○谷合正明君 公明党の谷合正明です。
まず、持続可能な開発目標、SDGsについて伺います。
SDGsは、二〇三〇年までに誰一人取り残さない持続可能な社会の実現を目指し、二〇一五年九月に国連サミットで採択された国際目標であります。貧困や飢餓の根絶、環境対策、平等の実現など十七項目から成る分野を、これは先進国自身が国内の政策として取り組むこととなりました。この国内対策が入ったことが、従来、途上国を対象としたミレニアム開発目標、MDGsとの大きな違いでもあります。
SDGsにおきましては、我が国は貧困問題などの達成度合いが低いと指摘されてまいりました。そこで、公明党といたしましても、子供の貧困対策の強化ですとか地方自治体との政策の連携、学習指導要領の中にSDGsを取り入れることなどを昨年末に提言をいたしました。こうした提言が盛り込まれるような形で、昨年十二月に、政府のSDGs推進本部において我が国の実施指針が取りまとめられたところでございます。今年から毎年、各国は国連に自国のこの進捗状況を報告する必要が出てまいります。政府の指針におきましても、関係府省庁において各種計画や戦略、方針の策定、改訂に当たっては、SDGs達成に向けた観点を取り入れるということが明記されております。
国が今進めております一億総活躍社会の実現と、国際社会が今取り組んでいるこの持続可能な開発目標の達成、これは私は、非常にこの基本理念は同じであって、政策目標も類似のものが多いと思っております。とりわけ、貧困対策など厚労省が所管する事項でもありまして、厚労省の積極的な関与なくして、貢献なくしてこのSDGsの達成はあり得ないというふうに思っております。
しかし、従来から、こうした分野は国内政策においては厚生労働行政でやってきているので、余りこれまでの国際機関で話題になっていたSDGsとかMDGsのところになかなか厚労省の関心というのが向いていないのではないかなというふうに私はちょっと危惧をしておりまして、今回、大臣所信の中ではこのSDGsについては言及はなかったんですけれども、極めて重要な国際目標でございますので、改めてこの所信に対する質疑の中で、大臣のSDGsに対する所信、決意を述べていただきたいと思っております。
○国務大臣(塩崎恭久君) まず第一に、今回、SDGsということで持続可能な開発目標を作るに当たって、積極的に我が国としても関与をするということでいろいろな発言をしてまいりました。
厚生労働省からは、これは目標の三というところで、保健の分野でユニバーサル・ヘルス・カバレッジというのが三の八というところで入っておりますが、これは日本から強く要請をしたところであります。これは、国内ではやはり高齢化先進国の我が国がどういうふうにこれを乗り越えるのかということを自らしっかりとやっていくということが、恐らくこれはまた国際的にも貢献をできるようなことにもなるということで、今回、今年の七月にASEANの保健大臣を日本にお呼びをして、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジと高齢化についてのASEANプラスジャパンというのを初めて私の提唱でやることにしておりますが、そのためには我が国自身がしっかりやっていないと駄目だということだろうと思います。
昨年十二月に政府のSDGs推進本部において持続可能な開発目標実施指針が決定をされましたけれども、そこにおいても保健それから雇用などの分野の施策が盛り込まれておりまして、SDGsの達成に向けて厚生労働省の果たす役割、まさに雇用の面は働き方改革で今もう最大のチャレンジだということでやらせていただいているわけでございます。
去年、私、九月に国連に参りまして、SDGsの担当でありますデビッド・ナバロ特別顧問、今WHOの事務局長を目指して残った三人の候補者になっておりますが、国際的な健康危機への対応などについて意見交換を行った際にも、彼から日本のSDGsの推進体制を高く評価をしていただきました。世界全体での達成に向けて、そしてまた我が国が先陣を切って自らこの哲学を自らの国の国内の政策としてもしっかりと成就をさせていくということに私どもしっかり対応していかなければならないというふうに思っております。
そういうことで、国内外のSDGsの達成に厚労省としてもしっかり貢献をしてまいりたいと思います。
○谷合正明君 しっかり大臣には旗振り役を務めていただきたいと思っております。
そこで、SDGsを達成するためには、国の資金だけではこれは到底この目標を到達できません。民間の資金調達も鍵となっております。民間資金の一層の調達を図るためには、その資金による社会課題の取組がどのような成果を生み出せたかを説明する仕組みというものが必要となってまいります。
厚労省は、来年度の予算案に、民間の資金やノウハウを活用した地域の社会的課題への対応、ソーシャル・インパクト・ボンドと言ったりするんですけれども、その予算案を入れております。このモデル事業はいかなるもので、どの程度成果を期待しているのか、この点について確認したいと思います。
