○谷合正明君 公明党の谷合正明です。
本日の予算委員会の質疑テーマは外交・安全保障であります。私から、北朝鮮情勢、中東難民問題、また持続可能な開発のための目標
について取り上げたいと思います。
まず、自公政権が復活して三年が過ぎました。この間、安倍総理と岸田外務大臣のコンビがずっと続いているわけであります。歴代内
閣で三年以上の長期にわたりまして同じ総理と同じ外務大臣が同時期に務めているという政権は実は余り例がなく、戦後でいいますと、
吉田茂総理兼外務大臣、そして中曽根総理と安倍晋太郎外務大臣のとき以来、実に三十年ぶりのことであります。
総理や外務大臣がころころ替わるような政治ではないからこそ、総理は、これまで就任以来六十三か国にも訪問し、また、日本の総理
として初めて訪れた国も十四か国に上っております。さらに、首脳会談も四百回を超えております。この活発な、積極的な行動力、外交
の努力については高く評価したいと思います。
一方、懸念でありましたのは、特に中国と韓国との関係でございました。
私たち公明党も、昨年、山口代表の訪中、訪韓など政党外交を通じまして、日中、日韓関係の改善、両首脳会合の実現に向け努力をし
てまいりました。結果として、昨秋、日中、日韓両首脳会合、さらには日中韓のサミット、この定例化につながっていったわけでありま
す。今後も、安倍総理におかれましては、国民の皆様の期待に沿う外交を展開していただきたいと思っております。
そこで、自公連立政権、三年過ぎておりますが、安定した政治だからこそ果たせた外交の成果を安倍総理に端的にお答えいただきたい
と思います。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 政府が行う外交、そして議員外交も同時にあるんだろうと、それを補完をしながら、我々この三年間外
交を推進をしてきたわけであります。
御党におかれましては、今御紹介いただきましたように、山口公明党代表には政権発足直後に訪中をしていただくとともに、昨年十月
にも中国、韓国を訪問していただき、いずれの機会でも、私の親書を先方首脳に伝達をしていただくなど、重要な役割を担っていただき
ました。なかなか日中、日韓、それぞれ政府間においては様々な困難な課題があったわけでございますが、その中におきまして、御党は
長年の中国、韓国それぞれとの信頼関係の中において、そうした対話を進めていく言わば関係を、パイプをずっと維持をし、かつ、そう
したことを我々も山口代表とともに活用させていただいたわけでありまして、御礼申し上げたいと思います。昨年の十二月には、自民、
公明両党の幹事長が訪中いたしまして、約七年ぶりとなる与党交流協議会が開催されました。
このように、政府間の対話に加えて、連立与党においても議員間、政党間の交流を積極的に積み重ねていただいており、こうした自民
党、公明党の連立政権ならではの活動は、大局的観点から各国との関係を発展させていく上で非常に有意義であると思います。
本年は、安保理の非常任理事国として、先般も北朝鮮のミサイル発射に対して、各国、各理事国とともに厳しい決議をいたしました。
また、本年は、G7伊勢志摩サミット、そしてTICADの初めてのアフリカでの開催もあります。また、日中韓サミット日本開催など
、日本が世界の外交を引っ張っていく一年になっていくと、このように思います。
今後とも、外交を通じて、日本、そして地域や世界の平和のために貢献をしていきたいと思っておりますし、経済外交も進めながら日
本の国益をしっかりと確保していきたいと、このように考えております。
○谷合正明君 それでは、目下の国際社会の安全保障上の脅威であります北朝鮮の問題について取り上げたいと思います。
国連安全保障理事会は、三月三日に、四度目の核実験と、そして長距離弾道ミサイル発射を強行した北朝鮮に対しまして制裁を大幅に
強化する新しい決議案を全会一致で採択しました。そして、そうした中でありますけれども、本日、北朝鮮は再び弾道ミサイルを発射し
ました。本院でも二度にわたる国会決議を行っておりますが、特に我が国の平和と安全にとって著しい脅威であり、断じて容認されるも
のではありません。
