本日2019年6月13日、公明党性的指向と性自認に関するプロジェクトチームとして「性的指向と性自認に関する政策推進」を官房長官に申し入れました。以下その要望内容を掲載します。
性的指向と性自認に関する政策推進の申し入れ
公明党性的指向と性自認に関するPT
座長 谷合正明
事務局長 岡本三成
今日、同性愛者や性同一性障害者など性的マイノリティーの抱える課題の解決は、誰一人取り残さない共生社会、多様性を認める社会を築いていく上で、大変重要な課題である。
自公連立政権では性的マイノリティーへの対応として、2016年以降、いわゆる骨太方針に「性的指向、性自認に関する正しい理解を促進するとともに、社会全体が多様性を受け入れる環境づくりを進める」と明記し、各省で取組を進めてきた。
地方自治体、民間企業・団体においても、性的指向や性自認に関する取組は着実に広がっている。
オリンピック・パラリンピック憲章には、「性的指向による差別の禁止」が明記されており、また大阪・関西万博は2030年のSDGs(持続可能な開発目標)の達成を見据えて開催される中、我が国の性的マイノリティーへの取組は国際的に注目されている。
公明党は、これまで性同一性障害者特例法の制定・改正、性同一性障害に係る児童生徒の実態調査、性別適合手術の保険適用の実現などをリードしてきた。地方議員や関係者と連携し、性的マイノリティーに関する啓発や自治体における「パートナーシップ制度」の導入など、取組をしてきた。また、昨年制定された東京都の条例には、柱として「多様な性の理解の推進」が盛り込まれ、その成立に公明党都議団が大きな役割を果たした。
しかし、性的マイノリティーの当事者たちが、職場や教育環境などにおいて、性的指向、性自認に関する理解の欠如に基づく偏見や不適切な取扱いを受ける事案が頻発しており、まだまだ社会の中で様々な困難に直面しているケースは多く存在している。周囲に打ち明けにくいため当事者の声が潜在化する問題、本人の了承なくその人の性的指向や性自認について暴露するアウティングによる人権上の課題などもあり、対策は当事者の立場に立って、丁寧に行う必要がある。
同性婚について、政府は慎重な検討を要するとの立場であるが、PTでは、現に家族同様に暮らす同性カップルの関係性が法律上の家族としての保障を受けられず、困難に陥っている声を数多く聞いている。最近では同性婚をめぐる訴訟が提起されており、国民的議論を深めていく必要がある。
公明党はこれらの課題に誠実に取り組み、性的マイノリティーの方々に対する不当な差別や偏見に対峙し、誰一人取り残さない共生社会、多様性を認める社会の実現のために、以下の政府の積極的な取組を要請するものである。
<性的指向・性自認全般に関して>
・ 「性的指向と性自認の多様性に関する理解増進法(仮称)」が与党で検討されているところであるが、政府としても法整備を待たずしてできる施策を推進していくこと。
・ 性的指向と性自認の課題は、複数の省庁にまたがる課題であり、政府内に総合的な政策調整、推進を図る部署を設けること。
・ 初等中等教育機関、大学など高等教育機関において、きめ細やかな対応を実施することができるよう徹底していくこと。
・ 性的マイノリティーに関する啓発を充実させること。その際、性的指向と性自認の違いに留意すること。
・ 適切な相談対応体制を充実させ、特に都市と地方の偏在の解消に努めること。
・ 人権侵害の疑いのある事案への迅速な救済ができるよう体制整備を図ること。
・ 自殺総合対策大綱に基づき、自殺念慮の割合が高いとされる性的マイノリティーへの支援を充実させること。
・ 成立した女性活躍推進法等に関し、性的指向や性自認に関する侮辱的な言動などがパワハラに含まれ得ることを示す指針を策定するなどして、民間企業への周知を図り、就職活動や職場でのハラスメント対策を促進すること。
・ 民間企業におけるきめ細やかな対応の実施など、好事例を把握し、普及推進していくこと。
・ 医療・福祉・介護・子育て・教育等に携わる者に対して、性的指向と性自認に関する研修を受ける機会を確保していくこと。
<同性パートナーに関して>
・ パートナーシップ制度の拡充など自治体における取組の実態を把握し、適切な支援をしていくこと。
・ 同性カップルが直面する住居、医療等の場面での困難の解消を図ること。
・ 日本人の同性配偶者への在留許可に関し、在留特別許可の付与など配慮措置を講ずること。
<性同一性障害に関して>
・ 性同一性障害者特例法の見直し、特に子なし要件の削除を図ること。手術要件に関しては、国民的合意を得ることを前提に、その要件の削除についての検討に着手すること。
・ 「性同一性障害」については、WHOの「疾病及び関連保健問題の国際統計分類(ICD-11)」で「性別不合(仮訳)」とされていることから、その名称の変更について、関係者の声を踏まえて検討すること。
・ 性別適合手術の保険適用が実現された一方、自由診療のホルモン療法を先に受けていると混合診療とされ、手術にも保険が適用されない現状がある。早期に、ホルモン療法にも保険適用をすること。
・ 性別の記載が必ずしも必要ではない行政文書における性別の項目を削除すること。
・ 性同一性障害者特例法による性別の取扱いの変更の審判を受けた場合に、戸籍の身分事項に記載される「平成15年法律第111号3条による裁判発効日(確定日)」の文言を記載しないようにすること。