○副大臣(古屋範子君) 民間の活力や創意工夫を生かしました事業展開により地域の社会的な課題を解決する手法といたしまして、ソーシャル・インパクト・ボンド、SIBが国際的にも注目をされているところでございます。
SIBは、民間主体が社会的問題の解決に向けて、民間から拠出を受けて事業を行い、それにより得られた社会的利益の一部を配当として行政が支払う仕組みであり、従来の事業費ベースで積み上げたものを予算化して行う事業とは全くスタイルが異なるものであります。
一方で、このSIBの手法により事業を行うためには、定量的な成果指標や評価方法の設計が課題となるため、厚生労働省においては、平成二十九年度にSIBの仕組みを活用して社会的課題の解決を図るモデル事業を実施して、これらの課題の具体的な検証を行うことといたしております。
○谷合正明君 大臣がいらっしゃるのでせっかくですので言及しますけれども、民間の資金調達といいますと、休眠預金の法律が成立いたしまして、やはりこの休眠預金でも子供や若者支援、生活困窮者への支援に取り組む団体に対する支援ということが始まっていくわけでありますが、政府においては内閣府に推進室が設置されております。
ただ、法律の対象とする活動分野のほとんどはやはりこの厚生労働省行政に係るという部分もございますので、今のソーシャル・インパクト・ボンドの活用じゃありませんけれども、そうしたことも恐らく民間資金調達という観点で休眠預金にも非常に大いに今後その知見が生かされるんだと思いますので、官民挙げての取組を成功させるためにも厚労省に積極的に協力をいただきたいということを申し上げたいと思っております。
次に、国際保健について取り上げたいと思います。
SDGsは、先ほども話出ておりますけれども、国際保健、これも極めて重要な分野であります。厚労省といたしましても、今国会の中に医務技監を新設する法案を提出ということで、まさにこの国際保健に対応しようということなんですけれども、私自身、国際医療NGOで仕事をしてきた中で、やはり、現場でのフィールドの経験を持ちながら、かつ国際社会の中で政策的なアドボカシー能力があって交渉力がある、そんな人が必要だなというふうに思ってきたところであります。
しかしながら、我が国では、例えばNGOでフィールド経験を積んだ医師も多いんですけれども、国内に戻ったときになかなかキャリアを積み重ねることができなかったり、また逆に、キャリアになかなか支障があるのでそういう長期にわたってフィールド経験に出ることをためらったり、そういったこともあります。
語学力ももちろんですけれども、アドボカシーの両方ができる人が足りないという印象を受けておりまして、今、政府においてはそうした国際保健の人材を育成、登録する、そんな仕組みを今つくり上げていると承知しておりますけれども、改めて、私自身、この厚労省、医療業界に加えて国連、また国際NGOとも連携して、しっかり幅広く人材、SDGs達成のためにも、この国際保健の人材を育成していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○副大臣(古屋範子君) 国際保健人材の育成と、またそのネットワークの構築は、国際保健を戦略的に推進する上で非常に重要であります。
このために、平成二十七年から開催をしております国際保健に関する懇談会におきまして、国際保健政策人材に関するワーキンググループを設けまして、ここに国際機関関係者やNGOからも委員を迎えまして、人材育成のための連携の在り方などについて有益な意見をいただいております。
こうした議論を踏まえまして、人材育成の司令塔としてのグローバルヘルス人材戦略センターを来年度設置する予定でありまして、WHO等の国際機関などで活躍できる人材の育成を進めるとともに、国際保健政策人材が国内においても活躍できるよう、人材プールの構築等、情報共有を図ることで国内外の官僚体制の強化も進めてまいりたいと考えております。
関係省庁や国連、NGOとも連携し、人材面でも更にグローバルヘルスに貢献できるよう取り組んでまいりたいと思います。
○谷合正明君 しっかり取り組んでいただきたいと思います。
今日は質問をたくさん盛り込んでいるのでちょっと少々早口になっておりますけれども、お許しください。
それでは、次のテーマに移りたいと思います。
この三月は自殺対策強化月間でございます。我が国の自殺者数は一九九八年に急増いたしました。その後、長らく年間三万人を超える状況が続いておりましたけれども、二〇〇六年に自殺対策基本法が施行されて以降、自殺対策が全国に広がってまいりまして、二〇一〇年からはこの自殺の数が減少に転じています。昨年の自殺者数は速報値で二万一千七百六十四人と、自殺が最も多かった二〇〇三年の三万四千四百二十七人と比べて一万人以上減少しています。
私自身、この厚生労働委員会の超党派の先生方を中心とする自殺対策議連の中でこの問題に関わらせていただいておりますけれども、かつては個人の問題とされてきたこの自殺が社会の問題と認識されるようになって、民間や自治体と連携した政策も大きく前進してきております。
