○谷合正明君 公明党の谷合正明です。
午前中のやり取りで六時間座り続けることは健康に余り良くないという話がありましたが、いよいよ午後の時間に差しかかりまして、今日五十分の質問時間をいただいております。介護保険の大事な法案でございますから、しっかり質疑をさせていただきたいと思っております。よろしくお願いをいたします。
まず総論を確認させていただきたいんですけれども、新たに発表されました平成二十九年推計で、三十歳代から四十歳代の出生率が上昇したことを受けまして、前回の平成二十四年推計から合計特殊出生率が上昇することとともに、平均寿命は二〇六五年に男性が八十四・九五歳、女性が九十一・三五歳まで延びることなどが推計されています。また、前回と比較しまして、人口減少のスピードや高齢化の進行度合いは緩和する一方、二〇四二年には高齢者数がピークを迎えて、同年の高齢者数は前回の三千八百七十八万人から三千九百三十五万人に増加することが見込まれています。
今回の法律案の内容は、平成二十四年の将来人口推計に基づく介護保険部会での議論を踏まえて提出されたものでございます。今般の改正の大きな目的の一つとしてこの制度の持続可能性を高めることがありますが、新たなこの二十九年の人口推計上明らかとなった長寿命化の進行や高齢者数の伸びにも耐え得るものとなっている必要があります。
そこで、改正案が成立することで新たな将来人口推計によってもなお介護保険制度は持続可能なものとなっているのか、今般の介護保険法を改正する意義と併せてお答えいただきたいと思います。
○政府参考人(蒲原基道君) 今回の改正法案の意義、趣旨についてのお問合せがございました。
今回の法案は、委員からお話がございましたとおり、高齢化がますます進展していくということを背景に、介護を必要とする高齢者の増加が見込まれる中で、介護保険の保険者であります市町村が、自立支援、重度化防止の取組を推進することなどを通じて地域包括ケアシステムの強化を図ろうとするものでございます。
また、介護保険制度の持続可能性を高めるために、負担能力に応じた負担を求めるという観点から、一定以上の所得を有する者の負担割合を見直すこと、また、四十歳から六十四歳までの方の保険料について、被用者保険者の介護納付金を標準報酬総額に応じた負担とすることを改正内容に盛り込んでいるところでございます。
このような改正によりまして、一つは地域包括ケアシステムの強化を図りつつ、またサービスを必要とする方に必要なサービスを将来にわたって提供される、そのような形にしてまいりたいと、こういうふうに考えております。
○谷合正明君 それでは、改正案の具体的なものについて質問したいと思います。
一つは、保険者機能の強化について伺いたいと思います。
高齢化が進展する中で、介護保険の保険者である市町村が介護を必要とする人々へ適切なサービスを提供することが求められております。先ほど本法案の意義について触れていただきましたけれども、地域包括ケアシステムを強化するとともに、制度の持続可能性を維持するため、保険者が地域の課題を分析して、高齢者がその有する能力に応じた自立した生活を送っていただくための取組を進めるという必要があります。
そこで、改めて確認したいんですが、今回の改正では、決して市町村任せにするのではなくて、国や都道府県が支援を行うことが規定されていますが、その支援の内容、今回の改正によって行われる保険者機能の強化に関わる制度全般に関して改めて説明いただきたいと思います。
○副大臣(古屋範子君) 保険者機能の強化に関する御質問をいただきました。
高齢者の自立支援や重度化防止の取組を進めていくためには、PDCAサイクルを活用して市町村の保険者機能を強化していくことが重要でありまして、今回の法案でも必要な仕組みの創設を盛り込んでいるところでございます。
具体的には、市町村が地域課題を分析して、地域の実情に即して高齢者の自立支援や重度化防止の取組や目標を計画に記載をすることや、市町村等の取組を後押しするために客観的な指標を設定した上で財政的インセンティブを付与することを予定しております。
また、市町村の人員体制やノウハウの蓄積等の状況は様々でありまして、厚生労働省や都道府県が積極的かつ丁寧に支援をしていくことが必要だと考えます。
今回の法案では都道府県が市町村を支援するということを法律上明記をしておりまして、市町村職員に対する研修を実施すること、またリハビリテーション職員等の派遣に関する関係団体との調整等を推進していくことなどの支援に取り組んでいただくこととしているところでございます。
