○谷合正明君 公明党の谷合です。
昨日、NHKのクローズアップ現代を私、見ました。少年院の特集だったんですけれども、虐待を受けたり発達障害に対する周囲の無理解などから、社会に適応しづらい少年が近年多く入所をしていると。課題は再犯の防止、退院後の更生支援はまだまだ不十分であると、NPOなど民間の協力団体も出ているけれども、今コロナの影響を受けているというような番組内容でありましたけれども、少年の更生に何が必要かというようなことで支援される方々のインタビューもありました。
実際、そのテレビに出演された支援者の方の声を直後にすぐにお伺いしました。とにかく、困難を抱える若者の支援は手間と時間が掛かります、自分自身や他人への信頼を回復する時間を少年院又は社会で確保する方法を考えた上でこの国会審議に臨んでいただきたいということで言われた次第でございますので、御紹介させていただいた上で質問に入りたいというふうに思います。
まず、既に衆議院の方では附帯決議が付されているわけでありますけれども、それに関連して質問いたします。
今回の改正案では、特定少年につきまして、家庭裁判所が虞犯を理由とする保護処分はできないこととしておりますことから、十八歳及び十九歳の者の健全育成及び非行防止のためには、少年非行対策及び福祉支援策における関係府省庁の連携、協議の枠組みを強化するとともに、関係諸機関、団体等と有機的に連携しつつ、適切な保護、支援を行うための施策の一層の推進を図る旨の附帯決議が付されています。
そこで、内閣府に確認いたします。少年非行対策における関係府省庁の連携、協議の枠組みを強化するとしておりますけれども、現在、その枠組みというものはどういうものであってどういう議論がなされているのか、まず御紹介いただきたいというふうに思います。
○政府参考人(難波健太君) お答えします。
次代を担う青少年の育成は社会全体で一体的に取り組むべき課題でございまして、その中でも、特定少年を含めた少年の非行防止につきましては重要な課題の一つと認識をしております。
現在の枠組みでございますが、全閣僚を構成員とする子ども・若者育成支援推進本部の下に少年非行対策課長会議が置かれておりまして、同会議におきましては、関係府省庁が少年非行対策の推進につきまして、密接な連絡、情報交換、また協議等を行っているところでございます。
○谷合正明君 随分簡素な答弁なんですけれども、そこで、関係府省庁とはいえ、法務省、やっぱり法務大臣ですね、ここをしっかりこの少年の健全育成、非行防止の取組を推進していく上で、法務省の積極的な取組という、必要があるということは言うまでもないわけでございまして、まず法務大臣の見解あるいは決意というんですかね、伺いたいというふうに思います。
○国務大臣(上川陽子君) 今般の十八歳以上の少年でございますが、非行防止の必要性、これは変わりはないところでございます。その健全育成のためには、委員御指摘のように、関係機関によりまして、対象者の任意に基づく支援、措置が極めて重要であるということでございますし、また非行防止、これを図るためには、一般に早期の段階から、早い段階から働きかけが大変有効であると、こうした知見もございます。
少年の非行防止につきましては、これまでも、御指摘のいただいておりました少年非行対策課長会議、こういったことが随時開かれている状況でございまして、これには法務省を含みます関係機関、連携を図りながら様々な取組もトータルに提供するという形で取り組んでまいりました。
法務省でございますが、法務省としては、まず少年鑑別所におきまして法務少年支援センターがございます。ここにおきまして相談、助言を行う、また教育機関や民間団体との連携をしっかりと図りながら、地域における非行、犯罪の防止のための活動を積極的に行っているところでございます。また、全国に設置されております更生保護サポートセンター、こちらの方には保護司の先生方が、皆様が駐在をしておりまして、学校や警察等としっかりと協力をしながら、非行防止のセミナーをやったり、また住民からの非行相談等も実施をしている状況でございます。
法務省といたしましては、本改正を機に、関係機関等としっかりと連携をしながら、少年の健全育成、非行防止の取組、こうしたことの強化に図ってまいりたいというふうに考えております。
○谷合正明君 しっかりお願いしたいと思います。
附帯決議、もう一つですね、前科による資格制限の在り方についても附帯決議を付されているところでございます。特定少年には少年法第六十条の資格制限排除規定が適用されなくなることから、この前科による資格制限の在り方について、府省庁横断のしかるべき場を設けるなどして、政府全体として速やかに検討を進め、その結果に基づいて法改正を含め必要な措置を講ずるということが付されております。
