○谷合正明君 公明党の谷合です。
本法案は、食品製造事業者がHACCP手法を導入するため一定の施設整備を行う際の金融・税制上の措置を講じて支援をすることを目的としたものでありまして、それ自体は結構なことであります。
しかしながら、これまでHACCP手法を導入している普及率、導入率が目標に達していないということで、とりわけ中小規模の、先ほど販売額五十億円未満ということでありましたが、中小規模の企業の導入率が低いわけでありますが、そこで、中小規模での普及率五〇%という目標を掲げておりますが、果たして今後うまくいくのか、この普及率五〇%を目指してどのように対策を考えているのか、まずその点について確認をさせてください。
○政府参考人(町田勝弘君) 中小規模の企業のHACCP手法の導入に当たりましては、施設整備の資金と人材確保、この二つが大きな課題であると認識しております。本法による長期低利資金と併せまして、人材育成のための研修等の支援を行ってきたところでございますが、平成二十年度におきましてはこれを大幅に拡充したところでございます。
また、HACCP手法の導入にかかわります施設整備投資や人材育成経費につきましては、中小企業投資促進税制や人材投資促進税制などの税制特例の適用も可能であります。これらの特例の活用もしながら推進をしてまいりたいというふうに考えております。
○谷合正明君 アンケート調査を取りますと、やはり今おっしゃっていただいたような人材育成の話と低利の融資制度、これについて、大変役に立つ制度であるのでここを充実してほしいという話だと思います。とりわけHACCP手法を広めていく上での人材育成あるいは指導者の話でありますが、これまで具体的にこの人材育成というのはどういったことをされてきて実績を積んできたのか、また今後の取組の強化についてもう少し具体的に踏み込んでお話をしていただければというふうに思います。
○政府参考人(町田勝弘君) 農林水産省におきましては、HACCP手法の導入に必要な人材の育成を図りますため、中小企業の中で、社内でHACCP手法の導入を推進できる責任者、また企業の外部から中小企業を指導、助言できる者を養成するためのセミナー、研修等に対して支援を行ってきたところでございます。
これまでの実績でございますが、社内におけるHACCP責任者の養成につきましては、平成十五年度から十九年度までの五年間に約一千四百名を養成をしております。また、社外におけますHACCP指導者でございますが、同じく五年間に二百七十名を養成したところでございます。
これらの人材につきましては、その多くが、受講後、それぞれの企業におきまして、HACCPプランの作成に携わるなど研修の経験を生かした活動を行いまして、製造現場の衛生・品質管理の向上に役立っているというふうに伺っているところでございます。
平成二十年度におきましては、これらのHACCP責任者、指導者層を確保するための研修につきまして、予定人数をこれまでに比べて倍増させるなどの拡充を実施したいというふうに思っております。また、併せまして、企業の経営トップを対象といたしましたHACCP手法の導入による従業員の意識の向上、企業イメージの向上などの具体的な成功事例を紹介するトップセミナーを開催するほか、HACCP手法の導入につきまして指導、助言できる者、こういった方をコンサルタントとして登録して、導入を検討している企業に対して紹介する、こういった取組も支援してまいりたいというふうに考えております。
今後とも、HACCP手法の導入に必要な人材育成に努めてまいりたいというふうに考えております。
○谷合正明君 人材育成の問題と並んで、施設の整備、ここに多額の資金、金額が、投資が必要であるということがネックになっているわけであります。こうした点について、まず確認ですけれども、HACCP導入に必要な施設整備というのは通常よりどれくらい割高になっているのかという数字の確認と、もう一つは、なぜそういう割高になるのか、その理由についてどのように把握されているのか、この点について確認させてください。
○政府参考人(町田勝弘君) これまでの導入実績等から見ますと、通常の施設と比較しまして、HACCP手法の導入施設につきましては約三割程度割高となっているところでございます。この点につきましては、HACCP手法を導入するためには、建物、施設は交差汚染を防止できるという構造となっている必要があるということ、また、重要管理点での温度、時間の監視や記録、こういったことが必要とされるわけでございますが、そのためには一定の機械・装置が必要であること、こういった理由によるというふうに承知しております。
