○谷合正明君 公明党の谷合です。私が最後の質問でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
性同一性障害について伺います。
平成十五年にいわゆる特例法が成立をいたしました。今日、昨年末まででございますが、この特例法に基づき性別変更をされた方は三千五百八十四人に上っております。性別変更されていない方も含めますと、当事者と言われる方は約三万人に上るとも言われております。特例法成立から十年たちました。前進しているところもあるわけでありますが、しかし、置かれている環境はまだまだ不十分なところも多々あろうかと思います。
まず、そこで一つ、自殺対策との関連でお伺いしたいと思います。
岡山大学の中塚教授の調査によりますと、性同一性障害によりまして自殺を考えたことがある者が六八・七%、それから自傷、自殺未遂経験者というのは二〇・六%と高い数字を示しております。今後の自殺対策を考える上で、性同一性障害者への対応というものが、これは強化していくということが必要だと考えておりますが、担当大臣であります森大臣にまずお伺いしたいと思います。
○国務大臣(森まさこ君) 性同一性障害者の問題について担当大臣がいなくて、それぞれ各省庁に問題ごとに陳情に行ってきたという今までの現状を踏まえて、谷合委員が先日、公明党の担当者として私の大臣室に皆さんと一緒に来ていただきました。その思いをしっかりと受け止めて取り組んでまいりたいと思いますが、特にこの自殺の問題でございますが、私は自殺の問題も担当をしておるところでございます。
性同一性障害者を含む性的マイノリティーについては、自殺対策推進会議の委員や関連学会から、自殺念慮の割合が高いということが指摘されておるところでございます。こうしたことを踏まえ、昨年八月の大綱の見直しにおいて自殺対策の一つとして初めて盛り込まれておりますので、担当大臣としては、性的マイノリティーについて無理解や偏見等が自殺の背景にある社会的要因の一つであると認識しておりますので、関係省庁と連携して理解促進の取組を推進してまいりたいと思いますし、あわせて、ゲートキーパー等々、気付きを促進をしてまいりまして、自殺の防止に取り組んでまいりたいと思います。
○谷合正明君 森大臣におかれましては、先日、お忙しい中、直接の性同一性障害の所管というわけではなかったわけでありますが、政務ということで時間を空けていただいてお会いしていただいて、様々な御要望を聞いていただきました。その上での今日の御回答だったと思います。本当にありがとうございます。しっかりと取り組んでいただきたいと思っております。
次に、基礎年金番号について伺います。
昨日も一部報道に上がっておりますが、十桁の基礎年金番号の冒頭四桁に性同一性障害の方と分かる特定の番号が付されているということが報道に上がりました。そこで、これがネットに情報が漏れてしまったということも明らかになりましたが、基礎年金番号から性同一性障害であることが類推される現状について、これ改善していくべきだと考えております。
まず、この点について厚生労働省の方から伺いたいと思います。
○政府参考人(高倉信行君) お答え申し上げます。
ただいま委員から御指摘いただきました問題につきまして、ごく簡単に背景も含めて御回答させていただきたいと存じます。
私ども、年金の社会保険のオンラインシステムにおきましては、一つの基礎年金番号において異なる性別に変更するということはシステム上は想定されていなかったということがございまして、この法律が整って仕組みができた後、従来、家裁から性別変更の審判を受けた方からのお申出があった場合に、年金制度に加入された時点に遡っての性別訂正、記録整備、これを行いながら運用上対応してまいりました。
しかしながら、現行システム上、そういった対応では将来の年金の正確な計算ができない事例があることが判明いたしましたため、昨年の二十四年の十月からでございますが、性別変更前の記録を残しながら性別変更が行われたことを把握できるように、日本年金機構におきまして新たな基礎年金番号を設定することとしたということが背景にまずございます。
その上で、今御指摘いただきましたホームページ云々というところでございますが、これは昨年の七月に、年金相談マニュアル、私どもの年金事務所で使っております相談マニュアルの方の文書開示請求があった際に、性同一性障害により家裁から性別変更審判を受けた方からお申出があった場合には特定の番号を付番する対応をしているということが分かる部分を、本来であれば黒塗りすべきであったところを黒塗りせずに文書開示したことを契機に、このような情報がインターネットの個人のホームページに一時掲載されていたという経緯だったと聞いております。このように、文書開示に際しまして配慮が足りなかった部分があったことは誠に遺憾に存じております。
この問題につきまして、当面の改善の対応といたしまして、本年の四月、先月からでございますが、新たな基礎年金番号への切替えを実施していると聞いております。その番号は当然ながら非開示で、分からないようにするという対応をさせていただいております。またさらに、正確な記録管理を確保しつつ、また御本人のプライバシーにも配慮した上で、そういった特定番号を付番しないやり方が可能なのかどうか、ここのシステム改修も含めて日本年金機構において現在検討している段階でございます。
以上でございます。
○谷合正明君 是非、後段の部分、特定の番号を付番しないやり方が可能なのかというところを、研究を早急に進めていただきたい。また、当事者の方との意見交換もしていただきたいと。いわゆるシステムの効率優先ということではなくて、人の幸せを優先にするという根本的なところの方針をまず確認させていただきたいと思います。
それでは、マイナンバーについてなんですけれども、マイナンバーも番号によって性同一性障害かどうか類推されるようなおそれはないのかどうか。そういうことがあってはいけないと思いますが、いかがでしょうか。
○政府参考人(向井治紀君) 個人番号、マイナンバーにつきましては、基本的にはランダムな数字の配列であります。現在、住民票コードを変換して付番するということになってございます。
