○谷合正明君 公明党の谷合正明です。
今日は、ムタンゴ大使またオバム大使、本当に貴重な御意見をいただきましてありがとうございます。私は、実は今日食料価格高騰問題と環境問題についてお聞きしようと思っておったところなんですが、ちょうど今、椎名先生の方から質問がございましたので、若干それに関連するような形で質問をさせていただきたいと思います。
まず、先ほど来、いつもムタンゴ大使から答えられておりますので、オバム大使にまず初めに質問をしたいと思います。
先週、議長公邸でお会いしたときに、円借款、投資の促進が私との会話で話題になりました。まさにアフリカ諸国が今求めているのは円借款であり投資ということが今日の御意見の中でも伺えたわけであります。
しかし、大使が言われたように、石油資源で例えば一人当たりの平均所得が幾ら高くても、それが国民全体に裨益が渡らなければ余り意味がないというか、貧困層に届かないのであれば意味がないという御指摘はまさにそのとおりだと思っております。私もいろいろなアフリカの国で活動している経験の中でそのことは強くいつも思ってきたところでございます。
よくアジアの経験をアフリカの経験にということで言われます。東アジアでは貿易、投資、援助が一体となって成功を収めたと言われております。これからアフリカでまさにそういうアジアの経験をということであろうと思いますが、そうした経済成長が新たな貧困や格差を生み出してはこれは意味がございません。そういう意味では、その新たな貧困格差を生み出さないためのそういう経済成長、そして経済成長を支えるための投資であるとか援助の在り方についての配慮、その点についての御所見を賜りたいと思います。
○参考人(ジャン・クリスチャン・オバム君)(通訳) どうもありがとうございます。
非常に重要な質問をしていただきました。今先生からお話がありましたように、一人当たりのGDPというのは非常に人為的な側面があるんです。本当のところ富というのを評価できない、その国の国民の富あるいはその国自体の富もきちっと評価できない、これはまさにガボンに当てはまります。といいますのは、ガボンといっても二つの経済があるんです。石油部門と非石油部門の二つです。
石油部門では、国際的な企業、多国籍企業が入ってきている、そして石油の生産に従事していると。彼らは余りガボン人を雇ってくれません。ほとんど外国人です。しかも、石油の生産のための資本、これもガボン国内からの資本ではありません。これはすべて外国から入ってきた資本です。そして、彼らが生産するこの資源の付加価値も国内経済に還流してこないんです。ですから、ガボンの予算として入ってくるのはロイヤルティーの支払のみと、政府に払われるロイヤルティーのみと。ですから、これはもう外部経済と言ってもいいほどです。
非石油部門、これがガボンにとって意味ある経済であります。本当のところの経済活動の指標になるわけです。ですから、先生がおっしゃるように一人当たりのGDP、これを石油資源とほかの資源と合わせて見た場合には確かにミスリードする、誤解を生むということです。これは私の先ほどの演説の中でも申し上げたとおりです。
ですから、大事なことはそして是非御配慮いただきたいのは、この特別委員会の場でも人間開発指数の方です。これは国連が開発した指数です。この人間開発指数の中では、例えば教育水準の高さとかあるいは保健衛生の水準とか道路が何本あるのか、こういったことを見れば本当のところの国の開発の度合いが分かってくるわけです。その意味でODAを与えていただくときには是非この人間開発指数の方を考慮していただきたいということです。
さて、ほかにどのような活動を推進していかなければならないのか、アフリカ大陸全体についてですが、既にお話がありましたように円借款をインフラ整備に使わせていただければということです。もし、インフラ整備のために円借款をいただければ、これは日本にとってもいいはずです。なぜならば、御承知のようにこういう円借款が与えられますと日本の企業も入ってくるからです。そして、実際の事業の実施には日本の企業が従事することになるからです。ですから、ウイン・ウインといいましょうかヘルプ・ヘルプと、双方にとって恩恵がもたらされるはずです。
