○谷合正明君 公明党の谷合正明です。
都市再生特別措置法の一部を改正する法律案について質問をいたします。
この法案につきましては、私自身も、その目的、狙いについては理解を共有するところではございます。
昨年の三・一一の東日本大震災の教訓、この対応だということなんですけれども、三月十一日のときは、確かに都市部で帰宅困難者、たくさん生じました。深夜十二時以降になってもターミナル駅周辺には、たくさんの方が行き場を失って、たくさんの方がそこに待機をしておりました。私自身も新宿駅周辺とかも見てまいりましたけれども、ああいうことを考えますと、混乱を最小限に抑えていくということは理解するんですが、果たしてその目的をこの法案によってどれだけ効果を持たせることができるのか。必要条件かもしれないけど十分条件ではない。必要条件と申しましたけれども、どれだけ本当に必要になるのかというところで若干心もとないなと。
先ほど渡辺委員の質疑の中にもありましたが、この予算規模でありますとかというところからして、本当にこの法案を実効性あるものに今後していかなければならないんだろうと思っています。それがまず率直なこの法案に対する印象でございます。
その上で、具体的なところの質問に入らせていただきますが、退避経路協定の締結ということが盛り込まれております。この退避経路協定が結ばれるのかということなんですが、平成十九年に施行されました都市再生特別措置法、この本法案の一部を改正する法律によりましては、似たような避難経路協定制度というものが創設されております。これは、密集地の市街地における防災街区の整備の促進に関したものでございますが、特に、老朽化した木造建築物が密集している地域であるとか、かつ、十分な公共施設が整備されていないそうした地域においては避難路の確保が大きな課題となっているということで、この避難経路協定制度が創設されております。
国、地方公共団体の施策のみならず、住民自身による自主的な避難上必要な経路の整備又は管理のため、土地所有者等の全員の合意により、避難上必要な経路の整備又は管理に関する事項を協定するとしているわけですが、これ、実際にこの避難経路協定が締結された事例というのは現在までにあるのでしょうか。
○政府参考人(加藤利男君) 端的にお答え申し上げますと、いまだございません。
○谷合正明君 それでは、その協定が結ばれていないということの原因についてはどのように分析をされているのか、また、それでは、今回の退避経路協定においても同様な、何というか、趣旨というんでしょうか、同様にその推進を阻むような阻害要因というのは存在しないのか、この点についてお伺いいたします。
○副大臣(吉田おさむ君) 委員御指摘のとおりでございまして、密集法におきましては、避難経路協定を結ぼうと、とりわけ都内の各区におかれましては非常に努力をされて、何とかこの協定を結びたいという形で率先頑張られておりますけれども、御承知のとおり、こういう密集地は権利関係がふくそうしております。私自身の生まれ育った町もいわゆるこの密集地になりまして、所有者とそれから住民、借地借家、様々な関係がふくそうしまして、多数の権利者が存在しております。
そうしますと、今委員も御指摘されましたように、関係権利者の合意形成というようなものがなければこの協定は結ぶことができないと、強制的に結ばせるものではございませんので、非常に、現在のところ、こういう中で締結がなされていない状況であるということ。
一方、本法案におきます退避経路協定につきましては、これは都市の再開発、都市の再生という中で、ある程度の地権者等の整理が進んでおりますので、大街区等ができておりますので、整理された状況でございますので、できる限りこの退避経路の適切な環境整備を図るための関係者の合意形成というもの、これも密集法と違いやりやすいのではないかなと。
また、もちろん、今回の法に基づきまして、国も参加をいたしますので、国の方のできる限りリーダーシップも取って、今現状、防災上の貢献への意識が高まってもおります。また、現実、委員それぞれ御指摘、また谷合先生も御指摘いただきましたように、やっぱり地域でやらなければならないというそういう思いも多数ございます。民間主体のこういう形で、後押しをする形で退避経路協定制度の活用というものを促進をしてまいりたいと、そういうふうに考えているところでございます。
○谷合正明君 今回の退避経路協定は、避難経路協定と違って土地の権利のふくそうする、そういうような密集地であるかないかと、そういったところにちょっと差があって推進しやすいのではないかというような話がございました。それはそれで理解できるんですが、しかしながら、土地の権利がふくそうするエリアというのもやっぱり存在するわけですね。