○谷合正明君 ただいま副大臣から保険者機能強化に関わる制度全般について説明をいただきましたが、その中で、とりわけ財政的インセンティブの導入が大きな改正点の一つと考えております。
具体的な制度設計については、これまでの委員会質疑において、保険者の自立支援、重度化防止に向けた取組を後押しするようなものになるように、今後、自治体関係者の意見を伺いつつ検討していきたいとの答弁があります。平成三十年度予算の編成過程で決まるものと承知しておりますが、他方、自治体にとって大きな関心事でございますので、この財政的インセンティブの全容というものはなるべく早く示す必要があると考えています。
今後のスケジュールについて改めて伺いたいと思います。
○政府参考人(蒲原基道君) インセンティブの指標の設定について御質問いただきました。
適正なサービス利用の阻害につながらないことを大前提にしながら、自治体関係者の意見を伺いつつ具体的な中身を検討していくということでございますけれども、その具体的な内容についてでございますが、これは、各自治体が策定いたします介護保険事業計画、この策定作業に一つ影響いたしますし、そもそも、いろんな市町村が行う事業の実施にも非常に影響していくということでございますので、これは検討状況に応じて可能なものから順次お示ししていって、できるだけこの市町村の側が次のいろんな取組をしやすいように進めていきたいというふうに考えております。
○谷合正明君 今日の答弁だけではそこがやっぱり多分精いっぱいなところだと思うんですけれども、可能なものから順次示していくという話もございました。
そこで、財政的インセンティブの、これまでの度々議論の中でも出されておりますが、その評価の指標なんですが、地域ケア会議の開催状況等を考慮されますが、要介護状態の維持、改善度合いも考慮されるということでございます。委員会質疑の中で、アウトカム指標としては、要介護認定率の高低、高い低いを直接用いず、要介護状態の維持、改善の度合いなどの保険者の取組の成果を反映する指標を、また、プロセス指標としては、地域包括ケア「見える化」システムの活用状況を含む地域分析の実施状況、ケアマネジメントや地域ケア会議等に関する保険者の基本方針についての地域包括支援センターや事業者などとの共有状況、さらに通いの場への参加状況、地域ケア会議の実施状況などを例として挙げていただきました。
財政的インセンティブの詳細については今後検討になるわけでありますけれども、毎年度編成される予算とは異なって、特にアウトカム指標とされる要介護状態の改善の度合いなどは、一年間の実績で判断するのはなかなか難しいのではないかと。財政的インセンティブの付与に当たっては、単年度の実績を評価するのではなくて、数年間にわたりどのように要介護状態が改善されたか等の調査を行い、一定期間で評価した上でインセンティブを付与すべきと考えますが、いかがでございますでしょうか。
○政府参考人(蒲原基道君) お答え申し上げます。
この指標の設定につきましては、委員からお話がありましたとおり、これまで御説明しているところでございます。その期間というか、状況を単年で見るのか、あるいは少し長い期間、経年で見るのかといった点の御質問だったと思いますけれども、そのようなことも含めて、関係自治体の意見を聞いて、言ってみれば保険者の自立支援、重度化防止に向けた取組を後押しするようなものになるように検討したいと思っています。
その意味でいうと、御指摘の点も含めて、そこは指標の在り方として検討していきたいと、このように考えております。
○谷合正明君 是非御検討いただきたいわけであります。評価疲れになるというような話も、参考人質疑でもいろいろ出されたところでございまして、そこはきめ細やかにやっていただきたいと思っております。
さて、インセンティブということに関連して、ここはちょっと大臣に是非お伺いしたいんですけれども、介護サービスを提供する事業者へのインセンティブの在り方について、今回の法改正は保険者に対するインセンティブなんですけれども、事業者へのインセンティブの在り方についてお伺いしたいんです。
岡山市は、いろいろヒアリングさせていただいたんですが、以前から介護保険事業に関する先進的な取組を行っていて、とりわけ力を入れているのがデイサービス等への成功報酬制度の導入です。この制度は、介護保険制度の下では、要介護度が高いほど事業者に支払われる報酬が高くなり、事業者が要介護度の改善に消極的になりやすいということを受けて、要介護者の要介護度を改善させた介護サービス事業者に対して岡山市がより多くの報酬を支払う制度であります。もちろん、この成功報酬制度では、事業者において改善が難しい利用者の受入れ拒否が生じて、要介護度が改善しやすい要介護者のみを選別して受け入れてしまうというような指摘、おそれがあるなど、まだまだ検討すべき課題があることは承知しております。