国連安保理の制裁決議では、北朝鮮に出入りする全ての貨物の検査を国連加盟国に初めて義務付けた条項が、これが大きなポイントで
あります。この決議が絵に描いた餅にならないように、加盟国がその決議をしっかりと履行するかが焦点であります。
そこで、北朝鮮の核とミサイル開発を断念させるために我が国としてどのようにこの安保理決議の実効性を確保しようとされるのか、
外務大臣の見解を伺います。
○国務大臣(岸田文雄君) 北朝鮮に対して国際社会が強い明確なメッセージを示すために、各国が独自の措置を発表し、そして安保理
におきましても強い内容の決議を採択したわけですが、御指摘のように、この決議をしっかり履行するということ、全面的かつ厳格に履
行するということ、大変重要であると認識をいたします。
そして、それを担保する取組としまして、安保理の下部機関に北朝鮮制裁委員会、一七一八委員会という委員会が存在いたします。各
国がとった制裁措置及び制裁違反に関する情報等の検討を行う委員会ですが、この委員会、この中に専門家パネルも用意されております
。この専門家パネルには日本人も一人送り込んでいます。
こうした委員会あるいは専門家パネルをしっかり活用しなければならないわけですが、今回採択されました決議二二七〇は、全ての国
に対して採択から九十日以内の安保理への報告を要請しています。また、専門家パネルに対して、各国による報告の提出を支援する努力
を継続するよう要請しています。
我が国としましても、こうした委員会あるいは専門家パネルと緊密に連携することによって、この実効性をしっかり確保するべく努力
していきたいと考えます。
○谷合正明君 そこで、総理にお尋ねします。
昨年、日米ガイドラインの見直しと、そして平和安全法制の整備をしてまいりました。その目的は、我が国を取り巻く安全保障環境が
厳しさを増す中で、日米同盟の信頼性と実効性を強化して抑止力を高めることであります。そうした中で、今、野党の中には平和安全法
制を戦争法と称してこれを廃案にしようという動きがありますが、果たしてそれで我が国の平和と安全が守れるのでしょうか。備えが不
十分であれば、かえって不測の事態を誘発しかねません。
そこで、この度の北朝鮮への対応に関して、平和安全法制や日米ガイドラインの見直しが果たしている役割とか、具体的にどのように
機能しているかについて国民に分かりやすく説明していただきたいと思います。そして、その上で、核セキュリティ・サミットやG7の
サミットもございます、あるいは日中韓のサミットもございます、そうした一連の国際会合をてこにして東アジアの平和と繁栄を築く外
交努力をしていただきたいと、その取組のことについても併せて御答弁いただきたいと思います。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 昨年、アメリカ側の議会、あるいは政府関係者、また安全保障政策に関心のある人々は、新たなガイド
ラインを改定し、改正することができるかどうか、あるいはまたその基となる平和安全法制が成立をするかどうか注視をしていました。
その中で新ガイドラインが策定され、平和安全法制が制定をされました。その整備によって、日米の信頼関係は大きく向上し、そして同
盟関係は間違いなく一層強固なものとなりました。
実際に、先般の北朝鮮による核実験及び弾道ミサイルの発射への対処に当たっては、日米の連携は従来よりも一層緊密かつ円滑に行わ
れたものと考えています。米側においても、この地域の米軍を統括するハリス太平洋軍司令官は、平和安全法制と新ガイドラインは日米
の能力を向上させ、日米間の連携が向上したと、こう述べています。これは、新ガイドラインの下に新たに常時協議可能な同盟調整メカ
ニズムが設置をされた結果、不審な兆候を把握をした段階で速やかに必要な協議や協力を開始することが可能となった効果が顕著に現れ
たものだと考えています。この核実験の兆候あるいは弾道ミサイルの発射の兆候を踏まえる中において、このメカニズムがその段階から
これは機能をいたしますから、当然、大きくこの連携は進んだ、これは相当大きく進んだというふうに考えていただいていいんだろうと
思います。
