○谷合正明君 公明党の谷合正明です。
総理、広島、長崎への原爆投下から間もなく七十年を迎えようとしております。この春、核軍縮また不拡散についてテーマにいたしました、NPT、核拡散防止のためのNPT再検討会議が開かれましたが、しかし残念なことに、中東問題もありましたので、最終合意ができなかったということであります。ただ、核兵器の非人道性については参加者の中で一定の合意を得たということは、私は大きな前進であったというふうに受け止めております。
この夏、広島で国連の軍縮会議があります。また、秋には長崎でパグウォッシュ国際会議が開かれ、来年には広島でサミットの外相会合が開かれるということでございます。核保有国と非核保有国の対立が激しい国際社会の中で、唯一の戦争被爆国日本としてこの両者をつなぎ合わせるという意味において、我が国日本の役割というのは極めて大きいものと私は思っております。昨年、この平和安全法制の基礎となります閣議決定されましたが、この閣議決定の中にも、我が国は平和国家を堅持する、それから非核三原則を貫いていくということが盛り込まれたところでございます。
〔委員長退席、理事佐藤正久君着席〕
改めて総理には、国会との関係もありますけれども、八月六日、八月九日と広島、長崎の両被爆地を訪れていただきまして、総理として我が国としての核軍縮、核廃絶の決意のメッセージをしっかりと発信していただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 七十年前、長崎そして広島において、それぞれ一発の爆弾、原爆によって多くの命が失われ、そして人生も将来も失われたわけであります。生き残った方々も辛酸をなめながら塗炭の苦しみの中で人生を送ってこられたわけでございまして、我が国は世界で唯一の戦争被爆国として核兵器のない世界の実現に向けて国際社会の取組を主導していく決意であります。
今次、NPT運用検討会議において最終文書が採択されなかったことは大変残念でありますが、引き続き、核兵器のない世界に向けて積極的に取り組んでいく考えであります。具体的には、被爆七十年にふさわしい新たな核兵器廃絶決議案を本年の国連総会に提出をいたします。また、本年九月の包括的核実験禁止条約、CTBT発効促進会議等の重要な国際会議を通じて、国際的な核軍縮・不拡散の取組を促進していく考えであります。
八月六日及び九日の広島及び長崎における平和祈念式典については、国会の日程が許せば私自身も出席したいと、このように考えております。
○谷合正明君 今総理の方から、この秋の国連総会には新たな決議案を出していきたいという御決意も示されたところでございます。しっかりとこれからも被爆国日本としての役割というものを果たしていただきたいというふうに思っております。
それでは、今日は平和安全法制の中で、特に国際社会の平和と安全に関連しますPKO法改正案と、それから国際平和支援法案に絞って質問をさせていただきたいと思います。
実際、PKO法、現に南スーダンPKOに自衛隊、隊員の方が約三百五十人派遣されておりまして、極めて重要な法案だと思っております。しかしながら、衆議院の段階では、なかなかこのPKO法についての議論というものが不足していたのではないかなと私は思ったところでございます。
それでは、パネルを見ていただきたいというふうに思っております。(資料提示)
このPKO法でございますけれども、今日私の方から取り上げたいのは、法改正する部分、幾つかありますけれども、赤字で示させていただいたところを中心に取り上げていきたいと思います。例えば、いわゆる駆け付け警護のところでありますとか、あるいは自衛官の国際連合への派遣でありますとか参加五原則であります。そういったところを取り上げていきたいと思っております。
最初に、駆け付け警護でございます。
今から約二十年前の話でございますけれども、私がかつて所属していたNGOが、アフリカのルワンダ難民の救援のために日本人の医師、看護師の医療スタッフを現地に送って活動しておりました。活動中、そのNGOの日本人スタッフが難民キャンプで群衆に取り囲まれまして、移動手段で活用していました車両が奪われるという事案が発生をいたしました。このとき、このNGOからの要請に基づきまして、たまたま近傍で自衛隊が活動しておりました。このとき自衛隊はルワンダ難民救援隊で派遣をされておりました。その自衛隊の方がNGOのスタッフたちを保護し、自衛隊の車両で宿舎まで運び届けてくださったということであります。
