○谷合正明君 公明党の谷合正明です。
私は、今日は国有林野事業について、以前の委員会で質問できなかったこともありますので、まず国有林野事業について質問をさせていただきたいと思います。
国有林野については、言うまでもなく、国土の保全、水源涵養、また自然環境の保全等、公益的機能を担っているわけであります。さらに、地球温暖化対策における森林吸収源としても重要性は増しております。
その国有林野事業でありますが、平成十年に成立した国有林野事業の改革のための特別措置法では、平成十年、一九九八年当時の累積債務約三兆八千億円を、一般会計分の二兆八千四百億円と国有林野事業分の一兆五百億円に分けて、平成六十年、二〇四八年度までの五十年間で債務について着実に処理するものとされております。平成十八年度末の時点での債務残高は、一般会計分は約一千百七十億円減少しまして、今約二兆七千三百億円であります。しかし、国有林野事業分では約一兆五百億円と、この債務については変わっておりません。全く減っていないというのが実情であります。
国有林野事業特別会計における債務償還は、一般会計から利子補給を受けつつ、例えば平成二十年度予算では二百八十億円ですが、五十年間で林野、土地等の資産の処分、林産物収入等から発生する剰余金を充てることにより行うとなっております。なお、その国有林野事業では、平成十年度から十五年度までを集中改革期間として取り組んだ結果、新規の借入金は、かつて六百五十億円があったのが、平成十六年度にはゼロとなっております。しかしながら、その債務残高については二千三百四十二億円増えて、十六年度末には一兆二千七百九十六億円となっております。
そこで、まずお伺いいたしますが、平成十一年度から十八年度まで結果として国有林野事業の債務残高が減らなかった理由はなぜなのか、また今後の償還の見通しについてはどうなっているのか、この点についてお伺いいたします。
○政府参考人(井出道雄君) 委員御指摘のように、国有林野事業につきましては、平成十年の抜本的改革によりまして経費の節減等によります支出の削減に努力をいたしました結果、平成十六年度には新規借入金をゼロとし、収支均衡を図ったところでございますが、以降、新規借入金からは脱却いたしましたが、木材価格の低迷など厳しい状況にある中で債務残高の縮減には至っていないところでございます。
今後につきましては、一般会計からの利子補給により債務の累増を招かない中で、木材販売収入の確保や経費の節減など引き続き収支両面にわたる努力を尽くしまして、平成六十年度までに債務の返済に努めてまいる考えでございます。
○谷合正明君 償還の見通しについて本当に実行できるのかどうかという点なんですが、この国有林野事業の引き継いだ債務については、既に、何というんでしょうね、平成六十年度、まあ先の長い話ですが、二〇四八年度までの五十年間で債務一兆円償還するというスキームがこれはもう難しいのではないかという思いをしております。
平成二十二年四月に、実は国有林野事業の一部の独立行政法人への移管、また一般会計への統合というのが行われる予定と聞いておりますけれども、この際、この債務の償還スキームについても併せて見直していくべきではないかと考えますが、この償還スキームが破綻しているのではないかとの私の感想についての見解、またこの償還スキーム、今後見直していく必要性についてどう感じられていらっしゃるのか、この点についてお伺いします。
○政府参考人(井出道雄君) この国有林野事業の累積債務の解消につきましては、私どもは、現在は木材価格の低迷等、厳しい状況にはありますが、更に努力を積み重ねて、やはりこの債務の解消は最大限の努力をしていきたいと考えております。
一方で、この国有林野事業特別会計につきましては、今お話がございましたように、一昨年六月に制定されました行政改革推進法におきまして、事務事業の一部を独立行政法人に移管した上で、一般会計に統合することについて検討することとされております。このため、これまで国有林野事業として実施してきました事業のうち、人工林の整備あるいは木材の販売等の業務を独立行政法人に移行しますとともに、国有財産としての国有林野の管理、保全、治山事業等については引き続き国が行うとの基本的な考え方に沿いまして、今後とも国土の保全、水源の涵養など公益的機能の維持増進を旨とした国有林野の管理経営が適切かつ効率的に行えるよう検討をいたしているところでございます。
