○谷合正明君 公明党の谷合正明です。
私は、公明党を代表して、ただいま議題となりました財政演説に対し、総理に質問いたします。
まず冒頭、新型コロナウイルスに感染し、お亡くなりになられた方々に心より御冥福をお祈り申し上げますとともに、現在も治療を受けておられる方々の一日も早い御回復を心よりお祈りいたします。
また、医療現場の最前線で感染拡大防止に取り組まれている皆様、社会生活を支えてくださる皆様、この場を借りて深く感謝を申し上げます。
新型コロナウイルスの感染拡大は、世界の状況をまさに一変させました。あまねく人類に降りかかった未曽有の危機であり、我が国でも国民は様々な我慢を強いられています。先行きの見通しの利かない中、経済活動は大幅に縮小し、家計や事業経営をめぐる状況は厳しさを増す一方です。特に、弱い立場に置かれた方々にその影響のしわ寄せが来ています。
まさに国難ともいうべき危機的な状況に対し、政治は、国民の命と生活を守るとの一点で、総力を挙げ、対策を講じ、一致結束して乗り越えていかなければなりません。
以下、具体的に質問します。
初めに、緊急事態宣言について伺います。
宣言は、今月七日に発令され、十六日に全国に拡大されました。人との接触機会を八割減らすために、国民には多大な協力をいただいています。最初の宣言発令から約三週間が経過しました。この間の感染者数の推移、病床の確保、外出自粛の効果など、宣言発令の所期の目的が達成されているのか、総理から報告をいただきたいと思います。
また、緊急事態宣言の全国拡大は、特に、ゴールデンウイークの人の移動を最小限にすることを目的としたものでありますが、学校や事業経営再開にも影響を与えるものであり、五月六日以降、延長するのか否かの判断について国民は大変関心を持っております。総理の説明を求めます。
政府は、昨年度来、補正予算の編成や予備費の活用等により対策を講じ、今月七日には緊急経済対策を取りまとめました。しかし、緊急事態宣言を境に国民生活を取り巻く状況は激変しました。
国民からは、明日の生活が見えない、政治は何をしているのか等、窮状を訴える厳しい声が相次ぎました。非常時に際し、事態の変化に政治が機敏に対応していかなければなりません。異例なことではありますが、まさに国民のためにとの一点で、この補正予算はより強力に組み直されました。
ついては、本補正予算の速やかな成立をもって、国民に一日も早く支援を届ける必要があります。総理の本補正予算成立に向けての決意を伺います。
次に、喫緊の課題である医療提供体制の整備に関して伺います。
国民にとって重要なのは、万一感染しても、しっかりと検査、診療を受け、安心して生活できることです。しかし、医療現場は極めて深刻な状況です。そこで、感染者の急増や家庭内感染の防止に対応するための病床の確保や、医療崩壊を防ぐための医療従事者に対する十分な支援が必要不可欠です。マスク、医療防護服、人工呼吸器等の不足は命に関わる深刻な事態を招きかねません。
PCR検査も、医師により感染が疑われる者の診断を更に迅速に行うため、また、重症化する患者の治療を適切に行うため一層強化される必要があります。さらに、院内感染を防ぐ観点から、無症状の患者に対しても検査の保険適用を広げていくべきです。
以上、医療提供体制の整備に向け、具体的な方策を総理に伺います。
次に、家計への支援並びに事業者への支援について伺います。
本補正予算では、家計への支援として、一律に一人当たり十万円の給付を行う特別定額給付金、児童手当の対象児童一人当たり一万円を上乗せする子育て世帯への臨時特別給付金が計上されました。また、住居確保給付金による支援の拡充が講じられるほか、既に個人向け緊急小口資金等の特例措置も講じられています。
事業者向けには、資金繰り対策の強化、雇用調整助成金の特例措置の拡大、また、売上げ減少した中堅・中小企業、個人事業者に対する持続化給付金が計上されたほか、総額二十六兆円規模の税、社会保険料の猶予措置など、前例にない対策が講じられます。
これらはまさに命綱であります。支援が必要な人、支援が必要な事業者に迅速に確実に届くよう、制度の縦割りを排し、当事者に寄り添った周知や相談体制の強化を急ぐべきです。総理の見解を求めます。
この度の定額給付金は全ての人を対象にしたもので、先が見通せず困っている状況に、皆で一緒に乗り越えるというメッセージになるものと私たち公明党は考えており、迅速な支給が何よりです。いつ、どうすれば給付を受けられるのか等、この制度を国民に向けて丁寧に御説明ください。また、DV被害者への対応、給付金を狙った詐欺への対応も併せて説明を求めます。
