○谷合正明君 公明党の谷合正明です。
本日は、参考人の先生の皆様、大変に貴重な御意見をいただきまして、心から御礼を申し上げたいと思います。
まず初めに、今日は質問時間が十五分ということで、お一人ずつ質問をさせていただきたいと思います、一問。
大野参考人にお伺いをいたします。
新しい日本のODAを語る会の提言は、ほかの提言と違いまして、特に政治の関与、国会に専門の委員会設置をというところまで踏み込んで御提言されているところが特徴的なのかなというふうに承りました。
先ほども類似の質問がございましたが、もう少し具体的に、参議院ODA特別委員会の果たしてきた役割について高く評価していただいたということで分かりました。今後の在り方なんですけれども、ODAの政策形成におけるこの参議院ODA委員会が今後どういうふうな役割を担っていけばいいのかという御助言がございましたら、お伺いしたいと思います。
そして、それに伴いまして、他国ではどういうふうな仕組みで、例えばイギリス等ではどういうふうな仕組みを持っているのか。
大野参考人御自身の中で、援助の選択と集中ということを言われましたけれども、こういった援助戦略が他国ではどのように議論されてきているのかというようなことについてお伺いしたいと思います。
○参考人(大野泉君) ありがとうございます。
ODAの政策形成にかかわる国会の関与の在り方なんですけれども、幾つかイギリスあるいはアメリカ等の例を簡単に紹介させていただきます。
例えば、アメリカでは対外援助法がある、国会には専門の委員会はございません。ただ、予算委員会がかなり、まああれは大統領制で三権分立ということで非常に過剰なくらい予算を審議するということがあります。
片や、イギリスというのは議院内閣制で日本に似ている制度だと思いますけれども、国際開発省という省が九七年にできたということもありまして、国際開発政策というのがあり、それに対応する専門の委員会というのがイギリスの議会の中に下院の中にあります。そこでやっていることというのは、毎年これは七、八回だと思いますけれども、DFIDという国際開発省の基本的な政策とか予算の使途それから幾つかテーマを、そのときそのとき国あるいはテーマを絞って議論を行っているということをしています。イギリスの場合はニュー・パブリック・マネジメントという中で行政府がかなり強い力を持っているというところで、予算の枠全体についてはもうある程度決まった中で、その下で議会がチェック機能を果たしているということがあると思います。
強調したいのは、国際開発法という法律がありまして、そこできっちりとイギリスの援助の理念は何なのだということを示していることです。それは貧困削減に資することについてイギリスはすべての援助をしていく、MDG達成が目的だといったことを明確に出しているということです。ですから、そういった意味で、DFIDに対しては、ほかの省庁に対してもそういったMDG達成のために必要なことがあれば調整機能をしなさいと、そういったことまでマンデートがあります。
同時に、つい最近ですけれども、これは二〇〇六年にこの法律の追加規定が出まして、そういった意味でイギリスは非常に今ODAの増加ということに国を挙げてコミットしているんですけれども、議員立法で援助の増額ということをやっていこうと。国連ミレニアム開発目標達成のためにGNI比の〇・七%を二〇一三年までにイギリスは達成するんだということ、それから援助効果向上のための国際的な協議、パリ宣言と言われているんですけれども、そういったものも遵守していこうといったことを、これは法律として追加規定として作ってしまったと、そういったこともございます。
そういった意味で国会の議論それから議員の役割というのは非常に重要だと思いますし、それから幾つか、もし時間をいただければと思いますが、国内の中でシンクタンク、独立したシンクタンクがございまして、そこが議員さんを招いてそういった援助政策、各党のODAに対する提言なども議論をするセミナーなども行っているということがあると思います。
ですから、私としては、このような形で、一つのこれは例かもしれませんけれども、やはりODAの基本政策あるいは重点国の考え方なども含めて、あるいはテーマについてもやはり国会の方も関与した形で議論いただくと。それから、国会の議員の先生方と政府、実施機関、研究者、開かれた形での議論をしていく、そういったような場というのもどんどんどんどん増えていけばいいかなと思います。
