○谷合正明君 公明党の谷合正明です。
山本参考人、川本参考人、本日は大変にありがとうございます。私の方から、二十分質疑時間をいただいておりますので、早速質問をさせていただきます。
独立行政法人でありますけれども、やはりスタートした当初というのは行革の目玉で始まったわけでありますが、今はこの行革の対象になっているというところに今日的な課題が凝縮されているわけでありますが、そもそもどうして八年、九年の中でこういう、当初の目的、行革の目玉となるべきものが今行革の対象になってきているのかというところの根源的な理由はどこにあるのかというところを、やはり複雑な糸をほぐしていくんであれば、私は、まず独立行政法人の定義、通則法に当たりますけれども、そこに起因をするんではないかなと、そこをもう少し、もう一度改めて見直しをしていくべきではないかなと思っております。
これ川本参考人の方からも冒頭全文を御紹介いただきましたけれども、独立行政法人とは、国民生活及び社会経済の安定等の公共上の見地から確実に実施されることが必要な事務及び事業であって、国が自ら主体となって直接に実施する必要のないもののうち、民間の主体にゆだねた場合には必ずしも実施されないおそれがあるもの又は一つの主体に独占して行わせることが必要であるものを効率的かつ効果的に行わせることを目的とする法人と定義されていて、非常に長くて何かよく分からないというのが率直の印象なんですが、この定義で、独立行政法人が果たして何のために必要なのか、どのような事業をこの独法に行わせるべきなのかというところが不明になってきているのではないかなと。
そもそもこの通則を作るのが、まず先にこの対象となる法人、特殊法人なんかも先に決まっていて、後から何か定義をくっつけたような感じがありまして、それがゆえに本来独法が行う必要のない例えば事務事業まで行われているところもあるでしょうし、結果的にこの行政の不効率やあるいは税金の無駄といったものも生み出していると指摘されているわけでありますけれども、私は、改めてお伺いさせていただきますが、この定義規則が独法制度における様々な問題の根源的な要因になっていると考えますが、改めまして両参考人にお話をお伺いしたいと思います。
○参考人(山本清君) 今、先生御指摘のような考え方も当然あるとは思います。
私個人的には、先生のお考えに近いところもありますし、川本参考人の意見にも近いところがあるんですが、この法律という点からいいますと、これ行政法学者でおられて、今は司法の方におられますので申し上げにくいんですが、行政法学的な立場からいうと、多分こういう記載になったのは、ある意味では、私、行政法の専門家じゃございませんが、やむを得ない構造になっているのではないかというふうに思っております。
むしろ私は、日本の行政といいましょうか、それの実際の運用上の問題として、先生御指摘のように、独立行政法人制度は、多分構想されておったのは、将来民営化もあって、しかもこれは小さく産んで大きく独法制度の中に囲って、その中で統廃合とか民営化とか行政の減量化をしていこうという、そういう大きな動きが多分裏にあったのは間違いないと思います。それがいいことか悪いことかは別にいたしまして、そういうことが行政改革会議等の議事録等を読んでおりますとうかがわれるところがございます。
ただ、問題は、非常にそういったことで独立行政法人が当初は目玉であったのが行革の対象になったのはどこに背景があるかという点を私なりに考えれば、私は二点あると思います。
一点は、従前の五十七法人というのは非常に小粒なもので、一番大きなものでも産総研の、経済産業省のものであったというふうに記憶しておりまして、それほどその活動等については、その存在理由、活動等においてはそういう世間的にも大きな問題を起こしていなかったわけでございますが、何ゆえにそういった五十七法人のような小さなものであったとしても世間から厳しい御指摘を受けたかというと、それはやはり独立行政法人制度によって役員が非常に多く生まれて、そしてその中には、かなりの部分はいわゆる天下りということが生じたというところがやはり大きいのではないかと思っております。
それと同時に、今世間を騒がしておられたようなものの多くは移行独法なんですね。いわゆる特殊法人のものも従前国が行っていた機関から切り出されたものと全く同じ枠組みの独立行政法人という一つのくくりの中に入ってしまった。したがって、独立行政法人といった場合には、従前の特殊法人でその存在意義自身がかなり時代的に問題になっているようなものと同一視されてきたという、そういうある意味では不幸な背景があるということは忘れてはならないというふうに思っております。
したがって、この際、独立行政法人制度の枠組みの中で運用すべきものとそれ以外のものもやはり仕分をするようなことも一つ選択肢としてあり得るのではないかというふうに私は思っております。ただ、これは運用できちんとガバナンスを利かせていけば解決する問題であるのかもしれませんが、当面私個人的にはそういうふうに考えておる次第でございます。
