○谷合正明君 公明党の谷合正明です。
私は、食料価格高騰問題への対応について質問したいと思います。このテーマは大きいテーマでありますので、今日だけじゃなくて、恐らく次回以降にも続けて質問をさせていただきたいと思っております。
まず、価格高騰問題といいましてもいろいろな要因等がございます。そこで、政府の対応といいましても、その要因がしっかり分析できていない限り対応もないんだと思います。まず、今状況がどうなっているかということで私の方からちょっと申し上げますが、世界銀行によりますと、米、小麦、トウモロコシなどの価格が二〇〇五年に比べて平均で八三%上昇していると。穀物の生産輸出国でも、自国の食料を確保するために輸出規制を始めた国も増えております。米の輸出規制は現在、インド、エジプト、中国、ベトナム、カンボジアなどの国が行っております。
〔委員長退席、理事平野達男君着席〕
米の消費量の約二〇%を輸入に頼るフィリピンでは、ベトナムの輸出規制の影響で深刻な米不足に陥っています。国民のデモも起きておりまして、このまま米の値上がりを解消できないと政権にも影響を及ぼしかねません。オーストラリアは、干ばつの影響で小麦の生産量が例年の半分に激減をいたしました。この影響で、エジプトでは主食のパンの原料である小麦価格が高騰し、暴動に発展しました。オーストラリアの減産分はアメリカからの輸出で何とか対応できました、この我が国もそうでありますが。この影響で、アメリカの小麦在庫率は二〇〇〇年当時の約四〇%に比べ、今一〇%と最低水準まで落ち込みました。また、これが資金の投資先を探している国際投資グループの動きを誘っているということでございます。
日本も米を主食としております。米も含めてきちんと対応を考えないといけないというシグナルだと思っております。また、米以外、穀物を輸入に頼る日本は、もうこれからは多少高くてもお金を出せば何とかなる時代というのはもう終わったというふうに認識をする時代に入ったと考えます。
まず、この現在の国際的な食料問題、価格の急騰、市民への食料供給の支障の現状をどう把握しているのか、政府の見解をお尋ねしたいと思います。
また、小麦、トウモロコシなどは、バイオエタノール製造向けの需要が高まっているためということも要因にあるという説明を受けてきましたが、確かにそれは一因なんですが、最近はこの米の価格の高騰というのが余りにも激し過ぎると、これはバイオ需要と余り関係なさそうなんですけれども、一体これどういう原因なのか、この点についてどう分析しているのか、分かりやすく説明していただきたいと思います。
○国務大臣(若林正俊君) 昨今におきます国際的な食料価格、穀物価格の高騰の要因分析を委員がしていただきました。その要因分析につきまして、認識は共有いたしております。
〔理事平野達男君退席、委員長着席〕
付け加えて申し上げるならば、やはり中国、インドなどのいわゆる発展の著しい途上国の所得が拡大をし、そしてその所得水準が上がることに伴って食生活が明らかに変わってきております。そういう食生活の変化に伴いまして、主として畜産物消費が増大していますが、その畜産物を育てるためのえさ需要が非常に強くなっているということが、えさ穀物でありますトウモロコシなどの価格にも影響しているだろうということ。それから、油の消費が非常に増えておりますから、油脂用の大豆の需要というものが高まっていると。そういうことを国際マーケットとして将来もこれは続くだろうという認識があるわけでありまして、そういう認識が言わば先物市場などの価格の強気を呼んでいるというような事情もあるということを一つ付け加えておきたいと思います。
このようなことが短期的には、今我が国に直ちに食料の供給不足というような形で国民生活に影響を与えるような事態には至っておりませんけれども、これを全く無関係なものというふうに考えてはならないと私は考えているわけでございます。やはり基本は、WTOでかねて主張し続けてきておりますが、やはりそれぞれの国は、食料を安定的に供給するために多様なその国に即した農業を継続をしていけるような、そういう環境条件を整えなければならないということでございます。そういうことをしっかりとこういう国際貿易ルールに当たっては主張をしていかなきゃならないと思っております。