○谷合正明君 今、交差汚染防止のための施設の基準の話もありました。高度化基準の一つに、まさに施設の整備の基準というのが設けられております。今言われたような交差汚染の防止であるとか空調設備であるとか監視制御装置でありますとかでありますが、このHACCP法では施設整備の基準というのは、まずこれどのようになってどのように決められているのか、具体的に教えていただければと思います。
○政府参考人(町田勝弘君) お答え申し上げます。
本法におけます施設整備の基準でございますが、農林水産大臣及び厚生労働大臣が策定いたします基本方針で定めているところでございます。
具体的な内容でございますが、一点目、建物・構造に関する基準といたしましては、交差汚染防止の観点から、一つとして、清浄区域と汚染区域が隔壁で仕切られているということ。二つ目として、原材料の搬入から製品の保管、出荷までの過程が交差せずに配置される十分な広さを有するということ。また、清浄区域は原則として清浄な空気を保つための設備、細菌等の混入を防止できるようなそういった空気清浄機、こういったことが備わっていること。こういったことを定めているところでございます。
また、二つ目の機械・装置の基準でございますが、先ほども若干申し上げましたが、重要管理点となります工程での温度や時間を常時監視し、記録できるモニターなどの機械・装置を適切に配置すること、こういったことを定めているところでございます。
○谷合正明君 今お話がありました、この基準の話であります。これは実際コストに反映されてくる点にはなろうかと思っておりますが、まず全体的なお話として、中小企業における導入促進のためにできるだけコストを抑えていくという点があろうかと思いますが、融資のメニューは充実させることはあったとしましても、コストをまず下げていくという努力もあろうかと思いますが、まずこの点について、どういったことが可能なのか、どういった対策があるのか、現在の検討状況を教えてください。
○政府参考人(町田勝弘君) 御指摘をいただきましたように、中小企業におけますHACCP手法の導入を促進するためには、施設整備が過度の負担につながることがないように配慮すべきというふうに考えているところでございます。
このため、本法に基づく基本方針におきまして負担の軽減への配慮、こういった項目を設けておりまして、事業者団体、指定認定機関でございますが、これに対しましてHACCP手法の導入の際の施設整備が過度の製造コストの負担につながらないよう留意することを定めているところでございます。
また、先ほど申し上げましたが、平成二十年度でHACCP手法の導入促進のための予算を大幅に拡充したと申し上げましたが、この中で新たに施設整備にできるだけコストを掛けないよう工夫したモデル的な導入事例につきましても調査分析をいたしまして、その内容を紹介するなどの取組を推進することとしております。
今後とも、こうした取組を通じまして、中小食品企業の実態を踏まえながら、できるだけコストの掛からないHACCP手法の導入促進に努めてまいりたいというふうに考えております。
○谷合正明君 安価で簡易なHACCP手法、どういう導入の仕方があるのか、そういった情報の共有であるとか、そもそものHACCP手法の導入コスト低減策の研究というのを十分していただきたいというふうに考えております。
更に言えば、特別な施設や設備が本当にどこまで必要であるのか、この点についても改めて検証する必要もあろうかと思っております。
まず、中小企業での更なる円滑な導入を促進していくために、例えば基準、先ほど言った基準という問題もあると思うんですが、この基準の見直しを含めてコストを削減していく努力というのが必要だと思いますが、改めて確認させていただきますが、可能なのかどうか、この辺、御答弁をいただければと思います。
○政府参考人(町田勝弘君) 先ほど申しました施設といった構造基準、また機械・装置の基準、これはまさに交差汚染を防止するという観点からやっているものでございます。HACCP手法を適切に導入するため実施するというのが前提条件となっているわけでございますが、製造現場の実態も踏まえまして、また専門家の意見もよく聞きながら、厚生労働省とも連携して、御指摘の点についてはよく勉強してまいりたいというふうに考えております。
○谷合正明君 当然、本来の目的を守るための基準であるんでありますが、その基準が余りに実態とどうなのかと、中小企業の経営状況と比べたときにどうなのかという、その辺の検証も必要であろうと思って、そういうことで要望させていただきました。
