○谷合正明君 公明党の谷合正明です。
本日は、五人の参考人の皆様方におかれましては、限られた時間の中で端的なまた分かりやすい陳述をいただきまして、大変ありがとうございます。
私の方から、まず、実際現場で支援を行っていらっしゃる辻本参考人また田村参考人に、人材面だとか財政面の国の支援の在り方について最初にお伺いしたいと思っております。
精神障害者に対する医療というのは、当然、犯罪防止、治安維持が目的じゃなくて、本人のためのものでございます。本人のためであるということであれば、医療中心から、医療のみならず、また保健、福祉、この連携、チームでの体制というのが重要であるということでございます。そうしたことを考えていきますと、まさにこれからあるべき姿として、人材面の育成であるとか、また政府のバックアップであるとか、行政のバックアップであるとかいうことが大事になってまいります。
今回は措置入院者の退院後の支援計画というのが定められているわけでありますが、退院後の支援というのは、入院形態に関係なくて、支援を必要とする方にしっかりと支援が行き届くようにするということは、田村参考人も言われておりましたけど、まさにそのとおりだというふうに思っております。
そうしますと、ますます実際に地域の精神医療に携わる専門職の方に対する支援ということが課題になると思います。辻本参考人も最後に課題としてその点を挙げられました。私も、地元の岡山市の精神保健福祉センターを訪れました際にもそういう声が上がりました。特に保健所保健師さん、精神保健福祉士さん、こうした方々の仕事も、だんだん仕事の範囲が増えてきて、地域医療のところに集中する時間や余裕がだんだんなくなってきているのじゃないかという話もございました。また、事務処理の問題、結構そういったところに追われているという話もございました。
改めて両参考人に伺いますけれども、今後の財政面、人材面での支援の在り方について御所見を伺いたいと思います。一応政府としては地方交付税措置で精神保健福祉士を二百名分の増員するための予算措置を今年度設けるということでありますけれども、もう少し具体的な御提言があれば伺いたいと思います。
○参考人(辻本哲士君) 御質問ありがとうございます。
なかなか数字を挙げるのは難しいとは思うんですが、一つは、先ほどから話が出ている、強制力を持って治療を継続させるわけではないわけですよね。信頼感を持つということで治療は継続していくもの、支援は継続すると思うと、信頼感をつくるには人と時間と質を担保せないかぬわけですね。
だから、専門職が何人だとかそういうものじゃなくて、質というか、信頼関係をできるような業務のバランスというか、人間関係をつくるのには時間が掛かるわけなんで、そういうための人員、予算というのが必要だと思います。そういう意味では、それは多い方がいいという結論になってしまいます。
○参考人(田村綾子君) 御質問ありがとうございます。
私も、辻本参考人の御意見にまず賛成です。そして、例えば、先ほど精神保健福祉士について御質問いただいたんですけれども、現在、養成している学校が全国で約百六十五校ほどありまして、また、毎年、国家試験の受験者としては七千人強、そして合格者が四千人ほどというような状況であります。ただ、それでも、その全員が精神保健福祉士として実際に働くわけではない現実もありまして、まだ多分現場で充足してはいないのだろうというふうに思います。
ですので、養成がまだまだ必要だということをまず国がメッセージを出していただくということも必要かと思います。この資格が比較的新しいものですから、私たちの仕事自体は戦後すぐから特定の精神科病院では採用されていた仕事でありますけれども、国家資格化して専門職が輩出されたのは一九九八年以降ということになりますので、そうなりますと、まだそれほど知られていないんですね。ですので、十分知られていくようなメッセージというのは欲しいところというふうに、これは私たち自身、専門職団体の課題でもありますけれども、行いたいというふうに考えています。
それから、実際に配置していただいたときに、例えば精神科の病院においてもそうですし、行政においてもそうですが、そこで何をしなければいけないのかということが不明瞭だったり、多様な業務と兼務ということですと、なかなかこの精神障害のある方々への寄り添って信頼関係をきちんと構築していく支援ということは難しいかと思います。どうしても、行政機関においては異動があったりですとか、それから事務的な仕事も含めた兼務という状況に置かれることが多いかと思うのですが、精神保健福祉相談員というシステムもございますので、それがもう一度きちんと活用されるようになっていくといいなというふうに、現在その配置がなされていない保健所も多くございますので、是非配置されていくような促進をしていただければというふうに考えております。