この点について、参議院の本会議でも質問がなされまして、塩崎大臣からは、今私が申し上げたような課題を踏まえて、質の高い介護サービスの提供にインセンティブが働くよう、平成三十年度介護報酬改定に向けて検討を進めると答弁されています。
このような取組については、岡山市のほか、川崎市や東京都品川区を始めとしたほかの自治体でも実施されています。また、この取組の要望を、福井県だとか滋賀県も共通の要望として出されているところでございまして、国として検討に値すると思いますが、厚生労働大臣の御所見をお願いいたします。
○国務大臣(塩崎恭久君) 介護報酬におきましては、これまでも状態の改善に係る事業者へのインセンティブが働くようにアウトカム評価というのを導入をしてまいっております。
また、自治体独自の取組、今、岡山、川崎、品川、お取上げをいただきましたけれども、介護サービス事業者に対してインセンティブ付与が行われる場合があるというふうに承知をしておりまして、岡山市では介護サービスの質の評価を実施をし、これ、いわゆる日常生活機能評価、ADLと呼ばれているわけでありますが、積極的にこうした利用者の状態像の維持、改善に努める事業所にこの評価を使ってインセンティブを付与するという取組が行われていると聞いているわけでございまして、岡山市などからはインセンティブ導入に向けての御意見もいただき、担当部局に今勉強をさせているところでございます。
こうしたインセンティブにつきましては、介護職のやりがいの向上につながるという指摘もございますけれども、一方で、いわゆるクリームスキミングといいましょうか、改善の見込まれる高齢者のみを事業所が選別をしていってしまうんじゃないかという懸念も示されているところでございまして、これらを踏まえて、いかにしてより高い質の介護サービスの提供にインセンティブが働くか、こういう観点から平成三十年度の介護報酬改定に向けて検討を進めてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
○谷合正明君 是非よろしくお願いいたしたいと思います。
それでは、次の質問に移りたいと思います。
介護医療院、それから医療、介護の連携についてお尋ねしたいと思います。
まず、介護医療院の創設についてお尋ねします。
これ全国的に見ますと、西日本では全国平均と比べて介護療養病床数が多くなっています。今般の法改正に先立って議論が行われました療養病床の在り方等に関する特別部会では、部会の委員である高知市の市長から、高知市は介護療養病床のベッド数が全国平均の約五倍あり、その背景として、中山間地域に暮らしている方々が病気をするとなかなか在宅で見ることができないため、地域的な事情で介護療養病床が減らなかったという実情があるとのお話がございました。
今回の改正によりまして介護医療院が創設されますが、一方で、従来の介護療養型医療施設については廃止までの経過措置が更に六年間延長されることになっています。
そこで、改めてお伺いしますけれども、地域的な事情で現行の介護療養病床を残さざるを得なかった地域において、実際に利用している方々が不利益を被ることはないということを確認をさせていただきたいというふうに思っております。
○政府参考人(蒲原基道君) お答え申し上げます。
介護療養病床についてでございますけれども、ここは現行でも日常的な医学管理やみとりやターミナル等のケア、こうした医療機能を果たしておりまして、それが重要であるということに加えて、一方で、長期的な療養が必要なためにその入院先が実質的に生活の場となっているという利用者にとっては、それにふさわしい環境が重要だというふうに思います。そのため、今回の改正で、日常的な医学管理等の医療機能だけでなく、生活施設としての機能を兼ね備えた施設として介護医療院を創設するということになっているわけでございます。
お話ございましたとおり、地域によって療養病床が多い等、それぞれ地域の違いがあろうかと思いますけれども、この介護療養病床の設置につきましては、今回新しく介護医療院をつくる際も、利用者の生活に、利用者の状態に悪影響が生じないこと等に対応するために六年間の経過措置期間というのをまた延長するということにしたわけでございますけれども、ここは、その期間中に御本人の状態というのをよく踏まえるとともに、恐らく移行する病院の側も基準をよく見て、自分のところの職員のいろんな配置転換等をよく見ながら判断していくということになると思いますので、そういった意味では、現場に何か悪い影響が起こらないようにきちんと支援をしていくと。その間に、移行状況等をきちっと把握しながら支援をすることで、そうしたことが、御心配のことが起こらないようにしていきたいと、このように考えております。
