○谷合正明君 公明党の谷合です。
将来、我が国は少子高齢化のピークをこれはまだまだ迎えていくわけであります。また、厳しい国家財政の中にもおりまして、そういう中で持続可能な安定した社会保障制度を国民理解の下、構築していく必要があります。
番号制度というのは、公平な社会の実現、効率的な行政の実現、そして効率的な政策の実現のために、我が国の基本的な社会基盤として育てていかなければならないと考えています。
そこで、そういう前提で幾つか質問をさせていただきますが、午前中来、なぜ我が国でこの番号制度の導入が遅れてきたのかという質問がございました。私も最初に思いましたのはそのことでございまして、先進国の中で番号制度を導入していないのは日本と言ってもいいという学者の声もたくさんあります。なぜこれが遅れてきたのか、そして遅れてきたことでどういう問題、弊害が生じてきたのかと。特に、なぜ遅れてきたのかというような答弁もございますので、特に後段の、どういう弊害が、問題が生じてきているのかというところをまず御答弁いただければと思います。
○国務大臣(甘利明君) 遅れてきた理由は申し上げたとおりであります。国民がいろいろな点で不安を持ったこと、それから、政府としては、導入すればこんなメリットがあるということを国民の間に十分周知徹底できなかったことでありますけれども、これがあればこういうことはなかったということで一番最初に思い付くのは、やっぱり年金の問題だと思います。
職業を変え、あるいは職業に就いている間、就いていない間、同じ年金で一本で来れば別として、幾つかの年金にまたがった場合、そこにその本人のものであるということが突合できるようなすべがあれば、幾つ職を変わろうと、一気通貫で串で通すことができて、その本人に帰属するものであるということが分かったわけでありますから、こういう、国民が日本国のいろいろなシステムの中で生活をしていく間、必要な情報がその個人に所属するものであるということがすぐ分かるようなシステムがあれば、漏れや多重記載等々の事故は少なくともなくなるんではないかというふうに思っております。
○谷合正明君 年金記録問題につきましては、総額三千六百億円、今日まで使ってきたということもありまして、大臣の御答弁では、すぐにこの年金記録の問題が思い浮かぶという話でございました。まさに、番号制度を導入する意義というのは、逆に言うとそういうところにもあるんだということだと思います。
一方、既にこの番号制度を導入している番号制度先進国と言われるアメリカですとか韓国では、成り済ましの問題というものが多発していて、むしろ今日的な課題として、このデメリットの部分も脚光、デメリットの部分も、これ何というか社会問題化しておるわけでございます。
トータルにこのメリット、デメリットというのが必ずございます。メリットでいえば、行政の効率性でありますとか、あるいは住民にとってみると利便性の拡大であります。デメリットというと、やはりどうしても監視社会になるんじゃないかというおそれであるとか、あるいは一旦番号が漏れて成り済ましの被害が起きたときにその被害回復がなかなか難しいとか、様々なデメリットもあるんだと思いますが、そうした中において、政府としてそれでもなお今回導入するんだと、すべきだという判断をしたその理由について、大臣の御所見を伺いたいと思います。
○国務大臣(甘利明君) アメリカや韓国で事故や事件が起きたと。アメリカでは紙に番号が打ってあるだけみたいな、私も現物を見ていないんですけれども、極めてある種粗末なものと。そうすると、これがまた、他人がそのカードを何らかの手段で取得したときにその人と確認する手だてがないとか、基本的なところで成り済ましを防止する仕組みがなかったんだと思います。
そういう、先ほどもお答えしましたけれども、後発部隊であるだけに、先発部隊が失敗している事例、その轍を踏まないように、なぜ問題があったかということを検証する余裕があるわけでありますから、ソフト、ハード、それから制度、いろんな面で事故を防止するような手だてを講じながら、そして国民には、不安は解消して、そして今度はこんなメリットがありますと。先ほど来お話がありますけれども、いろいろな申請時の添付書類が必要なくなると。ある給付を受けるときに所得制限があると、そうすると、その本人であるということと本人の所得がこれであって該当するということを一々書類をそろえなきゃならないと、それが省かれるということとか、あるいは併給調整も、両方の所得を突合して該当するかどうかとか、あるいは納税する立場としてみれば、少なくとも今よりは所得の把握が容易になりますから、公平、公正な税制度の実現ができるとか、いろんないい面があります。
