<現地調査、首相への報告>
12月31日に日本を出発し、1月1日に津波被災地のタイのプーケット島およびカオラックに行ってまいりました。
まるで焼け野原のように何もかもが失われた光景に言葉も出ない。家族を亡くした少年にかける言葉がみつからない。寺院には、ビニールシートでくるまれた遺体が山済みになっている。ただよう異臭。犠牲となった人間の悲しみや叫びといったものが、感じられてならない。―― 被災地を訪れての第一印象です。
帰国後の1月5日、小泉首相に現地調査報告をしました。首相が6日のインドネシアの国際会議に出発する前に、党調査団として報告できたことは非常に意義のあることでした。個人的にははじめて首相と握手をし、近くで話をしてきました。席上、首相は、1月18日から神戸市で開催される国連防災世界会議に触れ、日本がイニシアティブをとっていくと言われました。阪神淡路大震災から10年。日本の経験と技術を世界に発信する絶好の機会だと私も思います。また、私はこれまで広島、神戸、岡山で津波被災者に対する緊急街頭募金をおこなってきましたが、今回の災害に対する国民の関心の高さというものを感じました。日本の経験と技術に加え、相互扶助の思いやりが、アジア諸国に広がることを信じています。
<現地に必要な支援>
今回、公明党として政府に要望した事項は以下の通りです。
○行方不明者の数の掌握及びその早期の安否確認を実施できる体制を拡充・強化すること。そのために国際緊急援助隊(特に法医学等の医療専門家)等の増派を検討すること。
○被災者家族の心のケアのために、早急に専門家の対応を検討すること、並びに現地プーケット日本人会への経済的支援をすること。
○被災地における感染症等の二次災害が拡大せぬよう衛生・医療面の支援体制を取ること。また、災害廃棄物の適正処理等についても関係国に積極的に協力すること。
○わが国の高い技術力と経験を生かし、インド洋沿岸諸国における津波の早期警報システムの確立のために支援国会議等においてイニシアティブを取ること。
○本件被災国に対する支援は良好な両国関係を一層発展させるためにも、約5億ドルの資金援助は被災国の一日も早い復旧・復興に資するようきめ細かく実施すること。
これらは邦人の犠牲者がもっとも多かったタイに関しての要望です。その他の地域では、必要な支援が違います。スリランカの東部は感染症の予防対策、インドネシアのアチェは、水や食糧などの緊急支援、島嶼地域は被害の実態把握と水や食糧などの緊急支援、アフリカのソマリアは実態把握、といったようにそれぞれ優先順位が異なります。
スリランカ東部やインドネシアのアチェはもともと政府側がコントロールしていない地域であります。ソマリアにいたっては、いまだ無政府状態で、国際的な支援がより難しくなっているようです。スリランカ東部などでは、従来から現地で活動しているNGOの方が、政府側や反政府側からも警戒されずに、迅速に細やかに活動しやすい側面があります。ただし、被災の規模に追いつかないという側面もあります。日本政府による支援とともに、国際機関やNGOの支援と連携を密にとっていくことが、日本の顔の見える支援につながるはずです。
<今後の国際緊急援助について>
今回の災害で教訓となったと私が感じていることは、ロジスティック(輸送)の確保と幅広い専門家の参加です。広範囲にわたる大規模災害で、ヘリコプターなどの機動力が極めて重要でありましたが、ヘリを調達できるNGOはありませんし、日本政府の対応も、1月2日までヘリをタイに派遣できなかったのです(たまたまインド洋を通りかかった海上自衛隊のヘリコプターを除けば)。人、資金、物資だけでは、緊急救援、人道支援はできません。国際緊急援助活動については、ロジスティックの整備を今後早急にしないといけないでしょう。小島が多いうえに、幹線道路が寸断されているアチェではロジスティックの確保に支援団体は苦しんでいます。
もう1つは、国際緊急援助隊に、幅広い専門家の登録ならびに派遣が必要であるということです。今回の災害では、わが国の緊急援助隊やNGOによる支援は迅速だったと私は評価しています。しかし、医師、看護師だけでなく、今回の場合、法医学者、心理カウンセラーといったこれまでの災害ではクローズアップされなかったような専門家の派遣が現地(タイ)では要請されていました。遺体確認できる法医学者の派遣は、ドイツやオーストラリアなどの国に比べ、日本の動きは遅かったのではないかと思います。家族を失った少年に、無神経にカメラとマイクを向けたマスコミ。プーケットで活動していた日本人会・大使館の職員は、被災者家族を保護するためにまっさきにカウンセラーを派遣してくださいと訴えられました。こうした専門家をすぐに派遣できるように、日頃、国内外の災害対応に従事できる専門家を幅広くプールする必要があると思いました。これは政府の責任です。
そして、今後重要なのは、国際社会が支援すると表明した資金援助が、実際に供与されるかどうかです。日本が約束した5億ドルの支援は確実に実行されるという信用度が高いわけですが、国際社会の中には支援額を表明しながら、表明しただけで実際に供与が十分にされたのかどうか疑わしいケースも、過去の緊急支援、復興支援にはありました。また、資金が集まっても、治安や現地政府の対応により援助ができないということで、支援が本当に必要な人々に行き届かないということは、しばしばこの業界ではあることです。資金援助が、被災国の一日も早い復旧・復興に資するようきめ細かく実施されるように、私も力を尽くしていく所存です。
この度の災害では、どの政党よりも先駆けて現地入りしましたが、国会議員が迅速に海外で起きた災害現場に急行したことに対して、小泉首相やマスコミの方からも評価いただきました。これからも国内外問わず、一番困っている人のところに駆けつけるという信条のもと、現場第一主義を貫いてまいります。
<追記>
ただいま、東京から岡山に向かう新幹線でキーボードを叩いています。小泉首相が同じ車内のすぐそばに座っています。先ほどインドネシアお疲れさまでした、と挨拶しました。首相からは、あぁこないだも会いましたねという感じで、握手を求められました。ここ3日間で2度も首相と握手するとは思いもよりませんでした。
(谷あい)
【エッセー】現地調査を終えて、私の感想