○谷合正明君 公明党の谷合でございます。
まず初めに、大きな政策判断となりました商業捕鯨再開について質問をいたします。
私は、昨年九月、ブラジルで開催されましたIWC、国際捕鯨委員会の総会に、当時、農林水産副大臣として政府を代表して出席をいたしました。従来からIWCは資源管理を行う国際機関として機能不全状態でありましたが、ブラジルでの総会では異なる立場や考え方の共存まで否定されるという事態でありました。今のIWCの下では保護と持続可能な利用の両立は極めて困難であるという状況でございました。
〔委員長退席、理事二之湯武史君着席〕
総会の最後、私からこう申し上げました。IWCが一切の商業捕鯨を認めず、異なる立場や考え方が共存する可能性すらないのであれば、日本はIWC締約国としての立場の根本的な見直しを行わなければならず、あらゆるオプションを精査せざるを得ないと日本の立場を表明しました。
その後、政府は、昨年末にIWCからの脱退と、そして今年七月からの商業捕鯨の再開を表明いたしました。
そこで、まず外務大臣に伺います。
IWC脱退で日本は国際社会から孤立するとの懸念の声が上がりました。実際、いろんな各国の公式的なコメントを私も承知はしているところなんですが、実際どうなのか。実際、孤立だとか二国間関係の悪化という事態はあるのか。また、そうならないような外交努力というのはどのような外交努力を取ってきたのか。この点について伺います。
○国務大臣(河野太郎君) 我が国は、IWCから脱退をしても、IWCへのオブザーバー参加を始めとして国際的な鯨類の資源管理にはしっかりと協力をしていく、そういうことを申し上げているわけでございまして、捕鯨に反対をする国々の政府とも、これまで我が国の立場を説明し、資源管理にしっかりと協力をしていく旨説明をしております。また、そうした国々とも、これまでも、あるいはこれからも意見交換をしっかりと続けていくということで先方と合意をしてきております。
この問題が二国間の全体の問題に波及することがないようにということは多くの国と了解をしておりますので、今の時点で国際的に孤立しているということはないというふうに考えております。
ただ、この鯨の問題というのは、一部に感情的な問題に発展をする可能性がないわけではありませんので、引き続き、我が国の立場をしっかりと説明をし、資源管理にしっかりと協力をしていきながら各国の了解を得ていく努力を続けてまいりたいと思っております。
○谷合正明君 そうなんですね。私も、極めて各国の反応というのは冷静であったなというふうに、あるなというふうに思っているわけであります。その背景には、政府外交もあるんですけれども、議連を中心とした議員外交の力もあるということは私、ここで付言させていただきたいと思っております。
先ほど、外務大臣から、しっかり各国の理解を得ていくということなんですが、その一つのポイントとなるのが、七月から商業捕鯨を再開するわけですが、日本が現在も批准しております国連海洋法条約、この整合性をどう取るかということなんですね。この国連海洋法条約には、特に、鯨類について、保存、管理及び研究のために適当な国際機関を通じて活動すると明確に書いてありまして、この適当な国際機関を通じるということなんですが、IWC脱退後、この海洋法条約との整合性をどのように図っていくのかについて、農林水産大臣の説明を求めたいと思います。
○国務大臣(吉川貴盛君) 谷合委員御指摘のとおり、この国連海洋法条約におきましては、その締約国は海産哺乳動物の保存のために協力し、特に鯨については適当な国際機関を通じてその保存、管理及び研究のために協力するとされております。
我が国といたしましては、この国際法に従いまして、IWCにオブザーバーとして参加するなど、国際機関と連携をしながら科学的知見に基づく適切な資源管理のための国際協力を行ってまいりたいと存じます。
○谷合正明君 実は、ブラジルの総会では私はこう申し上げて、今後もIWCと国際捕鯨取締条約の目的を実現すべく様々な形で協力していきたいということでございまして、IWCから何か全て脱退するかのような印象を持った方もいらっしゃると思うんですが、実は、脱退はするんですが、IWC総会の下部委員会である科学委員会には今後も引き続きオブザーバーとして出席していくということでありまして、また、南氷洋でも、目視調査ですね、これ非致死的調査と言いますけれども、それは続けていくということで、いわゆるこの資源管理に協力していくという姿に変わりはないということでありまして、ここが極めて大事であるかなと思っていまして、このIWCとの協力、さらには、ほかの持続的利用支持国、NAMMCOであるとかそうした機関との協力も重要ではないかなと思っています。今、農水大臣からはそこまで答弁なかったわけでありますが、ここが対外的にどう説明できるかというところのポイントであるということを指摘させていただきたいと思っております。