これは椎名先生もおっしゃったことですが、日本がガボンに援助を与えるときには何も見返りを期待していませんよとはおっしゃいましたけれども、そうではないんです。パートナーシップということは、お互いに資源を投入して、両方とも成果、恩恵が上がるようにということです。一方がもう一方に援助を一方的に与えるということではないはずです。我々はこういう関係を変えていきたいと思っているんです。援助がある国に与えられれば、やはり日本にとっても恩恵が見返りとしてあってしかるべきだと思っているからです。
○谷合正明君 大変にありがとうございます。
次に、ムタンゴ大使にお伺いをいたします。
実は私が初めて訪れたアフリカの国は貴国でございまして、私が修士論文を書くために貴国のアルーシャ、ダルエスサラームを訪れて米とかメイズの流通システムを勉強してきました。農業の問題を取り上げようと思ったんですが、若干省きます。
それは、まず大きな話をいたしますと、日本のODAは、この量、いわゆる金額まず増やさなければなりません。これは私もそう思いますし、ほかの方もそう思っているわけであります。しかし、そのODAの総量が増えたといっても、アフリカ五十数か国ある中で、何といいましょうか、それをすべての国を満遍なく強力に支援するほどの金額を確保するというのは非常に難しいと思います。
そういう意味では、援助対象分野あるいは援助対象国というのを絞り込まなければならないのではないかというのが日本のODAの今の議論であろうかと思います。実はこのODA特別委員会の中でもODAのめり張りのある援助ということについては、特に親日的であるとかあるいは政府のガバナンスがあるとか、そういう国にしっかり支援していこうじゃないかという御意見もございますが、この援助対象国の絞り込みというのはなかなか御発言できないかと思いますが、これは日本側の視点であります。アフリカ側からの視点からで答えていただきたいんですが、どういうアフリカの国に支援していただきたいのかということを御所見をいただきたいというふうに思います。
○参考人(エリー・エリクンダ・エリネーマ・ムタンゴ君)(通訳) 非常に難しい御質問ですね。ただ、できる限りお答えをしたいと思います。
まず、タンザニアを訪問していただいたことを、修士論文を書くために、エンジョイしていただけたでしょうか、感謝します。
さて、日本がどのように判断をすべきなのか、ODAなどの援助をアフリカに振り向けるために。これは非常にデリケートな問題だと思います。二つ、三つぐらいの基準、尺度を設けられたらどうでしょうか。
まず、その国がどれだけ恵まれているか。例えば一人当たりのGDP、これは単にガイドラインにすぎないということです、決定的な要素ではないと思うんですが。これはオバム大使もお話ししましたように、GDPで見ると一見高いように見えるけれども、実際に入ってくる収入はその国から外に出ていってしまっているという場合が多いと思うんです。そういうところを是非じっくり調べて考慮していただきたいということです。
第二に、国に対する援助ということですので、どこまで生まれている収益をとどめていることができるのかということです。もっと多くの収益がとどまっているということならば、全く何もない国にもう少し振り向けられるということになるのかもしれません。
ただ、アフリカ全体として見るならば、キャパシティーあるいは知識ということが必要です。経済面でも金融面でも日本の専門家から助けていただきたい。多くの鉱物資源やガス、金、石油など、恵まれている国もあるんですが、せっかく上がる収入がどこまでその国にとどまれるか、最小限の分しか残ってない国もあります。ですから、もっと多く残すための知識とかノウハウ、能力が必要になってきます。金融エンジニアリングですとか、もっと交渉力を付ける必要があります、多国籍企業を相手に。確かに競争が激しい、外国投資を誘致しようとして競争になっている。多国籍企業の方が大きな力を持っているわけです。ですから、投資を行われていても実際にその国の中に残るお金は少ないという場合もあるんです。その面での支援をしていただければと、能力開発ということです。
さて、第三の分野として私が示唆したいのは、ほかにどのような可能性、見通しがあるかということです。