したがいまして、これを性別等の個人の属性を判別する個人番号を生成することは技術的に不可能でございます。また、政令におきましても、個人番号が無作為に作成された数字等で構成される旨明確に規定したいというふうに考えております。
○谷合正明君 分かりました。
そのマイナンバーですけれども、例えば性別欄というのは、ICチップ上のみの情報として表面的な記載から削除するなんということも可能、検討として可能なんでしょうか。
○政府参考人(向井治紀君) 個人番号カードは、現在、住基カードを使われておりますけれども、これを発展的に、何といいますか、これに代わるものとして作るものでございまして、現行の住基カードと同様に氏名、住所、生年月日を券面に、そのほか券面に性別を記載するというふうになってございます。これは法律上そういうふうに書かれてございます。
○谷合正明君 もう一つ、マイナンバーとまた関連するわけですが、公文書ですね、この公文書における性別欄の存在というのが、その性別の取扱いの変更された後であればまだいいですけれども、変更される前の方っていらっしゃるわけですね。ですから、手術はしたんだと、でも未成年の子供がいることによって戸籍上の性別変更はできないと、現行の法制上できないという方もいらっしゃいます。実際に私もそういう方にお会いしました。そういう方にとりますと、公文書における性別欄の存在というのは大きな苦痛になっているということでございます。
そこで、総務省の方に確認をしたいと思いますが、現在二百以上の自治体で、印鑑登録証明書あるいは選挙時の入場整理券などで、自治体で可能な公文書からの性別欄廃止というものを実施していると承知しておりますが、平成十六年度の全国市長会の要望事項に、国に対する要望事項に、法令等で定める公文書について性別記載の廃止を進めるべくその様式の改善を図ることとの要望が出ております。現在その政府の対応というのはどうなっているんでしょうか。
○政府参考人(諸橋省明君) 私の方から法令等で定める公文書全般についてお話を申し上げることはなかなか困難な部分もございますが、先ほど委員御指摘の印鑑登録証明事務について申し上げますと、各市町村の条例等を根拠とした事務でございまして、多くの市町村では印鑑登録証明書に個人を特定するために必要と認められる情報として氏名、それから出生の年月日、住所とともに男女の別を記載をしておるものというふうに認識をしておるところでございます。
また、市町村の中には印鑑登録証明書に男女の別を設けない運用をしている市町村もあるものと承知をしておりますけれども、印鑑登録証明事務につきましては法令の制限があるものではございませんで、各市町村において適切に判断をされているものというふうに考えております。
○谷合正明君 ですから、今、二百以上の自治体でそういうことが、性別欄の廃止というのが、不必要なものについてやっているわけでありまして、それを今各地方議会で、個別でそういう取組をやっているわけでして、一方で、国として様式の改善を図る、あるいは各自治体にこういうことがあるんだよということを周知すると、そういうこと自体は私は何ら問題ないんだというふうに思っております。ですから、改めてこの全国市町村会から要望が出されているものについて、また検討を進めていただきたいと思っております。
ちょっと時間がないので質問を省きます。
そして、外務省の方にも来ていただいております。パスポートの性別欄もございますが、これも同様に、性別変更されていない、戸籍上されていない方にとりますと、このパスポートも、イミグレーションの、この出入国時に対して、これ非常にトラブルのもとになっているということでございまして、実は国際民間航空機関では、MとFだけでなくXという記載についてもこれ認められております。オーストラリア等の国ではこのXということも実際にパスポートに記載があるわけでありますが、この点について検討ができるのか、お伺いしたいと思います。
○政府参考人(山田滝雄君) 外務省でございます。
先生御指摘のとおり、ICAOが決めております国際標準がございまして、ここでは男性がM、女性がF、それからアンスペシファイド、確認できない方がXという、そういう書き方ができるというふうにされております。
他方、我が国の場合は、パスポートは戸籍に基づいて性別を記載することになっておりまして、戸籍には男か女しかないという、そういう制度となっております。
ですから、この問題につきましては、戸籍制度そのものをもう少し政府全体として検討していく中で、外務省としても積極的に関与していきたいというふうに考えております。
○谷合正明君 最後になりますが、性同一性障害の問題というのは、法律、人権、医療、労働、教育、地方自治、外務等、多岐にわたっておりまして、政府として様々な問題を更なる解決に向けて取り組んでいくべきだと思っているんですが、その意味で、取りまとめをする、担当する部署もないということはちょっと問題であると思っております。
官房副長官に、最後、政府としての取組の決意を伺いたいと思います。
○内閣官房副長官(世耕弘成君) 谷合委員から御指摘いただいたように、本当に、この性同一性障害の問題というのは本当に多岐にわたるというふうに思います。
今御指摘いただいた問題のところの答弁者だけでも、例えば内閣府であれば、これ男女共同参画の担当もいれば、自殺総合対策の担当もいれば、マイナンバーカードの担当もいると。そして、ほかにも、総務省、厚労省、そして外務省。また、御指摘はいただきませんでしたけれども、人権擁護という観点では法務省ですし、そしてまた議員立法で成立させていただいている性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律、これは法務省所管ということになっていまして、本当に役所もばらばらになっていると思います。
こういった中で、仕事が縦割りにならないように、細切れにならないように、どういう仕組みをつくっていけばいいのか、これはもう政府が一体としてちゃんと取り組まなければいけないというのはもう当然のことでありますから、どういうやり方がいいのか、今御指摘の新しい部署をつくるということも含め、しっかり検討してまいりたいというふうに思います。
○谷合正明君 よろしくお願いします。
以上です。終わります。ありがとうございました。