しかし、PKO協力法に基づく自衛隊の活動には、いわゆる駆け付け警護は憲法九条で禁止する武力の行使につながりかねないということで任務には入っていなかったわけですね。今もそうなんです。実際、当時、現地にも日本のマスコミが多く行っておりました。当時のマスコミ報道、新聞報道を見てみますと、自衛隊による邦人の救出は任務に入っておらず、議論を呼ぶという報道でございました。政府も、救出ではなくて輸送業務と位置付けざるを得なかったわけです。こういう中で、私、そのNGOに所属していた者といたしまして、当時、派遣された自衛隊の隊員、特に隊長の決断で救出していただいたということは本当に感謝の思いなんです。
今、国際社会の平和と安全のためということを言いますと、脆弱国家など治安の悪い地域で、例えばユニセフなどの国連機関、国連職員、そして民間でありますNGOの職員、そしてPKOに参加している部隊がそれぞれ能力を生かしながら、同じ地理的範囲の中で医療支援であるとかあるいは住民保護であるとかインフラ整備活動などを展開しているわけです。今後、PKOに派遣された自衛隊が、危険に遭遇している活動の関係者から結果として要請を受ける場合もあるんだと思います。
そこで、この度、平和安全法制の一つでありますPKO法改正案には、任務遂行の武器使用を認め、要請に基づく駆け付け警護が盛り込まれたところであります。私も当然必要だと思います。ただ、憲法九条に違反するおそれがあるとして反対を表明されている方々もおりますけれども、私は、自衛隊が参加するPKOの現場の実情を訴えて、理解を求めてまいりたいと思っております。
ただし、NGOの出身の者として、NGOが自衛隊に駆け付け警護で救助されることを初めから計画して現地で活動する、危険地域に赴くということはないわけであります。一般に、NGOは人道性、不偏性、中立性を重んじて活動しております。最後の手段として警護を要請するということがあるんだと思います。そこを政府が、何かあたかもNGO側が駆け付け警護を法的にできるように要望しているかのように説明することに違和感があるわけであります。政府は、関係する援助関係機関側に今回の法整備の意味を十分に私は説明する必要があると思います。
以上のことを申し上げた上で質問です。
駆け付け警護の対象となる条文上の活動関係者とは具体的に誰を指すのか。そして、その関係する活動関係者にしっかりその法整備の意味を説明する必要があると思いますけれども、その対応はいかがでございましょうか。
○大臣政務官(石川博崇君) お答え申し上げます。
NGOの現場で活躍されてきた谷合委員からの貴重な御意見に感謝申し上げたいと思います。
御質問の駆け付け警護の対象でございますけれども、今回の法制で規定させていただきますいわゆる駆け付け警護の対象者は、国連PKO等の活動に従事する者又はこれらの活動を支援する者と規定されております。これは、具体的には国連関係者、国際機関、NGO職員、平素より業務上の交流のある現地邦人等を想定させていただいているところでございます。
政府といたしましては、これまでも、自衛隊の活動の現場において、平素より国際機関やNGOの職員の方々との情報交流、あるいは情報交換や交流を始め各種の連携を図ってきているところでありまして、自衛隊の部隊等による緊急時の保護に対する期待があるものと考えております。
今後とも、このような連携の中で、駆け付け警護を含む自衛隊の業務について説明の機会を求めていき、自衛隊の部隊等の具体的対応について理解を得るべく努力を行っていきたいと考えております。
○谷合正明君 実際に今、南スーダンに自衛隊員が派遣されているわけですね、PKOで。PKOで派遣された方の話を聞きましたら、この駆け付け警護が可能になるとなると、実際に現場で要請があったときに駆け付けて警護ができるかどうかの判断力が求められると。ですから、駆け付け警護が可能となったとして、どういう状況下までなら駆け付け警護が可能なのか、その判断基準、手順、また平素からの準備について説明をされたいと思います。
○大臣政務官(石川博崇君) お答え申し上げます。