○谷合正明君 是非しっかりと移行状況を把握した上で、国としてもきちんと支援をしていただきたいと思っております。
医療、介護の連携についてお尋ねいたします。
平成二十六年の介護保険法の改正によりまして、地域支援事業として在宅医療・介護連携推進事業が来年の四月から全ての市町村において実施されることになっています。これまで医療行政に関する取組は主に都道府県が担ってきたことから、市町村には必ずしもその事業のノウハウがないということで必ずしも円滑に進んでいない現状があることから、今般の改正案においては、在宅医療・介護連携推進事業を含む地域支援事業の包括的支援事業について、都道府県が当該事業に関わる情報提供や市町村に対する支援に努めるものと規定されています。
岡山の話にもあったので恐縮なんですけれども、ここでは医療と介護の多職種の顔の見える関係づくりが既に行われておりまして、こうした取組も全国展開していく必要がございます。特に、在宅医療・介護の連携に関しまして、都道府県が市町村に対して行う具体的な支援の内容と、あわせて、じゃ、国はどうするんだと、国が行う支援の内容についてもお伺いしたいと思います。
○副大臣(古屋範子君) 今、谷合議員の方から御指摘がございましたように、地域の医療と介護の関係者の連携の推進には顔の見える関係を構築することが重要であると考えておりまして、市町村が実施をする在宅医療・介護連携推進事業により推進をしてきているところでございます。その際、市町村におきましては、地域の医療の関係機関との協力関係の構築に加えまして、事業のノウハウの不足、隣接する市町村との広域連携の調整なども今課題として挙げられているところでございます。
そのため、今回の法案におきましては、都道府県が市町村支援を努めることを法律上位置付けることとしておりまして、具体的には、医療や介護に関するデータを収集、分析すること、広域的な入退院時の連携等、保健所等を通じて広域的な医療・介護連携の取組体制を整備することなどの支援に取り組んでいただくことを予定しております。
また、厚生労働省といたしましては、都道府県に対して市町村が実施する在宅医療と介護の連携に資する取組への支援方法等を明確にした手引を提示すること、また、都道府県が市町村に対して実施する研修で活用できる研修支援パッケージを作成することなどを通しまして、地域の実情に応じた医療と介護の連携体制の構築に支援をしてまいりたいと考えております。
○谷合正明君 ありがとうございます。
それでは、総報酬割について何点か伺いたいと思います。
介護費の財源は、国庫負担が二五%、地方自治体が二五%、六十五歳以上の第一号被保険者の保険料が二二%、そして四十歳から六十四歳までの第二号被保険者の保険料が二八%となっておりまして、現役世代にも一定の負担をお願いしています。第二号被保険者の介護保険料は、介護納付金として医療保険者に賦課されておりまして、各医療保険者が加入者である第二号被保険者の負担すべき費用を一括納付しています。介護保険制度が導入された二〇〇〇年から現在に至るまで、各医療保険者は介護納付金を第二号被保険者である加入者数に応じて負担するいわゆる加入者割が実施されてきました。
今回の法改正により、加入者割から被用者保険間で報酬額に比例した負担とする総報酬割が導入される運びとなりますが、仮に今後も加入者割を続けた場合、どういった問題点が生じると考えているのか、また、今回新たに導入される総報酬割によりそうした問題点はどのように解決されると考えているのか、今回加入者割から総報酬割へと変更することとなった経緯も含めて、答弁をお願いしたいと思います。
○政府参考人(蒲原基道君) 現行の加入者割の問題点、そして総報酬割の導入の経緯、二つについて御質問をいただきました。
まず一点目でございますけれども、現行の介護納付金につきましては加入者割ということになってございますので、各医療保険者が第二号被保険者数に応じて、その数に応じて負担する仕組みというふうになっているわけでございます。それに伴いまして、一人当たりの報酬額の高低を問わず保険料額が一定になっているということから、報酬額の低い医療保険者ほど報酬額に対する保険料負担額の割合が高くなっていると、こういうことでございます。