しかし、これで十分というわけではなくて、例えば先進主要七か国の自殺率と比較すると、我が国のやっぱり自殺率というのは高くて、例えば日本を除く先進国七か国の自殺率の平均を比較すると、本来、日本の自殺者数は、平均値では一万四千から一万五千人ぐらいになるのが主要先進国の指標になるんですけれども、ですから、つまり、今、日本の自殺はほかの六か国の平均よりもまだ一・五倍も多いような実態でございます。さらに、若年世代の自殺も深刻でありまして、十代後半、二十代、三十代における死因の第一位が自殺と、こうした状況にあるものも先進七か国では我が国だけでございます。
そこで、自殺総合対策会議の座長でもあります塩崎厚生労働大臣に伺いたいと思います。
まず、昨年、自殺対策基本法の施行から十年の節目に、この基本法の大改正を行いました。あわせて、昨年四月から自殺対策の所管が内閣府から厚生労働省に移りました。自殺対策を推進する上で最も重要なことは、関係者、関係機関による連携でございます。自殺対策が厚生労働省に移管される際に最も懸念されたことは、自殺対策がうつ対策に矮小化されてしまうのではないかということでもありました。もちろん、うつは自殺の大きな要因の一つでありますし、うつ対策は自殺対策の重要な柱の一つであることは間違いありません。しかし、自殺の背景には、貧困や過労、介護疲れや多重債務、パワハラやいじめ、虐待や孤立といった様々な要因が潜んでおりまして、自殺はそうした要因が平均四つ連鎖して起きているということも報告をされております。
そこで、まず大臣に、昨年四月に基本法が改正されてこの一年、自殺対策をどう評価するか確認させていただくとともに、今後どのような体制で、またどのように他機関と連携を図りながらこの自殺対策を総合的に進めていくのか、その点について伺いたいと思います。
○国務大臣(塩崎恭久君) 谷合委員には公明党で自殺問題に対して中心的な役割を担っていらっしゃるというふうにお聞きをしているわけでありまして、改めて今回、厚生労働省が昨年の四月から、内閣府からの総合調整の権限を含めて自殺問題について移管をされたわけでありますので、またいろいろ御協力をいただければというふうに思います。
移管後、私を本部長といたします自殺対策推進本部というのを直ちに立ち上げました。自殺対策に省を挙げて取り組むということを確認をするとともに、地域自殺対策強化交付金というのがありますが、これによって地域の自殺対策をしっかりと後押しをしてまいったところでございます。
また、自殺対策基本法に基づいて、私が会長を務めます自殺総合対策会議というのが設置をされておりまして、国家公安委員長、それから文部科学大臣など十名の関係閣僚と緊密な意見交換や連携を行える体制が構築をされているわけであります。
自殺者の数は、先ほど来お話が出ているように、数こそ平成二十三年の三万人台から二十八年は速報値で二万一千七百六十四人と減少傾向にはありますけれども、さっきお話があったとおり、まだまだ依然として諸外国から見ても深刻な状況、これが続いているという認識でいなければいけないというふうに思っております。
現在、政府の自殺対策の指針であります自殺対策大綱の見直しに向けた議論を行っておりまして、誰も自殺に追い込まれることのないようなそういう社会の実現に向けて、私自身も先頭に立って自殺対策に全力で取り組んでいかなければならないというふうに思っております。
○谷合正明君 現在、厚生労働省が推し進めています我が事・丸ごと地域共生社会施策、この施策と自殺対策との連動についても伺いたいと思います。この二つの施策は、向き合おうとしている課題も、また解決に必要な社会資源、さらには厚生労働省内の推進体制も相当重なるものがあると思っております。
この自殺対策と我が事・丸ごと地域共生社会施策との共通点をどのように認識されているのか、まず確認したいと思っております。
○政府参考人(定塚由美子君) 自殺対策と我が事・丸ごとの地域共生社会づくりですけれども、今委員からも御指摘がありましたとおり、両施策、共通する点、幾つもございます。
一つ目としては、困難を抱えた方に対して、市町村における包括的な支援体制の整備を図って対策を進めていくべきであること。また、二点目としては、支援に当たって、行政だけではなくて、地域の住民も参加をして地域づくりとして展開することが重要であることなどが共通していると考えております。
具体的には、自殺対策では、自殺の問題は一部の方だけの問題ではなくて、国民誰もが当事者、我が事となり得る課題であるという認識に基づいて、健康や経済、生活、人間関係、地域、職場、家族環境など様々な問題を包括的に解決をするというものでございます。また、自殺を防いで全ての人が生きがいや希望を持って暮らすことができるような地域づくり、環境整備を図るということも必要でございます。