それで、三十年ぶりの商業捕鯨の再開でございます。調査捕鯨と今回この商業捕鯨ということなんですが、同じ捕鯨だとしても、その目的、またその方法ですとか、また流通ですとか、これ違ってくるわけであります。商業捕鯨が軌道に乗るよう支援していく必要があろうかと思っておりまして、具体的に、平成三十一年度予算案、ここではどのようにこの支援策が盛り込まれているか、この点について引き続き農水大臣に説明を求めたいと思います。
○国務大臣(吉川貴盛君) 商業捕鯨が御指摘をいただきましたように三十年にわたり中断をされていたことに鑑みまして、国としましては、漁場の探査ですとか捕獲、解体技術の確立などにつきまして必要な支援を行うことといたしております。また、鯨の資源調査につきましては、非致死的調査ですとか商業捕鯨を実施する中で科学的データの収集も行うことといたしております。
三十年ぶりのこの商業捕鯨が一日も早く軌道に乗りますように、引き続き対応をしっかりしてまいりたいと存じます。
○谷合正明君 しっかりお願いしたいと思っているわけです。
昨年、私、和歌山県の太地町を副大臣として視察をさせていただきました。で、捕鯨関係者の皆様の声をしっかりと聞いてまいりました。
太地町が今、鯨、またイルカの共生の町ということで、昔から博物館もあるわけですが、これからもこの海辺の、海洋を整備して、イルカとかの鯨類と触れ合うような場をつくろうということで実際動いております。この姿に大変感銘を受けました。私自身がイメージしていた太地町というのは、映画の「ザ・コーブ」というのがありました。これは言わば反捕鯨団体の一方的な視点で描かれたこの太地町の姿ではないかなと。その姿を思って行くと全く違う姿なんです。これは実際、私は国民にもっと太地町のこの姿というのは知られてしかるべきであるというふうに実感をいたしました。
〔理事二之湯武史君退席、委員長着席〕
また、イルカ漁の若い漁師たちとも懇談をしまして、率直ないろんな意見交換もしました。そのときに一緒に写真を撮ったわけですけれども、顔写真を例えばSNSなんかでアップするということは、これは実は控えてほしいと。いろいろ、反捕鯨団体の、身を守るということもあって、そういう意味では大変窮屈な思いをさせているなということも実感をしたところであります。
反捕鯨団体の妨害であるとか、あるいは鯨なんて今食べなくていいじゃないかだとか、鯨のために国際的な評判を落としていいのかといった声にじっと耐えながらこの三十年間商業捕鯨の再開を待っていたのが、言わば太地町を始め捕鯨関係者の皆様ではないかなと私は思うわけであります。
総理、我が国は責任ある水産国家でございます。鯨類はほかの水産生物と同様に科学的根拠に基づいて持続的に利用されるべきでありますし、また、食習慣、食文化、鯨類の利用の多様性というのは尊重されるべきでありまして、この姿は、姿勢はぶれてはならないと私は思います。科学的根拠に基づき持続的に利用を図るというのは、これは水産政策の基本でありますし、科学的根拠というのはあらゆる政策の基本であると思います。
総理、一言、捕鯨関係者に声を掛けていただきたいのと、待ち望んだ商業捕鯨の再開ではありますが、それでも三十年のブランクがございます。この政府の支援というのは今後も続けていくという姿勢を示していただきたい。商業捕鯨再開の決意を伺います。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 谷合委員には、昨年の九月のIWC総会にも出席をいただき、また、和歌山県の太地町の状況も御覧になっておられるので十分に御承知であると、このように思いますが、我が国では、古来から鯨を食料としてのみならず、脂やひげを様々な用途に利用し、それぞれの地域で鯨を利用する文化を育んできたところでありまして、こうした鯨の利用については、他の水産資源と同様に、科学的根拠に基づき持続的に行っていくものと考えています。
我が国は、本年七月から三十年ぶりに商業捕鯨を再開します。我々の世代で商業捕鯨の火を絶やさず、未来に向けて継続する意義は大きいものと認識をしています。商業捕鯨を中断していたこの三十年という期間は、とりわけ早期の再開を待ち望んでいた捕鯨関係者にとっては本当に長く厳しいものであったと理解をしています。商業捕鯨が一日も早く軌道に乗るよう、国として、漁場の探査や捕獲、解体技術の確立など、必要な支援を行っていきます。
資源の利用が持続的である限り、それぞれの国の食文化は尊重されるべきと認識をしています。今後とも、国際社会の理解も求めながら、日本が古来から築いてきた鯨を利用する食文化や生活を次の世代に継続していく決意でございます。
○谷合正明君 大変ありがとうございます。
次に、残りの時間で次のテーマ、自殺の問題について取り上げたいと思います。