こうした中で、この債務の処理の問題についても幅広い観点から慎重に検討していく考えでございます。
○谷合正明君 随時、私は見直していく勇気が必要であるというふうに考えております。
国有林野事業は、現実に一般会計から、先ほど来話出ておりますが、利子補給などで多額の繰入れで維持している状況にあります。平成二十年度予算では一千六百九十億円を繰入れと。一般会計と区分して経理する必要性が薄れております。国有林の九割強が国土保全や水源涵養という公益的機能を担っていることを踏まえて言いますと、国有林野事業特別会計の債務償還というものを今後一般会計で処理していくスキームを検討していくべきではないかと考えますが、この点についてお伺いいたします。
○政府参考人(井出道雄君) 国有林野事業の今後につきましては、収支の見通しにつきましても、成熟しつつあります人工林資源を中心に収穫量が今後増大すると見込まれることを踏まえまして、国有林におきましても、間伐の積極的な推進や国産材の需要拡大を図って収入の確保に努めていきたいと考えておりますし、高性能林業機械を活用した列状間伐など高能率の間伐作業システムは、これは国有林が先駆けて導入をしたものでありますが、こういったものを効率的な執行をいたしまして更なる経費の節減や人件費の縮減等のコスト縮減を図ること、この収支両面にわたる努力を尽くしまして、平成六十年度までの債務の返済に努めていきたいと考えております。
先ほども申しましたけれども、しかしながら、この国有林野事業特別会計の改革につきましては、事務事業の一部を独立行政法人に移管した上で、一般会計に統合することについて検討することとされておりますから、以上のようなことも踏まえまして、この債務処理についても今後幅広い観点からやはり慎重に検討していきたいと思います。
○谷合正明君 いずれにしましても、債務残高が増えているという状況、これをしっかり見直していく必要性があると思っております。新たな借金を生まないことはもちろんでございますが、この点について強く申し上げたいと思います。
話を先に進めますが、今回の法律案と若干離れるところではあるんですが、違法伐採について、その取組についてお伺いいたします。
違法伐採については、日本というわけじゃなくて、世界に起きている違法伐採の問題ですが、木材生産国における森林の減少であるとか劣化、あるいは森林生態系の破壊等をもたらすだけではなくて、結果的に生産国の政府収入の損失であるとか木材市場が歪曲されるとか様々な問題が引き起こされます。さらには、持続可能な森林経営ということも阻害されていくわけであります。今年はサミットが行われますが、平成十七年に行われた英国、イギリスでのグレンイーグルス・サミットでは、我が国としてもこの違法伐採対策にしっかり取り組んでいくということを表明をしたところであります。
そこで、その後この違法伐採対策をどのように取り組んでいるのかという質問なんですが、対策、いろいろあろうかと思います。日本と交易関係がある国、例えばアジアでいえばインドネシアとかロシアとかありますが、そういう二国間での違法伐採対策というのも大事であります。
それとともに、今違法伐採で大きな問題となっている地域は、実はアフリカのコンゴ盆地というところで起きております。世界の酸素供給源というのは、アマゾンが有名でありますけれども、アマゾンを一つの肺と例えれば、もう一つの肺がこのアフリカのコンゴ盆地と言われておりまして、日本の面積の五倍を占める面積を持っております。そのコンゴ盆地がなかなか、いわゆる持続可能な森林経営、今特段その森林減少が進んでいる、破壊が進んでいるという話じゃないんですけれども、今後しっかり持続可能な森林経営という観点を取り入れていかないと、こうした地域というのはなかなか、紛争があったりとか政府の目が届かないとかいう地域であります。