その上で、大臣に質問させていただきますが、HACCP導入促進のために中小、いわゆる食品産業ですね、このHACCP導入策もそうなんですが、そもそもこの食品産業というのは我が国の製造業全体の出荷額の約一割を占める大きな規模でもありますし、また地域の基幹産業でもあるわけであります。地域の農林水産物を原材料として利用してきたという歴史があるがゆえに、逆に言うと、中小零細の産業構造にもなっているわけでありますが、この辺り、食品産業の足腰を強化していく、農水省としてどのようにこの食品産業の競争力の強化に向けた取組がなされるのか、この点について大臣からの御答弁をお願いしたいと思います。
○国務大臣(若林正俊君) 我が国の食品産業、大きく言いますと、輸入の原材料を使って加工をして国内に供給するという、例えば油、油脂産業とか、あるいは製粉の企業とか、あるいは配合飼料なんかもそうですね、これは食品の前の産業になるわけですけれども、そういうようなものと、国内の農産物を原材料として加工している食品産業と、大きく分けられると思います。
私は、やはり重要なのは、国内の農産物を原材料としていく食品産業というものが力強く活性化していくということがまた国内の農業の地域の発展にもつながっていく、そういう意味で重要な役割を果たしていると認識いたしておりますが、食品産業を取り巻く状況は、もう委員も御承知のとおり、大変厳しい状況になっております。かてて加えて、そういう中で食品の安全の問題というのが、近年非常に不祥事が起こったりしまして信頼を失うようなことがございました。そういう中で、食品企業、産業は大変努力しているのに努力がなかなか報いられないという状況になっているというふうに承知いたしております。
そこで、本法によりますHACCP手法の導入を促進する、あるいはまたもう既に指導指針を出しておりますコンプライアンスを徹底するための体制の整備、こういうことを支援をしていくわけでございますが、そのほかに、今委員がおっしゃられました足腰の強い食品産業にしていくためにという観点で、五月の十六日に成立をさせていただきました農商工連携の促進法の枠組みを活用した食品産業と農林水産業との連携によりまして、どんどんと変わっていきます食品需要の拡大に対して対応できるようなそういう経営体質に改善していく、そういうことも促進したいということが一つでございます。
それから二つ目は、やはり消費者ニーズに対応しまして、産学官連携によります新食品、新素材などの技術開発というものを支援をしていく。例えば、米粉のめん類だとかパンだとかとなりますと、小麦粉よりも微粒子の、小さい粉をひいていくというようなことになってきます。そういうような食品加工業、さらに、それをパンなりめんに切り替えていくというようなそういう新商品への対応というようなことも支援をしていく必要があるんじゃないかと思っています。
それから、輸出でございます。実は、東アジア食品産業活性化戦略というものを立てまして、特にアジア地域におきます食品産業、所得が上がってきますと加工度の高いものを望んでくるようになっております。そういう意味でアジア地域で、まあセミナーも開催いたしましたけれども、そういう海外展開を支援をしていきたい、こんな思いでございます。
海外展開をしていくときにはやはり安全性ということに対する要請というのが当然あるわけでございますから、そこでまた元に戻って、このHACCP手法の導入を始めとした製造過程の信頼度の確保というようなことを業界にも訴えていきたい、こんなふうに考えているところでございます。
○谷合正明君 ありがとうございます。
私は、ある若手の経営者の方にお話しして、日本の農業をどうするかという話をしたときに、これからメード・イン・ジャパンとチェックド・バイ・ジャパンということも大事であると。つまり、日本国産品というのは今非常にブランド化になってきて非常に世界中からも高く評価されてきたし、もう一つは、進むべき道としてはチェックド・バイ・ジャパン、いわゆる安全性の信頼性の部分、ここは我が国特有の技術を持っているという話でありました。ですので、今の大臣のお話を伺っても、やはりその辺のことを、やっぱり我々の強みというのをしっかり生かさなきゃいけないなというふうに認識した次第なんですが。
いずれにしましても、我が国の食品産業の競争力、足腰の強化と、一方で国産農林水産物の利用拡大というのも併せて図っていけるような施策をしっかり展開していただきたいということを要望させていただきまして、私の質問を終わりにします。