我が国の自殺の数は、今、九年連続で減少しているところであります。一方、唯一自殺の数が減らない世代がございます。それが十代、二十代の若い世代でございます。
まず、厚生労働大臣に、若者自殺の現状、そして国際比較、さらに、どのような若者自殺防止対策を講じているのか、説明を求めたいと思います。
○国務大臣(根本匠君) 我が国の自殺者数は、全体としては近年減少傾向にあります。しかしながら、年齢階層別の自殺死亡率を見ると、二十歳未満の自殺死亡率はおおむね横ばいとなっているほか、G7各国での若年層の死因を見ると日本だけが自殺が第一位であることなど、若者の自殺は依然として深刻な状況にあります。
自殺総合対策大綱に当面の重点施策として子供、若者の自殺対策を位置付け、厚生労働省において、特に若者の日常的なコミュニケーション手段であるSNSを活用した相談事業など、重点的に取り組んでいます。今年度中に相談支援のノウハウを集約したガイドラインを公表し、平成三十一年度にはこのガイドラインを生かした相談支援を推進することとしています。
引き続き、将来のある若者が自ら命を絶つ事態を防ぐため、若者の自殺対策について、関係省庁と連携し、しっかり取り組んでいきたいと思います。
○谷合正明君 それでは、文科大臣、若者の中でも、特に児童生徒の自殺の数の実態はどうなっているのか。二年前の予算委員会の質問の際も私は、SOSの出し方教育の普及と、今言及がありましたSNSの相談体制の強化をすべきと訴えました。今、実行する学校や自治体を広げていく段階であると考えます。実態を把握するとともに両政策をしっかりと推進していくべきと考えますが、大臣の見解を求めます。
○国務大臣(柴山昌彦君) 御指摘のとおり、近年高止まりの状況にある児童生徒の自殺数を可能な限り減少させていくための課題として、文部科学省といたしましては、今お話をいただいた、厚労省との連名の、学校におけるSOSの出し方に関する教育、これを積極的に推進するよう促すとともに、昨年八月には、そのSOSの出し方、非常に難しい部分もありますので、それに関する教育の教材例を示して取組の一層の推進を求めたところであります。
また、これと併せて、近年、多くの若者がSNSを主なコミュニケーション手段として用いている中、文部科学省においては、本年度でありますけれども、いじめや自殺などの様々な悩みを抱える児童生徒からの相談を受け付ける、SNS等を活用した相談体制の構築事業を実施をさせていただいておりますし、平成三十一年度予算案についても二億一千万円を計上をしたところであります。
これらの取組を通じて、児童生徒の自殺予防に向けた取組をしっかりと加速をしていきたいと考えております。
○谷合正明君 是非しっかりやっていただきたいと思っております。
最後に、総理にお伺いします。
予算委員会の理事として、今日まで約七十時間近くの審議をずっと聞いてまいりました。党派を超えた議論として、児童虐待根絶の議論もございました。公明党といたしましてもその点について提言をし、先般、政府提出法案の閣議決定がなされたところであります。
同じこの小さな命を守るという意味においては、この児童生徒の自殺対策を強化していくということは大変重要な課題であると私は訴えたいところでございます。自ら命を絶たざるを得ない、この現状を変えていかなければならないと思います。
総理、この児童生徒の自殺の実態の認識、また一人一人の尊い命を守るための対策を強化していただきたいと、関係省庁にもしっかりと指示をしていただきたい。その決意を伺いたいと思います。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 委員が御指摘になられたとおり、近年、自殺者の総数は減少傾向にある中で児童生徒の自殺者が高止まりしていることは大変ゆゆしき問題であります。児童生徒の自殺予防は喫緊の課題であると考えています。
このため、児童生徒が命や暮らしの危機に直面したときに誰にどうやって助けを求めるのか、つらいときには助けを求めるべきことを学べるよう、学校におけるSOSの出し方に関する教育を一層推進することとしています。また、SNS等を活用した相談体制を強化することを通じて、いじめや自殺など様々な悩みを抱える児童生徒が相談しやすい、これ非常に重要だと考えているんですが、相談しやすい環境を整えることとしております。
政府としては、今後とも、関係省庁の緊密な連携の下、この国の未来そのものである児童生徒の命を支えるための取組を全力で進めてまいります。
○谷合正明君 今日取り上げました捕鯨、自殺対策の予算は三十一年度の総予算の規模からすると小さい規模かもしれませんが、大変重要な予算であります。どの予算、政策も全力で当たっていただくことを求めて、私の締めくくり質疑といたします。
ありがとうございます。