を迎えたことを踏まえ、消費者行政の課題を探りました。同センターでは、「水戸方式」と呼ばれる多重債務者への懇切丁寧な取り組みを行っており、全国的に注目を集めています。意見交換の席上、田山知賀子センター長から、「多重債務者を増やさないためには、学校段階から消費者教育を行うことが重要。文部科学省と連携して進める必要がある」として、縦割り行政の改善を求められました。
また、公明党岡山県本部所属の地方議員とともに視察した岡山県消費生活センター。中田行一所長からは、「相談件数は5年連続で減少しているが、『社債や未公開株を買わないか』などと、高齢者を狙った悪質な事例が増えており、60歳以上の相談件数は増加している」と指摘がありました。その上で、中田所長は、米国やフランスなど諸外国で行われている、『契約とは何か』などの消費者教育の必要性に言及され、「学校現場での消費者教育を促してもらいたい」と要請されました。
ところで、消費者庁関連3法は、衆議院では付帯決議12項目に、参議院では付帯決議16項目に消費者教育の推進が盛り込まれています。
参議院の付帯決議は、次の通りです。「消費者教育の推進については、消費者庁が司令塔機能を果たし、消費者基本法の基本理念及び消費者基本計画の基本的方向のもと、消費者が自らの利益の擁護及び増進のため、多様な視点から物事をとらえる能力をみにつけ、自主的かつ合理的な行動をすることができるよう、消費者庁と文部科学省が連携を図り、学校教育及び社会教育における施策を始めとしたあらゆる機会を活用しながら、財政措置を含め、全国におけるなお一層の推進体制の強化を図るとともに、消費者教育を担う人材の育成のための措置を講ずること。」
消費者庁は現在、消費者教育の具体的な取り組みとして、中学校向けの副教材や、高齢者向けのガイドブックを作成、配布しています。また自治体や各地の消費生活センターでも消費者教育の実践例が随所に見られます。
しかし、こうした動きがあるものの、消費者教育を受けたという人は、10代後半で半分程度、30代以降になると1割にも満たないという統計もあります。まだまだすそ野は十分に広がっていません。
近年、消費者トラブルは複雑・高度化しており、消費者の権利を実現するための消費者教育の重要性は高まっていることから、教育を推進するための法整備に全力を挙げなければなりません。
参議院の付帯決議には、「消費者教育に関する法制の整備についての検討を行うこと」と法整備の必要性についても触れています。法律によって担保されることによって、財政上の措置を含め、消費者教育も進んでいくものと期待します。
現在、議員立法で「消費者教育の推進に関する法律」を制定しようという動きが参議院にあります。消費者教育の基本理念を定め、国及び地方公共団体の責務等を明らかにするとともに、基本方針の策定その他消費者教育の推進に関し必要な事項を定めようとするものであります。
公明党としても、消費者問題対策本部で法制化について検討を重ねています。例えば、消費者教育を推進していくために、国は、消費者団体、事業者、関係行政機関等とどのような会議体を構成していくことが望ましいのか、絵にかいた餅にならないように具体的な中身を詰めるべきと議論しています。
今後も衆参の委員会でも、消費者教育の推進ならびに法制化について、活発な議論が展開されていくことを切に願います。
最後に、消費者庁が発足して1年半。消費者担当大臣は初代の野田聖子大臣から現在の蓮舫担当大臣に至るまで、5人が入れ替わりました。政府にはもう少し腰を落ち着かせた政治主導の姿を見せて欲しいと思います。
(消費者法ニュース87号より転載)