谷合正明参院議員が12月3日に提出した質問主意書に対し、12月14日政府より答弁がありましたので、以下あわせて掲載します。
(東京事務所)
【谷合 質問主意書】
質問第一八七号
公的臍帯血バンクの存続に関する質問主意書
右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。
平成二十二年十二月三日
谷 合 正 明
参議院議長 西 岡 武 夫 殿
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公的臍帯血バンクの存続に関する質問主意書
公的臍帯血バンクは国からの補助金と医療保険によって臍帯血の保存供給を行っており、全国に十一か所存在する。一九九八年四月に臍帯血移植の保険適用、一九九九年八月に公的バンクの中核組織「日本さい帯血バンクネットワーク」の設立、二〇〇〇年には検査費の一部に保険適用が実現し、骨髄移植と同様に臨床現場にとって必要不可欠な治療法として定着してきた。
しかし、全国の公的臍帯血バンクの財政事情は逼迫している。臍帯血を採取してから患者に供給するまでには、一本あたり約二百万円とされているが、バンクに入る診療報酬は管理料として十七万四千円だけである。収入の大半を占める国からの補助金を合わせても損失が生じるため、臍帯血の保存本数に比例して赤字が増える状況である。
そこで今後の公的臍帯血バンクの存続に関して、以下のとおり質問する。
一 公的臍帯血バンクによる臍帯血移植の累計実績、そのうち成人への移植件数、造血幹細胞移植全体に占める臍帯血移植の割合について明らかにされたい。
二 臍帯血移植及び公的臍帯血バンクが移植医療に果たしてきた役割について、政府としてどのように評価しているか。
三 公的臍帯血バンクにおける臍帯血の公開保存数及び成人移植が可能な細胞数の多い臍帯血の公開保存数を示されたい。また、今後、小児中心の保存計画から、成人に見合うように保存計画を策定し、細胞数の多い臍帯血を増やしていくべきと考えるが、厚生労働省として、今後、望ましい臍帯血全体の保存数や細胞数の多い臍帯血の保存数について、どのような見解をもっているか。
四 現在、臍帯血の採取可能な医療機関はいくつあるのか。十一の公的バンクごとに提携している医療機関の数を明らかにされたい。また、今後、臍帯血を必要数確保していくために十分な数と言えるのか、見解を示されたい。足りないとすれば、政府として採取可能医療機関の増加に向けて、どのように支援していく考えか。
五 公的臍帯血バンクの運営は、補助金だけでなく母体組織の負担によっても支えられており、臍帯血の保存を増やせば増やすほど赤字が拡大し、公的バンクの財政状況を厳しくさせている。財政面を理由に臍帯血の供給が止まった場合、患者の方々に甚大な影響を与えるものと危惧する。政府は全国の公的臍帯血バンクの財政状況について、どう把握し、どう認識しているか。また、厳しいという認識であれば、公的臍帯血バンクの自立的な運営のために、政府としてどのような方策を取ろうとするのか、明らかにされたい。
六 平成二十二年度の診療報酬改定に際し、骨髄移植や末梢血管細胞移植が大幅に増点され、移植と採取の合計が八万四千八百点と同額になるよう増点された。しかし、臍帯血移植の保険点数は四万四千三百点に据え置かれたままになっているが、据え置かれた理由について明らかにされたい。また、安定的な医療としていくために、骨髄移植や末梢血管細胞移植と同様に点数の引き上げが必要と考えるが、政府の見解を明らかにされたい。
七 公的臍帯血バンクでは臍帯血一本あたり二百万円程度のコストがかかると言われているが、バンクに入る収入は十七万四千円の管理料のみであり、残りを補助金や運営母体の持ち出しに依存している。将来の自立的な運営を可能にするためには、補助金による支援から、コストに見合う臍帯血本体の保険点数化が必要だと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。
八 臓器移植には臓器移植法があるが、臍帯血移植を含め造血細胞移植については根拠法がない。臍帯血の保存管理は特別なものであり、かつ安全管理にも十分に配慮していかなければならない。したがって国の責任のあり方も含めた造血細胞移植法の制定が必要と考えるが、政府の見解を明らかにされたい。
右質問する。
【政府 答弁書】
答弁書第一八七号
内閣参質一七六第一八七号
平成二十二年十二月十四日
内閣総理大臣 菅 直 人
参議院議長 西 岡 武 夫 殿
参議院議員谷合正明君提出公的臍帯血バンクの存続に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
