○谷合正明君 公明党の谷合正明です。
私から、TPP、政労使会議、また最低賃金について質問をいたします。
先月末、十二か国から成るTPP閣僚会合が開催されました。テレビを御覧をいただいている方も結果は御承知のとおりでございますけれども、残念ながら大筋合意は果たせませんでした。一部の国から、日本やアメリカなどに対しまして、乳製品の輸入枠を相当大幅に拡大する提案もございまして、結果的に各国の利害が対立したということだと思います。しかし、難航している分野に関しましては相当絞り込まれておりますし、甘利大臣自らも、残された部分は限定的になった、それをしっかりやれればあとはオートマチックに処理していくのではないかとの見通しも大臣から示されたところでございます。
まず総理にお伺いしますが、政府として、国内産業への影響を十分に考慮しつつ交渉再開を目指していくべきと考えております。このTPP交渉を漂流させないための決意を伺うとともに、あわせて、衆参の農林水産委員会の決議、この決議を守っていく方針は変わらないか、このことを確認したいと思います。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 日本は、戦後の成長において、ガットに加盟したことも大きなプラスになったことは間違いないことであります。TPPは、二十一世紀のアジア太平洋地域にフェアでダイナミックな一つの経済圏を構築する挑戦的な試みであります。この地域の成長を取り込み、アベノミクスの成長戦略の核となる可能性は高いと考えております。
TPP交渉は、先般の閣僚会合において、あと一回閣僚会合が開かれれば決着できるところまで来ています。交渉は最終局面が一番難しいわけでありまして、国益と国益がぶつかり合う厳しい交渉が続いています。我が国も、衆参農林水産委員会決議をしっかりと受け止めて、国益を最大限に実現し、いずれ国会で御承認をいただけるような内容の協定を早期に妥結できるよう、交渉に全力を挙げていく考えでございます。
○谷合正明君 総理から決議についての言及もございました。TPP交渉におきましては、特に農林水産分野への影響というものが注目されるわけでありますけれども、それ以外にも、中小企業への影響というものも大きいと考えられます。
甘利大臣にお伺いしますけれども、TPPが実現すれば、これ大企業や多国籍企業を中心に恩恵があると言われているんですが、中小企業や地方経済にはどんなメリットやチャンスがあるのか、また、どうすればそのメリットやチャンスというものを中小企業が生かせるようになるのか、この点について国民に分かりやすく説明していただきたいと思います。
○国務大臣(甘利明君) TPPが従来の既存型のEPAの枠を超えて二十一世紀型と言われているゆえんは、アジア太平洋地域の中で、物だけじゃなくて資本や人や情報が自由に飛び交うことができる、その中に入っていればそういう恩恵を受けることができるわけであります。物だけじゃなくてサービスや投資やあるいは知的財産、そして金融サービス、電子商取引、国有企業の規律、今までなかなか踏み込めなかった部分まで含めて新たなルール、新たな自由化がなされるわけでありまして、この地域に大きなバリューチェーンができ上がるわけであります。
そして、御指摘のとおり、これは大企業だけの恩恵ではありませんで、中小企業の海外展開であるとか、あるいは地域の農産品の輸出にとっても大きなチャンスになるわけであります。
例えば鉱工業品関税の削減、撤廃によりまして中小企業や地域の産業の輸出が促進をされる、あるいは地理的表示の適正なルールを構築することによりまして我が国の地域ブランド、いろいろありますが、地域が誇るブランドを守り、あるいは輸出促進につなげることができるわけであります。農産品につきましても、関税の撤廃によりまして和牛等、日本の誇る付加価値の高い農産品の海外輸出が促進をされると。
昨日、岐阜県の知事と現地で懇談をしましたけれども、もう非常に張り切っておられるわけですね。飛騨牛の輸出戦略が着々と進んでいる、地域ブランドをどんどん輸出していくチャンスですということで、みんな農業者も張り切っていますというお話もありました。そういうチャンスが広がるわけであります。
仮にTPP交渉が妥結した場合には、合意内容につきましてできるだけ詳細かつ丁寧に説明を行いまして、メリットが現場で十分に生かされるように、政府としても地域経済あるいは中小企業の活躍を後押ししていきたいと思っております。
○谷合正明君 地方経済の牽引役は、一次産業、中小企業、そしてサービス産業とよく言われております。是非、これはパッケージで合意していく交渉でありますけれども、中小企業にとっても利便性が高くて、更に分かりやすい貿易協定になるよう交渉を詰めていただきたいというふうに思います。