以上でございます。
○参考人(川本裕子君) 先ほども申し上げましたように、やはりここの哲学のところというものが一般消費者には非常に分かりにくいかなというふうには最初に思いましたので、ここのところに引っかかったというようなことを申し上げました。
ただ、一〇〇%最初からうまくいくような組織設計というのはほとんどあり得ないわけでありまして、どんな組織変更にもメリットもあればデメリットもある、良い方向への変化もあれば悪い方向への変化があるということで、どうしても悪い方向への変化をきちんとモニターして直していくという仕組みがこの国全体で弱いのではないかというように思います。
箱はつくったけれどもそのままにしておいているので、常に慣性の法則もありますし、いろんなことに逆戻りもしますし、組織は自己増殖しますから、それに対しての牽制を働かせる機能というものをいかにうまく埋め込んでいくのかということをしていかない限り、箱を変えてもうまくいかないのではないかなというような懸念も持っております。
○谷合正明君 ありがとうございます。
山本参考人にもう一度お伺いしますが、そこで、法律というよりもその運用によってこの独法の改善をしていくべきでないかという御指摘もありましたが、そもそも英国エージェンシーをモデルにしたとも言われておりますけれども、しかしながら制度上は違いがあるというのは冒頭の意見でお伺いしましたけれども、改めまして今後の独法制度の運用において改善すべき点について御意見を伺いたいと思います。山本参考人、よろしくお願いします。
○参考人(山本清君) 陳述が少し時間が足りませんでしたものですから、かなりはしょった点がございますが、レジュメの四ページ目にも書いてございますとおり、改善点とすれば、やはり、これは川本参考人とも共通する点でありますが、独立行政法人が何をするかという点について、本来、主務大臣が中期目標を定め、その達成のための計画として中期計画をそれぞれ独立行政法人の長が定めるということになっているんですが、こういうことを申し上げていいのかどうかちゅうちょするところもあるんですが、多分国会議員の先生は御案内かと思うんですが、この点は是非政治主導で頑張っていただきたいと思うんですが、主務大臣が中期目標を定めるというのは建前であるんですね、現実論といたしましてはですね。
したがって、結果的に、キャプチャリングということを私申し上げたんですが、世界の多くの国で国家公務員が悪い意識がなければキャプチャリング、いわゆる行政が政治家を逆に操縦するような逆転現象ですね、ある意味においては下克上的な要素があるかと思うんですが、そういうことを避けるというために、プリンシパルたる本来の政治家あるいは主務大臣が独立行政法人の長あるいは行政府に対してコントロールを利かすという点で、本来は主務大臣が中期目標を定めることになっているんですが、そこがなかなかうまく実態論としてグリップが利いていないといいましょうか、そういう意味の政治主導が必ずしも十二分に当初のとおりになされていないという点もやはり大きな問題点としてあるのではないかというふうに思っております。
そして、その内容がやはり必ずしも明確でない。あるいはたくさんのことが列挙してあります。独立行政法人通則法では、多くのことを記載すべき事項となっておりますから、非常に厚いんですね。厚いからゆえに結局何をやったらいいのかよく分からないということになりますので、ポイントとなるべき達成すべき目標なりというものをやはり定量的に定めておくということが必要であろうかと思います。目標の中で定量的に定められないものというのも当然これは付記すべきであって、定量化できないものまで定量化してしまうと問題になりますものですから、それは定量化していないということを明確にしておくということが必要であるかと思います。
いずれにいたしましても、主務大臣が定める目標を実現するために最大限の裁量制を独立行政法人の長に与えるというのがこの枠組みでございますから、その枠組みにやはり的確に従った運用というのがやはりまずもって必要ではないかというふうに考えておる次第でございます。
○谷合正明君 ありがとうございます。
それでは、川本参考人にお伺いしますが、意見陳述の中で、独法の役員について公募をどんどん積極的にさせるべきという話がありましたが、これは昨年十一月二十五日にこの役員公募を、応募締切りをしたわけでありますけれども、このときに、二十八法人五十ポストを公募をいたしまして二千三百八十七人の応募があったということであります。結果的に、国家公務員OB十六人を含む四十ポストの役員が選任、これをされました。
まずお伺いしたいのは、今回の公募の在り方というか、結果も含めて評価をどのようにされているのか。というのは、やはり役員公募を行った独法の中に、例えば応募資格に国家公務員OBが有利となるような高いハードルがあったのではないかというような指摘もあるわけでありますが、まず昨年秋に実施したこの公募についての評価をお伺いしたいと思います。