法務大臣は、衆議院の質疑においても、関係府省と連携をし、政府としてもしかるべき検討の場を設けることとしていると答弁しております。このしかるべき検討の場ということについて、もう少し検討状況を伺いたいというふうに思います。
○政府参考人(竹内努君) お答えいたします。
若年者の再犯防止あるいは社会復帰を図る上で、就労を促進するということは極めて重要なことであると認識をしております。
そこで、国会における御指摘も踏まえつつ、本法案が成立した際には、若年者に焦点を当てた前科による資格制限の在り方につきまして、関係府省と連携し、政府としてしかるべき検討の場を設けることとしております。
具体的には、まだ検討、調整中ではございますが、例えば、法務大臣決定により設置をしております関係省庁や有識者を構成員とする再犯防止推進計画等検討会というのがございますが、この下に資格制限の在り方について検討を進めるためのワーキンググループを新たに設置することなどを検討しているところでございます。
いずれにいたしましても、前科による資格制限の在り方につきまして、就労の対象となる業務の性質や実情等を踏まえつつ、関係府省と連携して必要な取組を進めてまいる所存でございます。
○谷合正明君 ワーキンググループについて言及がございました。これ、参議院におきましても、この資格制限の在り方でありますとか府省庁の連携強化ということは重要な観点だと思いますので、また附帯決議の方、検討もしていただきたいというふうに思っております。
それでは、もう少し具体的に質問を進めてまいりたいというふうに思います。
更生保護施設における少年処遇の充実、自立準備ホームの活動基盤の整備について伺います。
もう言うまでもありませんが、少年院を出た少年の帰住先の調整というものが難航するケースがあります。少年の受入れ施設が少ないことが背景の一つにあります。また、その少年を受け入れる更生保護施設からは、精神的に未熟な少年のケアは困難を伴うことや更生保護施設の人的体制が脆弱であること等が訴えられておりまして、とにかく少年の立ち直りのためには受入れ施設の支援というものが不可欠となっております。
今、全国に更生保護施設、百三ありますが、そのうち高齢者や障害者を一時的に受け入れる施設七十四か所を指定していて、この七十四か所には社会福祉士など専門資格を有する職員を配置して、その配慮した処遇をしていると。
そこで、この主に少年を受け入れる更生保護施設なんですが、こちらには専門職員の配置について十分国の支援がない、十分というか国の支援がないのではないかと。少年を受け入れる更生保護施設においても発達心理学や児童福祉等に精通した職員の確保に取り組むため国の支援の充実が必要でありますので、是非これを改善していただきたいと思いますが、法務大臣の答弁を求めたいと思います。
○国務大臣(上川陽子君) 委員ただいま御指摘のとおり、更生保護施設に入所する少年、虐待被害や、また発達障害等の様々な困難を抱えておられまして、集団生活におきましての配慮、また家庭環境の改善のための家族調整、また医療・福祉サービスの受給に向けた支援など、その処遇、また支援に一層の困難を伴う、こうした少年が多いということ、これは現実であります。
ところが、現在、少年を受け入れる更生保護施設には、主に成人を受け入れる更生保護施設と異なりまして、福祉等の専門資格を有するスタッフが実は配置されておりません。そのために、処遇、また支援に困難を伴う少年への対応に日常的に追われ、疲弊をしている現場の声も伺っているところでございます。
法務省といたしましては、少年が少年院に収容中から関係機関によるケア会議の充実を図るなどの保護観察所による更生保護施設への支援強化、これを開始したところでございまして、対応困難な少年の、しっかりと焦点を当ててケアを行っていく、このことが必要であると認識をしているところでございます。
そして、そのためにも、主に少年を受け入れる更生保護施設に対しましても、発達心理学や児童福祉等に精通をされた福祉学の、福祉等の専門資格を有するスタッフの配置、これを検討するなど、その受入れ及び処遇機能の充実に努めてまいりたいというふうに考えております。
○谷合正明君 大臣から前向きな答弁いただきました。次の質問とも関連するんですけれども、是非これ予算を取っていくということも必要だと思いますので、これから、来年度か、来年度予算、今からまた骨太の方針等、様々政治的なスケジュールはありますけれども、しっかりと政策をピン留めしていただいて、しっかりとこの予算要求もしていただきたいというふうに思っています。