援助は成果を生むはずです。しかし、国によっていろいろな要素でどのような成果かは変わってくるはずです。例えば内戦状態になっているとか紛争があるという場合には危険が多過ぎる。まずそういう問題解決に集中すべきでしょう、すなわち開発のために投資をするよりは。
ただ、安定しているような国、例えばガボンやタンザニア、非常に安定した国ですので、そうしますと、先の見通し、可能性としていい成果を生み得る可能性も大きいと思うんです、そういった国に援助をすれば。ですから、将来的な見通しということも考えていただきたいと思います。こういう要素に是非配慮いただければ、国によって状況が違います、非常に豊かな国もありますし、非常に貧しい国もあります。ですから、あらゆる要素を考慮していただきたいと思います。
ただ、究極的にはやはり慎重に考えていただいてということです。何が公平か、何が正義に根差しているのかということを考えていただければと思います。
○近藤正道君 社民党・護憲連合の近藤正道です。
オバム大使そしてムタンゴ大使、ありがとうございました。皆さんのプレゼンとそれと委員の皆さんとの議論で本当に意義深い話になったというふうに今日思っております。
率直に申し上げまして、私は、アフリカ支援の場合は無償と技術協力が基軸だろう、今までそういうふうに思っていました。ですから、経済成長よりも個々の保健とか医療とか、そういう人間の基盤を整えるということがまず優先されるべきなんだろうと、そういうふうに思っておりましたら、今日お二人のお話は、とにかく経済の底上げ、これがやっぱり一番大事で、そして有償とか投資を求めるということが非常に強調されていました。そこは、私率直に言って、私が今まで思っていたことと今日のお話と随分違うんで、ここは認識を改めていかなければならないというふうに思っておるんですが。
そこでお聞きしたいのは、そういう多分まず無償が中心だろうという考え方は日本人のごく普通の感覚だというふうに思うんですが、こういう認識のずれの中でアフリカの国別の援助計画を作る際に、皆さん方、随分じれったい思い、あるいは何で自分たちの思いがちゃんとこの中に入っていかないんだろうという思いをたくさんされているんではないかというふうに思うんです。そこのところをやっぱり率直に聞かせていただきたいということが一つと、もう一つは、一番今大事なことは経済の成長の底上げだという話をされておりました、とりわけオバムさんがされておりましたけれども、その際に、経済の底上げを図るに当たってイの一番に大事なのは、今一番必要だというふうに皆さんが思っているのを一つ挙げろというふうに言ったら何を挙げられるのか、お聞かせをいただきたいと、この一つでございます。
○参考人(ジャン・クリスチャン・オバム君)(通訳) 今提起なさった問題についてなんですけれども、経済の成長の底上げをするために今一番大事なものは何なのかということなんですけれども、無償が全然重要でないと申し上げたわけではないんです。無償援助は今でも重要なんです。それは変わりません。日本がいろいろグラントという形で無償援助を提供してくださっています。これはとても役に立っているんです。おかげさまでこれを使って社会サービスを改善することがアフリカには出ています、ヘルスですとか教育、衛生の面で。役立っているんです。
しかしながら、我々が申し上げたかったのは、無償援助だけではないですよということなんです。つまり、このミレニアム開発目標を達成するためには、いろんな評価が言っているようにやっぱり何はあっても経済成長が先決だということです。アフリカが経済成長を来すことができればMDGが達成できるということなんです。
ですから、そのための処方せんはやはりインフラ整備であると。道路を造る、経済インフラを整えるということなんです。例えば、アフリカの国と国の間のつながりがまだうまくいっていない、道路網が発達していないんです。港も必要、鉄道網も必要、また発電所も必要、送電網をつくらなくてはいけないということです。つまり、エネルギーを確保しなくちゃいけないんです、アフリカ大陸全体。これらが処方せんだと思います。