今回、退避経路協定を結ぶ際において、その土地の権利がふくそうするエリアでどのようにこの協定を締結させようと努力されるのかと、どのように一工夫、二工夫していくのかということについて、改めてお伺いしたいと思います。
○政府参考人(加藤利男君) お答え申し上げます。
この退避経路でございますが、この退避経路は、大規模地震が発生した際に、鉄道駅や余震発生時に危険なビルから公開空地等へ一時的に退避したり、帰宅困難者等が退避スペースに向けて混乱なく安全に移動するための経路という性格のものでございまして、具体的には、例えばでございますが、地下の歩道ですとか自由通路といったものを対象にして計画していきたいというふうに考えております。
この退避経路協定につきましては、先ほども副大臣から答弁があったとおりでございまして、大街区化が進んでおり、権利関係も一定程度整理された状況にありますけれども、いずれにしても関係権利者の合意を得ることが必要でございますので、これまで任意で取り組んでおられます協議会の参加者の皆さんにも呼びかけて、その必要性をよく理解をしていただいて制度を活用していただくように、そういう働きかけをして理解を求めていくことが一番必要なことではないかというふうに考えております。
○谷合正明君 権利関係がある一定程度整理されたような地域においては、例えば協定締結の義務化というような選択肢というのは考えられるんでしょうか。そういうやはり義務化というのは難しいと考えていらっしゃるんでしょうか。
○政府参考人(加藤利男君) 実際問題といたしまして、大規模地震がいつ発生するかという分からない中で、経路協定、退避するための経路を確保するという観点から考えますと、例えば、その経路の通行の妨げとなります物は常日ごろから置いておかないとか、あるいは関係する方々に日々適切に、物を置かないというだけじゃなくて、通行上本当に大丈夫かどうかいつも点検していただくといったような日常の取組が非常に重要なことになってこようと思っております。
その意味から、今申し上げたような取組を継続していただいて、いざというときに適切に対応していただくためには、やはり参加者の自発的な意思というものが前提にした方がより効果が上がると、そういう観点から義務化ではなくて民間主体が全員合意により協定を締結する制度というふうにしているところでございます。
○谷合正明君 日常の取組が重要だということでございますが、では、それがいざといったときにどのように動きが出るかということなんですが、例えば退避経路上の誘導、これは誘導というのはどこが主体となるのか、誰が行うのかという点についてお伺いしたいと思います。
具体的に、例えば新宿駅周辺におって、いざといったときに退避経路があったとしたら、これ誰が主体的に誘導を行っていくんでしょうか。民間のできる範囲と行政のできる範囲と、この役割分担等々についてお聞かせいただきたいと思います。
○政府参考人(加藤利男君) お答え申し上げます。
退避経路を設定して、それを誰がどういう形で誘導していくかということについてのお尋ねであろうかと思いますが、大規模な地震が発生いたしました際に地方公共団体における対応がなかなか難しいということも考えられますので、退避経路上の誘導等につきましては、オフィスビルの所有者、管理者等に行っていただくことが現実的ではないかなというふうに考えております。このため、都市再生安全確保計画の作成の際に、地方公共団体の十分な関与の下で退避経路上の誘導等に関します関係者間の役割分担をあらかじめ決めておくなど、事前の備えに万全を期しておきたいというふうに考えております。
○谷合正明君 関連して、また退避経路の今度は安全性の問題なんですけれども、例えば首都圏においては東日本大震災の際にも、例えば広告物とか看板とか、そういった部材が落下するという被害が生じているかと思います。看板だけではなくて、様々、ビルの外壁であるとか窓ガラスだとか様々なものが落下してくるという危険性あるんですが、特にこの広告物の落下に対して特化して質問しますと、例えば地方自治体は、屋外の広告物関係につきまして、規模の大きいものについては屋外の広告物管理者を設置させるなどの安全の確保を行っています。
そこで、退避経路の安全性の確保や被害の軽減のために広告物等に係る取組が必要であると考えますが、この点についてはいかがでしょうか。
○政府参考人(加藤利男君) 屋外広告物の設置に当たりましては、公衆に対する危害の防止を目的の一つといたします屋外広告物法及び同法に基づく条例等や建築基準法等の関係法令に基づき安全性を確保するということにされておるところでございます。
今回提案をさせていただいております都市再生安全確保計画に退避経路を記載するに当たっては、前提として、事前に大規模地震が発生した場合に屋外広告物等が落下するといったこと、それで、円滑な退避への支障ですとか人的被害が生じないか否かについて、計画作成主体であります協議会が検証した上で退避経路を位置付けることになるというふうに考えております。