自立準備ホームにおける課題と要望への、課題ということを更に伺いますが、刑務所出所者や少年院出院者が一時的に住むことのできる民間施設であります自立準備ホーム、こちらにおきましても、複雑な課題を抱える対象者に対する適切な処遇を確保する必要性が指摘されているところであります。こちらは、ただ、民間でございますから、自立準備ホーム、NPO等やっておりますが、事業規模が小さいことなどから、経営状況が厳しいところも少なくないと言われております。
しかし、この自立準備ホーム、言わば生活基盤が確保できない場合の最後のとりでとも位置付けられますから、この処遇の困難な者を受け入れて処遇するためには、この委託費に例えば更生保護施設のような加算をするなど財政的な支援がこの自立準備ホームにも必要ではないかと考えます。
改めて、こちらについても是非前向きな検討をお願いしたいと思いますが、法務大臣の答弁を求めます。
○国務大臣(上川陽子君) 委員御指摘のとおり、この自立準備ホーム、この制度は大変重要でございまして、民間の方々の御努力、このことに対してしっかりと継続して持続可能なようにしていくということは極めて大事であるというふうに思います。とりわけ、帰る場所のない刑務所出所者、また少年院の出院者等に対しましての一時的な住まい、また自立に向けた生活支援、これを一体的に提供できる施設ということでございますので、特に複雑な困難な問題を抱える処遇困難者、こういった方々が受け入れられる場合につきましても非常に大きな貢献をしていただけるものと期待をさせていただいているところでございます。
現在、この自立準備ホームに対しましては、更生保護委託費支弁基準、これに基づきまして、委託人員及び委託日数に応じました費用、これを支弁しているところでございまして、その単価につきましては対象者の抱える問題性の大きさにかかわらず一律であるということ、また平成二十三年度の制度が創設されて以降据え置かれているという状況となっておりまして、自立準備ホームの運営、先ほど御指摘いただきましたが、なかなか厳しいものがある中で、この支援が十分な状況でないということにつきましても御指摘いただいているところでございます。
この自立準備ホームにおきまして、処遇困難者等の受入れ、また処遇の充実を図りまして、安定的に運営していただくことが何よりも大事であるということでございますので、委託費の見直し、これを行うことによりまして、自立準備ホームの活動基盤の整備、これについては基盤整備に努めてまいりたいというふうに思っております。
○谷合正明君 前向きな答弁、ありがとうございます。
続いて、満期釈放者、保護観察終了者に対する支援の充実強化ということなんですが、満期釈放者の二年以内の再入率は仮釈放者の二倍以上となっておりまして、まさにここに対策を講じていく必要があると。
ところが、刑務所を出所すると同時に公的支援が切れてしまう満期釈放者という課題もあって、人とのつながりが薄く、また助けを求めようとしたがらないという実態もあることから、支援者から積極的に手を差し伸べることでその生きづらさを解消することが必要となっております。このことは私も岡山県の保護司会の方からもこうした話も伺ったところでございます。また、同様に、保護観察が終了することで公的支援が切れる保護観察対象者にも、保護司との継続的な関係を構築するなどアフターケアが求められております。
そのために、積極的に息の長い支援に取り組む保護司などの民間協力者に対して、国としてバックアップすることが必要と考えます。また、民間協力者と連携して、対象者の地域での立ち直りを支える拠点を取りまとめ、普及させるためのコーディネーターの存在も必要です。
これらの点について、法務大臣の答弁を求めたいと思います。
○国務大臣(上川陽子君) この満期釈放者対策についてでございますが、これは従前から再犯防止のための重点施策として掲げられてきたところではございますが、令和元年の十二月に閣議決定されました再犯防止推進計画加速化プランにおきまして、より重点的に取り組むべき課題として大きく取り上げ、そして取組を今加速している状況でございます。
満期釈放者の中には、人と円滑な人間関係をなかなか築くことができない方々、また、行政機関に対しまして援助を求めるスキルあるいは意欲、こういったことに乏しい方々もいらっしゃるということについては、その声を伺っているところでございます。本人にとりまして保護司の方々が身近な存在としていらっしゃるわけでありまして、こうした方々に対しましては地域で継続的な支援を行っていただいている、こうした例もあるということでございます。こういったことにつきましては、大変有効な取組ということで大変注目をし、大変感謝を申し上げているところでございます。
そのような満期釈放者等に対する相談支援の取組、これを保護司会、更生保護法人が地域の拠点となってバックアップし、一体となって取り組んでいる例もあるということでありますので、関係機関、互いに連携をして、地域で立ち直りを支える拠点機能、この重要性は今後ますます高まるものと認識をしていることでございます。
