○谷合正明君 公明党の谷合正明です。
まず冒頭、北関東、東北地方を襲いました大規模な洪水被害に関しまして、被災された方々に心よりお見舞いを申し上げます。
私ども公明党も、災害対策本部を立ち上げました。昨日現地に入りました同僚議員によりますと、一つは行方不明者の捜索救助、これを第一にしてほしい、また、避難所自体も孤立した避難所も多くて、水などの救援物資がなかなか届きにくい状況にある、被災者救援に全力を挙げてほしいと、そういう報告を受けております。
〔委員長退席、理事佐藤正久君着席〕
状況は刻一刻と変化すると思います。災害対応に与党も野党もございません。政府におかれましても、国民の命を守るため、自治体、警察、消防、海上保安庁、そして自衛隊など、関係機関の総力を挙げて万全の対応をされますことを要請いたします。
それでは、質問に入らせていただきます。
九・一一のニューヨーク・テロ事件から、今日でちょうど十四年になります。当時私は、アフガニスタンからパキスタン側へ避難する難民支援の仕事に従事しておりました。そして、今新たに、シリアを中心とする不安定な中東情勢を受けまして、EUでは移民、難民問題が大変大きな人道的かつ政治的な課題になっております。
先週、ヨルダン、パレスチナ、イスラエル各大使と懇談いたしましたが、我が国の中東安定化に対する支援、特に人道支援、難民支援に対しては高い評価と期待の声が上がりました。
今回の欧州難民問題が欧州だけの問題にとどまるのか、国際社会を巻き込む問題なのか、予断を許しませんが、まず、中東情勢に端を発した欧州難民問題の状況はどうなっているのか、また我が国に対してEUや国際機関から支援要請はあるのか、この点について外務大臣に確認します。
○国務大臣(岸田文雄君) 御指摘の難民問題ですが、中東そして北アフリカの情勢悪化によりまして、今年の初めから考えましても既に五十万人を超える難民そして移民が欧州に押し寄せています。欧州にとりまして大きな課題となっていますし、我が国も大きな関心を持っておりますし、既に欧州に対しましては、基本的な価値観を共有するパートナーとしての連帯を表明しております。
そして、今、様々な要請があるのかという御質問がありました。既に、国連難民高等弁務官事務所など幾つかの国際機関から国際社会全体に対しまして支援要請が発出されています。是非、まずは我が国としまして、こうした要請に関係国と連携しながらしっかり応えていかなければならないと思います。
そして、大事なことは、こうした支援の要請に応えることも重要ですが、そもそもこの原因がどこにあるのか。やはり、シリアあるいはイラク、こうした地域、さらにはこの周辺国、こうした地域の安定が何よりも重要であります。我が国としましては、こうした地域に対する非軍事的な支援、これをしっかり行うことによって、この原因となっている地域における安定に資すること、これが我が国の取組として重要ではないかと考えます。
○谷合正明君 シリア情勢の悪化に伴いまして、難民、国内避難民の問題は大きくなっているわけであります。報道によりますと、空爆に参加する国が、例えばフランスであるとかオーストラリア、参加表明する国もあるわけでありますが、そこで、確認です。
総理は国会で、シリアやイラクにおけるISILへの空爆等への後方支援を行うことは全く考えていないと答弁しておりますが、この政策判断は今後も変わらないということでよろしいのか。また、これからも後方支援に参加しないとすれば、先ほど外務大臣から答弁がございましたが、積極的平和主義を掲げる日本として、難民、避難民への人道支援、また難民そのものが発生しない、そういう非軍事の貢献、支援を日本としてしっかりと支援強化をしていくべきだと考えますが、総理の見解を伺います。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) これまでも繰り返し述べているとおり、政府としては、政策判断として、ISILに対する軍事的作戦を行う有志連合に参加する考えはありません。ISILに対する作戦への後方支援を行うことは全く考えていません。今回の法案が成立した後であってもこれは変わらないということははっきりと申し上げておきたいと思います。シリア難民問題については、我が国は今後とも、難民、国内避難民等に対する食糧配布、そして保健医療等の分野において我が国ならではの人道支援を拡充し、非軍事分野において国際社会における我が国の責任を毅然として果たしていく考えであります。