中小企業、地方経済ということで関連しまして質問を続けますけれども、先月、全国十一の地域で景気の総括判断というものが出されました。これは、緩やかに回復していると、一年半ぶりの上方修正でございました。地域別でも全地域が回復と判断された、これは実に十八年ぶりのことだというふうに伺っております。これはこれで大変うれしいことであります。
しかし、ここにいらっしゃる委員の皆様ももう実感していると思いますが、現場を回っていますと、そういう実感しているという声、直接伺うということはなかなかないんですね。今後の課題は、何といいましても、景気回復を地方へと波及していくことと、それから実際に実感していただくことだと思っております。
地方創生では、特に若い世代の働く場、これを確保していくということが求められております。その際、不本意な非正規雇用による低賃金、あるいは過長な長時間労働などの厳しい現況に置かれている若者の処遇改善というものが重要であります。地方においても働き方改革、中小企業の生産性向上、これを進めていくことが必要だと思っております。
先々週の金曜日ですけれども、公明党の青年委員会によります青年政策アクションプラン二〇一五、この申入れを直接総理に受けていただきました。大変感謝をいたします。その提言の中にありました地方版政労使会議の設置の提案に、総理自ら深くうなずかれていたというふうに伺っております。
政労使会議というのは、これ、二〇一三年九月に、自公政権発足しておよそ一年後でありますけれども、デフレ脱却と経済再生に向けて、政府首脳と経済閣僚、経済界、労働界代表が賃金や雇用情勢の好転の方策を話し合うためにできた言わば異例の会議体だと思います。
公明党の青年委員会の提案は、この政労使会議を中央だけじゃなくて、地方における賃金上昇や若者の処遇改善に向けた取組を進めようとするものであります。若者の働き方改革について、地方創生やワーク・ライフ・バランスなどの視点も踏まえながら、各地域で自治体や労使も交えて話し合う場の設置を促していくことが重要だと考えますが、総理の御見解をお伺いします。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 日本は自由主義社会でありますから、本来であれば、企業が利益を上げて、その利益をどう使うかは企業が自主的に判断する、あるいは労使において賃金の交渉をするわけでございますが、長い間デフレを続けてきた、この長い間の、十五年続いてきたデフレから脱却をするためには、政労使が一つの方向を向いてお互いに協力し合わなければできないという観点から、異例ではあったんですが、政労使の会議をつくって、生産性の向上と同時に、しっかりと賃金を上げてもらうようなそういう要請をし、そして成果を上げてきているわけでございます。
そこで、今委員がおっしゃった、公明党の青年局の皆さんから御提言をいただきました。各地域で地域版をつくったらどうだ、それは私、大変いいアイデアだと思います。地域にはそれぞれの事情があるんだろうと思いますが、地域において長時間労働の是正や多様で柔軟な働き方や、あるいはまた生産性の向上等々について話し合っていくことは大変有意義であろうと思います。
都道府県労働局に働き方改革推進本部を設置をし、地方公共団体や労使団体と連携しながら、地域のリーディングカンパニーへの働きかけや、働き方の見直しに向けた機運の醸成に取り組んでいるところでありますが、各地域の特性を生かして、仕事と生活の調和を図りつつ、魅力ある雇用機会を創出していくため、働き方改革の取組を一層強化することが必要であると思います。その一環として、都道府県において、地域ぐるみで働き方改革を推進するため、労使を始めとする地域の関係者が集まる会議を設置していくことについて検討を進めてまいりたいと思います。
○谷合正明君 ただいま総理から、各都道府県において労使も参加した会議の設置を検討していきたいと、はっきりと明言をいただきました。
政府としてもこれを促すべく進めていただきたいと思っておりますし、重要なことは、若者の働き方改革というのを進めることは、これは当然、女性の働き方改革にもつながるわけでありますし、全世代の働き方改革につながっていくものだと私は確信をしております。関係省庁においても、今の総理の答弁を踏まえて御対応いただきたいと思っております。
さて、最低賃金について幾つか伺っておきたいと思います。
先日、厚生労働省の中央最低賃金審議会が、二〇一五年度の最低賃金に関しまして全国平均で時給十八円引き上げることを答申しました。この引上げ幅は、目安を時給で示すようになった二〇〇二年度以降最大の幅であるというふうに承知をしております。
大事なことは、生活保護費との逆転はどうなっているのかどうか、また、物価上昇率に比べてどうなのかどうかと、それからまた、大企業の賃金の伸びに比べてどうなのかといった観点がこの最低賃金決めていく際に大事だと思うんですけれども、今回の引上げがそのまま実現されれば、今申し上げた課題についてクリアしていくんだと思います。