法務省といたしましても、積極的に取り組む保護司会、また更生保護法人等への支援の充実強化、これに図ってまいりたいというふうに思っております。
○谷合正明君 是非よろしくお願いいたします。
滋賀県の更生保護センターでは、息の長い支援基盤整備事業ということで、こうした今申し上げた事業をされているということなんですが、民間、民間というんですかね、休眠預金事業を使って今活動しているけれども、今後その休眠預金の、何というか、活用の期間が切れたときの継続的な支援ということが課題の一つとして挙げられているということでございますから、国としての、やっぱり本腰入れたバックアップが必要であるというふうに思っております。
続きまして、保護司活動に関して幾つかお伺いしたいと思います。ICT化の一層の推進ということでございます。
大臣は、所信におきまして、保護司活動のICT化を進めると述べられました。具体的にどのような施策が進められているのか説明願いたいと思いますが、特に本年度、保護司専用ホームページが運用されていると、ここが一つ、このICT化の本丸だというふうに承知しておりますけれども、これを今後実際使われなければもう宝の持ち腐れになるわけでありまして、使用方法等について保護司の皆さんに分かりやすく周知、活用していただく必要があると思いますけれども、法務省の取組について伺いたいと思います。
○政府参考人(今福章二君) お答え申し上げます。
ただいま委員御指摘のとおり、今年度から保護司が提出する報告書を電子化するなど、保護司活動の一部をウエブ上で行うための専用ホームページの開発、運用を進めております。同ホームページで行うことのできる具体的な機能としまして、これは高齢者が多い保護司の先生方のために使いやすさには十分配慮をしながらでございますが、その機能としましては、事件に関する報告書を作成し、保護観察所に提出できる機能、保護司さんの研さんのために必要な資料の閲覧ができる機能、そして保護観察所から必要な情報を連絡する機能を予定しているところでございます。
これらの使用方法等につきまして、保護司の皆様に周知することにつきましては、マニュアルの作成や研修の実施などによりましてきめ細かく対応するということとともに、今後とも保護司活動の負担を軽減し、若い世代にも保護司さんになっていただけますように、専用ホームページなどの保護司の活動環境の整備を図って、より一層の保護司活動のICT化を進めてまいりたいと思っています。
○谷合正明君 よろしくお願いいたします。
それでは次に、保護司の確保なんですけれども、やはり刑務所や少年院出た方の、後の立ち直りを支える保護司、数の減少、そういう人材確保が急務であるということはこの本委員会でも質問が出されてきたところでございます。
一方、事件数自体は減少しているので保護司の数が減っても問題ないのではないかというような受け止めもあるんですが、ただ、それは保護観察を受けている人の立ち直りを支援する処遇活動のみならず、保護司にはその地域の方々にその立ち直り支援の理解を、協力を求めていくという、そういう活動もあるということでありまして、保護司の役割というのは今日的にやはり大きいものがあるんだと思います。まさにそれを京都コングレスで大臣が訴えられたんだというふうに思います。
ある保護観察所では県の退職職員向けの説明会を企画したということであります。このような取組を含め、各地で様々な試みがなされております人材確保策をしっかり全国的に展開できるよう、情報供給や周知を図る必要があるのではないかと思いますが、法務省の見解を伺います。
○政府参考人(今福章二君) ただいま委員御指摘のとおり、保護司の適任者確保のために、今、地方公共団体によりましては、退職者、退職職員向けの説明会で保護司についての説明の機会をいただいたり、また現職の職員にも保護司になっていただくなどの御協力いただいている例がございます。こうした好事例につきましては、地方公共団体の担当者や保護司が参加する各種協議会等の場で積極的に情報提供を行って、横展開に努めているところでございます。
また、本年一月、総務大臣から法務大臣に対しまして、保護司の活動及び担い手の確保について、これをより一層推進するための必要な措置を講ずるようという勧告がなされております。その中の一つとしまして、保護司の安定的確保の観点から、地方公共団体への協力要請を行うべきであるということが盛り込まれました。
法務省におきましては、これまでも、総務省との連名によりまして保護司の適任者確保について協力を求める文書を地方公共団体の長宛てに発出するなどしてきたところでございますが、引き続き保護司組織と連携をいたしまして、地方公共団体からの一層の理解と協力が得られるよう、必要な取組を推進してまいりたいと考えております。