○谷合正明君 それでは、我が国の平和と安全の議論に移ります。
この議論の骨格は、厳しさを増す安全保障環境の中で、外交努力を尽くすことを大前提に、憲法の枠内でどこまで自衛の措置が可能なのかということだと思います。
厳しさを増す我が国周辺の安全保障環境については、先日の本委員会の参考人質疑でも指摘がありました。神保参考人は、二十一世紀の我が国を取り巻く安全保障の最大の変化は中国の台頭に関すること、先日の軍事パレードでも示された中国の軍事力の急速な拡大が地域の軍事バランスを大きく変化させていると指摘しています。
また、我が国への脅威の例として、北朝鮮の弾道ミサイルが挙げられます。北朝鮮は、日本の大半を射程内に入れる弾道ミサイル、数百発もの弾道ミサイルを配備しております。
こうした我が国をめぐる安全保障環境が厳しさを増す中で、日米防衛協力体制の信頼性、実効性を強化し、抑止力、対処力を向上させて紛争を未然に防止していくことが求められております。今回の法制の目的はまさにそこにあります。
先ほどの北朝鮮の弾道ミサイルへの対応を例に取りますと、自衛隊は米軍と共同して防衛システムを構築し、我が国を守っています。自衛隊だけでは防衛できないわけであります。
問題は、日米安保条約に基づき、日本防衛のため公海上で弾道ミサイルの警戒監視をしている米艦船に武力攻撃があった際であります。そのとき自衛隊は何ができるかが問われております。
その際、我が国が取り得る立場というのは三つあるんだと考えられます。一つは、個別的自衛権で対処できず、米艦船への武力攻撃を排除できないという立場であります。第二に、個別的自衛権で対処できるという立場であります。そして第三に、個別的自衛権での対処は困難な場合が多く、国際法上は集団的自衛権を根拠として米艦船への攻撃を排除すべきとの立場であります。
そこで、維新の法案提案者に伺います。
我が国への武力攻撃がいまだ発生していない状況で、公海上で日本防衛のために弾道ミサイルの警戒監視をしている米艦船に武力攻撃があった際に何らかの対処をしなければならないという認識、このことは政府・与党と一緒だと思います。つまり、第一の立場は取らないということであります。
そこで、確認ですが、維新案による武力攻撃危機事態における武力行使というものは、個別的自衛権で対処という立場なのか、集団的自衛権を根拠として対処という立場なのか、見解をお示しください。
○委員以外の議員(小野次郎君) お答えいたします。
まず、維新の党案に御質問いただきまして、ありがとうございます。
まず、我が党は、安全保障環境の変化に対応した安保法制の整備は重要だと認識しております。その点では政府と変わらないわけでございます。そしてまた、七月一日の去年の閣議決定の中でも、我が党は、今までの個別的自衛権と集団的自衛権の解釈上の境界線が、常に一〇〇%、憲法に言う合憲と違憲の境界線とは限らないという点についても認識を共有しているものであります。ただ、政府・与党は、その後、限定的集団的自衛権の容認の方向へと進んでいったんだろうと思います。
私たちは、まず国連報告、国連への武力行使の報告を見ました。集団的自衛権って一体どういうときに行使されたと報告されているのか。驚くべき事実でございます。ハンガリー動乱のときにソ連の軍事介入、そしてベトナム戦争へのアメリカの介入、そしてチェコへのソ連軍の侵入、そして同じくソ連軍によるアフガニスタンへの侵攻、これらが国連に報告されている集団的自衛権の例なんですね。私たちは、とても日本の、平和国家としての日本が、専守防衛の日本が進むべき方向ではないと思いました。そして、それ以外の武力行使の報告はどうされているかというと、国連に対しては、単に自衛権の行使若しくは自衛の措置というふうに報告されているものが九割以上でございます。
そして、大事なことは、国際的には武力による威嚇、つまり、例えば谷合さんたちと私が武器を構えて動くなと、あるいは服を脱げと、あるいはお金を出せと言って、それに威嚇する行為は国際的にはもう既に武力行使と判断されているのが国際実践例なんですね。