そこで、総理にお伺いしますけれども、最低賃金の着実な引上げを通じまして特に非正規労働者の処遇改善を図っていくべきだと思いますけれども、今回の最低賃金引上げの答申の意義や効果について見解を伺います。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 経済財政諮問会議においてもこの最低賃金について議論をいたしました。最低賃金は賃金のセーフティーネットであり、賃金上昇と企業収益の好循環を持続、拡大させていくためにも最低賃金の引上げに努めていくことが重要な課題であると認識をしています。
先月、中央最低賃金審議会において、今年度の引上げ額の目安について全国平均で昨年を二円上回る十八円との答申を得ました。今後、この目安どおりに決定されれば平成十四年以降最高額となるわけでありまして、そうしますと、三年間で十五円、十六円、十八円となりますので、約五十円という大幅な値上げに、我々が政権を奪還して以来のこの最低賃金の引上げは約五十円という大幅な引上げになるわけでありまして、最低賃金の引上げで影響を受ける労働者は年々増加をしておりまして、引上げの効果も大きくなっています。
特に、非正規労働者を含む短時間労働者については最低賃金による影響が大きく、また、それにより高い賃金の労働者の賃上げにも影響を及ぼすことから、これらの労働者の処遇改善や賃金上昇を図るため、最低賃金引上げの流れをつくっていくことは重要であります。
先日の諮問会議におきましても、最低賃金の大幅な引上げが可能となり得るよう、中小・小規模事業者の環境整備や生産性向上に全力を挙げるべく、関係大臣に指示をいたしました。
引き続き、中小・小規模事業者への支援を行いつつ、最低賃金の引上げにも努めてまいりたいと思います。
○谷合正明君 ただいま総理から、最低賃金引上げに際しましては、中小・小規模企業への支援、これを関係大臣に指示したということでございます。
最低賃金の効果が高まっている、その最低賃金の付近で働く労働者の数が増えているんですけれども、それは効果が高まっていると見ることもできるんですけれども、同時に、企業側にとってみれば労務コストが増大しているということでございます。
そこで、経済産業大臣に伺いますが、最低賃金の引上げに厳しい経営環境の中小・小規模企業はしっかり対応できるかどうかということだと思っております。
平成二十六年度の中小企業に対してアンケートを取ったものがあるんですが、賃上げした理由、約七五%の企業がこれは従業員の確保、定着ということが理由でありまして、業績回復の還元という観点よりも、人を確保するために賃上げするということだったんです。ですから、賃上げを十分にできるところはいいんですけれども、そうでないところは今資金繰りに大変な思いをされていると認識をしております。
そこで伺いますが、最低賃金の引上げによる中小企業への影響がどの程度生じているのか、また、中小・小規模企業に対する政策支援、特に私は金融支援が大事だと思っておりますけれども、この現状と対応を確認させていただきたいと思います。
○国務大臣(宮沢洋一君) 最低賃金の引上げによる影響でございますけれども、厚生労働省の調査によりますと、引上げによる影響を受ける労働者は、全体に占める割合では三・六%、雇用数を掛けて推計いたしますと約百九十万人となっております。また、小規模事業所のうち七・三%に影響があるとされております。業種別に見ますと、宿泊業や飲食サービス業では九・四%、生活関連サービス業、娯楽業では六・四%と、影響を受ける割合が大きくなっております。
このため、最低賃金の引上げの影響は広範に及ぶということがありますので、七月二十三日の経済財政諮問会議におきまして私から対策について発表をさせていただきました。具体的には、特別相談窓口の設置、公的金融機関による返済条件緩和等の金融面での支援、賃金引上げに協力していただける企業を優先した生産性向上面での支援の三点を行うこととしております。
このうち、特別相談窓口については、七月二十八日付けで、全国の商工会議所、商工会連合会、中小企業団体中央会のほか、日本政策金融公庫、商工中金、信用保証協会などの公的金融機関に設置をいたしました。
また、各公的金融機関では、賃金引上げによって資金繰りに影響を受ける中小企業・小規模事業者に対して既往債務の返済条件緩和を行うなど、事業者の実情を踏まえながら丁寧に対応することとしております。
さらに、平成二十六年度補正予算、平成二十七年度予算として計上された事業の一部につきまして、賃金引上げに協力していただける企業の生産性向上を支援することとしております。
今後とも、円安による転嫁対策を含めて万全を期してまいりたいと考えております。