○谷合正明君 地方公共団体との連携をよろしくお願いしたいと思います。
続きまして、住居の確保について伺います。
出所者の再犯防止には定住先の確保が必要であります。身寄りのない出所者については、厚生労働省の事業により、各都道府県が設置する地域生活定着支援センターなどが支援を行っているところでございます。他方、福祉サービスからは出所者であることを理由に受入れを断られるということもあるというような指摘もあります。
法務省はこれら居住支援団体と連携しながら、再犯防止の意義の広報を行うなど、出所者の受入先の確保に取り組む必要があると考えます。見解を伺いたいと思います。
○政府参考人(今福章二君) ただいま委員御指摘のとおり、刑務所出所者等の再犯防止には定住先の確保が大変重要です。
そこで、今御指摘のあった地域生活定着支援センターとともに、また、住宅確保要配慮者の入居支援のノウハウを有する居住支援法人等との連携が肝要であると考えております。
令和二年度におきましては、厚生労働省及び国土交通省による住まい支援の連携強化のための連絡協議会に法務省も居住支援団体とともに参画するなど、住まいの確保等のため、緊密な省庁間連携を図っております。また、各都道府県、市区町村に設置されました居住支援協議会に保護観察所や更生保護関係者が参加できるよう、三省連名により地方公共団体に協力依頼も行っているところでございます。
今後とも、刑務所出所者等の定住先確保が進むように、居住支援法人等との連携の強化を進めてまいりたいと考えております。
○谷合正明君 続きまして、薬物事犯者の話を通じて依存症の方に対する孤立支援ということで質問していきたいと思います。
薬物事犯者の薬物再乱用を防止し、刑事施設への再入所を防ぐためには、刑事施設におけます指導、教育の後、出所後は保護観察所等での処遇が重要となります。さらに、保護観察終了後には地域の保健医療機関、援助機関等との連携が必要になってまいります。
依存症は孤立が生み出す病とも言われまして、立ち直るには、通院や投薬だけではなく、社会的な居場所や人間関係も大切とされているところです。
そこで、今現在、コロナ禍におきまして、依存症の方の交流の場が中止になったりオンラインに切り替わるなどの動きも出ております。ただ、当事者全員がオンラインでつながれるわけではないという指摘もありまして、このような中、関係機関の連携を強化し、依存症の方を孤立させないように継続的な支援をしっかり進めていく、配慮していくという意識を持つことがこのコロナ禍で大変重要になってまいります。法務大臣の見解を伺いたいと思います。
○国務大臣(上川陽子君) 委員御指摘のとおり、薬物事犯者、薬物再乱用、この防止のためには、刑事施設にいる段階から地域社会に至るまで一貫した処遇を行いつつ、出所後の生活環境を整えるとともに、地域社会においてまさに孤立させないために、継続的な支援、これが重要であると考えております。
規制薬物等に対する依存がある保護観察対象者に対しましては、刑事施設内における指導の結果も踏まえつつ、保護観察官が薬物再乱用防止プログラム、これを実施することに加えまして、薬物依存の改善に資する医療また援助を行う健康医療機関、またダルク等の民間支援団体と緊密な連携を確保することで、保護観察終了後も、地域におきまして孤立せずに継続的な支援につながるように努めているところでございます。
加えまして、更生保護施設を退所した者につきましても、地域において孤立しないよう、更生保護施設職員による継続的な支援を実施しているところでございます。ただいまコロナ禍ということでありまして、それでなくてもなかなか密な状況を回避しなければいけないということで、孤立が深まるという危険性がございます。
こういったことも踏まえて、しっかりと注意深く関係機関との連携、更に強化をし、薬物事犯者、これを地域の関係機関にしっかりとつなげていく、また、更生保護施設、またダルク等の民間の活動、この促進を通じまして、薬物事犯者が継続的な支援を受けられる環境づくり、コロナ禍においてもどのように対応するかということについて真剣に今取り組んでいるところではございますが、十全にできるように対応してまいりたいというふうに考えております。
○谷合正明君 大臣のモットーであります誰一人置き去りにしない、その精神の下で、しっかり孤立対策、孤立防止対策を進めていただきたいというふうに思います。
続きまして、刑務所出所者の住民票の確保についてちょっと確認をさせていただきたいと思います。
刑務所出所者の安定した生活基盤の確保のためには住民票などの基本情報が必要となりますが、住民票が自治体から職権で削除されているケースがあるといいます。その場合、福祉サービスを提供する自治体が新たな住民票の取得に難色を示すこともあるということも指摘されています。