このような同盟調整メカニズムを裏打ちするのが平和安全法制でありまして、あらゆる事態に切れ目なく対処し得る平和安全法制が整
備された結果、日米間の連携も切れ目なくスムーズに行うことが可能となったものと考えております。
そして、更に言えば、国と国との間の条約に基づく同盟関係といえども、それを支えるのはそれぞれの国の、国同士の、例えば日米の
人同士の関係であります。平和安全法制の整備によって日米を守るためにお互いが助け合うことができる、お互いが助け合うことができ
るという同盟になった以上、なったことによって、米側と日本側が、これはもう誰が考えてもきずなは強くなるわけであります。まさに
、この平和安全法制によって、そして新しいガイドラインによって、この強固になった両国のきずなによって間違いなく日米同盟は強化
され、結果として抑止力も強化されるわけであります。結果として地域の平和と安定は保たれている、より保たれていくことになると、
このように確信しているわけでありまして、これは、まさに先般の対応はこれが具体的な形で現れたものだと思います。
また、米政府だけではなくて、米国民を代表する米議会の上院外交委員会と軍事委員会も共同で、平和安全法制の成立を歓迎し、重要
な同盟を強化するものとの声明を出しています。
平和安全法制の廃止は、日米の連携を低下させ、信頼関係を損ない、ひいては同盟関係を大きく損なうものとなると、このように思い
ます。
我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増している中、国民の命と平和な暮らしを守るためには、現実を直視し、あらゆる事態
に切れ目のない対応を可能としなければならないわけでありまして、今朝も北朝鮮が弾道ミサイルを発射をしたわけでありまして、この
中で、しっかりと日米の同盟のきずなの中で我が国の国民の命と安全を守り抜いていきたいと、このように思います。
○谷合正明君 しっかりと対応していただきたいと思います。
時間の関係上、次の中東難民問題に移らせていただきたいと思います。
まず、シリアにおけます邦人ジャーナリストの拘束事案でありますけれども、政府におかれましては、邦人の安全確保に向け全力を挙
げていただくことを要請したいと思います。
そして、難民問題でありますが、昨年、紛争などで難民となった数が世界中で六千万人を超えた、過去最多の数であります。一番発生
数が多い国はシリアであります。シリアの混乱が、難民を受け入れる中東の周辺国の負担の増大ですとかあるいは不安定化、さらには欧
州をも揺るがす国際問題になってきました。同時に、IS、イスラム国に見られるようなテロリストの台頭という安全保障上の脅威も生
まれております。まず、シリアの和平なくして中東の安定や難民問題の解決はありません。その意味でも、我が国としてシリア和平に向
けた最善の努力を尽くしていくべきであります。
そして、忘れてならないのは、実際難民が直面する人道の危機であります。私は、我が国としてこの難民支援をどう進めていくべきか
、それを探るために、昨年通常国会が終わった翌日に、中東のヨルダンのシリア難民キャンプと、そしてパレスチナ自治区のガザ地区を
訪れました。
私が訪れたガザ地区は、東京二十三区の六割ほどの面積に百七十万人の方が暮らしている地域であります。そのほとんどがパレスチナ
難民です。周囲はイスラエルに囲まれております。過去五、六年で三度イスラエルと交戦を繰り返し、経済は完全に疲弊しております。
(資料提示)
写真を御覧いただいて分かるとおり、停戦後一年たっておりますけれども、ガザの地域というのはまだまだ戦争の爪痕が色濃く残って
おりました。停戦合意が一昨年なされましたけれども、それを受けて、日本を含めてガザ復興国際会議というものを開催しました。この
地域が過激派の温床とならないようにどのようにしていくかということを協議したわけですね。
では、そのガザ地区なんですけれども、子供たちの様子はどういったものなのかということを、もう一枚の写真を見ていただきたいと
思うんですが、これはガザの子供たちがたこ揚げをしている様子の写真です。実は、これは毎年三月十一日に、東日本大震災からの復興