その上で考えてみたときに、私たち維新の党は、自衛権の再定義、そして憲法が許容する、かつ国際社会からも認められるような自衛権の在り方を検討してまいりました。目的も手段も効果も、徹頭徹尾自国防衛のために行う必要最小限度の武力の行使は、憲法上も、そして国際的にも容認されるという認識を私たちは持っています。安保条約に基づいて、我が国防衛システムを構成する米国軍への攻撃、そして第二撃が我が国に及ぶ蓋然性が高いことと併せることで、我が国に対する攻撃の着手と同視できるというふうに考えております。
集団的自衛権の定義について、国際法の上では諸説あります。他国を防衛するためのものが、他国防衛説といいますけれども、これが通説でございます。この見地からは、我が党案は個別的自衛権と見られると思います。他方で、仮に第一撃が米国の艦船に落ちたから、これは形式的には集団的自衛権じゃないかという学説もありますけれども、これも、我が国と米国の間では日米安保条約に基づいているわけですから、条約に基づく米軍との共同の防衛行動として国際的にも容認されるというふうに考えております。
その意味で、衆議院における我が党同僚議員がこの国際法学における議論は排除されませんと答弁したのは、このような趣旨だろうと考えております。
○谷合正明君 自衛権の再整理を行うということではございますけれども、国際法上の集団的自衛権の行使を容認するものなのかどうか、ここをはっきりしなければならないんだと私は思っております。
今答弁の中で国連安保理の報告に言及されたところがございました。自衛権、つまりその個別的自衛権、集団的自衛権問わず、自衛権としてそうやって一くくりに報告できるので、特にそこは問題ないんだというような趣旨だったかと思いますが、そこで外務大臣にお伺いしますけれども、とはいえ、私、安保理に報告する際にそういうことで済むのかという問題認識を持っているんですが、政府の認識を伺いたいと思います。
○国務大臣(岸田文雄君) まず、集団的自衛権、個別的自衛権の定義ということにつきましては、ただいまいろいろな学説があるというお話もありましたが、過去の国際司法裁判所の判例、あるいは様々な過去の実例が積み重なる中にあって、国際法上、一般に最低限必要とされる要件、これは共通の認識として整理をされています。
そして、集団的自衛権においては、武力攻撃を受けた国からの要請、同意が求められるというようなこと、あるいは個別的自衛権においては、この武力行使、自国に対する武力行使が発生するということ、こうした要件は国際法上明らかに求められていると考えています。
そして、こうした要件につきましては、自ら武力行使を行った場合、これはどちらかに該当するにせよ、これしっかり説明をしなければなりません。これ、どちらにも該当しなければ、そもそも国連憲章上認められている自衛権の枠外にはみ出てしまいますので、国際法違反になってしまいます。
ですから、国連に対して自衛権ということで報告をするにしましても、集団的自衛権の要件を満たしているか、あるいは個別的自衛権の要件を満たしているか、これはしっかりと明らかにし、国際社会に説明をしなければならない、このことは変わらないと考えます。
○谷合正明君 分かりました。
そこで、総理に伺います。
弾道ミサイルの警戒監視をしている米艦船に武力攻撃があった際に個別的自衛権による対応というのは可能なのか、この点について総理に答弁をいただきたいと思います。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 個別的自衛権の行使の前提となるこの我が国に対する武力攻撃とは、基本的には我が国の領土、領海、領空に対する武力攻撃をいうものでありまして、公海上にある米国の艦艇に対する武力攻撃は、基本的には我が国に対する武力攻撃の発生と認定できるものではありません。実際上も、公海上の米国の艦艇への武力攻撃を我が国への武力攻撃の着手と認定することは難しいと考えています。
