岡山の県北にあります旧勝山町(現真庭市)の酒蔵を見学しました。「御前酒(ゴゼンシュ)」の蔵元で知られる辻本店の酒蔵は、1804年創業当時のままで残っています。モノクロの写 真がそれです。のれんをくぐると、蔵担当の辻麻衣子さんが迎えてくれました。私より若い女性が酒造の全工程を取り仕切っていることにまずビックリ。酒米と水からどうやってお酒を造るか一から教えていただきました。写 真は、発酵を終えたもろみを酒と酒粕(さけかす)に分ける圧搾機の前のものです。蔵の中は各種機械化されていますが、冬の間などはやはり人手に頼らないといけないそうです。
古いだけのものかというとそうではありません。隣接したところには蔵をイメージした「西蔵」というレストランがあります。御前酒を使った銀鱈の粕漬けは絶品。ほんとうに酔ってしまいそう。そのレストランでは数ヶ月に1回コンサートが開かれ、ケイコ・リーさんなど日本のジャズシーンを代表するミュージシャンが来演しています。是非、お時間があれば立ち寄っていただきたいところです。日本酒文化を大切にまもり、そしてその伝統に新しい若い感性を融合させる試み、一見の価値ありです。
詳しくは辻本店のHPをご覧ください。
http://www.gozenshu.co.jp/
http://www.nishikura.co.jp/
ところで、日本酒の消費量は、焼酎やビールにおされています。辻さん曰く、酒より酒粕の方が売れると。しかし、東京ではワンカップの日本酒を置くバーが女性の間で静かなブームだそうです。日本酒も付加価値をつける時代です。伝統と若い感性が融合されれば、かならずや日本酒の価値が見直されるに違いないと確信しました。岡山に進取の気性に富む試みをする同世代がいることを知り、大変にうれしくなりました。また、毎年この時期になりますと、政治的には税制改正要望で、酒税の見直しの議論がなされますが、税率という数字を議論するまえに、酒造・日本酒文化の深さを一から学べたことも、大変に有意義でした。国酒である日本酒を応援していこうと思いました。
少なくとも日本で開催される国際会議などのレセプションでは、「日本酒で乾杯!」といきたいところです。
(谷あい)
【エッセー】日本酒で乾杯!