を祈念しまして現地の子供たちが学校の校庭でたこ揚げをしているんですね。
私が訪れた中学校の生徒たちは大変親日的でありまして、大変勉強熱心でありました。口々に日本に留学したいと夢を語っていました
。世界で一番大きな牢獄とも言われておりますガザに暮らす子供たちにとりますと、一歩外に出て平和な世界を見てみたいというのが実
は夢なんですね。
その子供たちですが、昨年の十一月、生徒代表三名と学校の先生がNGOのリザルツの招聘で来日することができました。真っ先に向
かったのが岩手県の釜石。そして、釜石に行って日本の子供たちと一緒にたこ揚げをしました。翌日には安倍総理にも面会をしていただ
きました。
そのとき安倍総理に語った言葉が非常に印象的でした。たこ揚げが大変楽しかった、生まれて初めて外で何不自由なく、思い切り恐れ
なく遊ぶことができたと。もう一人の男の子は、釜石に行って津波で流されている町の映像を見たときに、大変自分たちの地域とオーバ
ーラップして悲しくなった、しかし、釜石の子供たちが前を向いて明るく頑張っている姿に励まされ、自分たちも頑張ろうと思った、今
ガザの復興のために力を合わせていることを日本の皆様にも是非知ってもらいたいと総理を前にして語っていました。一週間という短い
滞在ではありましたけれども、彼らにとっては非常にすばらしい経験になりました。十年、二十年後にはその国、地域の将来を担うリー
ダーになることを私は確信しました。
パレスチナのガザだけではなくて、内戦中のシリアでも、今もなお、戦渦の中、学生たちがダマスカス大学やアレッポ大学で勉強を続
けています。親を失い、故郷を追われ、精神的に不遇な子供たちが、それらの逆境に負けずに大変勉強熱心だったということを目の当た
りにしまして、彼らへの教育支援こそ日本ができる効果的で重要な難民支援の新たな一歩であると私は確信をしました。
そこで、シリアを含む中東諸国からの国費留学生の枠を拡大すること、研修事業の拡充や短期交流事業の推進を通じて、戦渦によって
教育を受ける機会を失いつつある若い世代に教育支援を行っていくべきと考えますが、外務大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(岸田文雄君) まず、暴力的過激主義が拡大する中東地域において、日本は過激主義を生み出さない社会の構築支援を行っ
ております。また、中庸が最善という考えの下、寛容で安定した社会を中東地域に取り戻すため、中長期的な視野に立った支援を積極的
に進めております。
これからも、我が国の強みであります人道支援を中心に、非軍事的な面でこの支援に取り組んでいかなければならないと思いますが、
その中にありまして、御指摘の子供たちあるいは若者に希望を与える、あるいは相互理解を進めるという意味で人的交流は大変重要であ
ると考えておりますが、難民問題というもの、これは国際社会が一体となって取り組まなければならない課題ですが、その中でも、御指
摘の教育、これは重要な役割を果たすと認識をしております。公明党からも貴重な御提言をいただいております。こうしたものをしっか
りと参考にさせていただきながら、留学あるいは研修あるいは様々な交流、いろんな形で日本として受け入れられる可能性を検討してい
きたいと考えます。
○谷合正明君 総理も、本会議では山口代表の質問に対し、将来その国や地域を担う難民の子供たちを留学生として日本に受け入れる可
能性を検討すると答弁されておりますし、実際にガザの子供たちとお会いされていますので、一言、もう少し外務大臣以上に前向きなち
ょっとコメントをいただきたいと思うんですが。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 谷合先生のお計らいでガザの子供たちにもお目にかかることができました。まさに平和を希求する子供
たちの願いが伝わってくるようでございましたし、日本にいて本当に別世界だという彼らの言葉を聞いて、彼らがいかに困難な状況で日
々を送っているかということも実感いたしました。
また、十一月に、中東和平プロジェクトで来日したイスラエルとパレスチナの子供たちを官邸に招き、面会したこともございました。