このいわゆる駆け付け警護業務は、あくまで活動関係者の近傍に所在する、例えば南スーダンでいいますと、施設部隊等が現地治安当局や安全確保を担う国連PKO等の部隊よりも速やかに対応できる場合に、緊急の要請に対応してその現場に駆け付け、当該活動関係者の生命及び身体を保護するものでございます。
その判断基準、手順でございますが、実際に駆け付け警護業務を行うかどうかは、必要に応じて現地治安当局や安全確保を担う国連PKO等の部隊からの情報を得て部隊長により判断されることとなりますが、その際には、当該自衛隊の部隊等が有する能力の範囲内において、現地治安当局等より迅速かつ安全に保護することができるかについて、当該活動関係者の状況も踏まえた上で個別具体的に判断されることとなります。
駆け付け警護は、本来、安全確保を担わない施設部隊等が通常有する装備等を前提に緊急の要請に応じて実施するものである以上、例えば、拉致監禁されたような活動関係者の救出、奪還を行うようなことは想定されていないということも申し添えたいと思います。
○谷合正明君 実際、派遣隊員がこの件については関心を持っておりますので、防衛省といたしましてもしっかりと対応していただきたいと思っております。
次に、私はこれまで、PKOの現場でいいますと、二〇〇五年の南スーダン、まだ独立前でありましたけれども、スーダンのジュバを訪れまして、当時設立されたばかりでありましたけれども、UNMISの部隊関係者の方とも意見交換をさせていただきました。また、二〇一〇年には、中谷防衛大臣と一緒に大地震直後のハイチのPKOの現場にも行かせていただきました。
南スーダンのジュバでは、二〇〇五年の当時はまだ日本の自衛隊がPKOで派遣されていなかったんですけれども、私が行ったときは、真っ先に国連関係者から、自衛隊の輸送部隊、これをしっかり派遣してほしいという要請もございました。それから、ハイチのときは、あのときは大臣と一緒に、当時PKOで派遣されたばかりの陸上自衛隊の隊員の方とともに、ハイチPKO全体を統括するトップの方とも意見交換をさせていただきました。その方は、日本の自衛隊の派遣に対しまして歓迎した上で、首都ポルトープランスの中での被災民キャンプの設置でありますとか瓦れきの除去などに強い期待感を表明していただいたということを私は覚えております。
南スーダンやハイチでの事例を紹介したとおり、我が国自衛隊の輸送部隊やあるいは施設部隊、この能力、技術というものは、現地受入れ政府であるとか国際機関から高く評価されているところであります。常にその派遣を期待されているところもあります。
しかし、私にとって少し気掛かりだったのは、PKOそのものを企画調整する司令部要員の派遣というものがほかの先進国に比べて少ないのではないかなというふうに思ったわけであります。この日本のPKOの歴史、二十年以上にわたる歴史の中で、司令部要員を派遣する力も付けてきたと思います。
今、国連PKOは、昔ながらの停戦監視を主軸とする伝統的PKOから、むしろ今、実際に国づくりであるとか住民保護に汗を流す複合型のPKOに転換しております。ですから、我が国の施設部隊の技術力を生かすことはもちろんでありますが、これからは、より責任ある重要な職域としてのPKO全体を企画調整する司令部要員を増やして、国連司令官に人を送るということが今後の日本のPKOの進むあるべき姿ではないかと私は現地を訪れて感じたところでございます。
現在、南スーダンPKOの派遣が続いておりますが、今回の法改正で国連司令官ポストの新設や司令部要員の規定の明確化がなされておりますが、その必要性と、自衛隊員が司令部要員や司令官に就くことの意味について、防衛大臣の見解を伺います。
○国務大臣(中谷元君) 谷合委員におかれましては、大学を出られて、AMDAですね、医療のボランティアを通じて、アンゴラ、アフガン、イラン、またスリランカ、世界各国のNGOの現場で経験をされております。また、ハイチで地震がありました。当時、野党筆頭理事の北澤大臣が防衛大臣で、PKO、これ急遽、アメリカにいた部隊をすぐハイチへPKOを派遣をする決断をされて、貢献をされたわけでございますが、私は、日本のPKO、非常に能力も高いし各国から評価も得ておりますので、もっともっと積極的にできる支援は、これはやっていくべきだと思っております。