個別的自衛権と集団的自衛権は国際法上明確にこれは区別されており、本来は集団的自衛権の行使の対象となるべき事例について個別的自衛権を我が国独自の考えで拡大して説明することは、国際法違反のこれはおそれがあるわけであります。また、いわゆる先制攻撃を行ったとこれは評価されかねない危険性もあります。さらに、これまでの武力攻撃事態の概念を拡大して対応することになり、同事態の要件である我が国に対する外部からの武力攻撃が発生していないにもかかわらず武力の行使を行うということになるため、およそ認められるものではないと、このように考えております。
○谷合正明君 政府は、今私が問題提起させていただいている公海上の米艦防護、これを存立危機事態に該当する典型例として挙げております。存立危機事態による武力行使というのは、私が申し上げた第三の立場、すなわち、個別的自衛権での対処は困難な場合が多く、国際法上は集団的自衛権を根拠として米艦船への攻撃を排除すべき、すなわち集団的自衛権を限定的に行使するしかないという理解なんですけれども、総理、そういう理解でよろしいでしょうか。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) まさに私たちが行使できるのは、新三要件の中においてのみ武力の行使ができるわけでありまして、我が国と密接に関係がある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること、危険を排除するためには他に適当な手段がないこと、必要最小限度の範囲を超えてはならないことでありまして、これは世界的にも例を見ない非常に厳しい要件であり、憲法上の明確な歯止めとなっていると、このように考えております。
また、この新三要件については米国にも十分説明をしておりますし、新たな日米ガイドラインの中でも、日本が武力を行使するのは日本国民を守るためだとはっきりと書き込んでいるわけでありまして、このことは日本と米国の共通の認識にもなっております。
○谷合正明君 今、総理からも新三要件の話がございました。集団的自衛権を限定的に行使するにせよ、その範囲を無制限に広がらないように、また恣意的に決められないように、昨年の七月の閣議決定ではその新三要件を明確にしたわけでございます。与党協議の結論を踏まえた昨年の閣議決定では、憲法九条を堅持し、自国防衛のための措置にとどめることを明確にするためにその新三要件という規範を定めたわけであります。この新三要件は、憲法九条の下でも例外的に武力の行使が許されるとした理由や根拠である昭和四十七年の政府見解の基本的な論理を維持したものでございます。今回の法案には公明党の主張で新三要件がそのまま法律上に書き込まれたということでございます。
改めまして、その新三要件については今総理の方からもしっかりと歯止めが掛かっているというお話がございましたので、最後、総理に改めて質問をさせていただきたいんですけれども、我が国の平和と安全を確かなものとするために、今申し上げたような安全保障上の備えをしっかりするための抑止力を強化する、それとともに平和外交努力に全力を尽くすべきとの声も多いと思います。
最後に、抑止力強化とともに平和外交努力に全力を尽くすべきと考えますけれども、総理の見解を伺います。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 今回、平和安全法制について法整備を進めてまいりますが、前提はしっかりと平和外交を進めていくということであります。外交によって平和を維持し、様々な紛争を抑止していくことだろうと思います。
就任以来、五十四か国を訪問いたしまして、三百回近い首脳会談を行ったわけでございますが、その際、法の支配を重視する立場から様々なことを申し上げてまいりました。昨年のシャングリラ会合におきましては、主張するときには国際法にのっとって主張すべき、力の威嚇や力による現状変更は行ってはならない、問題を解決する際は平和的に国際法にのっとって解決するとの三原則を繰り返し主張し、圧倒的多数の国々から賛同を得たところであります。
我々の三原則にのっとって全ての国が行動すれば、これはまさに平和が守られていくんだろうと思います。今後ともしっかりと平和外交を展開していく考えでございます。
○谷合正明君 終わります。