その上で、都市再生安全確保計画に記載されました退避経路につきましては、屋外広告物の安全性等に関する定期的なチェックを協議会が行う、そうすることによって、先ほど御指摘いただきましたような懸念の生ずることがないように適切な管理を確保していきたいというふうに考えております。
○谷合正明君 続いて、震災情報の提供について質問いたします。特に情報弱者と言われる方々に対しての提供です。
例えば、訪日、観光で来ている外国人、あるいは障害者、視覚障害、聴覚障害様々ありますが、それぞれ震災の情報の提供というのは大きな課題となったと私は思っております、三・一一の際にですね。
今後、この震災の災害情報、例えば緊急地震速報の周知であるとか、そういったものをどのようにこの情報発信を迅速かつ正確に提供できるか、この点についての取組、ここをお伺いしたいと思います。
○副大臣(吉田おさむ君) 谷合先生御指摘のとおり、観光で来られるという部分、やっぱり観光に来られた訪日外国人は、日本のやっぱりホスピタリティー、おもてなしというふうなものに非常に大きなものを持つと。それは、単にその場のおもてなしだけではなく、最後のいざといったときに、日本という国は、日本という政府は何をしてくれるのかということまで含めて、こういうふうなものがいわゆる観光立国にとっても重要なことと考えております。
今回の震災におきましては、正直申し上げまして、日本政府観光局のホームページでしか情報伝達ができ得なかったということ、十分に情報を行き渡らせることが困難であったということ、そして迅速かつ的確に情報提供を行う体制をあらかじめ構築することが急務であるということ、様々な問題点が浮き彫りにされてまいりました。率直にこれらのことを精査をし、平成二十四年度予算におきましても、この訪日外国人の皆さんが必要とする情報、その提供方法、役割分担につきまして検討会議を設置することとし、訪日外国人の皆さんへの安心感をますます増すような提供をしてまいりたいと、かように考えております。
また、今御指摘の障害を抱える方々への情報提供につきましては、例えばスピーカーによる音声案内、電子掲示板等を活用した文字情報案内など、あらゆる手段を活用して情報提供を行う必要があると考えております。
今回の法律におきましても、例えば都市再生安全確保計画の作成に当たっては、訪日外国人、そして障害を抱える方も含めて、帰宅困難者という大きなくくりの中ですけれども、それぞれに適切な情報が提供できるようにあらかじめ関係者間で具体的な情報提供について検討し、取り決めてまいりたいと考えております。
また、避難訓練におきましても、これら外国人の皆様、そして障害を抱えている皆様にも御参加をいただき、それぞれの中で明らかになった課題を今後の計画に反映する、情報提供の実効性がより高まるように不断の努力をしてまいる、そういうふうに考えているところでございます。
○谷合正明君 観光立国を推進しております政府、国土交通省においては、この点、しっかりやっていただきたいと思いますし、この障害者に対する情報提供については、厚労省でありますとか内閣府、避難情報のガイドラインも、この見直し、今しておりますので、これについても政府横断的に取り組んでいただきたいと思います。
最後、二分となりましたので、大臣にお伺いします。
大都市圏の安全確保についてということで、都市のまちづくりを進めるに当たって防災という視点を今後どのように盛り込んでいくのかということでございます。我が党は、防災・減災ニューディールということで先般政策も発表させていただきましたが、特に液状化問題、帰宅困難者の問題、地下街の安全確保等、今日的な課題というのは結構出ております。
改めて、こうした防災、減災に関しての視点をどのように生かしていくのか、お伺いしたいと思います。
○国務大臣(前田武志君) 何といっても、大都市というのが日本の経済社会の大きな部分を占めるわけで、その中で特に中枢機能が集中している地域、ここの安全を確保する。施設的なものについては、これはもう徹底して防災、安全なまちづくりということで対応いたします、液状化等も含めてですね。
加えて、今議論をしていただいたように、民間事業者、自治体、地元住民、言わば大きくとらえればそういうコミュニティー、国も入って、そういったところが、いざというときにはみんなで減災をといいますか、災害を防ぐぞという、これは東日本でも消防団のもう命を懸けてのあの活躍があった。日本の国にそういう元々地域のことは地域で守るぞという良きDNAがあるわけですから、それを現代の都市にまた再度よみがえらせて、世界に誇れるような、そういうまちづくりをしていきたいなと、こう思う次第でございます。
○谷合正明君 終わります。