それから、アメリカについては、先ほど申しましたように、特別な委員会はないと申しましたが、今非常に面白い動きがございまして、ブッシュ政権後の対外援助をどうするかといったことが議会の中あるいはシンクタンク等で非常に議論されています。超党派の議員がつくったコミッションがございまして、それはヘルプコミッションというんですが、そこが最近、昨年の末に提案をしているのは、やはり国防総省が非常に援助に対して力を持ち始めた、それがいいのかどうかといったようなことが議論されておりまして、それに基づいて国際開発庁という援助を専担する機関の役割をやはりもっと強化するべきじゃないか、あるいはそこを独立すべきじゃないかというようなそういった議論もされております。ですから、そういったことまで踏み込んだ形での議論が、委員会があるかないかということは別にして、なされているといったことを申し添えたいというふうに思っています。
○谷合正明君 続きまして、渡辺参考人にお伺いをいたします。
ODAと民間投資の在り方について、それに関連してアフリカで自助努力の発揚につながる日本のODA供与の在り方というのはどういうものなのかなと改めてお伺いしたいわけでありますが、実は今ニュースで話題になっているのは、食料とエネルギー価格の高騰で大変、例えば世銀の総裁はアフリカで三十三か国、このまま行くと不穏な社会、政治情勢に直面するんだと。WFPでは二十三か国が食料の深刻な情勢に直面するというような報告もありました。
いずれにしても、その報告の中で出てきているのは、従来型の食糧援助から現地の食料市場を構築し、農業生産を増進させるような資金援助を呼びかけているものであります。つまり、私は、これはODAによる援助だけではなくて、民間投資も呼びかけたんだなというふうに理解をしているわけであります。
実際に私が把握している範囲では、このODAと民間投資、DAC諸国のこの割合、DAC諸国の中で援助と民間投資の比率が二〇〇二年は、ODAが八〇%、民間投資が八%だったと。しかし、二〇〇五年にはODAは三五%で民間投資が六〇%だと。民間投資がかなり増えていると。ODAの援助総量自体も倍増しているにもかかわらず、それ以上に民間投資が増えているわけですね。東アジアではこの貿易投資、援助が一体となって東アジアの開発は成功したというお話でございました。
そこで、お聞きしたいのは、今後我が国のODAの対象地域というのは、アフリカというのが一つ重点エリアになるわけでありますが、この渡辺先生のコンテクストからいうと、このアフリカで日本がこれまでやってきたような自助努力の発揚につながるODAの供与の在り方というのはどういうふうなことが可能なのかと。先生はそういう姿勢が大事なんだと言われましたけれども、もう少し具体的なお考えをお伺いしたいと思います。
○参考人(渡辺利夫君) 率直に言って、目下考慮中、検討中ということでございます。私の中に、頭に像を浮かんでいる国が三つ、四つあります。しかし、ちょっと私、立場上これを申し上げることができないので、ちょっと差し控えさせていただきますけれども。
要するに、このODAと民間投資とインフラ等がパッケージとして有効性を持つ、そういう条件を持った国がアフリカの中にも幾つかあるということですね。その国が受け取っているODAの中でそれがマジョリティーであるような、マジョリティーというのは日本のODAのプレゼンスが大きいような。ということは、比較的小さな国でそれから親日的で政府のガバナンスが比較的しっかりしていてという国を幾つか選択基準として選び出す、シャッフルして選び出す。そこに選択、集中して日本型ODAの成功事例としてその波及効果をねらうという戦略を今考えております。アフリカは、御承知のように膨大な貧困国を抱えておりまして、これに日本のODAがすべてに対応するなんということはできるはずもありませんし、またすべきでもないと思いますね。そういう意味で申し上げております。
一点だけ付け加えますと、私は人間的能力においてアジアとアフリカで差があるというふうな観念をもとより持っておりません。しかるべき条件があれば、アジアで実現されたことはアフリカでも実現されるであろうという信念を持って今までも勉強してまいりました。アジアの開発、私はかねてより予測していたつもりですけど、私が勉強を始めていたころはそんなことはあり得ないというのがごくごく一般的な議論でありまして、現代のコンテクストに直しますと、アジアでできたことがアフリカでできないはずはないという基本的な信念の下で今後も仕事をしていこうと思っております。