一方で、我が事・丸ごとの取組におきましても、個人や世帯の抱える様々な課題を地域で我が事として受け止めて、多様な主体とともに丸ごと支えるという包括的支援体制を進めるということでございますので、両者共通した部分は多々ございますので、しっかりと連携をさせて進めていくことが重要と考えております。
○谷合正明君 共通点が極めて多いわけでありますが、いずれにしても、この自殺対策、我が事・丸ごとにしても、実際、現場はそれぞれの地域、また市町村になってまいります。厚生労働省内でこの両施策の連動のさせ方について枠組みをしっかりと整理して、地域の現場で具体的にどう両者を連動させるべきかのモデルを示していく必要があると思います。そうでないと、地域の現場においては、施策共通しているんだけれども、その施策がばらばらに動いてしまうということになりかねない。
現状で、実際に自殺対策、地域包括ケアシステム、生活困窮者自立支援事業、これありますけれども、これがどこまでしっかり有機的に連動されて地域の現場の中で行われているのか、こうしたこともしっかりと見ていく必要があると思います。特に、地域包括ケアとの連動については、特に自殺対策大綱の見直しに書き込む必要があるとも認識しております。
まず、この地域の現場でしっかりと共通している施策を連動して行っていくために厚生労働省としてどのように取り組むのか、その見解を伺いたいと思います。
○国務大臣(塩崎恭久君) 昨年の四月のこの基本法改正、これによりまして、法律の基本理念として、自殺対策というのは、保健、医療、福祉、教育、労働など関係施策と有機的な連携を図らなければならないということが追加をされておりまして、これらのうちで自殺対策と生活困窮者自立支援施策、この連携というものも大変大事でありまして、自殺対策の相談窓口で把握をした生活困窮者を自立相談支援の窓口にきちっとつなぐということ、あるいは自立相談支援の窓口で把握をした自殺の危険性の高い方に対しまして自殺対策の相談窓口と共同をして適切な支援を行うといったことなどについて、昨年七月、地方公共団体に周知をいたしました。
また、自殺対策と地域包括ケアシステム、この連携につきましては、この地域包括ケアシステムを深化をいたします地域共生社会づくり、先ほどの我が事・丸ごとでありますが、この施策は、制度のはざまにある方、あるいは自ら相談に行くことが難しいという方々などを地域において早期に発見をして確実に支援につなげていくということを目指すものでありますので、自殺対策につながるものだというふうに思っておりますので、この両者の連携、これもしっかりと図ってまいりたいと思っております。
現在、政府の自殺対策の指針であります自殺総合対策大綱の見直しに向けて有識者会議を重ねておりますけれども、そこにおける結論、あるいは改正自殺対策基本法の趣旨を踏まえて、先ほど来申し上げているとおり、自殺に追い込まれることがない、そういう社会をつくっていきたいというふうに思います。
○谷合正明君 そこで、自殺対策基本法を改正されて最大のポイントの一つは、都道府県だけでなくて市町村にも自殺対策計画の策定を義務付けたということになります。
そこで、政府が責任を持って都道府県や市町村の計画作りや自殺対策全般をバックアップしていかなければなりません。その際に重要な役割を担うのが、各都道府県及び政令市に設置されることになりました地域自殺対策推進センターでございます。
まず、この地域センターの設置状況は今どうなっているのかと、同時に、今後それぞれの地域において、先ほど言及させていただきました我が事・丸ごと地域共生社会施策と自殺対策とを連動して進めていくためにも、この地域センターの機能強化を図るべきではないかと考えております。この点について、厚生労働省の対応を確認させてください。
○政府参考人(定塚由美子君) ただいまお尋ねのありました地域自殺対策推進センターでございますけれども、現在、全国三十八か所に設置をされておりまして、平成二十九年度には全ての都道府県と政令指定都市において設置されるように推進をしているところでございます。
二十九年度の予算案におきましては、このセンターの設置、運営に必要な予算として二億円を確保しておりまして、これからも地域の実情に応じた実効性のある自殺対策が、各市町村において計画を立て、しっかりと展開されるようにということで、センターの設置推進をしてまいりたいと考えております。
また、このセンターの活動でございますけれども、先ほど御紹介もありましたとおり、市町村への適切な助言や情報提供、また地域のボランティアなどとの連携を通じたネットワークの強化などの取組を図るセンターでございます。一方、我が事・丸ごと地域共生社会づくりにおきましても、市町村単位で、あるいは市町村より狭い小中学校区域などの圏域で個人や世帯の抱える課題などへの包括的な支援を進めようとしているところでございまして、こうした我が事・丸ごと地域共生社会づくりの取組の中にも、自殺対策の考え方や自殺対策のことをよく知っている人を養成をして組み込んでいくということが重要であると考えております。