なお、米についてでありますが、東南アジアを中心にしまして米の生産、貿易が中心でございます。その価格が他の穀物に比べまして異常に高騰しました。三倍にもなっているというような事態でございます。これは委員も御承知だと思いますけれども、米は貿易量が少ないんですね。生産量に比較して貿易の割合が低いという産物でございますから、輸出をしているものは少数特定の国によって占められております。最近、ベトナムやインドなどの、これは主要な輸出国の一つでありますが、そういう国々で、国内の低所得者層への供給不安だとかインフレなどの影響を回避するということのために米の輸出規制が相次いで実施されているというようなことがこの米価格の、国際価格の異常な高騰の要因になっているんではないかというふうに見ているわけでございます。
今、委員の認識をほとんど共有いたしておりますけれども、これからの対応ということにつきましては、やはり我が国が国際社会の中で占めております立場というのは世界最大の輸入国でございます。そういう世界最大の輸入国であるという立場をやはり国際社会の中で輸入国を代表する形で発言をしていかなければいけない、このように思いますし、我が国の国民の皆さんにも、例えば食生活における無駄を排除するとか、そういう食生活の見直しについてもメッセージを発して御理解いただいていかなきゃいけない、こんなふうに考えております。
○谷合正明君 様々な要因があるわけでありますが、そこに加えて輸出規制を取る国が増えてきたと、先ほど私も申し上げましたが。現在、米の輸出規制だけじゃなくて、もちろん小麦を始めとした穀物の輸出規制が広まっております。例えば、ロシア、ウクライナといった欧州諸国だけでなく、アルゼンチンといった南米までそういう制限を取っている国が増えております。これが今後もっと増える可能性もあるわけであります。このことは、まさしく我が国にとって大変食料安全保障上大きな問題であります。
我が国だけでなく、実際、例えばアフリカですと、米を、需要量が一千五百万トンですけれども、基本的には半分以上は海外に頼っているというような地域柄でありますので、こうした輸出規制の動きというのが非常に今後懸念されるわけであります。しかも、今輸出規制を取っているのは、何も、それぞれの国内事情で取っているとは思いますが、国内で本当に食料がなくなっているから規制を取っているというわけじゃなくて、先行きの不安、つまり国際価格の高騰の中でまずは国内向けの食料を確保しなければならない。つまり、もし海外に輸出がどんどん増えていくと、翻って国内の、それぞれの自国内の穀物価格が高騰していくという連鎖も指摘されておりまして、今の輸出制限措置というのは、どちらかというと、本当に食料がないからとっているというよりは、価格の余りにも高騰、急騰に対する先行きの不安からとっているんだと私は思っております。
その意味で、こうした輸出規制の動きに対して我が国として具体的にどのような考えで取り組んでいくのか、その点について説明をお願いしたいと思います。
○国務大臣(若林正俊君) 若干委員と認識の違うところがあるわけでございまして、輸出規制というのは小麦などについてございますけれども、主たる国際的な輸出国、供給国側で輸出規制が行われているわけではございません。そして、ロシアとかアルゼンチンとか今お話がございましたけれども、主として輸出規制をしているのが不幸にして開発途上国などで、国内での供給に非常に不安を抱え、また国内のインフレ懸念などから国内における価格が高騰をしてきて、社会不安を呼ぶおそれがあるというような状況の中で、この輸出規制の仕方も様々ですけれども、輸出税を掛けるとか、あるいは国がそのために放出した穀物はそれは輸出してはならない、民民ベースはいいよと、いろんな形態があるわけでございますが、やっぱり途上国が途上国に輸出をしているその輸出を規制し始めているということが大変深刻な事態を生んでいるというふうに認識しているわけでございます。
そこで、これは、こういう状態がありましたから、私どもの方がWTOで新たな輸出規制というふうに先ほど委員おっしゃられた意見がございましたが、新たではないのです。このWTO交渉はもう六年にわたって続けてきていますが、当初から日本提案をいたしまして、輸入のアクセスを拡大するという輸入国側の要求がある一方、我々輸入の立場からしますと、輸入国と輸出国のバランスがなければならないということを主張しておりまして、輸出国側にも輸出についての秩序を要求をしてきているわけでございます。