非常にPKO活動の国際協力、部隊派遣ではなくて国際協力を主導する立場として、自衛官の優秀な人材、これを司令部要員の高位のポスト、また司令官のポスト、ここへ派遣をするということは、私は国際協調主義に基づく積極的平和主義の立場から必要だと思っておりますし、また、昨年九月に国連本部におきまして安倍総理がスピーチをされましたが、そのときも、現地のPKOミッションの司令部等における責任ある職域への自衛隊員の派遣を拡大をすることについて日本は表明をいたしております。
このように、今回のPKO法の改正に併せまして、より広範な企画立案、調整、情報収集の整理を司令部において実施できることといたしました。また、国連PKOの司令官等の派遣に係る枠組みも新設をいたしました。
これによりまして、国連のPKOに対するより積極的な協力を進める法制上の土台が整備されるものと考えておりまして、より日本としてPKOの場で活躍をし、日本の国際貢献、これが実のある形につながるように今後とも努力をしてまいりたいと思っております。
○谷合正明君 私は、そのほかにも、こういう司令部要員や司令官でしっかりと仕事に就くということで実際そのPKOミッション全体の情報が入ってくるわけでありますから、それによって派遣隊員のリスク管理にも資するというふうに私は思っておるわけであります。
さて、これ衆議院の議論の中でもありましたけれども、一旦PKOに自衛隊を派遣するとなかなか撤退できないんじゃないか、撤退すると国際的評価が落ちるんじゃないかというような議論というか意見もございました。
そこで、まず、我が国が主体的に派遣を決定し、主体的に任務を終了したPKOのケースというのがあると思うんですけれども、まず、典型例、具体例を挙げていただきたいと思います。
○国務大臣(中谷元君) 主体的に撤退を決定したPKOですね。
これは、ゴラン高原のUNDOFにおきまして、これは業務の中断等について判断をいたしましたが、参加五原則、これが満たされなくなったという判断ではなくて、シリアの国内の情勢等を踏まえて、要員の安全、これを確保しつつ意義のあるPKO活動を行うことが困難に至ったという認識をいたしまして、要員を撤収をさせました。
なお、初代のUNDOFのPKO派遣隊長は自由民主党の佐藤正久委員でございましたけれども、非常に輸送支援ということで各国から高い評価をいただきましたが、この撤収に際しましても、UNDOFの活動に影響を与えないように十分に国連側と調整を行って、国連側の理解を得て撤収をした、非常に成功したPKOであったと思っております。
○谷合正明君 そうすると、UNDOFのミッションを終了した際に、国際機関や受入れ国側から日本の撤退というか任務終了について非難や失望の表明があったということはないということでよろしいですね、大臣。
〔理事佐藤正久君退席、委員長着席〕
○国務大臣(中谷元君) しっかりと国連と調整をし、また現地の部隊等にも了解をいただいて、理解を得た上で、大変感謝をされて活動を終了したということでございます。
○谷合正明君 いずれにしましても、派遣する際、開始以上に派遣の終了への計画というか戦略というのは極めて重要だと思っております。円滑に他国部隊あるいは民間機関ほかの、現地政府含めてハンドオーバーしていくということがこれから重要であるというふうに思っております。
それでは次に、国連PKO以外に、この度、政府案では非国連統括PKOを新設することとなっております。これ実は、衆議院の段階では維新の皆様からPKOに関する対案を出していただいているんですけれども、この非国連統括型PKOは含まれていないということでございます。
国連PKOに比べまして、このパネルでいいますと、非国連統括型というのは、右側の国際連携平和安全活動のところを指すんですが、この活動、どんな派遣なのか、イメージがなかなか湧かないといった声がございます。そもそもこの非国連統括型PKOに我が国が参加する必要性、意義、こうしたものはどういうものがあるのか、この点について国民の皆様に分かりやすく説明していただきたいと思います。
○国務大臣(中谷元君) 近年の国際的な平和協力活動における取組、これは国連のPKOがございますが、それ以外の枠組みにおいても実施されるようになってきております。
それは、国連が統括しない枠組みの下で国際の平和及び安全を維持するために行われる国際連携平和安全活動といたしまして今回法律に追加をいたしましたが、例えばアチェ、これインドネシアですが、これの監視ミッション、これは独立アチェ運動とインドネシア政府の武装紛争の発生後の和平を実施をいたしました。これは、欧州連合、これの要請に基づくものでございます。