子供たちが日本での滞在を通じてお互いを理解し合う気持ちを育み、手を携えて平和への実現の決意を新たにした、そういう話を聞いた
ときに大変感銘を受けたところでございます。大変困難な状況の中で、日本に行って学びたい、そういう子供たち、青年たちの思いをで
きる限り我々も実現していきたいと、こう思っています。
政府としては、委員が挙げられた留学、研修、交流事業といった様々な手段を活用しながら、中東地域の将来を担う有望な若者を今後
も積極的に日本に招いていきたいと思います。
○谷合正明君 是非よろしくお願いいたします。
それでは、次の課題に移りたいと思います。持続可能な開発のための目標であります。
昨年九月の国連総会におきまして、いわゆるSDGsが全会一致で採択されました。この持続可能な開発のための目標は、全ての国連
加盟国を対象に、二〇三〇年を目指し、貧困をなくすことや質の高い教育、気候変動対策など十七の目標を定めたものであります。
大事な点は、①にありますように、このSDGsの目標には誰一人置き去りにしないという人間の安全保障に根差した理念が貫かれて
いるということであります。これは、私は一億総活躍社会の理念と相通ずると思っております。
もう一点は、②にありますように、日本も貧困や格差問題に国際貢献するだけではなくて、国内の問題として国内実施する必要性が出
てきたことであります。
このSDGsは、二〇三〇年に向けた我が国の内政、外交の一つの大きな方向性として極めて重要であると考えます。しかし、現状は
、このSDGsの認知度も低くて関心も余り高いとは言えない。
そこで、我が国としてこのSDGsに積極的に取り組むことの重要性について、総理から御説明いただきたいと思います。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 持続可能な開発目標、SDGsの国内実施体制に関しては、委員の御指摘も踏まえまして、関係省庁の
緊密な連携を図りつつ、政府一体となって目標の実施を推進していきたいと考えています。
伊勢志摩サミットでは、日本が重視してきた保健、女性、質の高いインフラなどの分野でリーダーシップを発揮をしていくとともに、
議長国として、持続可能な開発目標、SDGsの実施に向けG7として最大限に取り組むとのメッセージを発出したいと考えています。
国内での取組に当たっては、御指摘のとおり、民間企業や有識者、市民社会等との連携を図ることが重要であると考えております。
○谷合正明君 今、総理の方から、G7のサミットの中で議長国としてこれをしっかりと推進していくということを表明していくんだと
いうお話がございました。
改めて、政府一体となって進めていくということなんですけれども、私自身も、公明党の中に持続可能な開発の目標の推進のための委
員会を設置しまして、これまでNGOの方々ですとか研究者の皆様から意見を伺ってきたんですが、まさに、出された要望のまず第一は
、政府、司令塔機能をつくってほしいという話なんですね。今現在、ドイツや北欧などいろいろな国がSDGsの達成に向けた体制、計
画を検討しているところであります。
政府の中に司令塔をつくっていくということ、その司令塔を基にして、大事なことは、これは政府だけがやるんじゃなくて、民間企業
や市民社会を一緒に連携しながらやっていくことでありますから、この点について改めて、司令塔をつくっていくということを要請した
いと思います。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 昨年の九月に、私は国連持続可能な開発サミットに出席をしまして、国際社会とともに持続可能な開発
目標の実施に向けて最大限努力していくことを表明をいたしまして、そのために、旧来の南北の二分法を乗り越えて、全ての国、民間の
企業、市民社会など、あらゆるステークホルダーが役割を果たす新たなグローバルパートナーシップが不可欠であります。
このような観点からも、国内でも持続可能な開発目標についての認知度を高めていくとともに、関係省庁や広範なステークホルダーと
の間で連携を図っていくことが求められております。そういう連携を図りながら目標達成に向けて積極的に取り組んでいきたいと、こう