もちろん、今は社会保障と税とそれから災害のときという三つの案件に限定されていますけれども、これの制度を実行してみてセキュリティーは大丈夫だと、そうしたら、恐る恐るでももうちょっとその外側に足を伸ばして利用範囲を広げても大丈夫じゃないかというような意識も出てくるんであろうと思いますし、その際に気を付けるべき対処というのも、民間利用をしている国の問題点を先取りして対処することができるということも併せて広げていけることができるんではないかというふうに思っております。
いずれにいたしましても、世の中が電子社会化しております。そういう中での、個人がアナログ方式じゃなくてデジタルでアクセスできるという言わばインフラの役目を果たしているでありましょうから、使いようによっては無限に利用価値は広がっていくんではないかというふうに思っております。
○谷合正明君 そうした番号制度の意義であるとか目的であるとか効果というものを政府がしっかりと国民に説明していけるかどうかだというふうに今伺って理解したところでございます。
小さく産んで大きく育てていくんだと、この制度はですね。リスクと利便性の間でこのバランスを取ることが非常に難しいんですけれども、我が国の場合は小さく産んで大きく育てていくとも言われるわけでありますが、大きく育てていく上でのその鍵となるのは、今大臣御答弁いただいたところだとは思いますが、改めて何がその鍵なんだということを最後うたっていただきたいと思います。
○国務大臣(甘利明君) まさに小さく産んで大きく育てると。それは小さく産めば利便性も確かに小さいでしょうけれども、リスクも物理的に小さくなるわけであります。その中で、細心の注意を払って、リスクを拡大しない、リスクは極小化する努力が必要ですけれども、そういう、運営面であるいは制度面で、あるいは技術的にリスクの極小化をしていく中で利便性の最大化を図っていくということであります。三つの行政にかかわる範囲で使っているうちに、恐らく使っていらっしゃる方からこんな場面にも使えるといいのにねという経験値が出てくるんだと思うんですね。民間利用の場面でもこんな場面に使えたらもっと便利だねという知見が蓄積してくると思います。そういうニーズの高いものから、じゃ、そこのセキュリティーをしっかり図って、そこには踏み出していこうという知恵も出てくるかもしれません。
三年後に見直していく規定があるわけでありますけれども、三年間でメリット、デメリット、デメリットは極小化する、メリットは伸ばしていく、その経験値を積んでいただいて、つまり行政の方でも国民の方でも経験値を積んでいただいて、しっかりリスクは抑え込みながら利便性を拡大するという方向に向かっていければというふうに思っております。
○谷合正明君 分かりました。
それで、番号先進国の一つでもありますスウェーデンでは古くからこの番号制度を使っていたわけでありますが、この成功の鍵はということで、国税庁のある担当者の方が次のように言われたそうなんですね、スウェーデン国民というのは政府を信用していますと、歴史的、文化的背景というのはスウェーデンの番号制度を語る上で重要でしょうと。つまり、政府を信用していない国では番号に対する拒否感があるでしょうというふうに言われておりまして、信なくば立たずだと思います。その意味で、政府に対する信頼性の高さというのもこの番号を広く活用することに対して非常に重要なことだと思っておりますので、ちょっと併せて付言させていただきます。
それで、今大臣が、メリットを最大化していく、またデメリットをこれ極小化していくんだ、そして国民に経験を持っていただくんだ、その上で政府がしっかりこの説明を果たしていくんだというお話だったと思いますが、現状のところ、このマイナンバーに対する国民の認知度というのはどうなんだと、現在、政府はどのように受け止めているのかというところをまず聞きたいと思っております。そして、具体的にどのように国民の理解を深めていこうとされるのかと。
先日もあるテレビ番組で街角インタビューということで、マイナンバーを知っていますかというインタビューをやっていましたけれども、余り知られていないようでして、言葉自体もですね。もう少し知られているのかなと思ったところだったんですけれども、マイナンバーというと、何か自分のラッキー番号かなみたいなぐらいのことを思っていらっしゃる方もおられました。
そこで、改めて、この周知、理解、そのような対策について、現状の認識とこれからの具体策について伺いたいと思います。
