2024年01月26日 2面
石井啓一幹事長 世界を取り巻く課題は深刻さを増している。米中対立、ロシアのウクライナ侵略、加速する気候変動、貧困……。国際社会が結束し、持続可能な世界を未来に残すことができるか正念場だ。世界では今年、約50カ国・地域で大統領選や国政選挙があるといわれ、その有権者の数は約30億人、世界人口の約4割を占める。既に13日に投票が行われた台湾総統選はじめ、2月のインドネシア大統領選、3月のロシア大統領選、11月の米大統領選など、国際的な方向性にも大きな影響をもたらす重要選挙が相次ぐ。
高木陽介政務調査会長 国際社会の複雑化する分断状況に加え、「気候変動問題や感染症対策など地球規模の課題の解決も、先進国と途上国がどう責任を分担して協力するか、対話をもっと重ねる必要がある」(1日付「日経」)との指摘もある。世界は、今や国際協調を進め一体性を取り戻す方向にカジを切る時を迎えている。
北側一雄副代表 その意味で昨年11月に1年ぶりに行われた米中、日中首脳会談は、対話を通じた信頼醸成を深める希望の光明となった。国際協調には、首脳間の対話はもちろん、重層的な交流を積み重ねることが重要だ。連立与党の一角として公明党が政党外交を積極的に展開し、政府間の外交を支える意義は極めて大きい。
山口那津男代表 公明党は、この1年で韓国やASEAN(東南アジア諸国連合)諸国、中国を訪問して要人らと会談を重ね、関係発展へ役割を果たした。4年ぶりとなった昨年11月の訪中も、自民、公明両党と中国共産党による「日中与党交流協議会」の再開で一致した。宮本雄二元駐中国大使が「日中間の対話が極端に少なくなっている現在、公明党が訪中した意義は大きい」(月刊「公明」1月号)と評価している通り、大きな成果を残すことができた。
■核禁条約参加へ環境整備進める
石井 ロシアは、国連安全保障理事会の常任理事国でありながら、核による威嚇も辞さない姿勢を崩さない。これまで国際社会が進めてきた核軍縮の取り組みを後退させてはならない。
谷合正明参院幹事長 昨年5月、日本が議長国として被爆地・広島で開いたG7サミット(先進7カ国首脳会議)では、核保有国を含むG7首脳が平和記念資料館を訪問して被爆の実相を共有し、「核の非人道性」を確認するなど画期的な会合となった。「核なき世界」への機運の高まりを具体的な行動に結び付けたい。唯一の戦争被爆国である日本には、核保有国と非保有国の橋渡し役を担い、核軍縮をリードする責務がある。
山口 核廃絶に向けて、めざすべきは、核兵器の開発から保有、威嚇、使用まで全てを禁止する核兵器禁止条約への参加だ。現在、締約国は70カ国・地域に達しているが、核保有国や米国の核抑止力に依存する日本は参加していない。核禁条約は、核廃絶の国際規範を確立するものであり、将来的に日本や核保有国も参加すべきだ。
谷合 その第一歩として、日本の核禁条約締約国会議へのオブザーバー参加を強く求めたい。政府は、昨年11~12月に米国で開かれた締約国会議への参加を見送ったが、私は与党の一員として国会議員会合に出席し、演説で、条約参加へ環境整備を進めると訴えた。78年間に及ぶ核兵器不使用の記録を永遠に維持すべく、国際的な議論にも貢献していきたい。
竹谷とし子女性委員長 もう一つの危機である気候変動も深刻です。国連の世界気象機関(WMO)は12日、2023年の世界の平均気温が観測史上最も高かったと発表しました。グテレス国連事務総長は声明で「人類の行動が地球を焼き焦がしている」と警告しています。
石井 温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」は、産業革命前からの気温上昇を1・5度に抑えるのが目標だ。気温上昇が1・5度を超えると自然災害のリスクが格段に高まるだけに、各国とも対策を一層強化する必要がある。
高木 前向きな動きが出ていることにも注目したい。昨年11~12月の国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)では、気候変動の悪影響を受ける途上国の「損失と被害(ロス&ダメージ)」を救済する基金の運用開始で合意した。こうした合意を積み重ねていくことが先進国と途上国の信頼醸成につながる。公明党も途上国支援など政府の取り組みを強く後押ししたい。
■SDGs指針改定、公明の提言が反映
谷合 15年の国連サミットで採択されたSDGs(持続可能な開発目標)の達成期限の30年まで折り返しを過ぎた。政府が昨年末に改定した「実施指針」には、子ども施策の抜本強化や女性活躍など公明党の提言が随所に反映され、取り組みを加速させる重要性を再確認した。
山口 公明党は党綱領に、地球規模の課題に取り組むには「『地球民族主義』という人類共同体意識が欠かせない」と明記している。一国のみの利益に固執するのではなく、「地球益」「人類益」を優先して考え、行動する「平和の党」「環境の党」としての使命を改めて自覚しなければならない。「生命の尊厳」「人間の尊厳」に基づく社会を築いていきたい。