谷合正明参院議員が国会質問などで提唱し実施された復興支援員制度についてこのほど公明新聞で特集されました。以下、公明新聞記事を転載します。
(岡山事務所)
ノリ漁師と打ち合わせをする(右端から)四倉さんと福原さん=宮城・東松島市宮戸
被災者と行政の「つなぎ役」
宮城・東松島市の先進的な取り組み(復興まちづくり推進員)から
東日本大震災で被害を受けた地域コミュニティーの再生へ向けて、総務省は行政と被災者の合意形成を後押しする「復興支援員」をモデル事業として4月から実施することを決めた。復興支援員は、被災者のニーズ(需要)と行政サービスを結び付ける「つなぎ役」として期待されている。そこで、総務省の決定に先立ち、宮城県が同じような役割として昨年8月に導入した「復興まちづくり推進員」の取り組みをリポートする。
「共に復興めざす仲間」
長期支援で信頼関係を構築
「一口株主って、興味ある人いるのかな?」「そういう形で支援したいと思っている人は多いですよ」。2月下旬、宮城県東松島市宮戸地区の仮設住宅の一室では、事業再生へ向けたノリ漁師と復興まちづくり推進員が膝詰めで議論していた。皆、表情は真剣だが、時折見せる笑顔に両者の信頼関係が垣間見える。
宮戸地区に配置された推進員は2人で、仮設住宅入居者の要望を探るほか、漁師たちが事業再生できるようホームページ(http://gekkoh7.jp/)やチラシの作成などを手伝う。
推進員の一人である福原佳代子さんは、昨年3月まで青年海外協力隊員としてケニアに赴任していた。帰国後、断続的にボランティア活動を行っていたが、「長期継続的な支援が必要」と感じ、推進員として3年間、同市で活動すると決め、移り住んだ。福原さんは「できる限り長期間、住民と行政が協働して復興できるよう、その橋渡し役になっていきたい」と意気込みを語っている。
また、石巻市在住の被災者でもある推進員の四倉禎一朗さんも「被災者が自主性を持って復興に取り組む必要性を感じている。その一翼を担いたい」と語る。
推進員にとって、最初に立ちはだかる壁が、被災者との信頼関係の構築だ。「ボランティアはありがたいけど、すぐに帰ってしまう人が多いので心を開きにくい」(同市の仮設住宅入居者)という声は少なくない。しかし、福原さんと四倉さんら推進員は、地道に被災者と関わって人間関係を築く中で、被災者の本音を聞き出せるようになった。その結果、震災後、手付かずだった砂浜の清掃などが実現へ向けて動き出すなどの成果を挙げつつある。
宮戸地区のノリ生産グループの代表者である山内良裕さんは、笑みを浮かべながら推進員の活躍ぶりを語る。「正直、初めは戸惑ったよ。でも、食事の時にさりげなく漏らした悩みについて、数日後には対策案を持ってきてくれたんだ。とにかく対応が早い。今となっては、推進員の皆さんのことを“仲間”だと勝手に思っているよ」
「住民の合意形成に期待」
行政が拾えない声をキャッチ
同市の推進員は、国際協力機構(JICA)東北と宮城大学の協力を得て配置されている。福原さんら宮戸地区の推進員は、JICA東北によって派遣されている。一方、宮城大学は4人の推進員を採用し、同市大曲地区で、仮設住宅入居者の集会参加を通して、入居者の要望を行政につなげている。
大曲地区にある仮設住宅の自治会代表・小野竹一さんは「住民が自治会に話しにくいことを推進員がサポートしてくれるのでありがたい」と語る。
一方、行政側も推進員の活動に期待を寄せる。大曲市民センターの関係者は「行政の範囲では拾い切れない住民の要望を受け止め、その内容を共有してくれるので、非常に助かる」と強調する。
宮城大学地域連携センターの高田篤調査研究員は「行政の復興計画が進む中で、住民らをつなげる支援が足りない。今後、どこに家を建てるかなど、住民の合意形成に向けたプロセスが重要になってくる」と述べ、推進員の役割の重要性に期待を寄せる。
しかし、課題も残る。宮城大学の推進員は、緊急雇用創出事業で雇用されているため、今年3月で打ち切られてしまう。このため、「継続性のある仕組みにする必要がある」との声が上がっている。
県は2012年度から、必要とする自治体で「復興支援員」を新たに導入する方針だ。ただし、支援員には高いコミュニケーション能力などが求められるため、人選や研修制度を懸念する声があるのも実情だ。
中越地震でも大きな役割
「復興支援員」の導入を決めた総務省は、希望する自治体全てに配置し、12年度は岩手、宮城、福島の各県などで100人程度の配置を見込んでいる。
「復興支援員」は、県や市町村が民間から募集して採用し、活動経費のほか、1人当たり年200万円以内で報酬も支払われる。
こうした「復興支援員」と同じような仕組みは、04年の新潟県中越地震で被災した同県が07年から運用(地域復興支援員)し、住民の合意形成や行政との連携に大きな役割を果たしている。住民本位の復興を進めるため、「復興支援員」の今後の活躍が期待される。
公明が制度実施を推進
公明党は、青年海外協力隊の仕組みを活用した「青年復興協力隊(仮称)」の創設を提言するなど、かねてから「復興支援員」制度の実施を訴えていた。
昨年10月の国会質疑で、公明党の谷合正明青年委員長(参院議員)は、「ボランティアの方が1日、あるいは1週間単位で(被災地に)入っているが、2年間程度のまとまった期間での仕組みづくりをすべき」と主張。野田佳彦首相は「前向きに受け止める」と答え、今回の総務省の決定につながった。
(公明新聞:2012年3月8日付より転載)