○谷合正明君 生産性向上、また、今大臣最後に言われましたけれども、円安による原材料費の高騰への対応、こうした点についてもきめ細やかに対応していただきたいと思っております。
最低賃金につきましてもう一つ取り上げたいのは、これ都道府県ごとに最低賃金の額が決まるわけでありますけれども、今回の答申どおりになりますと、最高の東京都九百七円に対しまして、一番低いところ、七県あるんですが、これ六百九十三円にとどまるんですね。その差というのは二百十四円です。時給換算した二〇〇二年の時点での差が百四円でしたから、要するに、この十年以上の間で最低賃金の最高額と最低額の差が二倍に拡大してきているということなんです。
私、申し上げましたけれども、生活保護との逆転現象を防ぐ、あるいは物価上昇率を上回るという観点も大事なんですけれども、それに加えて、今地方創生という観点からしますと、この最高額と最低額、特に東京と地方の最低賃金の格差が拡大していく、これを抑制していくことが今重要ではないかなと私は思っているんです。総理のこの点についての認識と、今後どう対応していくか、この点について伺います。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 今委員から御指摘があったように、最低賃金の最高額の東京と最低の県との格差が拡大をしている。この理由は、近年、生活保護水準との乖離解消等のために、乖離幅の大きい東京都等を引き上げた結果によって拡大をしてきているということでございます。しかし、今委員が言われたように、それでは地方創生を進めていく中において東京と地方の差がもっと出てくるではないか、それはなるほどもっともだと思います。
そこで、先日答申をした中央最低賃金審議会では、この点についても議論が行われました。最高額の東京都の目安額、これ十九円でありますが、と最低額の県十六円の差について、昨年の六円から半分の三円に縮めるとともに、最低額の県の目安額を昨年より三円引き上げまして、平成十四年以降最高額にします。都市部と地方との格差に配慮したものとなっています。また、この審議会では、引き続き、最高額と最低額の差が拡大しないような対応策について話し合っていくと承知をしております。
政府としても、引き続き、地方でも最低賃金の大幅な引上げが可能となるよう、環境整備に全力を挙げてまいりたいと思います。
○谷合正明君 昨年に比べて若干縮まったというお話だと思いますが、これからしっかりとこの点についても対応していただきたいというふうに思っております。
最後の残りの時間で、もう一度、政労使会議について総理に確認をさせてください。
賃上げにつきましては、やはりこれは基本は労使交渉なんです。しかしながら、デフレ脱却する際に当たりまして、なかなか賃上げに慎重な企業が多かったということで、異例の措置として政労使会議をつくったというわけです。二〇一四年、二〇一五年の春闘の賃上げでも、この政労使会議が果たした役割というのは極めて大きいわけですね。これは国民の皆様もよく分かっていると思います。
総理、経済好循環、この取組は今の自公政権の最優先課題の一つであります。これは、来年も再来年も引き続き強化していく話だと私は思っております。そうしますと、この経済好循環の景気回復の取組を進めていくとともに、この政労使会議の役割もここで終わりではないと私は思っております。政労使会議の果たしてきた役割を鑑みまして、来年以降の賃上げにつながっていくよう政労使会議も継続すべきではないかと考えますが、総理の見解を最後伺います。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 十五年もデフレが続きますと、なかなか経営者は賃金を引き上げることに対して非常に臆病になっているわけでありまして、それを変えていくために我々は、異例ではありましたが、政労使という仕組みをつくって、政府からも強く促し、共通の認識を持って一緒にデフレから脱却をして、しっかりと経済の好循環を回していこうと、そういう合意に至ったわけでありますが、月例賃金の平均賃金が、引上げが二・二〇%、これ十七年ぶりの高い水準でありました。加えて、三百人未満の中小組合についても一・八八%、これは十七年ぶりの高い水準であります。そして、非正規労働者についても時給で十七円の大幅な引上げとなりました。アベノミクスの効果は、中小・小規模事業者や非正規労働者など地方経済全体に確実に波及しつつあり、これは大きな成果を得たと思っています。
経済の好循環を力強く回し続けるためには、来年も再来年も賃上げが継続することが重要でありまして、今後、政労使で話し合う必要があるテーマが出てきた場合には必要に応じて政労使会議を開催することとしたいと、このように思っております。
○谷合正明君 時間ですので終わりますが、地方経済、中小企業、若者、女性に光を当て続けるべきだということを強調して、質問を終わりたいと思います。