○谷合正明君 公明党の谷合です。
今日は、お二人の御参考人の皆様、大変ありがとうございます。
私の方からも、一つ、人材の確保について両参考人にお伺いしたいと思います。
山名参考人におかれましては衆議院の参考人質疑も出席されておりますので、そこでも言及されていたかと思うんですが、特に東京電力における技術的な専門性の集約の低さであるとか、技術的集約でも国際的な知見の集約ができていないというような御指摘もございました。
そこで、今、東京電力ということでいいますと、原発事故以降、累計で約千八百人の方が退職をされていて、特に三十代までの若年層の流出が三分の二を占めるということでございまして、特定の年代がごっそり抜けているというのは組織上、これは特に三十代が抜けているということは、ちょっと二十年先とか考えると非常に危機感を持って対応しなきゃいけないのかなと思っております。未来の人材を確保するということもそうなんですけれども、今をどうするかということだと思うんですね。
そこで、経済産業省、エネ庁としても、東京電力そのものをしっかりと賠償してもらいながら未来のある会社に戻していかなきゃならないというふうに今問題意識を持っているわけでありますが、まず山名参考人にお伺いしますが、今回新しい機構をつくろうとしております、廃炉と賠償を一元管理する機構でありますが、これが東京電力にとって人材や技術を集約する手だてとする具体的な、何というんですかね、これは法定業務外なのかもしれませんが、具体的にどういうことを先生としてこの人材確保について、集約についてアドバイスをされるかということをお伺いしたいと思います。
○参考人(山名元君) 仮にこの機構が廃炉支援の機能を持って、そこで人材育成についてのある種の、国としての人材育成戦略のリーダーシップを取るようなことがこの機構の業務として、附帯業務としてできるようにもしなるのであれば、多分、東電に新たに入っていく人材の道筋を付けるような広い仕組みをつくるとか、その場をつくるとか、戦略をつくるというところにはかなり貢献していけるというふうに思います。先ほど言いましたように、例えば大学や文科省等の協力も得て大きな人材育成と供給の流れをつくっていくことで、東京電力の廃炉カンパニーやあるいは原子力関係の技術者がそこに入っていくというような大きな流れは、誘導するというか仕組みをつくっていけるんじゃないかというふうに思います。
一方で、東京電力の先ほどの人材流出の御指摘でございましたが、この問題は、労働条件の問題とか、それからやっぱり非常にネガティブな仕事が目の前にあるというような、あるいは社会的なバッシングとかですね、現実的にいろんな問題がある中で起こっている話です。したがって、これは東電の一種の経営問題でありまして、経営問題として東電がきちんとそれができる人間を集めていくということが大事なわけです。
それは、東電は既に総合特別事業計画というのをこの機構と東電で作って政府に出して認可をいただいているわけで、その中にも恐らく人材育成にきちんと向いていくよという経営方針が書かれているはずであります。それを東電がきちんと経営としてやっていくということをやっていただいて、それを、この機構側が考える人材育成のメカニズムなども生かしてそこを強化していくということになるんじゃないかというふうに思います。
したがって、もしこの法案が通れば、恐らくこの新しい機構は、東電と特別事業計画としてきちんとした技術者を確保する経営戦略をつくって、それを政府に上げていくということを、この機構は廃炉の面からも指導していくことになるんじゃないかと、こう期待しております。
○谷合正明君 大変ありがとうございます。
人材確保ということについては大島参考人にもお伺いしたいと思います。
参考人は、今回の機構、廃炉と賠償を一元化することについては反対のお立場ですから、もう少し広い意味で、廃炉であるとか原子力であるとか、この人材の、あるいは技術の確保について、先生のグループでやっているような立場の中でどんなような御提言をされているのか、お伺いしたいと思います。
○参考人(大島堅一君) 私は、東京電力という組織を維持すること、それを前提に議論を立てているからだと私は思っていて、人材が流出するのはですね、東京電力にこだわる必要はないと私は思っているわけです。東京電力を潰すか潰さないかとかそういうことではなくて、こだわっていることが問題の原点だと思っておりまして、これは人材流出についてもそうです。
東京電力というのは事故を起こした企業であって、やはり世間体にも悪いとか、その事故を、本来的には事故を収束したり廃炉にしたりというのは非常に使命感を持って取り組める課題だと思いますので、本来的には人材が集まってしかるべきものですが、東京電力の一、今度は廃炉カンパニーになるんでしょうが、カンパニーの人間としてやるのは、やはりなかなか働く者としても意義を持って働き切れないんじゃないかというふうに思っております。
そういう意味では、東京電力という存在を前提にするのではなく、一旦処理をしてすっきりさせて、廃炉の専門の会社をつくり、それが国家的な役割を持っているんだというふうにした方が人材的には集まると思います。特に三十代の人材が抜けているということについては私も把握しております、聞いておりますので、これは非常に重大な問題で、やはりやりがいのあるものにする、あと労働環境も良くする、それによって人材を確保できるんじゃないかというふうに思っております。
○谷合正明君 ありがとうございます。
