今日(6月9日)の読売新聞に、新内閣で国家戦略相に就任した荒井聰・衆院議員の政治団体が、2002年11月から約7年間、事務所の実態がない知人宅を「主たる事務所」として届け、政治資金収支報告書に約4,222万円の事務所経費を計上していた、との報道がありました。
これは、2007年、安倍政権で相次いだ、松岡利勝元農相や赤城徳彦元農相の事務所費問題とまったく同じ問題です。実態のない事務所である以上、収支報告書への虚偽記載の疑いは拭えません。荒井国家戦略相は、事務所経費の使途を説明する責任がありますし、菅首相の任命責任も当然、問われる問題です。
菅首相(当時は野党)は、07年7月29日の衆院本会議で、事務所費問題について次のように発言しています。「安倍総理(当時)が任命した閣僚数名に不透明な事務所費が指摘されてきました。何の問題もないのであれば、堂々と国民に説明すべきです。しかし、閣僚は、法に沿って適正に処理していると判で押したような答弁を繰り返し、安倍総理自身もそれをかばい続けてきたじゃありませんか。実態解明に指導力を発揮することもなく、ひたすら不都合な事実を隠蔽し、言い逃れしようとする安倍総理の姿勢に、国民が強い疑念と不信感を抱いているのは当然のことじゃないですか」。
このように、「国民の政治への信頼を取り戻せ」と言っていた菅首相ですから、当然、納得のいく説明をされるのだと思います。一見するとこの人の弁舌は歯切れがよく、国民受けもするのですが、言ってることとやってることが矛盾していることが多い。特に、他人を批判したことが、全部、自分に帰ってくるところがあり、「ブーメランの菅」と言われていました。年金保険料未納問題では、「未納3兄弟」と政権批判した後で、自身の未納が発覚して、民主党代表を辞任したのが典型的なパターンです。
2009年2月27日の衆院予算委員会でも、「二大政党になったときには、一方の政党が行き詰まったら、いや、行き詰っていないと言うんだったらまさに解散すればいいんですよ。行き詰ったならば、いったん下野して、例えば麻生総理が総辞職をした後、皆さんが白票を出せばいいんですよ、次の首班指名で。そうすれば野党の党首が決選投票の部分で過半数をとりますから、それによって、下野することによって野党に政権を渡して、(選挙管理内閣が解散して)次の政権選択を国民に任せる。これが本当の意味での二大政党下における、政権が行き詰ったときのやるべき行動だと思いますが」と発言しています。
鳩山前首相が完全に行き詰ったとき、果たして、菅首相は、鳩山首相に上記の考えを伝え、説得したのでしょうか。そうしなかったから、菅さんは首相になっているのですが、「鳩山内閣が短命に終わってしまったことは私も大きな責任を感じる」と本気で思うのなら、政権を渡し、一旦、下野するのが憲政の常道です。野党時代の発言でも、政治家の言葉は重い。それを、その場その場で、くるくる変えるから、国民の政治不信はどんどん募っていくのです。
菅首相は、自分の言葉に責任を持ち、言ったことは必ずやる、という姿勢を見せてもらいたい。まずは、今回の事務所費問題について、国民にわかりやすく説明することです。
(谷あい正明)
まずは事務所費問題の説明責任を果たすべき!