思っておりますが、まさに、そのためにも関係省庁との緊密な連携を図りつつ、政府一体となって目標の実施を進めていきたいと、こう
思っております。
その上においては、先ほど申し上げましたように、取組においては、我々が中心となって、民間企業や有識者、市民社会等との連携を
図っていくことが重要だろうと、このように思います。
○谷合正明君 ありがとうございます。
もうG7も直前でございますので、このSDGsをしっかりと推進していく、そのリード役を我が国が果たしていただきたいと思って
おります。
ところで、このSDGs、持続可能な開発目標の中には教育のことが書いてありまして、二〇三〇年までに全ての人々が大学を含む高
等教育への平等なアクセスを得られるようにするとあるんですね。平等なアクセスとは、一般的には保護者の資力によらないと解されて
おりまして、一つの有効的な手段として、返済の要らない奨学金、いわゆる給付型奨学金というものが考えられます。まだ我が国におい
ては、大学生向けの給付型奨学金というのは制度としてはございません。
そこで、文部科学大臣、改めて制度を創設することを強く求めたいと思いますが、大臣の決意を伺いたいと思います。
○国務大臣(馳浩君) 給付型奨学金の重要性については十分に認識をしております。と同時に、四つの論点を今まで申し上げてきてお
ります。就職して所得税や住民税を払っておられる方との公的資金の使われ方のいわゆる公平性の問題が一つ、財源が一つ、対象をどう
するか、そして給付の在り方をどうするか、ここが十分議論されなければいけないと思っています。
特に、大学進学率を見てみますと、一般には七三%でありますが、児童養護施設に入所されているお子さんの大学や専門学校への進学
率は二三%であります。また、生活保護世帯や一人親世帯は四〇%台にとどまっております。ということは、その子供たちは、もう恐ら
く中学生ぐらいの段階で、自分の置かれている生活環境からして、大学に進学をする、専門学校に進学をするということは残念ながらそ
の時点で諦めざるを得ない子供たちもいるのではないかということです。
ただし、奨学金制度は、御承知のように、減免制度もございますし、平成二十九年度から所得連動返還型の制度も始まります。である
ならば、やはり対象を限定し、財源も考えた上、そして公的資金の使われ方の公平性も考えた上で、一人一人のお子さんたちに着目をす
る上で、最初から諦めなくても、こういう奨学金制度があるならば、そして意欲と能力があるのであるならば、その子供たちにも大学進
学への、また専門学校等への進学の道を切り開いてあげるべきではないのかというのが私の問題意識であります。
改めて、政府全体の問題であると思いますし、一億総活躍社会の政権の一員として今後とも積極的に取り組んでまいりたいと思います
。
○谷合正明君 力強い答弁、ありがとうございます。
金融庁におかれましてもこの給付型奨学金を検討しているということでありますが、その進め方について伺いたいと思います。
○大臣政務官(牧島かれん君) お答えいたします。
谷合委員より、金融庁の取組についての御質問がございました。
振り込め詐欺救済法に基づく奨学金事業について、金融庁、内閣府、財務省の政務官を主体とするプロジェクトチームにおいて検討を
行ってまいりました。犯罪被害者等の子供に対する奨学金事業を貸与制から給付制へ移行するといった内容の報告書を昨日十七日、公表
いたしました。
この奨学金事業は、振り込め詐欺等の被害金を原資とすることなどを踏まえつつ、これまでの貸与制では奨学生の数が伸び悩んでいる
という状況に鑑み、今般、これを給付制に変更することが望ましいと判断いたしました。
今後、平成二十八年度中を目途に給付制奨学金事業の募集が開始できるよう、前向きに準備を進めてまいります。
○谷合正明君 ありがとうございます。二十八年度中に開始していただくようお願いいたします。
次に、残された時間でございます、国内の問題になるわけでありますけれども、自殺対策について取り上げたいと思います。
今月三月は自殺対策月間であります。自殺の問題でありますけれども、実は、参議院からまず全会一致で成立している自殺対策基本法