もう一つ事例といたしましてはソロモン地域支援ミッション、これもソロモン諸島の国々の要請に基づいて国連の事務総長の指示がありまして、今想定をしているのは、国際連合難民高等弁務官事務所、UNHCR、また欧州連合等を想定をいたしておりますけれども、この国際連携平和維持活動、こういうことにも参加を検討できるようにするということでありまして、これの条件につきましては、停戦合意、紛争当事国の受入れ同意を含むPKO参加五原則と同様の厳格な原則を満たす場合に限るということで、こういった活動にも我が国として参加検討していきたいということでございます。
○谷合正明君 今大臣から参加五原則というお話がございました。
パネルを見ていただきたいんですが、まず、参加五原則、従来の国際連合平和維持活動、これはいわゆる国連PKO活動でございますが、ここに参加五原則というのがあるんですね。①紛争当事者間の停戦合意の成立、そして、②紛争当事者のPKO派遣への同意、③PKOの中立性の確保、④といたしまして、①から③のいずれかが満たさない場合には部隊を撤収、そして⑤は、武器の使用は要員の生命等の防護のための必要最小限のものというものでございます。
この参加五原則を、非国連統括型のPKOにもそのまま参加五原則を当てはめるということを与党協議の中で、私ども公明党の主張で、全く同じものとして、歯止めとしてさせていただいたということでございますから、先ほど大臣の方からは、活動の過去の事例のお話もありました、そして参加五原則を当てはめるというお話がございました。
もう一つ。この非国連統括型PKOに対しては、危険度が、要するに危険、リスクが高いのではないかという批判もあるわけでありますが、しかし、この参加五原則がそのまま当てはまっておりますから、国連PKOに比べて危険度が高いということではないと私は理解しております。
そのような理解でよろしいでしょうか。大臣、よろしくお願いします。
○国務大臣(中谷元君) 基本的に、PKOの参加五原則、これと同様な厳格な原則を満たす場合に限るわけでございますので、国連のPKOに比べて危険性が高まるわけではございません。
その上で、こういった活動においても、国連PKOへの参加と同様に、安全確保のための法制上の仕組み、これが働きます。また、情報、装備、教育訓練など運用面での各種の取組も十分に行ってまいるわけで、隊員の安全の確保に万全を尽くしながらこういった活動にも参加をしていくということでございます。
○谷合正明君 PKO参加五原則、これを、国連PKOと同じものを当てはめたというふうにお話しさせていただきましたが、そもそも、国連PKOに従来からあるこの参加五原則なんですが、PKO法が一九九二年に成立いたしました。このときも国会では大きな議論になったわけであります。この中で、私ども当時野党でございましたけれども、野党の中で、私たちの主張によりましてこのPKOの参加五原則というものが盛り込まれまして、実は、二十年以上にわたってこの国連PKOの参加五原則として維持をされているということでございます。
この意味はどういうことかというと、国家又は国家に準ずる組織が敵対するものとして登場してこないということが原則になっている、憲法九条が禁止した武力の行使を行うことがないということがここで担保されているということだと。
ですから、先ほど私、冒頭、駆け付け警護の話をさせていただきましたが、駆け付け警護がなぜ今回できるようになったのかというのは、まさに今回、参加五原則の中で、国家又は国家に準ずる組織が敵対するものとして登場してこないという整理を付けたと。そして、参加五原則、パネルを見ていただきますと、①から⑤までありますが、今回は、駆け付け警護あるいは住民保護の安全確保業務、ここについては任務遂行型の武器使用を可能とすると。しかし、それも受入れ同意が安定的に維持されている場合ということに歯止め、限定をさせていただいているということでございます。
ですから、自衛隊が武力行使に巻き込まれたり戦争の引き金を引くような事態を防ぐ明確な歯止めであるということを、この参加五原則、今回当てはまっているということを申し上げたいというふうに思っております。
先ほど大臣の方から、国連機関等が行う要請の中で、UNHCR、EUというお話がございました。