今、ぎりぎりの状況を訴える事業者の声が日ごとに増えています。先が見えない状況の中、事業継続に困っている事業者、特に休業要請を受けた事業者への支援については、継続的に実施、強化する必要があると考えます。総理の見解を伺います。
あわせて、地方公共団体への支援について伺います。
本補正予算では、新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金、また、一兆円の地方創生臨時交付金が計上されています。言うまでもなく、感染症対策に自治体との連携は欠かせません。間断なく感染拡大防止に有効な施策を実施できるよう、柔軟な使途の確保と財政面での力強い下支えは不可欠と考えます。加えて、国と自治体の緊密な連携、国による自治体間の広域調整などに積極的に取り組んでいただきたいと考えますが、総理の見解を伺います。
最後に、学校休業と学生の就職活動に関して伺います。
休業の長期化、拡大により、児童生徒の多くは自宅学習を余儀なくされ、特に受験生やその保護者からは学習遅れや学習環境の格差に不安の声が上がっています。子供たちの未来が懸かっています。オンライン学習の整備、夏休みの対応含め、児童生徒の学力確保に向けた対策について、総理の見解を伺います。
同様に、大学生らの今後の就職活動にも深刻な影響が現れています。既に内定の取消しも発生する中、企業収益の悪化により、新規採用人数を抑制する動きも増えています。第二の就職氷河期世代を生まないために、官民挙げた対応が必要です。総理は、現状をどう認識しているか、また、今後の見通し及び対策も併せて伺います。
新型コロナウイルスは、世界中の人々の生活に影響を及ぼしています。この未知の感染症が怖いのは、病気から生まれる不安が社会全体に広がり、特定の人、地域、職業に向けられる嫌悪、偏見、差別につながっていくことだと言われます。
このウイルスとの闘いは長期戦になるかもしれません。また、私たち人類は今後も感染症の挑戦を受けることになるかもしれません。だからこそ、国民の連帯や協力、国際的な協調を通じてこの危機を乗り越えていかなければなりません。
明けない夜はない。私たち公明党も、国と地方議員が結束し、必ずやこの国難を克服していくことをお誓いし、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 谷合正明議員にお答えをいたします。
緊急事態宣言の目的の達成状況と解除の判断についてお尋ねがありました。
四月七日から四月二十一日の間で見ると、全国ベースで感染者数は七千五百九十人増、約二・九四倍となっています。他方で、ここ数日間の動きを見ると、新規感染者数は三百人台から四百人台となっています。ただし、これらのデータは二週間程度前の感染の状況を反映したものであることに留意が必要です。
また、治療のために必要な病床として、感染症指定医療機関の病床を最大限動員し、三万二千を超える病床を確保しているところです。
二十二日の専門家会議においては、ここ二週間の行動変容を踏まえた現状分析をいただきました。
人の流れについては、都市部では感染拡大前に比べて平日でおおむね六割以上、休日ではおおむね七割以上減少している状況にあるとされたところです。他方で、接触機会の八割削減に向けては、より一層の国民の皆様の努力が必要な状況との指摘もいただいています。
この緊急事態をできるだけ早期に収束に向かわせるためには、今が非常に重要な時期となります。専門家から示された十のポイントも参考にしながら、国民の皆様により一層の御協力をお願いしているところであります。
また、緊急事態宣言の解除の可否については、専門家の皆様の提言もいただきながら判断していきたいと考えておりますが、まずは、何としても八割の接触機会の低減を実現するべく、政府としても、感染拡大防止に向けた取組を徹底してまいりたいと考えています。
令和二年度補正予算についてお尋ねがありました。
緊急事態対策は、困難に直面している事業者や御家庭の皆さんをあらゆる手段を駆使して支え、国民の健康と暮らしを守り抜いていくためのものであり、今般、その実行のための補正予算を提出したところです。
感染症の影響が長引き、全ての国民の皆様が厳しい状況に置かれ、長期戦も予想される中で、国民の皆様とともにこの難局を乗り越えていく、その決意の下、この強力な補正予算の早期成立を図り、一日も早く十万円の現金給付を始め各種の支援が国民の皆様のお手元に届くよう、政府を挙げて全力で取り組んでまいります。
医療提供体制の整備についてお尋ねがありました。