○副大臣(西村康稔君) マイナンバーという、いわゆる通称ですね、これも大分定着をしたのかなと思っておりましたけれども、まだまだそういうことでありましたら、更に努力をしなきゃいけないと思いますけれども。
これまでパブリックコメントも二回やってきておりますし、それから、昨年度、一昨年度、二十三年、二十四年、二年にかけて、四十七都道府県でシンポジウム、全ての県で開催をし、二百名前後、毎回参加があったというふうに聞いておりますけれども、できる限り、そうした対話を重ねて理解を求めてきているところでありますけれども、一方でまだ不安もあり、認知度がないということでありますので、まだ実際のカードが、通知カードが行くにはまだ少し時間がありますので、是非この間を利用して、引き続き、その意義とかメリットとか、まさに大臣が答弁されたように、カードがあってこんなことができるんだなという、そういうことも是非、実際カードが入らないと分かりませんけれども、それまでの間にこんなことができるようになるというようなことを、利便性の向上につながる話なんかも含めて、是非周知、幅広く御理解いただけるように啓蒙活動を引き続き努力をしてまいりたいというふうに思います。
○谷合正明君 それで、成り済まし対策です。国民の中で不安に思っておりますのはこの成り済ましということで、アメリカで起きていることが日本で起きるわけじゃないということは分かりましたけれども、しかし実際に、一般論としてでいいんですけれども、どのようなことが成り済ましとして我が国の場合あり得るのかと。また、どういった被害が生じ得るのかということでございまして、午前中も例えば年金の不正受給なんかがあり得るような話があったんですけれども、もう少し、デメリットの部分を大きく語るというのは言いづらいかもしれませんが、実際、どのようなリスクがあるのかということについて御答弁いただきたいと思っております。
○副大臣(西村康稔君) 先ほど、アメリカや韓国の例もありましたし、大臣からも答弁ありましたけれども、アメリカのソーシャルセキュリティーナンバーというかカードは本当にぺらぺらで写真も入っていなくて番号だけ付いているということでありますし、それをアメリカ、韓国の場合はもう民間が自由にその番号を使えるということで、いろんなところで成り済ましがあったりその番号からいろんな事件が起こってきているということを認識しておりますので、まず我々は、そのカードに写真も付けてちゃんと本人確認できるようにということ、それから、今回、法律に使える範囲を限定をして、行政の中でも税、社会保障、災害という分野にまずは限ってスタートを切ると。委員御指摘のように、小さく産んで、これが理解をいただきながら、より幅広く使っていただけるような環境を整えていくということだと思いますので、まずはカードについてそういうふうな対応をしているということが一つであります。
そうだとしても、カードを何らかの形で取得をして、成り済まして社会保障給付を不正に受給するというようなケースも考えられないわけじゃありませんので、万が一そんなことがあった場合には番号を変更をする、市町村長の権限でそれを職権で変更する、あるいは本人からの申出でも変更できるようにしておりますし、公的認証制度ももちろん導入をしておりますし、万が一不正取得した場合には刑事罰を規定すると。相当重い罰を今回用意をしておりますので、そうした様々な対策を通して、できるだけそんなことがないように万全を期してまいりたいというふうに考えております。
○谷合正明君 個人番号の利用をする事務を、今、税と社会保障と災害にだから限定するんだという話だったんですけれども、三分野に限定した理由というのはそのことでよろしいんでしょうか、その理由、限定した理由について。
○副大臣(西村康稔君) まず、税と社会保障については、まさに公平性を図っていく、税制面での公平性あるいは社会保障給付の公平性を図っていくという観点で、ベースとなるものとしてこの個人番号を用意をすると。プラス東日本大震災もありましたし、災害においてそうした番号を使って例えば要援護者、障害を持った方とか高齢者とか、そうした方々、いざというときに支援が必要な方々の例えば名簿を作成するときにこうした個人番号を使うとかいうことも考えられると思いますし、生活再建支援金の給付に当たってこの番号を使ったらどうかと、そんな御意見もいただいて、今回は税、社会保障、災害の分野に限ったわけであります。
○谷合正明君 災害時における具体的な活用方法についても今触れられたところでございますが、被災者生活再建支援金の支給で、そのほかは自治体が条例で定めていくということだと思うんですが、東日本大震災のときに仮にこの制度があったとしてどのように役に立ったのかと。じゃ、逆に持っていなかったらこれ、何というか、不利益を被ることになるのかとか、教えていただきたいんですね。