出所者の生活基盤を速やかに整え、再犯を防止するためには、再び住民票を取りやすくする仕組みなどが必要となります。例えば、地域生活定着支援センターと連携し、対象者が出所する前の段階から住民票の新規発行手続を進めておくといった施策が可能ではないかと思います。現実に、法務省としてどのようにこの住民票の確保について取組をされているのかということを確認させていただきたいというふうに思います。
○政府参考人(大橋哲君) お答えを申し上げます。
高齢者又は障害を抱える受刑者のうち釈放後直ちに福祉サービスを受ける必要がある者につきましては、その前提としまして、住民登録が必要な場合が多うございます。その支援を行うに当たりまして、住民登録が消除、消されているということが明らかになるケースがあることは委員御指摘のとおりでございます。
現在、高齢受刑者あるいは障害を抱える受刑者の出所後の福祉的支援のために、刑事施設におきましては、常勤あるいは非常勤の社会福祉士等を採用しております。こうしたケースのうち、受刑者本人による住民登録が困難な場合には、受刑者の委任を受けまして、この社会福祉士等の刑事施設の職員が刑事施設所在の市役所等に赴いて代理で住民登録を行っているというところでございます。
今後も引き続きまして、自治体あるいは先ほど御指摘のありました地域生活定着支援センター等の関係機関と連携いたしまして、刑務所出所者の安定した生活基盤の確保に必要な措置を講じ、再犯防止に努めてまいりたいと考えております。
○谷合正明君 そういう取組をされているということなんですけれども、現にその住民票の削除で困っているという声も寄せられるものですから、しっかり対応をお願いしたいということを改めて強調させていただきたいというふうに思います。
それでは、今日は更生保護の在り方について論じてまいりました。このような各種施策を行い、再犯防止対策の充実強化のためには、言うまでもなく、保護観察官を始めとする関係職員のマンパワーということが必要になってまいります。
そこで、この保護観察官を始めとする関係職員の増員というものが必要になってくると考えますが、法務大臣、この職員の増員について見解を述べていただいて、増員必要だということをちょっと訴えていただきたいというふうに思っております。
○国務大臣(上川陽子君) ありがとうございます。
ちょっと答弁、今の御質問に対する答弁の前に、一点修正をさせていただきたいと思います。
先ほど私、再犯防止推進計画加速化プラン、この答弁の際に、令和元年十二月に閣議決定されたと申し上げましたが、正しくは令和元年十二月に閣僚会議で決定されたということでございますので、訂正させて、おわびを申し上げます。
ただいまの御質問でございます保護観察官の役割ということでございますが、社会内処遇の専門家でございます。保護観察の実施のほか、また保護司等民間協力者の活動を支援する地方公共団体等地域の関係機関とのネットワークの構築等、地域の安全、安心において重要な役割を担っていただいているものというふうに認識をしております。
近年、委員御指摘の再犯リスク、これが特に高い満期釈放者を含めました刑務所出所者等に対する住居、就労の確保、これが何よりも重要となっておりまして、十五の保護観察所に新たに社会復帰対策官、これを配置いたしまして、その対策の取組強化に着手しているところでございます。また、さらに、直ちに自立することが困難な起訴猶予予定者等に対する入口支援の充実等の重要性が増しており、さらに薬物乱用等の問題を抱える少年に対する専門的な指導、支援の実施等に新たに取り組む必要がございます。保護観察官の業務、一層多様化、困難化をしているという現状でございます。
このため、法務省といたしましては、これら再犯防止対策の充実強化に必要なこの保護観察官を始めとする人、そして物的な体制、この整備に取り組んでまいりたいというふうに思っておりまして、そのための施策、特に予算については大変重要なことでございますので、こちらの方についてもしっかりとバランスを取りながら対応してまいりたいと思っております。
○谷合正明君 それでは、今日は質問を、更生保護とかそういう話を中心にさせていただきました。地域において罪を犯した人の孤立、孤独としっかり向き合い、立ち直りを支える更生保護施設や保護司等の民間協力者の活動支援をしていただくと、再犯防止対策強化していただくということを最後改めて訴えまして、時間は余っているんですけれども、質問すべきことは質問できました。難波委員長も終わってもいいというようなシグナルがあるので、もしよければ質問を終わりたいというふうに思っております。
大変ありがとうございました。