○参考人(川本裕子君) その公募の結果についてそれほど情報を持ち得ているわけではないんですけれども、政権交代あるいは決まってから非常に短い期間の公募だったと思うんですね。そういう意味では、もっともっと周知をされるべきである、あるいはもっと周知をしていくという過程だというふうに思っております。
何せ初めての試みなので、どういう基準で選ぶのかという方針が本当にしっかり議論されたかというと、短い期間でありましたので、その辺にもう少し今後議論の余地があると思います。
それから、一人だけをお選びになるということですと、どうしても専門性などでお役所の出身の方が有利というのは免れないことだと思うんですね。ですから、そこで政治の意思でどういう方を入っていただくのかというようなことにもう少し踏み込んで、スペックですね、人材のスペックみたいなものをお出しになるということが大事かなと思います。
更に申し上げれば、変化をさせるということであれば、より民間の方を、まあ民間でもどなたでもいいんですけど、入れていくというような積極的なアクションがあってもいいのではないかなというふうに私は思います。
○谷合正明君 続けて、関連で質問いたしますが、民間の方が応募可能な公募要件としていくという、結果的にだれが選ばれるかというのはこれは最終的に判断があるかもしれませんが、その入口のスタートの時点で、その基準であるとか、またその応募要件といったところは広く民間出身者の方が参入、参入というか手を挙げられるようなことが私も望ましいと思っておるんです。
その際、独法の通則法第二十条第一項に規定しているのが、役員の任命要件が規定されております。この第一号と第二号がありまして、第一号で、当該独法が行う事務及び事業に関して高度な知識及び経験を有する者として定められていると。第二号で、前号に掲げる者のほか、独法が行う事務及び事業を適正かつ効率的に運営することができる者としておりまして、つまり、第一号が最初に来て、それで、そこが優先的にあって、第一号に掲げる者のほか第二号が規定されているわけでありますから、何か一々、独法の公募要件にいわゆる国家公務員OBが有利となるような、わざわざそういうハードルがあるんじゃないかなと私思っているわけであります。
そこで、例えば第一号と第二号はほぼ同文でありますから、第一号を削除するというような形の法改正ということも今後必要なのかなと思っておるわけですが、この点について、最後、川本参考人にお伺いしたいと思います。
○参考人(川本裕子君) 法改正というようなことも視野に入れられるのは、政治家の方ですとそういうことになるのかと思いますけれども、私は、ずっと民間で経営を見てきた者としては、やはり形を変えても運営方法が変わらなければ、幾ら箱を変えても変わらないということがあると思うんですね。
そういう意味では、高度な知識というのをどう解釈するかということであって、現在、第一番目の規定が、だから役所の人が有利だというのは、元々役所の人を有利に採ろうと思っている思想があるからではないかというふうに思います。そこのルールからそれが起こっているというわけではなくて、高度な知識といいましても、経営に関していえば、同じような、あるいは違った組織体でも、ある一定の経験を積んだ方であれば経営というのは幾らでも可能なわけですから、そこの横展開をできるような方を選べばそこにとらわれる必要がないのではないかと思います。
○谷合正明君 分かりました。
それでは、同じ件なんですけれども、山本参考人に、今、川本参考人にさせていただいた質問について、もし御見解があればお伺いしたいと思います。
○参考人(山本清君) 運用という問題もありますが、私は、最初のその業務についての知識、経験等を有する者等が公務員を特別に優先するために設定されているものではないと思っております。
現実に、一回目、二回目の公募状況等をウエブ上で見ておりますと、圧倒的に民間からの公募の方の方が多いんですね、現状においては。ですから、それが障害になって官の人が優先するということは、むしろ、何というんでしょうか、第三者の委員の方の見識にかかわっている問題であるかと思いまして、それは別だと思います。
ただ、問題は、それを余りにもしゃくし定規に考えて、当該独立行政法人の業務について非常に詳しい知識がないと駄目だとか、そういうような運用がなされれば一番問題であって、やはりそれなりに、例えば美術館とか博物館であれば美術館、博物館等についての全くの基礎知識がなくて経営だけの知識があるからだけでいいというわけにはやはりいかないのではないかというふうに思っております。
したがって、その条件はただ運用的にどういうふうに解釈するかということでございますから、最終的に法案を修正なされるかどうかはこれは国会の御判断でありますが、それは、現在の公募状況等を見ておりますと、それほど大きな制約にはなっていないのではないかと。多分、この第二回目の公募の選ばれる方は圧倒的に多分民間出身の方が多くなるのではないかというふうに考えておるわけでございます。
○谷合正明君 以上、ありがとうございました。
終わります。