いろいろ現場では、例えば罹災証明書の発行が非常に滞って被災者生活再建支援金の支給の事務も滞ったとか、様々な、災害、防災現場といってもなかなか、どこが具体的に改善されるのかというのが分かりづらいものですから、そのメリットについて改めて御説明いただきたいと思いますが。よろしくお願いします。
○政府参考人(向井治紀君) お答えいたします。
今回の東日本大震災の場合は、そもそも全て役場ごと消失してしまった、情報が消失してしまった例もありますので、必ずしも、これがあればできたということを確実に言えるものは必ずしもないですけれども、やはり、特に宮城県とか仙台市辺りからお聞きする話というのは、後の管理が大変だという話をよく聞きます。要するに、どこに行ってしまったかというのをなかなか、結局避難所を転々とされたり、あるいは他県に出られた方が多数いらっしゃいましたので、そういう方の追跡と。逆に言いますと、また、そういう方は住民票を移してしまいますと被災者でなくなる危険性もありますので、基本的には住民票は移されないということでございますので、そういう方をどうやって管理して給付を最後まで届けるかというのが意外と大変だというふうにお聞きしました。
そういう追跡について、結局、その後被災者の番号を付けた台帳を整備されたようでございますけれども、そういう台帳整備に非常に役に立つのではないかということであって、今回の災害基本法等の改正にもそういうことが盛り込まれているというふうに理解しております。
○谷合正明君 是非、であれば、そういう意義、目的というかメリットもしっかり説明をしていただきたいと思っております。
個人番号カードについてお尋ねいたします。
第十七条の個人番号カードの交付に関して、住民基本台帳カードの普及状況、これが六百五十六万枚でしょうか、累計で、これ全人口の五・一%ということでございまして、この住民基本台帳カードを踏まえて、個人番号カードの交付で改善すべき点はどういうものなのかということについてお尋ねしたいと思います。
○政府参考人(諸橋省明君) お答え申し上げます。
御指摘のとおり、住基カードあるいはその基のシステムとなります住基ネット等々、本来的な役割から住基カードはどうしても活用方法が限られまして、御指摘のとおり、全体の約五%という程度の普及にとどまっております。他方、個人番号カードの方は、個人番号が記載をされておりまして、就職ですとか、子育てですとか、年金受給等における本人確認に利用されることとなりますため、活用の場面が非常に増大をする、生活に欠かせないカードになるのではないかということも考えられますので、私どもといたしましても、多くの方が取得しやすい環境づくりを考慮する必要があるのではないかというふうに考えております。
総務省といたしましては、取得しやすい環境づくりやカードの利便性の向上のために、例えば発行手数料の今後の在り方ですとか、あるいは申請者の方が一度窓口に来庁すればカードを取得できるようにするような工夫といいますか、制度ですとか、あるいはICチップの空き領域の利用方法ですとか、こういった点等々につきまして、各方面の御意見も伺いながら、今後ともしっかり検討してまいりたいというふうに考えております。
また、二十八年一月に予定をされております個人番号カードの交付開始までに、先ほど委員の御指摘のように、国民や個人の皆さんにカードの利便性を周知をしていくといったこと、あるいは地方自治体に対してもカードの取得促進について助言をしてまいりたいと考えております。
○谷合正明君 最後に、今、発行手数料の在り方というのが出たんですけれども、これちょっとどこが決定するのか分からないんですが、発行手数料、これ無料ですべきであると衆議院の段階でも幾度も出ているんですが、今後検討しますという話なんですが、何を検討することになっているのかよく分からないんですが、発行手数料は無料であるべきではないんでしょうか。
○政府参考人(向井治紀君) 現行の住基カードは、市町村によって若干値段は違いますが、基本的には有料ということになっております。今回の番号カード、議論いろいろございますけれども、基本的には国の制度を行っていただく法定受託事務の一環でございますので、市町村には基本的に負担を掛けないということと、あと自己負担を取るのか取らないのかという議論は当然あろうかとは思いますけれども、それらにつきましても、できるだけ利便性を確保する方向で今後検討してまいりたいと思います。
○谷合正明君 では、終わります。ありがとうございました。