の改正法案というのを、今まさに今日は衆議院の方で逆に議論しているわけでありますけれども、なぜこの改正法案を今やっているかと
いうと、やはりこの自殺の問題というのは極めていまだに深刻であるという点と、もう一つの視点は、若い世代の自殺率の問題が依然残
されているんですね。
十代後半から二十代、三十代にかけた我が国の若い世代の死亡原因の第一位は自殺なんですね。こうした国というのは実は先進主要七
か国の中で日本ぐらいでして、極めて突出しています。私は、超党派の若者自殺対策ワーキングチームの座長として取り組んでまいりま
したけれども、この自殺対策基本法の改正案の中にも、まさに子供たちが命や暮らしの危機に直面したときに自ら助けを求められるよう
にするための教育、これを盛り込みました。
文科大臣にお伺いしたいんですけれども、この教育の現状と今後の取組、そして、この教育をしたとして、子供たちがSOSを上げた
としても、それを教師が受け止められなければ意味がないわけであります。自殺対策に資する教職員等への研修も併せて進めていくべき
だと考えます。文科大臣の答弁を求めます。
○国務大臣(馳浩君) 現状は、教員等に対する研修会の実施、教員向けの自殺対策のマニュアル、自殺が起きたときの背景調査の指針
、緊急対応の手引き、学校における自殺予防教育導入の手引の作成、周知、スクールカウンセラー等の教育相談体制の整備、こういった
ことを行っております。
今回の改正法案では、第十三条で、地方自治体は自殺対策の計画を定めること、第十七条では、国及び地方自治体は学校の教職員等に
対する研修機会を確保すること、そして児童生徒等の心の健康の保持に係る教育、啓発を行うよう努めることとなっております。こうい
う機会を通じて自殺予防対策を積極的に進めてまいります。
○谷合正明君 自殺総合対策大綱の中には、自殺のハイリスクがあるものとして、性的マイノリティー、LGBTが挙げられております
。昨年四月に文部科学省は、心と体の性が一致しない性同一性障害の児童生徒に対する学校での対応例をまとめ、全国の教育委員会に通
知を発出しました。その中でも、LGBTと呼ばれる性的マイノリティーの児童生徒への対応に言及がなされました。
国際的には、二〇一一年の国連人権理事会で決議がなされております。二〇一五年、昨年八月には国際オリンピック委員会によるオリ
ンピック憲章が改定され、性的指向を理由とする差別をなくしていくことが明記されております。私も当事者の学生の声を聞く機会があ
りましたが、いじめや周囲の心ない言動に苦しんできた声ばかりでございまして、皆共通して教育段階での理解促進の取組を強く望んで
いました。
そこで、文部科学大臣にお伺いしますが、性的指向や性自認を理由とする差別の解消やその理解促進に取り組むべきではないかと考え
ますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(馳浩君) 谷合委員は超党派のLGBT等に対する理解を求める議員連盟の事務局長を務めていただいております。私は会
長でありますが、改めて、いつもありがとうございます。
昨年四月三十日には文科省としても通知を出しました。改めて、より分かりやすい周知資料の作成などによって、スクールカウンセラ
ーを始めとした教職員に対しての必要な理解促進に努めてまいりたいと考えております。
同時に、LGBTという言葉は、いわゆるレズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーの用語の頭文字を取っておりま
す。ただ、事案の重要性を考えた場合に、私は、いわゆるSOGI、セクシュアル・オリエンテーション・アンド・ジェンダー・アイデ
ンティティー、性的指向と性的自認、こういう課題であるということをやはりより具体的に分かりやすく理解していただく必要があると
思っています。
ただ、児童生徒の場合には、発達段階に応じて対応が必要でもありますし、個人個人の対応がより重要だと認識をしております。
○谷合正明君 終わります。
○委員長(岸宏一君) 以上で谷合正明君の質疑は終了いたしました。(拍手)