そのことを含めまして、農業議長の方も、抽象的ではありますけれども、輸出のルール化ということについてはファルコナー提案の中に入っているわけであります。しかし、その提案のままですと、具体的にこれを実効ある措置にするには十分ではない。これは何も協定上に明らかでなくてもできるわけですけれども、我々はこのWTO協定が締結を見た暁において、その後の実効上の措置への布石も含めまして、少し実効上のルール化ということをここで主張しておいた方がいいと。また、背景としても今のような背景があり、賛同を得られる状況が強まってきたという認識で要請をしていると、強めているという状況でございます。
私も折衝した限りで言いますと、アメリカは基本的には賛成だと、こう言っているんですね。輸出規制をすることについて、ルール化することについては賛成だということをこの場で我々の方に伝えてきているわけでありますが、ところがブラジルは、途上国を代表する立場でございますが、途上国をどうするんだということを言っているんですね。途上国が社会不安に陥っているというような状況の中で、輸出規制をせざるを得なくなってきているような国々への配慮が必要ではないですかというような意見が出てきているわけであります。
そういうことにつきましては、具体的な実効上のルール化というのはいろいろな問題がありますから、関係国と協議をしながらそれを詰めていかなきゃいけないということでございますが、基本的には輸出国の勝手は許さないという国際的な認識をつくり上げていくことが大事だというふうに考えております。
○谷合正明君 是非、実効性のあるルールの導入ですね、今こういう議論が従前からされているということはお伺いしましたが、更に一歩具体化されたルール化を、是非、掛け声だけでなく、実際導入されることが重要だと考えますので、今年はまさにそういう大事な会合が続くと思いますので、是非とも導入に向けてしっかり我が国の主張をしていただきたいというふうに考えます。
そこで、米を使った支援について若干残された時間だけ聞きますが、我が国は米備蓄、今政府備蓄米でも百万トンございます。その備蓄、基本的には国内の食料が不足したときの対応をするというものでありますが、しかし、今世界的に何が起きているかというと、緊急的な支援が必要じゃないかと、米不足とか食料不足に対して。我が国もWFP等を通じて一億ドルの緊急食料援助を行うことを表明されたと思いますが、今後、国内米を使った我が国としての、やはり先進国としての何かリーダーシップというか、人道的な観点で何かできないものであろうかというふうに考えておりますが、政府としてどのように考えておられるのか、お伺いをします。
○国務大臣(若林正俊君) 今委員がおっしゃられるとおりでございまして、国際的な援助の仕組みに従いまして我が国も緊急の食料援助をするということは意思表示をしているわけでございます。
その場合には、資金を提供をして、輸入を必要とする国の一番調達しやすい自分たちに合った食べ物を調達をするという意味では金でもらう方がいいという国が多いんですね。そういう場合と、しかし、金でもらっても物を手当てするのが大変だというような事態があり得るわけでございます。そういう事態に対しては、我が方はそういう必要に応じて現物として米を提供する用意はあるというふうに思っているんですけれども、我が国が提供するお米はまた輸送を掛けて持っていかなきゃいけないということがあって、元々高いところにまた輸送費を掛けるということで高くなるんですね。援助効果が少なくなるということもあり、相手国との間で十分な協議をし、相手国がやはり望んだ状況の中でしなければいけないと思っております。
ちなみに、我が国が米現物で政府米を利用した食料援助の実績というのはかなりございまして、この平成九年から十九年までの状況で見ますと、国産米で百十四万二千トン、MA米で百九十七万六千トン、合わせて三百十一万八千トンの政府米を食料援助に使っていると、こういう実績はございます。
○谷合正明君 以上で終わります。