次に、廃炉について山名参考人にお伺いしたいんですが、いわゆる福島の事故炉の廃炉とそれから通常の廃炉、あると思うんですね。今、世界で四百基を超える原発のうち、四十年を超えるものが一割で、三十年を超えるものが四割ということで、今後世界的にこの廃炉というのは大きく進むということであります。
この事故炉の廃炉と通常炉の廃炉というのは全く性質が違う部分もあれば、ただ一方で、何ですかね、応用ができるような部分もあるんだと思いますが、この事故炉の廃炉と通常炉の廃炉についての研究とか人材面についての整理について、参考人の御所見をお伺いしたいと思います。
また、茂木大臣自身は衆議院の委員会質疑で、通常の廃炉の問題、通常炉の廃炉の問題というのを、機能なりを集約してやることがいいのか、あるいはそれぞれの炉の設置者において、少なくとも通常の廃炉については技術的に確立された分野でもあるので、それぞれがきちんとした人材、ノウハウを持って進める方がいいのか、一体となってちゃんと通常の廃炉も進めるべきなのか、それぞれの炉の責任者がやるべきなのか、そこはちょっと真剣な検討が必要ですと言われているんですが、参考人の御所見をそこの部分についてお伺いしたいと思います。
○参考人(山名元君) まず、福島第一と通常炉の廃炉の関係の話でございますが、今、福島第一の非常に大きく損傷した炉に対する廃止措置は、かなり福島で起こっている特殊性に由来するものが多いです。つまり、溶け落ちた燃料の回収とか大量な汚染物質がビルティングの中にあるのでそれを除染するとか、そういう一Fに特化した技術というのがかなり入っていることは確かであります。
もう一つ、一般的な廃炉は既に先生御承知のように世界的にはもう民間ビジネスとして行われておりますし、既に世界中で完全なデコミッショニングが行われた例も二桁ぐらいあるわけです。そういう意味では、通常炉の廃炉というのは技術的には商業ベースに既になっているし、そのノウハウも海外のメーカーにはある、メーカーというか海外の会社にはあるという状態です。
ただ、我が国の廃炉というのを考えますと、まだまだ改善の余地があると。改善の余地って、まだ始まったのは一つしかないんで改善ではないんですが、それは放射性廃棄物の発生をもっと減らしていくというアプローチとか作業員の被曝を下げるとか工期期間を短縮するとかコストを下げるとか、どんどん改善の余地というのは一般炉の廃炉でもたくさんあるわけです。そのために必要な研究開発も今、日本原子力研究開発機構で「ふげん」発電所を使ってやったりしているわけですね。そういう意味ではまだこれから伸ばしていく部分がかなりあるという、こういう状況にあるわけです。
福島で取り組んでいる技術は、福島の一に特化しているとはいえ、実はそれをうまく使えばそのまま一般炉の廃炉にも適用していく技術になるはずです。それはかなり高機能を持たせているから、絶対さっき言った工期短縮とかコスト削減に向いていく技術があると思います。ですから、この一Fの対応でつくった技術は確実に一般炉の廃炉にも将来展開していく余地を探るべきだというふうに私は思っております。
茂木大臣のその、個々にやるべきか、全体でやるべきかという議論はまだまだこれは分析的評価が必要になりますが、ある個人的な非常にジェネラルな考えでやりますと、人材の話とか、そのツールをどう使うかとか、時間的なずれがあるとかいうことを考えると、日本全体をうまく合理化してやっていく余地はあるわけですよ。それは、個々の会社がばらばらにやっているんじゃなくて、例えば一つの会社をつくって、それが今年はここをやる、来年はあそこをやるとか、そういうことをやっていけば技術としても知能としても人材としても合理化が発生するだろうという思いはあります。
しかし、大事なことは、あくまでこれは民営ビジネスですので、これがビジネスとして成立していくというビジネス環境をつくる必要があるわけですね。つまり、それが事業として成立するということが必要でして、そのためには、関係者が集まって大きな会社をつくるとか、何か産業界が自発的に、そういうことを合理化する会社をつくるというような動きがやっぱり自発的に動くということが期待されるということになると思いますね。そういう意味では、市場メカニズムでそういう動きになるかもしれませんが、技術的には福島の技術などがどんどん民間で使われていくような流れをつくる必要があると、こう思っております。
○谷合正明君 それでは、あと二分ぐらいですから短く質問しますが、原子力広報ですね、先ほど大島参考人が今の機構の広報はなっていないという話があったんですけれども、山名参考人にではお伺いしたいんですが、新しい機構を今度発足させるとすれば、この汚染水だとか廃炉に関する広報について、どういったことをしっかり対応していかなければならないのか。諸外国では原子力広報についてはもっと進んでいるんだといった専門家の御意見もあるわけでありますが、そういった御所見をもしお持ちでしたらよろしくお願いします。
○委員長(大久保勉君) 山名参考人、時間の関係もございますので、答弁は簡潔にお願いします。
○参考人(山名元君) 御指摘のとおりで、恐らくこの機構がもしできた場合には、情報の発信機能を相当高めていただかないと困ると思います。
実は、この廃炉の状況というのはほとんど一般の方たちに情報が伝わっていないんです。メディアが出していないこともありますし、東京電力のサイトで情報を見ようにしても、ややこしくて見てられないというのがありまして、これをもっと集約して、国として、ここを見たら何でも分かるよという舞台にこの機構がなっていただけるなら、これは大変あるべき姿だというふうに思います。
○谷合正明君 終わります。ありがとうございます。