感染拡大防止と同時に、国内で患者数が大幅に増えた場合に備え、重症者対策を中心として医療提供体制を強化することは喫緊の課題です。
このため、今回の緊急経済対策では、感染拡大の防止、医療提供体制の整備等に最優先に取り組むこととしており、医療用マスク、ガウン等の必要な医療機関への優先配布、人工呼吸器の確保、重症者に対応できる医師、看護師等の確保、病床及び軽症者等の療養場所の確保、帰国者・接触者外来の拡充、保健所の体制やPCR検査体制の強化も含め、人、物両面からの抜本的強化を図ることとしています。
また、PCR検査については、症状の有無にかかわらず医師が感染を疑い、診療のために必要と判断した場合は保険適用としているところであり、こうした取扱いについて広く現場に周知してまいります。
引き続き、医療の現場を守りつつ、感染拡大防止及び重症化予防に向けて、自治体と連携しながら全力で取り組んでまいります。
緊急経済対策についてお尋ねがありました。
今般の緊急経済対策では、あらゆる手段を駆使して、困難に直面している事業者や御家庭の皆さんを支えることとしており、支援が必要な方々に行き届くよう、その周知等に政府一丸となって取り組んでまいります。
特別定額給付金の給付時期については、簡素な仕組みで迅速かつ的確に家計への支援を行うという給付金の趣旨に鑑み、早い地方団体においては五月中のできるだけ早い時期を目標に給付を開始していただくことになるよう、準備を進めてまいります。
手続については、感染症拡大防止に留意し、郵送やオンラインによることを基本とする方向で準備を進めているところであり、一日も早く国民の皆様の手元にお届けできるよう、全力で取り組む考えです。その際、家庭内暴力で住所を実態どおりに登録できていない方々についても、一定の手続を経て給付金をお受け取りいただけるよう対応してまいります。
また、特別定額給付金に乗じた詐欺などの被害を未然に防止するため、関係省庁が連携してホームページやSNSを通じた注意喚起を行うなど、取組を行っているところです。
特に、休業要請を受けた事業者の方には、今回の経済対策において、売上げ等の減少や休業している方の賃金の支払などに充てていただくため、現金給付を始め多数の支援策を用意しているところであり、事態の変化を十分注視しながら、事業者の皆様への必要な支援を引き続きしっかりと行ってまいります。
感染症対策に関する地方公共団体との連携についてお尋ねがありました。
今回の緊急経済対策では、感染拡大の防止、医療提供体制の整備等に最優先に取り組むこととしており、新たに緊急包括支援交付金を創設し、各都道府県が必要とする対応を柔軟かつ機動的に実行できるよう、強力な財政支援を行います。
具体的には、重症者に対応できる医師、看護師等の確保、病床及び軽症者等の療養場所の確保、広域患者搬送体制の整備など、自治体間の広域調整を推進する取組を含め、人、物両面からの抜本的強化を図ることとしています。
また、感染拡大の防止や、感染拡大の影響を受けている地域経済や住民生活を支援し、地方創生を図るため、新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金を創設し、地域の実情に応じたきめ細やかな事業の実施を支援することとしております。
引き続き、医療の現場を守りつつ、感染拡大防止に向けて、自治体と緊密に連携し、全力で取り組んでまいります。
児童生徒の学力確保、学生の就職活動についてお尋ねがありました。
感染拡大の防止のため学校の臨時休業に取り組まざるを得ない中、子供たちの学びに著しい遅れが生じないようにすることは極めて重要です。
政府としては、学校の臨時休業のガイドラインにおいて、学校が主体となって家庭学習を課すこととしており、子供たちが自宅等で活用できる教材や動画等をインターネットで提供するとともに、こうした取組を効果的に実施するため、今般の補正予算では一人一台のIT端末の早期実現や家庭でもつながる通信環境の整備を推進してまいります。
さらに、学校再開後には学習指導員等を追加的に配置するとともに、補習の実施を含めて臨時休業による学習の遅れを取り戻す取組を促すなど、子供たちの学びの保障に努めてまいります。
また、就職活動についても、企業の皆様に中長期的な視点に立って採用を実現していただけるよう要請を行うとともに、雇用調整助成金に特例措置を設け新入社員の方々についても助成対象としたほか、ハローワーク等を通じたきめ細かな支援に取り組んでいます。
今、この厳しい局面においても、官民を挙げて前途ある学生の皆さんの雇用を守るという決意で、全力で対応してまいります。(拍手)