○谷合正明君 公明党の谷合正明です。
質問に先立つ前に、昨日、我が党の冬柴鐵三前衆議院議員、突然の訃報に接しました。安倍、福田両内閣で国土交通大臣の要職を務められてまいりました。特に、道路特定財源を議論した当時の国会においては、大臣として議論の矢面に立って命の道路の必要性について真剣に訴えられている姿を、私自身、忘れることができません。ここに、改めて御冥福をお祈り申し上げたいと思っております。
それでは、津波防災地域づくりに関する法律案に関して質問をさせていただきたいと思います。
まず初めに、通常国会におきまして、津波対策の推進に関する法律、議員立法でありますが、これが成立をいたしました。この議員立法には、津波の観測体制の強化及び調査研究の推進、津波に関する防災上必要な教育及び訓練の実施、津波対策のために必要な施設の整備そのほかの津波対策を推進するために必要な事項が定められております。
今回の法律案との関係、また連携の在り方についてどうなるのか、まず明らかにしていただきたいと思います。
○大臣政務官(津島恭一君) お答えを申し上げたいと思います。
ただいまの御質問でございますが、議員立法で制定されました津波対策の推進に関する法律は、これは津波対策を総合的に、かつ効果的に推進するために幅広い施策の実施について政府や地方公共団体の努力義務を定めた、いわゆる津波対策に関する基本法、理念法としての性格を持った法律と認識をしております。また、津波防災地域づくりに関する法律案は、ハード、ソフトの両面から、基本法である津波対策の推進に関する法律の理念を確実に実施していくための具体的な施策や制度を定めたものであります。
国土交通省といたしましては、津波対策の推進に関する法律を十分に踏まえ、津波防災地域づくりに関する法律案に基づくハード、ソフトの施策を総動員することで、今後の津波防災地域づくりを全国において積極的に推進してまいりたいと考えております。
○谷合正明君 基本法の趣旨を十分に尊重していただいて、今後、国土交通省としても、ハード、ソフト両面にわたって具体策を進めていくという回答でございました。是非ともよろしくお願いしたいと思います。
それで、この法律案の中に津波防災住宅等建設区の制度の導入が入っております。この建設区の制度の導入ですけれども、まず、これが一般の土地区画整理事業あるいは集団移転促進事業とどう違うのか。そして、津波防災住宅等建設区のこの制度を導入する理由、目的について簡単に説明していただければと思います。
○政府参考人(加藤利男君) お答えを申し上げます。
お尋ねの津波防災住宅等建設区の制度でございますが、これは津波による災害の発生のおそれが著しい地域において、津波による災害の発生を防止、軽減することを目的に、通常の土地区画整理事業における原位置での換地、これは区画整理事業の場合、一般的に照応の原則と言われておりますが、この照応の原則の例外に当たるものとして、申出による換地を特例的に認める地区を区画整理事業の施行地区内に定めることができる制度として創設したものでございます。
これによりまして、区画整理事業によりまして、市街地の整備を行う場合に、住宅及び公益的施設を防災性の高い市街地に集約することが可能になる、集約化に資する制度であろうというふうに考えております。
また、土地区画整理事業と集団移転促進事業との関係についての御質問をいただきましたが、まず、集団移転促進事業につきましては、移転先の用地の整備に際しまして、移転先の、宅地と言ってもいいわけでございますが、その整備に際しましては、公共施設の整備に必要な用地を含めまして用地買収方式により整備をするのに対しまして、土地区画整理事業の場合には、同様の整備を換地手法により行うという点において、手法において差があるということでございます。
○谷合正明君 続いて、この法律案の中に津波災害警戒区域を指定するということが入っております。
ところで、会計検査院が平成二十二年度決算検査報告をまとめておりますが、その際に、土砂災害警戒区域等の指定等に関する基礎調査の活用というのがあるんですが、なかなか警戒区域の指定が行われない理由について四分類で理由を挙げております。
例えば、建築物の構造規制が厳しくなるなどのために地元住民等が反対しているだとか、住民説明会の日程を調整するということもまた大変であるとか、あるいは市町村の要望に基づき地区単位で一括指定するなどしていると様々な理由が述べられておるんですが、今回の津波災害警戒区域の指定でも同じようなことが起きるのではないかと思われますが、国土交通省としては今後どうされていくおつもりなのか、お聞かせください。