今回の総報酬割導入の経緯でございますけれども、経緯あるいはその背景でございますけれども、今回の法案では、高齢化の進展により介護費用が増大する、あるいは保険料が上昇する、こうしたことが見込まれる中で、現役世代内の負担の公平、あるいは負担能力に応じた負担を求めるという観点から、この介護納付金について総報酬割、すなわち報酬総額に応じて負担する方法を導入するということにするわけです。これによりますと、総報酬に対する介護納付金の割合は同一になってくるわけでございます。それに伴いまして、総報酬の低い医療保険者につきましては介護納付金の額が軽減され、被用者保険の被保険者のうち約六割の方が介護保険料の負担が軽減されるというふうに見込まれております。
今回、このようなことで負担の公平を図るという趣旨で総報酬割を導入したいということでございます。
○谷合正明君 今六割が軽減されるという見通しが示されましたが、総報酬割は報酬額に比例した負担ということですから、当然そのほかの方は総報酬割の導入によって負担が増加する保険者ということになってまいります。先ほど申し上げましたけれども、第二号被保険者は四十から六十四歳の方々でありまして、介護保険による恩恵を直接自ら受けている方というのはごく少数となってまいります。急に負担が増加してしまうことがないよう配慮の措置がなされていると承知しておりますけれども、当然こうした配慮は必要であると考えております。
総報酬割の導入に当たって急激な負担増等への対応策について確認をさせてください。
○政府参考人(蒲原基道君) お答え申し上げます。
総報酬割の導入によりまして負担の増加が特に大きい医療保険者につきましては、激変緩和措置を講ずるということにしております。一つは、平成三十二年度に向けてこの総報酬割を段階的に導入するということが一点です。また、被保険者一人当たりの介護納付金の額に上限を設けまして、この上限を超える部分については全ての被用者保険者間で再按分して負担するという、このような仕組みを設けることといたしております。また、この再按分による負担につきましては、一定の被用者保険者に対しまして全部又は一部を国費による助成をするという予定でございまして、平成二十九年度の予算では約九十四億円を計上していると、こういうことでございます。
このような仕組みによりまして、負担の増加が特に大きい医療保険者をしっかりと支援し、総報酬割の円滑な導入というのを図ってまいりたいというふうに考えております。
○谷合正明君 どんな制度でありましても、その後の社会情勢等の変化に応じた改善、見直しが必要であるということは当然でございます。同時に、その見直しの結果、その影響がどう出てくるかということも見極めていく必要もございます。
先ほど御説明いただきました激変緩和措置についてはこれまでの委員会でも度々出ておるんですけれども、一定の被用者保険者に対して全部又は一部を国費により補助する予定であり、世代間の負担の公平、負担能力に応じた負担を求めるという総報酬割導入の趣旨を前提としつつ、制度の円滑な導入のために行うものであり、三年間の時限措置が適当と考えているということも答弁で出ております。
それでも、やはり私は、全面報酬割となった以降も、つまり時限措置が終了する三年後の保険者の財政状況等を適切に把握した上で必要な対策を講じていくべきではないかと考えているわけでありますが、いかがでございますでしょうか。
○政府参考人(蒲原基道君) お答え申し上げます。
この点につきましてはこれまでも委員会で何度か質問を受けているところでございます。
先ほど申し上げましたとおり、特に負担の増加が大きい医療保険者に対する措置でございますけれども、そもそも、この総報酬割の導入というのは、世代間の負担の公平、あるいは負担能力に応じた負担を求めるという、そういう趣旨を前提として先ほどのような支援策を講ずるというものでありまして、その趣旨を前提とした上で、制度の円滑な導入のために行うというものでございます。
そのために、やはり激変緩和措置としては本来の姿になるまでの間の三年間が適当というふうに考えておりまして、公平な制度ができ上がるときには、この措置というのはその手前で終わるというのが適当ではないかというふうに考えているところでございます。
○谷合正明君 総報酬割導入の趣旨を前提としつつの激変緩和措置であるという答弁も改めていただいたわけでありますけれども、ちょっとここは食い違うところもあるんですけれども、改めて、その時限措置が終了する三年後のやはり保険者の財政状況等を適切に把握していくこともまた極めて大事であると私は申し上げておきたいと思います。
それでは、地域共生社会について質問をしたいと思います。
本法律案では、塩崎大臣自らも強調されております我が事・丸ごとの地域づくりを含む地域共生社会の実現に向けた理念が示されています。