お答えになったかどうか分かりませんけれども、モデル国を選んで日本型援助、したがって自助努力支援というコンセプトを大事にすべきだ、こういう基本的な考え方を今なお持っております。
○谷合正明君 それでは、横田参考人にお伺いをいたします。
つまり、アフリカ支援については、対象国をいわゆる選択、集中ですとかめり張りとかいろいろな言葉があろうかと思いますが、今の渡辺参考人のお答えとしてはモデル国を選択していくという話でございました。本当にアフリカに対する課題というのは、例えばアフリカ支援するための平和構築のための人材育成をどうやってやっていくのか、あるいはMDGの達成に向けてどうするのか、そしてまた日本の自立支援型援助をどうするのかと、いろんな課題があります。ガバナンスの課題もございます。我が国らしさを発揮できるアフリカ支援の在り方について、やはり全部を全部、五十三か国トップドナーになるというのは難しいんだろうなと思っております。そうすると、やはりマルチとバイをしっかり使い分けていく必要もあろうかと思っております。
そこで横田参考人にお伺いしたいんですが、この特にマルチの方ですね、多国間、国際機関を使った我が国の援助の取組についての先生の御所見をお伺いしたいと思います。というのは、私はどうしてもこういう話をすると、日本の国連職員を増やさなきゃいけないとかそういう話はよく聞くんですけれども、それから先の話がなかなかよく見えてこないなというふうに思っています。
○参考人(横田洋三君) ありがとうございます。
お手元に配った資料の、私の参議院政府開発援助等に関する特別委員会と最初に書いてあるものの資料の十三、十四、十五辺りをちょっと見ながらお話しさせていただきたいと思います。
マルチは、もちろん渡しますとUNDP、ユニセフ、そういう機関がその先は実施していくわけですね。そうすると、普通は日本の援助が渡された後はもうコントロールできない、したがって目に見える日本の貢献にならないからバイの方が目に見えると、こういう議論をしがちなんですが、実はそうではなくて、日本の場合にはこれまで、例えばUNDPで言いますと、二〇〇〇年ごろまで数年間、第一の拠出国だったんです。そうしますと、日本の意向を聞かずに、UNDPはどこの国にどのくらいどういう種類の援助をするかということを決められないんですね。場合によると日本人が事務次長になっていたり、場合によれば事務局長にさえなれるんですが、実は日本の援助がだんだん減ってきたために事務局長のポストは得られなかったんですが、そういうところに日本人が入れば非常に効果的に今度はマルチの場を使って日本の援助政策が実現できますので、そういう意味でもっとグローバルに考えていただきたいというのが私の視点です。
この資料の十三を見ますと、UNDPだけについてですが、UNDPは国連機関では最大の援助機関ですから、見ますと、二〇〇〇年がトップであったのが二〇〇二年には二位になり、二〇〇三年には三位になりという形で年々落ちてきていて、二〇〇六年の時点で第六位になっているという状況。こうなると、当然ですけれどもオランダとかアメリカ、ノルウェー、スウェーデン、こういう国のUNDPの中での影響力の方が大きくなってきますので、その辺が一つ考えなければいけない問題であろうと思います。
もう一つは、マルチの援助というのは、その国がどういう分野でどういうふうに発展すべきかということについてかなり総合的に研究調査をし、経済学的な分析を加えた上で答えを出しますので、ある意味では援助効果が本来高いはずなんですね。日本はそこにある程度力を入れるんだということを方針として示すことによって、日本の援助がただ単に日本の国家利益に奉仕するだけではなくて、国際社会の関心事項である開発問題に取り組んでいるんだというイメージを多くの国々に与える意味でも、私はマルチの部分の強化というのは必要であろうと思います。
それから、アフリカの特定の国については、資料の十二というのを見ると、かつては二〇〇〇年の時点では日本が第一の援助国であったんです。ガーナ、ガンビア、ジンバブエ、スワジランド、タンザニア、中央アフリカ、モーリタニア。これがその後、全部日本は第一でなくなっています。第一の援助国というのは、この国に対してどういう開発政策を取るかということについて日本の発言権が一番大きい国なんですね。それがもう今では日本の発言権は全部低下しています。こういうことを考えると、どの国を重視するかというのは、やはり過去の実績を考えると、まずこういう国について日本が第一の援助国になり集中的にそこを援助していくというそういう方針が必要ではないかと思います。
○谷合正明君 終わります。