○政府参考人(関克己君) 御指摘のように、平成十三年になりますが、土砂法の法律の施行に基づきまして、土砂災害の警戒区域の指定が始まったところでございます。さらに、御指摘のように、会計検査院の二十二年度の決算検査報告でも四つの指摘をいただいたところでございます。
これにつきまして、私どもとしても、振り返ってみますと、実は平成十三年、指定当初はなかなかこの指定が進まないという状況にございました。そういった中で、この指定を土砂災害に関する警戒区域の指定を進めるべく、地域の皆様に御理解をいただくために、先進事例の紹介をする、あるいは仕組みそのものをよく理解していただくような取組を進める、こういったことを進めてまいりました結果として、平成十八年から相当程度進むようになりました。
数字で申し上げますと、これはイエローゾーンと呼んでいます警戒区域の方で申し上げますと、十七年は一万四千だったものが十八年には四万三千、あるいは十九年には八万五千、二十一年には十七万、そして二十二年末には二十二万というような形でこの指定が進むようになってきております。更に今後も進めていかなきゃならないということはもちろんでございます。
こういった土砂災害警戒区域におきます地域の皆様への理解をいただくための工夫、こういったものをノウハウとして、今回の津波災害警戒区域につきましても、地域の皆様にできるだけ御理解をいただき、必要な地域においてはこういった区域の指定が進むよう自治体に対して支援をさせていただきたいと、こんなふうに考えているところでございます。
○谷合正明君 自治体が矢面に立つことがあるでしょうから、是非、自治体に対する情報提供、御助言等もきめ細やかにやっていただきたいと思います。
法案第五十五条につきましては、住民に対する周知のための措置としていろいろ書いてあるんですが、要するに、津波ハザードマップの作成、推進ということがうたわれております。この津波ハザードマップの作成状況は今どうなっているのか、また、今後国としてどのようにこれを推進していくのかについてお尋ねいたします。
○大臣政務官(津島恭一君) お答えをさせていただきます。
中央防災会議専門調査会が取りまとめました基本的な考え方におきまして、東日本大震災のような最大クラスの津波に対しまして、命を守るということを最優先に、住民等の避難を軸に、避難施設や土地利用などを組み合わせた総合的な津波対策の確立が必要とされました。これを踏まえまして、本法案第五十五条におきまして、津波浸水想定に基づく津波災害警戒区域が設定された市町村においては津波ハザードマップを作成しなければならないとしております。
これまでも、全国六百三十九沿岸市町村のうち三百六十一市町村において津波ハザードマップが作成されてきておるところでありますが、今後とも、東日本大震災のような最大クラスの津波を対象に津波ハザードマップの充実強化を図っていく、このことが重要と考えております。国におきましても強力に支援をしてまいりたいと考えております。
○谷合正明君 最後に、六百三十九の自治体のうち三百六十一の自治体ででき上がっているということでございました。
今後の、どうでしょう、目標というか、いつまでにそれを全部全て完了させるといったようなスケジュール的な目標が持ち合わせていらっしゃるんであれば教えていただきたいんですが。
○政府参考人(関克己君) 今後、できるだけ早くということで進めてまいりたいと思います。
そういう意味では、この進捗状況を見ながら、御指摘のような計画的な進捗というものを更に図ってまいりたいというふうに考えているところでございます。
○谷合正明君 津波ハザードマップにつきましては、私たち委員会が視察しました釜石の命の道路という、道路の中で、想定にとらわれない避難ということで多くの人命が助かった、とりわけ中学生が小学生を引っ張るような形で避難していったわけで、その際の教訓というのは、まさに想定にとらわれないと、ハザードマップの情報にとらわれ過ぎないということが一つのエッセンスであったかと思っておるんですね。
そういう意味では、住民の自主的な避難なんかを、それもまさしく津波防災教育等で推進していくということも大事だと思うんですが、そういうことも含めて、この津波ハザードマップの情報の作り方だとか伝達の仕方というのを今後工夫してやっていくと、やり直していくという理解でよろしいでしょうか。
○政府参考人(関克己君) 御指摘のとおりでございまして、今後更にハザードマップを進めていくに当たりましては、最大クラスの津波、しかも、さらに最悪の状況というものを踏まえながら、地域で具体的に使っていただけるということを考えていかなきゃいけないというふうに思っております。
