特定港湾内で、カキ養殖のためのいかだを移動する際、特定港長に運行許可申請を提出しなければなりませんが、それがこの夏から簡素化されることになりました。
ことの発端は、今年の4月19日広島市の似島漁協を訪れた際(4月19日付ブログ参照)に要望を受けたことにはじまります。
似島漁協は特定港である広島港湾内でカキ養殖をしていますが、台風などの自然条件の変化の前にいかだを避難させたり、養殖に適した海域を求めていかだを移動させたりすることが、頻繁にあります。
そのつど、いかだ運行許可申請を広島港長宛に提出しなければなりません。
なぜなら、港則法で「特定港内において竹木材を船舶から水上におろそうとする者および特定港内においていかだを係留し、又は運行しようとする者は、港長の許可を受けなければならない」と規定されているからです。
特定港とは、吃水の深い船舶が出入できる港又は外国船舶が常時出入する港のことですが、全国に約90港あり、岡山県では水島港と宇野港が指定されています。
港内交通の安全確保のために必要なルールなのかも知れませんが、問題は、漁師が申請書(私も拝見しましたが、極々、簡単なものです)を直接持参しなければならないことでした。離島に住む方はわざわざ港湾事務所に行く必要があったのです。交通費もバカになりません。しかも、受付の担当官がその場で受け取るだけ。
申請内容よりも申請を出すことだけが求められている状態でした。こうしたことが長年続いておりました。
平成19年度、いかだ係留・運行の許可件数は、全国で約5600件、うち広島港内が4200件でした。4200件のほとんどが、カキ養殖のためのいかだ運行許可と推測されます。
5月27日、参院農林水産委員会で、こうした問題点をとりあげ、許可申請の簡素化を求めました。所管の国土交通省の海上保安庁から前向きな答弁をもらいました。
そして7月、港則法の運用改善が図られることになり、これからは、運行許可申請書は郵送でも受け付け可能となり、さらに数日単位だった許可期間も1か月ほど延長されることになりました。これにより港内交通の安全が妨げられることもありません。
漁師の方には大変喜んでいただいております。国の法律で決まっているので、現地で簡素化を要望しても埒があかなかったとのことでした。
古い制度がそのまま残されていることがあります。いつの間にか時代遅れになっていたり、ムダになっていたり。問題を指摘しても、行政の担当者は数年で異動してしまいます。あるいは規則で決まっている理由で、従前のやり方を踏襲することがほとんどではないでしょうか。
国民目線で、ムダな制度や仕組みを徹底的に総点検していかなければなりません。国の仕事なのか、地方に移譲した方がよいのかの事業仕分けも必要。それには現場を歩かなければ、問題点が見つからない。
新内閣は、そういう国民目線を持って、徹底的にムダを省いていくべきです。
(谷あい)
国民目線で徹底的にムダな仕組みを改めよ - カキいかだ運行許可申請をめぐり