以上です。
○谷合正明君 ありがとうございます。
医療保護入院について山本参考人にお伺いしたいと思います。
前回の改正では、保護者による同意に代えて、家族等のいずれかによる同意が要件とされました。ただ、患者の家族等が患者本人との関係の悪化や患者と疎遠であることを理由に同意、不同意の意思表示を行わないケースについて、必要な入院医療につながらないといった課題が生じているという中で、今回また法改正になっているということでございます。
そこで、山本参考人は論文の中でも、医療保護入院の要件ということで、精神障害者の権利擁護の観点からどう捉えていくのかということでいろいろと論述されておりますけれども、まず、そもそもこの医療保護入院の要件と精神障害者の権利擁護、この両方の観点から、あるべき家族同意等の在り方についてどう考えていらっしゃるのか。厚生労働省としても、この附則、施行後五年以内の見直しの中で家族等の同意の在り方について検討を深めていきたいというふうにありました。参考人の御所見を伺いたいと思います。
○参考人(山本輝之君) 私の個人の意見といたしましては、やっぱり家族等同意というものが必ずしもそれじゃ精神障害者の権利擁護として有効であるかどうかということについては、やっぱりかなりちょっと問題があるんじゃないだろうかと。家族間にもいろんな関係がございますので、家族等が患者の権利擁護に資するものであるというふうなことは必ずしも十分に常に言えることではないんじゃないだろうかと。
ただ、多くのやっぱり家族は、患者に寄り添う、あるいは患者の利益というものを勘案するものであろうというふうに考えておりますので、その辺のもう一度実態をよく調べた上で、この五年後の見直しについて、この家族等同意の在り方ということについてもう一回検討していくということがやっぱり必要なんじゃないだろうかというふうに考えております。
精神障害者の権利擁護に関しましては、やはり本来は、精神医療審査会でこの権利擁護というものを行っていくというのが、やっぱり私は論理的には筋であろうというふうに考えておりまして、だから、入院させてもすぐにやっぱり精神医療審査会にかけて、その入院が本当に必要なのかどうか、精神障害者の権利が本当に図られているのかどうかということをやっぱり精神医療審査会で直ちに検討する、審査するというやり方が本来の在り方であろうというふうに考えております。
○谷合正明君 医療保護入院について、池原参考人にお伺いします、ちょっと時間が短いんですけれども。
参考人、最後に、人権保障を狙っているんだけれども人権制約の面もあるんじゃないかということで、あるべき姿を検討していただきたいと結ばれましたけれども、最後に参考人の御所見を、あるべき姿についての御所見を伺いたいと思いますが。
○参考人(池原毅和君) 究極的なあるべき姿というのは、障害者権利条約十二条からしますと、意思決定支援を十分に行わなければいけないと。つまり、一見すると自己判断ができないように見える人について、何とかしてその判断を導けるようにするということですね。
これは科学的に不可能なように言われる場合がありますけれども、例えばフィンランドのオープンダイアログという手法はかなりの急性期の統合失調症の患者さんに非常に有効な効果を上げていて、強制的な手法を取らずに医療ができているという実践が、イタリアももちろんありますし、世界で幾つかの実践例があります。ですから、そういうものに向かっていくことが必要だと思います。
当面の医療保護入院に関して言うと、医師以外の誰かが同意という形で関わらなきゃいけないのかという問題ですけれども、例えば私なども成年後見人として同意に関わることがありますが、何をするのかというと、せいぜいセカンドオピニオンを取って、本当に適正な入院判断なんだろうかということをチェックする機能なんですね。だから、そうだとすると、そこはもっと医療的な判断に純化してしまった方がいいのではないかと。先ほど申し上げたように、責任分散をするというよりは、医療が責任を持って判断をするというシステムの方が私はいいと思っています。
○谷合正明君 終わります。ありがとうございます。