そういう意味では、ハザードマップの策定過程から地域の皆様にも参加していただき、いかに避難をしていくのか、こういったことも踏まえた形で策定していくということを考えていきたいというふうに思っているところでございます。
○谷合正明君 次に、災害時の要援護者の避難体制の在り方について、これは厚生労働省でしょうか、お尋ねいたします。
災害時の要援護者につきましては、名簿作りについては内閣府の方で取りまとめているところでございますが、実際に避難して、さらにまたその先に避難するとかいう段階に入るときに、今回の東日本大震災におきましては、最初の津波から難を逃れたものの避難した後に生命の危機にさらされるという状況が、そういう被災者が少なからず存在をいたしました。特にそうした傾向が強かったのは孤立集落ですとかそういったところがあるわけですが、二次的被害を防ぐためにも、被災地域のみの対応では限界があるのではないかと。医療、福祉、保健の専門分野の連携であるとか、ドクターヘリを活用することであるとか、様々な広域的な避難体制の推進を今後今回の東日本大震災の教訓を踏まえて検討すべきであると考えますけれども、見解を伺いたいと思います。
○政府参考人(山崎史郎君) お答えを申し上げます。
御指摘の高齢者や障害者等のいわゆる災害時におきます要援護者、この避難対策が大変重要だと認識してございます。
今回、厚生労働省としましても、避難支援ガイドラインというものがございますが、これに沿って平素から福祉及び保健、医療の連携を進めること、さらにお一人お一人に避難支援プランを作成すること、こういった点を進めてまいりました。その上で、御指摘がございましたように、避難以降、避難所での更なる医療、福祉等の継続的なサービス体制、こういった観点からの連携も更に推進してまいりたいと、このように考えている次第でございます。
また、御指摘のドクターヘリでございますが、今回の東日本大震災におきましては、全国から十六機が被災地の方に参集しまして、患者の搬送等に大変な大きな成果が上がったというふうに認識してございます。今後、機動性の確保を含め、こういった点についても十分検討してまいりたいと、このように考えている次第でございます。
○谷合正明君 是非よろしくお願いしたいと思います。
次に、水門について通告をさせていただいたんですが、既にもう質問が出ておりますので、これは割愛させていただきたいと思います。
なお、今回の東日本大震災では、消防団の方が、現役の消防団、若い方も含めてですが、多くの方が水門を閉じるために戻って犠牲になられた。二百人近くの方が犠牲になられております。そうしたことで、一つの対策として遠隔操作ができる水門をということが課題だと思うんですが、まだまだ整備が遅れておるということですので、ここはしっかりと、予算措置も含めてしっかり整備を推進していただきたいということを要望させていただきたいと思います。
そして、もう一つ、避難施設の整備の在り方についてですが、九月二十八日に公表されました中央防災会議、ここで東北地方太平洋沖地震を教訓とした地震・津波対策に関する専門調査会報告が出されました。津波避難ビルの在り方につきましては、以下のように書いてあるわけですね。「地域の実情を踏まえつつ、できるだけ短時間で、津波到達時間が短い地域では概ね五分程度で避難が可能となるよう、避難場所・津波避難ビル等や避難路・避難階段を整備すべきである。」とあります。
この五分というのは非常に、何というんですか、大変もう、これを本当に整備しようとなるともう相当なストックを用意しなきゃいけないんだと私は思うんですけれども、実際問題として、そうしたこの避難施設を整備していくことが可能なのかと。また、国土交通省においては、高台に避難する通路であるとか避難ビルといったハードの面についての財政支援というのをどれだけ後押ししていく覚悟があるのか、この点について大臣の考えを聞かせていただきたいと思います。
○国務大臣(前田武志君) 最初に、冒頭、谷合議員から元国土交通大臣の冬柴先生に対するお言葉があったわけでございまして、私も実は細川内閣のときから冬柴先生には随分と御交誼いただき御指導を受けました。謹んで御冥福をお祈り申し上げます。
今御指摘の件でございますが、この避難路、避難施設、これはもう誠に重要でございまして、五分以内ということになりますと、まあ町の形態あるいは規模にもよるかと思いますが、かなりの施設を確保する必要があるかと、こう思います。というわけで、東北の現地におきましては復興交付金を大いに活用していただきたいと思いますし、そしてまた全国展開においては社会資本整備交付金等を大いに活用をしていただきたいと、このように思っております。