今後、地域自殺対策推進センターにおいて、こうした市町村レベルあるいはより狭いエリアの圏域での我が事・丸ごと地域共生社会づくりにおける自殺対策についても、助言をしたり人材育成をしたりということが進められるように施策を推進してまいりたいと考えております。
○谷合正明君 是非、この点は大変重要でございます、大臣にもリーダーシップをお願いしたいと思っております。
若者の自殺対策について伺います。
先日も、私自身、若者自殺対策全国ネットワークの皆様から対策の要望をいただきましたし、また公明党の長野県本部も、青年局のメンバー中心に、アンケート調査に基づいて政策提言も行っているところでございます。
まず冒頭、大臣に伺いますけれども、今年の夏に見直しされます自殺総合対策大綱の改定の際には、自殺を予防する当面の重要施策の一つに新たに若者自殺対策を強化する旨の項目を加えて、きっちり具体策も含めてですけれども、まず若者自殺対策を強化していただきたいと思っているんですね。まず、ここを大臣に端的に確認させていただきたいと思っております。
○国務大臣(塩崎恭久君) やはり若者は孤立しやすいわけでありますので、地域で若者が居場所がないということがないように居場所をつくっていくということ、あるいは、昨今はもうSNSが非常に広まっておりますから、そういうようなものを活用しながら若者に情報を届けて孤立をしないようにしていくということ、あるいは、相談に応じるような仕組みをつくることでこちらから言ってみればアプローチをして、アウトリーチをして接触をきちっと持てるようにしていくというようなことが大事だというような意見がこの有識者会議では出ておりまして、今お話がありましたように、また冒頭お話がありましたが、十五歳から三十九歳の年齢層では死因の第一位が自殺であります。二十歳未満の自殺者数はおおむね横ばいのままで推移をしているわけでありますから、引き続き非常に深刻な問題。これに対して、私どもとしては、この自殺総合対策大綱の見直しに、今御指摘のように、若者の自殺というものをしっかりと重要な柱として位置付けて対応していくということで、今の有識者会議でもそのような方向で議論をいただいていると理解をしておりますので、しっかりと対応してまいりたいというふうに思います。
○谷合正明君 そこで、具体的にSOSの出し方教育と、また居場所という言葉が出ましたけど、居場所づくりについて伺いたいと思います。
自殺対策の基本法の改正の中で、やはりこの教育ということですね、SOSの出し方教育に関する条文が盛り込まれたところでございます。
まず、実態といたしまして、こうしたSOSの出し方教育を行っている自治体、学校はどのくらいあるのか、また、今後こうした事業を全国で全ての子供たちに対して行うべきだと考えておりますけれども、そのための今後の施策について、文部科学省の方に確認したいと思っております。
○政府参考人(瀧本寛君) お答え申し上げます。
悩みや不安を抱えたときに支援を求める大切さを児童生徒に学校教育の中で教えることにつきましては、例えば中学校の保健体育科の中において、友達や周囲の大人などに話したり相談したりするなどいろいろの方法があり、自分に合った対処法を身に付けることが大切であることの理解を図っているなど、小学校、中学校、高等学校の教育活動の中で取り扱われているところでございます。
また、文部科学省が作成、配付しております健康問題について総合的に解説する啓発教材におきましては、悩みや不安の内容とその対処方法を記載しており、相談窓口の紹介とともに、一人で抱え込まずに先生や家族、心の専門家等に相談するよう促す内容となっております。
また、同じく文科省が作成をし、学校現場に周知をしております学校における自殺予防教育導入の手引におきましては、心の危機のサインを理解すること、あるいは地域の援助機関を知ることを含め、自分自身や友人の危機に気付き、信頼できる大人につなぐことの重要性を伝えることとなっております。
文部科学省におきましては、これらの自殺予防のための教育の実施状況について現在実態を調査しているところであり、調査結果を踏まえ、更なる取組の充実に向けて検討してまいります。
また、関係機関との連携を図ることにつきましても、この手引の中におきまして、児童生徒に向けた教育を実施する際に、外部講師の派遣等について、医療機関、保健所や精神保健福祉センター等の関係機関の協力を得ることを示し、取組を促しているところであります。
引き続き、厚生労働省とも連携を図りながら、教育委員会や学校の教職員を対象にした研修の実施、好事例の周知等を通じて、自殺予防の取組の推進をしっかりと努めてまいりたいと思います。
○谷合正明君 東京都の足立区では、地区担当の保健師が当該地域の小中学校に出向いて、自分を大切にしようという授業を行っております。この地区担当の保健師が行うことのメリットは極めて大きいということで、足立区では全ての公立小中学校でそうした教育を展開するというふうに承知をしております。
地区担当の保健師によるSOSの出し方教育を展開するとなりますと、当然、厚労省と文科省による連携が不可欠になってまいります。厚労省の対応を伺いたいと思います。