だから、インフラを整備する、インフラを整備できれば経済成長ができるということです。インフラつくるためにはやっぱり有償資金が必要なんです。無償援助だけでは足りない。だから、長期的な融資が必要です、状況性に富んだ資金が。
だから、アジア諸国に対して日本がなさったことと同じことを是非円借という形でアフリカにもいただければと思っているんです。アフリカはちゃんとお借りしたものは返済する能力があるんです、管理運営能力もちゃんと身に付けておりますので。アフリカでインフラが今までできていないということがあるんですけれども、ビルド・オペレート・トランスファーというBOTというやり方があるので、是非アフリカでもこれ試していただければと思います。例えば道路網の設定ということについても、もちろん道路ができれば経済成長が高まります。インフラが必要なんです。いい経済成長が実現できれば更にMDGの目標を達成しやすくなるということなんです。
○参考人(エリー・エリクンダ・エリネーマ・ムタンゴ君)(通訳) どうもありがとうございます。
じゃ、私からも補足ということで申し上げます。
三つ重要かと思います。インフラと人材開発とFDIということだと思う。これが三大要素だと思うんです、経済成長を底上げするに必要な。
日本は御経験をお持ちなんです。日本型のアプローチというのが参考になると思います。アジア、なかんずく東南アジアで一番成功を収めている開発の例があると思うんです。最近の例ではベトナムだと思うんですけれども、典型的な例ということで。日本は対ベトナムということを、いろんなことをなさっていますよね。でも、アフリカ向けのプログラムとベトナム向けのプログラムは日本から見て違うものになっているわけです。多分、スキル開発ですとかインフラ整備ですとか、より志向の高い援助が日本からベトナムに行っていると思うんです。日系企業はどんどんベトナムに投資なさっておられる。だから、同じことをアフリカでやってほしいなというふうに思っています。
もちろん無償援助というのは重要なんです。侮るつもりはありません。しかし、この無償援助の交渉をするのに三年、四年、優に掛かるんです。やっと無償資金が出たということになると、毎年毎年実は新しい要請をしなくてはいけないということになっているわけです。
例えば、五十四キロの道路ということでタンザニアの南部に道路を造りましょうということで合意が付いているんです。資金は無償援助でやるということなんですけれども、これをまとめるのに四年間掛かりました。資金というのは毎年毎年少しずつ実行される、出されるということなので、かなり厄介なメカニズムになっているんです。当初は、八百キロ完成しないとマラウイにつながらないんです、最終的にはマラウイとつなげたいというふうに思っているんですけれども。でも、毎年十キロしか道路が延びないということになると、八百キロを完成するのに何年掛かってしまうんでしょうか。こういうことなんです。そうすると、もう未来永劫開発はかなわないということになっちゃうわけです。
円借款のことを申し上げましたけれども、円借款の方がもうちょっと足の速い資金ということでもうちょっとスピードアップできるんですけれども。もちろん返済義務は我々は負うわけです。だから、返済義務がいったん掛かると少し交渉にも拍車が掛かるということになるんですけれども、やっぱり成長を底上げしたいので、そしてそれを達成することができれば自助努力ということの余地が大きく出てくる。だから、他人様の無償援助に永遠に頼る必要がなくなるということになるんです。だからこそ、各国の経済成長を確約するのが大切で、アジアもそうでしたよね。
もちろん文化的な違いはあるかもしれないけれども、アジアができたことはアフリカにもできるというふうに思っておりますので、是非最終的には自らの面倒を見ることができるような自らの力を付けていきたいとアフリカも思っているんです。これが目的です。リソースはもうあるんです。プラチナも鉄も金も石油もあると。ただ、石油はせっかく出るのにそれを運ぶ道路がないといったような状況なんです。鉄鉱石についてもそうです。だから、道路を造りましょう、そして鉄鉱石を運びましょうということです。鉄鉱石を売って収入を得るから、それを返済資金に充てますということなんです。
以上です。