近年、ダブルケアの問題を有する世帯や、高齢の親と働いていない独身の五十代の子が同居している世帯であるとか、障害のある子の親が要介護状態となっている世帯など、もう本当に個人や世帯全体を抱える課題というのは複雑化、多様化しております。また、それらが顕在化しているということも確かであると思います。とりわけ団塊の世代が七十五歳以上となる二〇二五年以降、高齢者数の増加とともに、生活保護世帯とはならないまでも少ない年金額で暮らすなど低所得高齢者も増えていくことが予想されておりまして、低所得高齢者への対策が急務となっています。
今回の法案の名称ともなっています地域包括ケアシステムは、高齢者の地域における介護、医療、介護予防、住まい及び生活支援が包括的に確保される体制と定義されておりまして、このうち低所得の高齢者の方々にとっては、医療、介護はもとより、生活支援、住まいの確保も重要な要素になっています。
低所得であっても高齢者の方々が住み慣れた地域で安心して生活し老後を暮らしていけるように今後どういった対応をしていくのか、この点について答弁をいただきたいと思います。
○政府参考人(定塚由美子君) お答え申し上げます。
低所得高齢者のまず現状でございますが、所得の面から我が国の社会全体を長期的に見ますと、高齢者の相対的貧困率は改善傾向にございます。これは公的年金制度を始めとした社会保障制度の成熟の中で高齢者に対する所得再分配機能の高まりの表れであると認識しているところでございます。
一方で、委員から御指摘いただきましたとおり、高齢化に伴いまして低所得の高齢者の世帯の数が増えているという状況でございます。こうした方々の中には、家族や地域社会の変化により、また長寿化の中で現役世代に十分な蓄えができていなかったということもままあるわけでございまして、こうした場合には、持家や貯蓄がないとか乏しいとか、また家族からの同居、仕送りの支えがないとか就労が困難であるなどの事情により厳しい生活実態になる方がいると認識をしております。
こうした低所得高齢者の方々に対しましては、今年八月施行の年金の受給資格期間の短縮に加えまして、社会保障・税一体改革で行うこととしている年最大六万円の年金生活者支援給付金の創設、また医療、介護の保険料負担軽減などに取り組むことといたしております。
こうした社会保障制度面からの対応に加えまして、低所得の高齢者の生活状況に応じたきめ細かな支援も重要と考えておりまして、生活困窮者自立支援制度において各自治体に相談窓口を設けて幅広く相談に対応しているところでございます。
例えば具体的に申しますと、年金だけでは生活に足りないという方の、収入を得るために短時間でも働きたいという方への就労支援であるとか、現役世代と収入水準が異なってしまうという方への家計支援であるとか、本人の希望に応じて先ほど委員からも御指摘がありました住宅を探すための居住支援であるとか、そうした包括的支援を行っているところでございまして、現在、この制度の施行後三年を目途とする見直しについて、社会保障審議会における検討をスタートしたところでございます。
○谷合正明君 今局長の方から生活困窮者自立支援制度について言及もございまして、見直しの議論もされているという御答弁がございました。
生活困窮者自立支援法は平成二十七年四月に施行されておりまして、まさに今審議会の部会において見直しのための議論が行われているわけであります。この生活困窮者自立支援法は、自立に向けた人的支援を包括的に提供していくことを基本としていて、どちらかというと自立支援、就労支援等に重きが置かれていたように感じます。
しかし、我が事・丸ごとの地域づくりにより、これまで顕在化していなかった低所得高齢者の問題が浮き彫りになってくるため、低所得の高齢者が安心して老後を暮らせるように、今の生活困窮者自立支援法を低所得高齢者の実情に沿った形で見直していく必要があると考えます。
低所得高齢者をめぐる現状及び課題、先ほど来お話しいただいていますけれども、そうした現状、課題を踏まえて、どのように見直しを行っていくのか、方向性についてお伺いしたいと思います。
○政府参考人(定塚由美子君) 生活困窮者自立支援法の相談窓口では、高齢者の相談が全体の約二割を占めているという状況でございます。就労や家計管理などの相談を受けておりまして、この中で幾つか、こうした相談を受ける中で幾つかの状況が分かってきたというところがございます。
まず、一般就労を目指す方が半数近くいらっしゃるということで、就労収入で家計を支えるという希望があるということ。また、就労が難しい中で支出をやりくりしなくてはならないという方も一定程度いらっしゃるということ。また、低所得の高齢者の方が民間の賃貸住宅に住むに当たっては、家賃負担だけではなくて入居の拒否であるとか連帯保証の問題といった課題があることというような状況が分かってきたところでございます。