○政府参考人(定塚由美子君) SOSの出し方教育、大変重要と考えております。
既に一部の地方公共団体におかれましては、地域自殺対策強化交付金を活用してこのSOSの出し方教育に取り組まれておられるところで、今後も交付金により地域での取組を支援してまいりたいと考えております。
また同時に、私どもの方で、地方公共団体などが実施をした自殺対策の取組を、毎年度、地域における自殺対策取組事例集として取りまとめて公表するということとしております。過去の事例集の中では、このSOSの出し方教育、ちょうど御紹介いただきました足立区の事例なども取り上げているところでございまして、こうした好事例紹介も含めて、文科省と連携をして進めてまいりたいと考えております。
○谷合正明君 もう一つ、SOSの出し方教育とともに、大臣の方からも言及がありました居場所づくりでございますが、東京都の荒川区では、こうした居場所づくりについてはNPOが委託を受けて、なかなか公的機関にたどり着かない、結び付かない若者たちの支援を行っております。
この度の大綱見直しについても、こうした若者たちの居場所の必要性、重要性を盛り込んで、各自治体で交付金を活用した支援ができるようにしっかりと後押しをしていくべきだと思いますが、改めて、端的にお答えいただければと思います。
○政府参考人(定塚由美子君) 今御指摘がありました居場所づくりにつきましても、地方公共団体などが地域自殺対策強化交付金を活用して取り組めるということになっておりまして、実際に一部の団体では取り組まれているところでございます。
また同時に、我が事・丸ごとの地域づくりという点でも居場所づくり、重要でございまして、こうした施策とも関連付けながら取組を進めてまいりたいと考えております。
○谷合正明君 それでは、話題を変えますが、次に、性的指向と性自認に関して伺いたいと思います。
昨年取りまとめたニッポン一億総活躍の大綱には、性的指向や性自認に関する正しい理解を促進するとともに、社会全体が多様性を受け入れる環境づくりを進めると盛り込まれたところでございます。
まず、厚生労働省としてどのように取り組んできたのか、また今後どのように取り組んでいくのか、大臣に基本的な認識を伺いたいと思います。
○国務大臣(塩崎恭久君) この一億総活躍社会を実現するに当たりまして、今御指摘のあった性的指向、性自認に対する偏見とか差別とか、こういったものをなくして働きやすい職場環境を実現するということが大事だというふうに思っております。
このため、厚生労働省としても、性的指向や性自認にかかわらず公正な選考採用が行われるように事業主に対する啓発を行うとともに、ハローワークにおいても求職者からの相談に応じておるところでございます。
また、性的指向あるいは性自認に関する言動がセクハラとかパワハラの背景になり得ることを指針やパンフレットなどで明確化をいたしまして、性的指向、性自認に関する理解を進めるために事業主への啓発指導を行っているところでございまして、性的指向、性自認に関する職場の理解というものをしっかりと促進をしてまいりたいというふうに考えております。
○谷合正明君 今大臣の方から、働きやすい職場環境をつくっていくことということで、るる具体的な施策も含めて答弁をいただきました。
そこで、まず人事院規則なんですけれども、セクシュアルハラスメントの防止等運用通知が先頃改正されました。セクハラとは他の者を不快にさせる性的な言動と規定されておりますが、その性的な言動の定義に、この度、性的指向若しくは性自認に関する偏見に基づく言動ということが明示されたということであります。そこで、各省庁が実施する研修などの内容についても、性的指向及び性自認に関するものを含めるとされたところであります。
そこで、厚労省としてどのように対応していくのか、伺いたいと思います。
○政府参考人(宮川晃君) お答えいたします。
厚生労働省では、人事院規則の運用通知の改正に伴いまして、服務規律として訓令で定めておりますセクシュアル・ハラスメントの防止等に関する規程を昨年末に改正したところでございます。具体的には、性的指向や性自認をからかいやいじめの対象とすることはセクシュアルハラスメントになり得る言動となることを示したところでございます。
厚生労働省におきましては、今後、平成二十九年度の研修計画を立てることとしておりまして、性的指向、性自認に関しても、セクハラ、パワハラ、障害者差別と併せて研修を実施することとしております。特に労働局におきましては、平成二十九年度から新規採用職員全員に実施するほか、その他の職員についても必要に応じて研修を実施することとしているところでございます。
○谷合正明君 人事院規則は国家公務員向けのものであります。民間事業主向けのものが、本年一月に施行された、事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針、長いですけど、いわゆるセクハラ指針になります。人事院規則ではセクハラとされる、例えば性的指向や性自認に関するからかいというものは直ちに人事院規則ではセクハラに当たるんだけれども、しかし、この民間事業主向けのセクハラ指針ではここは該当しないというところに実は差異がありまして、私は今後の課題であるとも認識しております。