○谷合正明君 続いてですが、今回の東日本大震災を教訓にしまして、首都直下型地震あるいは東海・東南海・南海地震、三連動地震、様々な対策を今練っているところでございますけれども、一つ、この東海・東南海・南海の三連動の地震が起きた際にどのくらいの被害想定なのかというと、三メートル以上の津波に見舞われるおそれがある自治体というのは一都二府二十県、五百六の市町村に及んでいると。この地域の人口というのは四千三百万人を超えておりますし、これは全国の三四%です。それから工業製品の出荷額というのは百六十四兆円にも達しておりまして、これは全国の約半分であります。
これは、今日、地図はお渡ししていませんけれども、例えば、東京からずっと東海地方、それから近畿含めて、四国も入りますけれども、三連動の地震の場合、瀬戸内海も沿岸地域全部これ浸水区域に入ってくるわけですね、九州まで含めて。ところが、その瀬戸内海にはコンビナートがかなり多く立地しておりまして、私は、このコンビナート防災というのがどうなっているのかと。従来は火災を防ぐということを想定していたわけですが、今後津波を想定したコンビナート防災というのをしっかりやっていかなきゃならないと思うんですが、まずこのコンビナート防災の見直しの進捗状況についてお伺いしたいと思います。
○政府参考人(高倉信行君) 津波を想定いたしましたコンビナート防災の見直しの状況についてお答え申し上げます。
御指摘のとおり、東日本大震災におきましては石油コンビナート等の特別防災区域において津波による施設や資機材の被害が生じてございます。東北地方から関東地方にかけての太平洋側にある七か所の特別防災区域でございます。また、火災や石油の流出も発生しております。
このため、消防庁におきましては、本年五月からでございますけれども、東日本大震災を踏まえた危険物施設等の地震・津波対策のあり方に関する検討会を開催しております。この中で、具体的には、被害状況の実態調査の分析結果を踏まえまして、例えば、消防車両へ給水するためのポンプ設備等の浸水防止の措置でございますとか、あるいは屋外タンク貯蔵所の緊急遮断弁の在り方、また従業員などが避難する際の緊急停止措置等の対応、こういった石油コンビナートの津波対策について検討していただいているところでございます。
この検討会につきましてはこの年内に提言を取りまとめていただく予定でございまして、消防庁におきましては、この提言を踏まえ、速やかに必要な措置を講じていくこととしておるところでございます。
○谷合正明君 最後の質問ですが、その三連動地震を想定いたしますと、日本の大動脈が機能麻痺をすることが想定されるわけですね。特に物流、ロジスティックの面で極めて大きな影響が与えられると思うんです。
こうしたことを考えますと、救援物資であるとか、実際に人の動きであるとか、輸送であるとか、このルートの確保というのをしっかり検討していかなきゃならぬであろうと思います。例えば、日本海側のルートをどう確保していくのか、整備していくのか。それこそ広域的に、北海道から沖縄まで広域的にどういうバックアップ体制整えていくのかと、そんなことも検討しなければならないんだと思うんですが、ここは国土交通省としてどういうビジョンに基づいて今後その防災体制を構築していくおつもりなのか、最後にお伺いしたいと思います。
○国務大臣(前田武志君) 東北大震災においても、実際上は太平洋岸、三陸沿岸がこれはもう全て施設等やられて機能麻痺に陥ったのを、日本海側から東へというような形でバックアップしたという実績もございます。当然、高速道路のミッシングリンクの整備、これによる交通・物流ネットワークの多重性、代替性を確保せにゃいけませんし、もちろん事前に物流業者と災害協定の提携等も結ぶといったような、そういう対策も必要かというふうに思います。
災害に強い物流システムを構築していく、あるいは東京圏の中枢機能といったものをどこかでバックアップするというようなことも必要だと思います。この辺は確かに、震災後、四国あるいは九州の自治体の特に知事さん方にお会いすると、非常に危機感を持っておられます。先生の御指摘のとおりだと思いますので、多重性あるいはバックアップといったようなことをキーワードにして施策を進めてまいりたい、このように思います。
○谷合正明君 津波防災地域づくりが、実効性あるそうした政策が今後なされますよう、しっかりと要請、要望させていただきまして、質問を終わらせていただきます。