こうした現状も踏まえまして、生活困窮者自立支援法の見直しに向けて、昨年度、有識者の検討会、開催しておりますけれども、この中では、特に留意すべき対象者ということで、高齢の生活困窮者に対する支援の在り方についても議論がされているところでございます。
この議論の結果といたしましては、短時間の就労を希望する人から主たる生計の支えとして働きたい人まで様々な状況が高齢者の方にございますので、その状況に合わせて支援をしていくということ。また、ハローワークやシルバー人材センターなどとも連携をして、高齢者の就労の場づくりを進めること。また、賃貸物件に入居しやすくなるような自立支援や地域の見守りといった居住支援をすること。さらには、高齢期になって生活困窮や生活保護に至ることを防ぐために、将来を見据えた就労支援であるとか、家計管理ができる力を身に付けるための家計相談支援をすることが必要ではないかといった論点が挙げられているところでございまして、今月から開始されましたこの審議会の部会での議論においても、こうした論点を踏まえてしっかりと検討をしてまいりたいと考えております。
○谷合正明君 お願いします。
それでは、地域共生社会とほかの施策との連携について伺いたいと思います。
橋本副大臣にもお越しいただいておりまして、ちょっと副大臣に答弁いただきたいんですが、火曜日の質疑でも、この地域共生社会とのほかの施策との連携ということで、自殺対策との連携という話もありました。私自身もこの委員会の所信に対する質疑でこの自殺対策と地域共生社会の連携に取り組んでほしいということを質問したところでございます。それは目的と枠組みが共通しているからということも踏まえてさせていただいたわけであります。
あわせて、ただいま議論となっております生活困窮者自立支援制度も、これもやはり理念でありますとか目的であるとか、そういったところがかなり重なり合う。そこで、自殺対策と地域共生社会のみならず、生活困窮者自立支援制度もセットで進めていくべきではないかということを考えておりますが、いかがでございますでしょうか。
○副大臣(橋本岳君) 御指摘いただきました地域共生社会と、まず自殺対策との両施策は、市町村での包括的な支援体制の整備を図ること、住民も参加する地域づくりとして展開をすることなどの点で共通をしておりまして、実際の支援においても、状態が深刻化する前の早期発見や複合的課題に対応するための関係機関のネットワークづくりなど、対応、共通する部分が多くあると考えております。
こうした支援の形は、今御指摘をいただきましたように、生活困窮者自立支援制度においても共通する部分が多いというふうに考えております。自殺というものはいろいろな背景があって、個々にですね、そういうことに至ってしまうということですが、やはり生活の困窮というのもその背景の一因となり得るものでございまして、やはり生活困窮者支援制度も含めた三者を、要するに自殺対策と生活困窮者の自立支援の制度とそして地域共生社会づくり、これを一体的に推進をすることがやはり重要だというふうに考えております。ですので、自治体にはこのことも含めて周知をしてまいりたいというふうに考えております。
また、先ほど局長も答弁をしておりましたが、平成三十年に生活困窮者自立支援制度の施行後三年の見直しを予定をしております。これに当たっても、本制度とともに、地域共生社会づくりや自殺対策の取組の推進も意識をしながら、それぞれ相乗的に効果が上がるように検討を進めてまいりたいと、このように考えているところでございます。
○谷合正明君 是非、三つの施策をしっかりと連携しながら取り組んでいただきたいというふうに思っております。
それでは、最後に、介護人材の確保について質問をしたいと思います。
これも度々この委員会で質問がなされているところでございます。単刀直入にお伺いしますけれども、いろいろな処遇改善策、これまでも累次やってまいりました。そうした処遇改善策による効果について、厚生労働省としてどのように把握して、どう評価しているんでしょうか、この点についてお伺いしたいと思います。
○政府参考人(蒲原基道君) 御質問ございました介護職員の処遇改善についてでございます。これまで財源を確保しつつ、着実に行ってきております。
その改善効果についてでございますけれども、例えば、平成二十七年度の介護報酬改定では、月額、実績の効果の方です、平均で一万三千円になっていまして、これは過去の分の実績で、平成二十一年四月分からの全部の実績でいきますと、合計で四万三千円相当の処遇改善を行っているところでございます。また、今年度はニッポン一億総活躍プランに基づきまして、技能や経験に応じて昇給する仕組みを構築し、月額平均一万円相当の処遇改善を行っており、こうした本取組を今後、着実に進めていきたいというふうに考えております。