現実に、国連以外のPKOで展開しております例えばAU、アフリカ連合というのがあるんですね。アフリカでミッションを行っております。この参加五原則という大前提はあるにせよ、私は、このAU、アフリカ連合の活動というのは、なかなかその背景や成り立ちから、我が国が主体的に積極的に関与すべきものは少ないんじゃないかなと思っているわけであります。
条文上のこの地域機関に、EU以外に現在検討されているものがあるのかどうか、確認をさせていただきたいと思います。
○国務大臣(中谷元君) 私も、南スーダンのPKOやジブチを視察した際に、AUが中心となった国際貢献の枠組み、これに接したことがございます。
しかし、我が国としてこれに参加するかどうか、これはまだ慎重に、よく情勢また情報を得まして検討するということでございまして、先ほどお話をいたしましたUNHCR及びEUでございます、今検討しているところは。
○谷合正明君 総理、PKO法改正がございます。この法律をしっかりと動かしていくためには、何よりも人材の育成だと私は思っているんですね。
と申しますのも、私、実はイラクでもNGOの職員のときに復興支援の調査のために行ったことがございます。その際に、ある新聞社から、NGOや自衛隊の役割、能力、長所、短所について取材を受けたこともあるんです。しかしながら、出てきた紙面、見た紙面は、自衛隊による人道復興支援に対して批判的な記事でまとまっていたんですね。私はそのときびっくりしました。
今、災害救援の現場だけでなくて、平和維持や平和構築支援の現場では多数の、私申し上げたとおり、自衛隊や国連やNGOの方々が同じ地理的範囲の中で活動を行う、そういう局面が増えているわけです。
よく民軍連携というんですけれども、民とはNGOや国連機関、PKOの文民です。軍とは自衛隊を含む各国の軍事組織であります。現実に、南スーダンのジュバでは、自衛隊の施設部隊が三百五十名、司令部四名、ユニセフなど国連機関で働く邦人職員は十六名おるんです。日本のNGOも複数活動しています。
五原則の下、PKOの中立性が確保されている現場では、この民軍がお互いに意思疎通を図って調整を行うとともに、相互理解を深めて、お互いの任務や能力、あるいは時には能力の限界について知ることが求められていると私は思っております。紛争解決から復興、開発までの流れでいいますと、日本はこれまで平和構築の後半局面であるODAによる復興、開発に力を注いできましたけれども、現在、紛争解決から復興までを切れ目なく取り組む支援というものが国際的にも主流になっていると私は思っております。
そこで、総理に伺いますが、是非、このPKO法改正に際しまして、民軍双方に知見のある平和構築の人材、これをしっかりやっていただきたいと。私は、まだまだ日本にはこうした人材が足りないと思っております。こうした平和構築の人材の育成の必要性について、総理の見解を伺いたいと思います。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) ただいま谷合委員から、実際に平和構築の現場はどうなっているんだということを御説明いただいたと思います。平和構築の現場においては、軍事部門と文民部門が連携を行う、言わば民軍連携が重要でありまして、国連PKOミッションにおいても人道支援や開発支援の活動との連携の重要性が認識されています。
我が国自衛隊が国連PKOに派遣された際には、NGO、大使館、自衛隊、JICA等が情報交換に努めておりまして、実際に自衛隊部隊が援助関係者と連携して案件を実施した実績もあるわけでありまして、外務省においては、我が国が平和構築分野において積極的に貢献するに当たって、現場で活躍する文民の専門家の育成が重要であると認識しています。
この認識の下、平成十九年以降、人材育成事業を実施をしてきておりまして、その修了生は、この人材育成事業を修了した方々の中には、南スーダン、アフガニスタン、コンゴ民主共和国等、世界の平和構築の現場で活躍をしていただいています。この事業では、自衛隊の駐屯地において自衛官による訓練を実施するなど、民軍連携に関する研修も実施をしています。同事業では、本年度より予算規模を拡大し、事業内容を強化する予定であります。