また、トランスジェンダーの方がカミングアウトを職場で強要される、されない、ここも、厳密に言うと、セクハラ指針の中で該当するかというと、そうではないということも厚労省の方から事前に伺ってはいるんですが、ただ、いずれにしても、現実に、例えば性同一性障害者の方は、当事者が性別移行を実施する際に社員などへの関係者へのカミングアウトを強要されることも多いですし、トイレや更衣室の扱いなどについても制限を課せられるなど、職場環境に困難を抱える状態に置かれることも多いわけであります。
日本精神神経学会が定めた性同一性障害に関する診断と治療のガイドラインでは、性別適合手術に進む前にリアル・ライフ・エクスペリエンスという性別変更後の性別で事前に一定期間を過ごすことを求めておりますけれども、しかし、会社や学校などの対応が進まなければ、なかなかこうした実体験は難しいわけでございます。現状では、性同一性障害、トランスジェンダーの方の当事者は、耐え忍ぶか、あるいは粘り強く企業と交渉するしかないということでございます。
まず、大臣の方から冒頭ありましたけれども、改めて、厚生労働省として、このような性同一性障害の当事者の方に対して企業はどのように対応をすべきなのか、改めて示していく必要があると思っておりますが、副大臣、どうぞよろしくお願いいたします。
○副大臣(橋本岳君) ただいまの御質問につきましてお答えをいたします。
まず、セクハラの指針についての議論です。
私も以前、自民党の特命委員会の事務局長をしておりましたので、当時、厚労省と大分やり取りをした覚えはありますが、厳密に申し上げれば、性的指向、性自認に関するからかい、いじめ等がセクハラに当たることもあり得るし、あり得ない場合もあるということでございますので、それはその個々の表現によってどうなのかということになります。したがいまして、そういう意味でまず御理解いただく。そのことが要するにセクハラではないと言い切ることはないので、そこはちょっと御理解をいただければ、誤解のないように御理解いただきたいと思います。
いずれにしましても、性的指向、性自認に対する偏見や差別をなくし、働きやすい職場環境を実現をするということは大変大事なことでございまして、そのために事業主等に性的指向又は性自認に関する正しい理解を持っていただくことがまず大事なんだろうというふうに考えております。
これは先ほど大臣からも答弁を申し上げましたが、厚生労働省では事業主向けの様々なパンフレットにこうした趣旨を盛り込んでおりまして、具体的には、公正な採用選考では事業主向けパンフレットでLGBT等の性的マイノリティーの方など特定の人を排除しないこと、あるいは、セクシュアルハラスメントについての事業主向けのパンフレットでは、性的指向又は性自認に関する言動はセクシュアルハラスメントの背景になり得ること、そして、パワーハラスメント対策導入マニュアルでは、性的指向や性自認についての不理解を背景としてパワーハラスメントにつながることがあり、職場における理解促進が重要であるということを記載し、事業主等に対して周知をしているところでございます。
やはりいじめ、からかいというのは、意図的にもちろん行われる場合はそれはやはりいいことではないわけでありますが、無理解によって、こちらとしてはそういう意図なく、でも相手の方に対しては大変傷つけてしまう結果につながるということもあるんだろうというふうに思っています。そういうことに対してやはりきちんとした御理解を社会全体で広めていく。もちろん、今は事業主に対してということでございますから、これも大事なことでありますけれども、そういうような思いを持って引き続き理解促進に取り組んでまいりたいと考えております。
○谷合正明君 私のちょっと表現が不足だったかもしれませんが、人事院規則とこのセクハラ指針との違いの中で、からかいなどが直ちに当たるか当たらないかというのは、セクハラ指針についてもそれはどちらにも当たり得ること、表現によってどちらも当たり得るということでございます。
特にこの点、カミングアウトの強要などがこのセクハラ指針に当たるか当たらないのかというのはちょっと通告から外したんですけれども、もし答えられるのであれば確認させていただきたいと思います。
○副大臣(橋本岳君) まさに文脈等々にもよるかとも思いますが、そのこと、だから、私は例えば男性ですけれども、男性を愛する人ですとか、そういうことを強要するということになるということだと思いますが、そのことそのものがセクハラに直ちに当たるとは言い切れないと思います。ただし、あとは文脈等、あるいはその中での話の流れ等によって当たり得る場合もあると思います。
○谷合正明君 なかなかちょっと一律に決めることができないということだと思うんですが、この点についてはしっかりとまた議論させていただきたいと思っております。
