谷合正明参院議員が12月3日に提出した質問主意書に対し、12月14日政府より答弁がありましたので、以下あわせて掲載します。
(東京事務所)
【谷合 質問主意書】
質問第一八八号
大学生の就業力強化に関する質問主意書
右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。
平成二十二年十二月三日
谷 合 正 明
参議院議長 西 岡 武 夫 殿
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大学生の就業力強化に関する質問主意書
大学生をとりまく厳しい雇用情勢のもと、平成二十二年度より新たに大学生の就業力育成支援事業が始まった。本事業では、大学生の職業力育成の向上に対する教育改革への支援を、五年間の継続支援として行うものとされている。本事業は本年六月十八日に閣議決定された新成長戦略にも強化がうたわれ、九月六日には、事業の早期実施を促す文部科学大臣政務官名の通知が発出されたにもかかわらず、十一月十八日の行政刷新会議の事業仕分けで廃止の評価結果を受けた。
そこで、以下のとおり質問する。
一 本年六月十八日の新成長戦略の工程表において「大学の就業力向上プラン」の実施が掲げられた理由、及び同年九月六日に、事業の早期実施を促す文部科学大臣政務官名の通知が発出された理由を明らかにされたい。
二 本年十一月十九日の参議院予算委員会で菅総理大臣は、大学生の就職支援について、「今年最も力を入れなければならない」と答弁しているのにもかかわらず、総理大臣が議長をつとめる行政刷新会議が、大学生の就業力育成支援事業を廃止と判定した理由を明らかにされたい。
三 自公政権時に、学生の就職支援体制の強化を図る必要性から、大学教育・学生支援推進事業が開始されたが、昨年十一月の行政刷新会議による事業仕分けにおいて、予算の縮減との評価がなされた。民主党政権になって、今年度からは、学生の卒業後の社会的・職業的自立が図られるよう、大学の教育改革の取組を国として支援するため、大学生の就業力育成支援事業がスタートした。この大学生就業力育成支援事業は、新成長戦略で強化が図られ、事業の前倒しが促進されたのにもかかわらず、本年の事業仕分けで廃止との評価がされた。こうした一連の経緯は、事業仕分けの評価と政府の方針とが矛盾するだけでなく、大学側に大きな混乱を与えているものと解されるが、政府の見解を示されたい。
四 「事業仕分けの評価結果については、行政刷新会議のワーキンググループの意見表明であり、評価結果を踏まえた政府の施策は、行政刷新会議の審議あるいは政府内の調整を経て、内閣として法律に基づいて決定していく」旨、行政刷新担当大臣は答弁をしている。今回の大学の就業力育成支援事業に対する廃止判定以降、行政刷新会議の審議あるいは政府内の調整は、いつ、どこで、誰が実施したのか明らかにされたい。
五 来春卒業予定の大学生の就職内定率が過去最低となっている現状と、政府側の要請を受け大学側が五年間の継続支援を前提に準備に着手している現状から、継続の結論を政府として早急に出すべきと考える。今回政府は、事業仕分けの評価結果どおり、本事業を廃止するのか、事業を見直し縮小をするのか、あるいは見直しをせず五年間継続するのか、方針を明確にされたい。
六 事業仕分けの評価者のコメントでは、学生の就職支援活動及び就業力育成は大学の本来業務であると指摘されているが、大学の本来業務であるか否かについての政府の考えを明らかにされたい。
右質問する。
【政府答弁書】
答弁書第一八八号
内閣参質一七六第一八八号
平成二十二年十二月十四日
内閣総理大臣 菅 直 人
参議院議長 西 岡 武 夫 殿
参議院議員谷合正明君提出大学生の就業力強化に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
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参議院議員谷合正明君提出大学生の就業力強化に関する質問に対する答弁書
一について
「新成長戦略」(平成二十二年六月十八日閣議決定)においては、「成長の原動力として何より重要なことは・・・様々な分野において厚みのある人材層を形成することである」との認識の下、高等教育における職業教育の推進などの取組を進めることとし、そのために必要な施策として、その別表の成長戦略実行計画(工程表)に「大学の就業力向上プラン」の実施を盛り込んだところである。
さらに、現下の厳しい雇用情勢を踏まえ、大学等の新卒者の就職支援等のための政府横断的な取組を強化するため、寺田学内閣総理大臣補佐官を長とする「新卒者雇用・特命チーム」を設置し、平成二十二年八月三十日、同チームにおいて、「新卒者雇用に関する緊急対策」を取りまとめ、「キャリアカウンセラー等の増員」や「学生の就業力を向上させるための支援プログラムの充実」等を図ることとしたところである。
文部科学省においては、これらを踏まえ、「「新卒者雇用に関する緊急対策」及び「大学の就業力向上プラン」の実施等について」(平成二十二年九月六日付け二二文科高第五三一号文部科学大臣政務官通知)を発出し、各大学等において就職支援や就業力育成のための取組の充実が図られるよう促しているところである。
二について
「大学生の就業力育成支援事業」については、平成二十二年十一月十八日に行われた行政刷新会議ワーキンググループによる事業仕分けにおいて、「国の事業として廃止」との評価結果とともに、「本来、大学の業務であり、このような補助を行うことは認められない。」との判定理由が示されたと承知している。
三及び五について
「大学生の就業力育成支援事業」については、文部科学省において、平成二十三年度予算概算要求を行ったところであるが、行政刷新会議ワーキンググループによる事業仕分けの評価結果を受け、これを見直した場合に各大学が実施している事業に与える影響等も考慮して、現在その取扱いを検討しているところであり、今後、平成二十三年度予算編成過程において、内閣としての結論を得ることとしているものであることから、「事業仕分けの評価と政府の方針とが矛盾する」との御指摘は当たらないと考える。
四について
「大学生の就業力育成支援事業」を含め、行政刷新会議ワーキンググループが平成二十二年十一月に実施した事業仕分けの評価結果については、平成二十二年十一月二十六日の行政刷新会議において審議された。
事業仕分けの対象となった事業については、今後、行政刷新会議ワーキンググループが示した評価結果も踏まえて必要な見直しを行い、平成二十三年度予算編成過程において、内閣が一体となって結論を得ることとしている。
六について
大学等は従前より就職支援や就業力育成のための取組を行ってきたところであるが、文部科学省としては、現下の厳しい雇用情勢、学生の就業力育成等のニーズを踏まえ、平成二十二年二月に大学設置基準(昭和三十一年文部省令第二十八号)を改正して、「大学は、当該大学及び学部等の教育上の目的に応じ、学生が卒業後自らの資質を向上させ、社会的及び職業的自立を図るために必要な能力を、教育課程の実施及び厚生補導を通じて培うことができるよう、大学内の組織間の有機的な連携を図り、適切な体制を整えるものとする」と明文で定め、短期大学についても同様の改正を行ったところであり、各大学等において就職支援や就業力育成のための取組の充実が図られるよう促しているところである。