実は我が国に、横浜にITTOという国際機関があります。我が国が招致した熱帯木材機関でありますが、これは私は、サミットとかTICADがある中で、我が国としてこの違法伐採対策は、二国間だけじゃなくて多国間の中でもしっかり発信すべきであると思っております。恐らく林野庁のODA予算あるいは人材もこういったITTOの方に行っているんではないかと思いますが、この点についての政府の取組について伺いたいと思います。
○国務大臣(若林正俊君) 実は、今委員がお話しいただきましたITTO、そこの事務局長、ゼ・メッカさんが昨日、私のところを訪問をされました。そして、この国際熱帯木材機関ですけれども、昨年、事務局長に就任された方なんですが、アフリカのカメルーンの出身の方なんですね。それで、今委員がおっしゃられたようなアフリカにおきます森林、熱帯雨林のみならず、巨大、広大な森林資源というものを生物多様性との関係の中でどういうふうにしていくのかというような大きな課題があるというようなお話、私も伺ったところであります。
ITTOは、東南アジアとか、委員もおっしゃられたアマゾン川の流域とかコンゴ川の流域などの熱帯木材を生産する国三十三か国と、これらの熱帯木材を輸入、消費する国二十七か国、計六十か国で構成された国際機関でございまして、この機関のファンドを出しているのは、最大の拠出者は日本でございまして、日本がこの問題に非常に積極的に支援をしてくれているということがこのような活動を支えているんだということを事務局長からお話を改めて聞き、お礼を言われながら、今後とも強力な支援をお願いしたいということでございました。
そもそもこの熱帯雨林のことは、委員が先ほどおっしゃられましたけれども、二〇〇〇年に行われました九州・沖縄サミットで、実は日本側のイニシアティブで、違法伐採に関する最善の方法について検討するんだというのが首脳声明で合意されたという経緯がございます。その後、幾つかのサミットを経ながら、持続可能なための森林整備ということについて、この違法伐採を含む対策が議論をされました。
昨年のハイリゲンダム・サミット、ドイツで行われたわけでありますが、この首脳宣言でも、違法伐採対策の既存のプロセスを引き続き支援すると同時に、持続可能な森林経営達成に向けたAFPなどの地域的な枠組み、ITTOの成果を評価するということを声明をされました。その前段であります環境大臣会合にも私も出席をいたしました。非常に熱心な討議が行われたわけですが、一番悩ましいのは、そういう熱帯雨林などを有している国々が、これを伐採を抑えてしまうと経済的に大きな打撃を受けるんですね。木材の販売収入がなくなる、そこで現に働いている人の失業を招くとか、あるいは輸出をしているその輸出収入を失うとか。だから、これを利用する国あるいは先進国がもっと支援をしないとなかなか伐採を抑えることができない。
更に加えて、この違法伐採という問題があります。日本は、このインドネシアでの会議でもそうですが、違法伐採を宇宙から察知する、そういう宇宙衛星使っての調査をし、トレースをして、それらの情報を提供しながら、その国々との間で違法伐採を抑えるための協力関係を構築すると同時に、問題はそういう、具体的には、それぞれの国がグリーン購入法に基づいて合法的な持続可能が証明された木材や木製品を政府調達の対象にすると、そういう動きを強めていって、そういう証明がない木材は需要者側で輸入をしないというような動きにつなげていく必要があるのではないかと思います。
このことは、今度の温暖化対策の中の一つとして、北海道の洞爺湖サミットに向けまして、この違法伐採対策の重要性につきまして内外に強く訴えると同時に、この違法伐採対策が更に進展していきますように積極的に働きかけていく、そういう責任が我が国にあると、こういうふうに考えております。
○谷合正明君 大臣の熱意がよく分かりましたので、私は、今日、森林間伐の法案ではありますけれども、この違法伐採対策も併せて我が国からしっかり発信していただきたいと思います。そのことを申し上げまして、終わります。