○谷合正明君 それで、大臣御存じかどうか分かりませんが、介護現場で働く若者が主人公となった漫画で「ヘルプマン」というのがあるんですね。これは二〇〇三年から連載が始まっておりまして、今も続編が週刊誌に連載中であります。若い介護福祉士の中には、この「ヘルプマン」という漫画を読んで介護を志した人も少なくありません。昨年、四国在住の原作者の方にちょっとお会いしていろいろお話を伺ったところでございます。四国ということでちょっと取り上げさせていただいているんですけれども。
実は、漫画は、最初はおむつ替えに悪戦苦闘するシーンというところも始まってまいりますし、その主人公の若者が介護を通じて高齢者に学び、成長していく姿、そういうストーリーでもあるんですね。
原作者の方にお伺いしたときに、いろんな取材現場を訪れたと。その中で印象的だったということで、おむつ替え。おむつ替えは他人に見られたくない部分に寄り添う仕事ですから信頼関係が大事なんです、介護士にとっておむつ替えは誇りであり、ある意味人間の尊厳に関わる仕事だと思いましたと。ケアの仕方や温かい言葉一つで顔の輝きが全然違う、自尊心がそのままあるんだということを取材の現場で知りましたというふうにおっしゃっていただきました。
また、介護の場合も、高齢者に人生を学ぶような姿勢や心を育てることが大事で、実際に現場を体験学習した人たちは職場の定着率が高いんですという、政府もそういうお話もありますけれども、というようなことも言われておりました。
その原作者の方は、介護のきついとか汚いとか給料が安いというネガティブな3Kのイメージを、格好いい、感動的、価値創造的というポジティブな3Kのイメージに塗り替えたいということで、情報発信のホームページ、「コチラ愉快護情報局」というものも立ち上げられているんですね。
以上、原作者とのやり取りなどを紹介させていただきましたけれども、介護人材の確保について、処遇改善、職場環境の改善策など様々な取組をされていることは承知しておりますけれども、やはり私自身、介護の持つ尊さというものを根底にしっかりと据えていかなきゃならないんだというふうに思っておりますし、社会全体がそうなっていかなきゃならないんだというふうに思っております。
農業はよく産業政策と地域政策が車の両輪だと言うんですけれども、まさに介護もそのような面があるのじゃないかなと。ですから、ICTとか介護ロボットだとか様々な施策があろうかと思いますが、しかし、忘れてはならない根底には、やはり介護というのは人間の尊厳に関わる非常に尊い仕事なんだということをしっかりと意識してやっていかなければならないのではないかということでございまして、そこで、改めて介護人材の確保について答弁いただいて、質問を終わりたいと思っております。
○政府参考人(定塚由美子君) ありがとうございます。
介護人材の確保ということでございますけれども、御紹介いただいたように、様々な観点から取組を進めていくことが必要と考えております。一つは、やはり多くの方に参入をしていただくという参入促進でありますし、もう一つは、職場の定着促進ということと離職を防止していくということ、さらには、処遇改善とともに、先生から御指摘がありましたような、魅力をしっかりと発信していくというような取組を総合的に進めていくということが重要であると考えております。
最近では、今年四月からの処遇改善に加えまして、ICT、介護ロボットとか、介護施設で働く環境改善のための保育施設の開設運営支援であるとか、あるいは先ほど御紹介しました基金事業の中では、キャリアアップのための研修の受講負担軽減などにも取り組んでおります。さらには、今後多くの方々に介護の世界に入ってきていただくということを見据えまして、いろいろな方々に研修支援をしていけるような仕組み、助成というものも考えたいと考えております。
また同時に、大変重要なのは、委員からも御指摘がありましたように、介護が大変魅力ある仕事だと、やりがいがあって尊厳を守るすばらしい職業だということで入ってこられる学生さん、あるいは再就職されていらっしゃる方々の思いをきちんと受け止められる職場であるということを確保しつつ、その魅力を発信していくということかと思っておりますので、基金の中にもそうしたメニューはございますけれども、厚生労働省としてもしっかり魅力の発信ということをしてまいりたいと考えております。
○谷合正明君 終わります。