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参議院議員谷合正明君提出公的臍帯血バンクの存続に関する質問に対する答弁書
一について
お尋ねの公的臍帯血バンク(以下「バンク」という。)を介して行われた臍帯血移植の数は、平成二十二年十一月三十日現在で六千九百十四件である。このうち、二十歳以上の者に対する移植数は、五千百七十五件である。
また、お尋ねの造血幹細胞移植全体に占める臍帯血移植の割合は、日本造血細胞移植学会が平成二十二年四月に取りまとめた「全国調査報告書」によると、平成二十年度末現在で、十・八パーセントである。
二について
バンクは、白血病等に有効な治療法の一つである臍帯血移植に必要な臍帯血について、非血縁者間における提供のあっせんを公正かつ中立的に行うために重要な役割を果たしてきたと評価している。
三について
お尋ねのバンクにおける臍帯血の公開保存数は、平成二十二年十一月三十日現在で、三万三千八百八十二個である。お尋ねの「成人移植が可能な細胞数」の意味するところが必ずしも明らかではないが、体重四十キログラム以上の者に対する臍帯血移植のために標準的に必要とされている有核細胞数八億個以上の臍帯血の公開保存数は、同日現在で、一万四千四百三十五個である。
バンクにおいては、平成十八年六月に開催された厚生科学審議会疾病対策部会造血幹細胞移植委員会において、臍帯血の公開保存数について、有核細胞数十億個以上の臍帯血を二万個以上とすることを目標とし、当該目標の達成に向けて取り組むこととされたことを踏まえ、バンクにおいては、平成十九年度から、まずは、有核細胞数が八億個以上である臍帯血を公開保存の対象とし、その収集に努めているところである。厚生労働省としては、当該目標の達成に向け、バンクに対する必要な支援を講じてまいりたい。
四について
お尋ねの全国十一のバンクが提携している医療機関の数は、北海道臍帯血バンクが七施設、宮城さい帯血バンクが八施設、東京臍帯血バンクが十三施設、東京都赤十字血液センター臍帯血バンクが十一施設、神奈川臍帯血バンクが七施設、東海大学さい帯血バンクが十一施設、東海臍帯血バンクが六施設、京阪さい帯血バンクが十二施設、兵庫さい帯血バンクが十六施設、中国四国臍帯血バンクが七施設、福岡県赤十字血液センターさい帯血バンクが十施設である。
これまでの各バンクの状況をみると、必ずしも提携医療機関の数が多いバンクにおける臍帯血の公開保存数が多いわけではなく、提携医療機関の数を増やすことよりも、むしろ、既に提携している医療機関との連携を緊密にすることにより、三についてで述べた目標の達成に向け、より効率的に公開保存の対象となる臍帯血を確保するよう努めることが重要であると考えている。
五について
厚生労働省においては、各バンクから提出された平成二十一年度事業実績報告書により、その事業収支の状況を把握しているが、それによると、九つのバンクにおいて同年度の事業収支が赤字となっている。厚生労働省としては、全国のバンクにより構成される日本さい帯血バンクネットワークにおいて、各バンクが業務効率を高め運営の安定を図るための方策について検討を行っていると承知しているが、収集する臍帯血の数の増加に伴う費用の増大も、バンクの事業収支が赤字となっている要因の一つであると認識しており、平成二十三年度予算の概算要求において、バンクが行う臍帯血の収集に対する国庫補助の増額を要求しているところである。
六について
診療報酬改定における個々の医療技術の評価及び再評価については、一般に、日本医学会分科会等からの提案を受け、中央社会保険医療協議会における議論を踏まえ、これを行うこととなるものである。お尋ねの骨髄移植、末梢血幹細胞移植及び臍帯血移植についても、同様の手続によって、適切な再評価を行ってまいりたいと考えるが、平成二十二年度の診療報酬改定においては、日本医学会分科会等から、臍帯血移植の再評価についての提案を受けていなかったことから、これを行わなかったものである。
七について
診療報酬上の評価は、薬事法(昭和三十五年法律第百四十五号)上の医薬品等について行うものであるが、臍帯血本体は、これに該当しないことから、診療報酬における評価を行うことはできないが、現状では、各バンクとも安定的な経営を行うことが困難であることから、引き続き、国庫補助金による支援を行ってまいりたい。
八について
造血幹細胞の採取、保存及び管理を含め、各医療機関においては、日本さい帯血バンクネットワークが策定したガイドライン等に基づき、造血幹細胞移植が適切に実施されているものと認識しており、お尋ねのような法律の制定が必要であるとは考えていない。