次に、ホルモン療法や手術療法の保険適用化でございます。
現状、性同一性障害の治療で精神療法は健康保険が適用されておりますけれども、ホルモン療法や手術療法は適用されておりません。健康保険適用はこの数年来、当事者団体や日本精神神経学会を始めとする医学学会からも健康保険適用が何度も要望されてきているところであります。特に厚生労働省からは美容整形との区別を明確にするようにという示唆があってから、学会では専門医の育成、認定や医療機関の認定などに取り組み、成果を上げてきております。
昨年の、二〇一六年の性同一性障害特例法による性別の取扱いの変更者数は最高裁の速報値で八百八十五名、累計で六千九百六名に達しております。これらの人々は、特例法の要件を満たすために皆、百万円以上の費用を掛けて手術を行っているとも聞いております。
まず、私自身、この問題に取り組んでおりますけれども、健康保険の適用を行うべきであると考えております。全てに適用するのが困難であるならば、専門医や認定医療機関での治療について健康保険を適用するという考えもあるかもしれません。この健康保険の適用化について厚生労働省の見解を伺いたいと思います。
○政府参考人(鈴木康裕君) 性同一性障害に対する手術療法等の保険適用についてお尋ねでございます。
御指摘のとおり、性同一性障害の治療のうちで、うつ症状、それから社会生活への非適合等の症状がある場合の精神療法は保険適用されておりますけれども、手術療法等の治療は、現在、保険適用をされておられません。
一般論としましては、新規の医療技術の保険適用につきましては、有効性、安全性が確立されていることを前提に、普及性や社会的妥当性も考慮して、中央社会保険医療協議会において議論した上で判断をしております。
御指摘の性同一性障害に対する手術等の保険適用の可否につきましては、今後、学会等からの御提案を受けまして、中医協においてしっかりと検討してまいりたいというふうに思います。
○谷合正明君 この委員会ではそういう答弁だと思います。
実際に、学会の調査によりますと、海外で手術を受けるという方が五割を超えるという結果もあるようでございまして、この費用的な問題だけじゃなくて、実際に海外の医療施設が安全で良質な治療を提供されているのかどうかということもやはりこの問題とも関連してくると思っております。改めて、引き続きこの健康保険の適用化を求めてまいりたいというふうに思っております。
それでは次に、いわゆる地方版政労使会議について伺いたいと思います。
一昨年八月に予算委員会の場で、長時間労働対策などを含めた働き方改革の課題について、各地域で地方公共団体、労使を交えて話し合う場の設置を提案いたしました。そこで総理から設置に向けた前向きな答弁をいただいたところであります。
一年目は、この会議、地方版政労使会議を各都道府県で立ち上げ、二年目は、例えば地方創生への展開も含めて、中身の充実を図りつつ会議を継続しました。そして、三年目ということになります。
今後も継続すべきと考えますし、さらに、これ、より実効性のある取組が求められてまいります。この点について大臣の見解を伺いたいと思います。
○国務大臣(塩崎恭久君) この地方版の政労使会議につきましては、平成二十七年に谷合議員を中心に公明党から御提言をいただいた、それを受けて労働局が都道府県あるいは各地域の労使団体等に呼びかけをいたしまして、全都道府県で設置をされて、現在も引き続き各地で会議が開催をされているところでございます。
その中で、二十の都道府県では、知事や労使のトップにも出席をいただいておりまして、よりハイレベルな議論を行っているということが進んでいるわけでございます。また、二十一の道府県におきましては、地域の実情に応じた働き方改革の取組を一体的に進めるために、地域の課題、そして今後の取組事項を共同宣言などの形で取りまとめをしているところも見られているわけでございます。
また、働き方改革を進めるためには、併せて地域企業の生産性向上を図っていくことが大事でありまして、現在、金融機関あるいは経済産業局の参画を進めて、連携を強化をさせていただいているところでございます。
今後とも、この各地域の取組状況をしっかりと把握をして、好事例などを横展開していくということとともに、地方創生推進交付金、この活用を推奨するなどによって、いわゆる地方版の政労使会議での議論が実効性のある対策に結び付くように取り組んでいかなければならないと思いますし、地方創生という意味では、政労使がしっかりと意見を交換しながら経済の活性化を図る中で結び付きを強めていくことは大変大事だというふうに思います。
○谷合正明君 大臣の見解をお伺いしまして、しっかり今後も継続させていただけるということでございます。しっかりやっていただきたいと思います。
以上、私の方から、SDGsについて、また自殺対策について、性的指向、性自認に関し、また地方版政労使会議について伺いました。時間がもう参りますので、私の方でこの質問を終わりたいと思います。ありがとうございます。