また、自衛隊においても、統幕学校国際平和協力センターや陸上自衛隊国際活動教育隊において国際的な人道支援や国際平和協力活動における軍事部門と文民部門の関係についての教育を行っています。同センターにおいて教育対象者を自衛隊以外に拡大するなど、教育面での連携の充実を図っています。明らかに我々は経験を経て、このように文民と軍との、また自衛隊との協力が進んでいる中において平和構築が実際に実施をされている、このことも多くの方々に知っていただきたいし、この分野の人材の育成にも力を入れていきたいと、このように思います。
○谷合正明君 総理、今ずっとPKO法の話をさせていただきましたが、私もいろいろこういう国政報告会やいろいろなミニ語る会で話すと、PKOによる自衛隊の国際協力というのは、これはまあ理解するんだけれども、しかし国際平和支援法による自衛隊の後方支援についてはなかなか納得、理解ができないという声もあるんです。
そこで、まず、なぜ国際社会の平和と安全のために国際平和支援法を作って自衛隊による国際貢献、後方支援を進めていく必要があるのか、まずそこから、総理の方からお話ししていただきたいというふうに思っております。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 新たなこの法制につきましては、世界における安全保障環境が厳しくなっているわけでありまして、まさに国際社会がお互いに様々な場面、様々な場所で協力し合って平和を守っていくことが極めて重要であります。例えば、国際社会の平和及び安全が脅かされて、国際社会が国連安保理決議に基づいて一致団結して対応するようなときに、我が国が当該決議に基づき正当な武力の行使を行う他国の軍隊に対して支援活動を行うことが必要な場合があると認識をしています。
我が国は、これまでもテロ対策特措法などに基づいてインド洋での海上阻止行動を行う諸外国の軍隊に対する洋上補給活動等を行い、そして国際社会から高い評価を得てきております。そのような観点から、国際社会の平和及び安全を確保すべく活動している諸外国の軍隊等に対して、国際社会の一員として補給や輸送といった協力支援活動等を行うことを可能とするための一般法として、国際平和支援法を新たに整備することといたしました。
このような国際社会の取組に我が国が協力をし、国際社会の平和と安全を確保することは、ひいては我が国の平和と安全を確保することにつながっていくと考えております。
○谷合正明君 今総理の方から説明がございましたが、政府・与党は、この後方支援については新法を作って、一般法を作っていくということなんです。衆議院の段階では、維新の皆様からは、やはり新法を作ると。国連決議に関しては新法を作る、関連決議については特措法で対応すると。民主党さんの考えも、必要があれば特措法で対応するということだと私は理解をしております。
その意味では、この後方支援、国際貢献ということでありますけれども、この必要性、方向性というのは同じなんだと思います。違い、まああるんですけれども、一つは、特措法なのか、一般法、恒久法なのかという話があろうかと思います。
そこで、特措法ではなく一般法を規定する理由について、大臣のお考えをお願いします。
○国務大臣(中谷元君) これは、やはりあらかじめ準備や調査をしておく方がよりしっかりとした活動ができるということでありまして、やはり平素から各国とも連携した情報収集、教育訓練、これが可能になります。その成果を基本的な体制に反映することができるようになります。また、実施内容、派遣規模といったニーズを確定するために、現地の調査、各国との調整、これを迅速に実施できると。そして、自衛隊が得意とする業務、より良い場所で実施をできる可能性がありますし、情報から安全対策、それを含む訓練を実施した形でリスクの極小化にもつながるということで、例えばPKO活動などは一般法がございますので非常に立ち上がりが現地でスムーズにいくわけでございまして、より国際社会に積極的に関与する上におきましては、やはりしっかりとした一般法として整備をしておいた方がより実りのある活動ができるというふうに判断いたしております。
○谷合正明君 時間がありませんのでもう終わりますが、このほか、武力行使の一体化をどう避けるのか、あるいは例外なき国会承認の在り方、いろいろ論点がございますので、また後々取り上げていきたいと思います。
国際協力の現場で二十年余りにわたって自衛隊がその役割を担ってきたその経験と実績を踏まえた今回の法整備であるということを訴えたいと思っております。
以上で終わります。