○谷合正明君 公明党の谷合正明です。
私は、公明党、自由民主党・無所属の会を代表して、ただいま議題になりました法律案について、福田総理並びに関係各大臣に質問をいたします。
まず、本法案については、本来、国土交通大臣所管の国土交通委員会で当然審議を進めるべきと考えますが、議院運営委員会での強行的な採決により別の委員会に付託されました。参院規則二十九条で議長は議案を適当な常任委員会に付託するとされており、最終的には議長の責任であります。これは、議会運営の歴史上極めて大きな汚点となり、遺憾と言わざるを得ません。
本法案は三月十三日に衆議院から参議院に送付されたにもかかわらず、民主党が審議に入らず一か月以上もたなざらしにされてきました。税制関連法案も同様にたなざらしにされた結果、暫定税率は失効いたしました。
民主党はガソリンの値段が下がったことを二兆六千億円の減税を実現したなどとアピールしていますが、何の議論をしないで得たことを成果と言うようでは、良識の府としての参院の存在意義が問われても仕方がありません。まして、このままでは国と地方の財政に二兆六千億円の穴が空いてしまうことを知らないわけでもないと思います。
各都道府県は、暫定税率維持を前提にした二〇〇八年度予算を既に可決しております。その中で、民主党系の会派が賛成に回ったケースは実に三十九の都府県に上ります。地方自治体は暫定税率の失効、また地方交付税関連法案も未成立の状況の下、厳しい財政運営を強いられています。民主党が主張する即時撤廃が暴論であることはだれの目にも明らかであります。
地方自治体の財政がこれ以上逼迫すれば、ガソリンの値下げどころの話ではなくなります。混乱を最小限に止めるため、暫定税率が切れている状態を早く解消する必要があります。税制関連法案同様、本法案も参院での審議を促進し、一刻も早く院としての結論を出すべきと考えます。
私たち参議院議員は、いま一度、全国民を代表して国政の課題を審議する重責を担っているとの自覚に立ち返り、暫定税率の在り方や道路特定財源の一般財源化への道筋、無駄遣い是正策などを徹底して議論すべきであります。
総理は、三月二十七日に発表した道路関連法案・税制の取扱いについての中で、道路特定財源は廃止し〇九年度から一般財源化することを表明されました。道路をめぐって政局を絡めて国論を二分するような状況にあって、国民の暮らしの安定や活力の創出、地域経済への影響を見据え、英断を下されたと高く評価します。
まず初めに、なぜこの時点でこのような決断をなさったのか、改めてその真意をお伺いするとともに、実現に懸ける総理の決意をお聞かせください。
総理は、民主党の意向にかかわりなく、二〇〇九年度から一般財源化を進めると表明されています。去る四月十一日には総理の指示を踏まえ、政府・与党で来年度からの一般財源化も合意されました。しかし、現在政府から提出されている法案は引き続き特定財源制度を維持するものであります。
今後、具体的にどのような形で総理の意思を反映させていこうと考えておられるのか、御見解をお尋ねいたします。
以下、総理提案について、幾つかの観点からお伺いいたします。
第一に、現在、十年間の計画として総額五十九兆円の道路の中期計画が策定されていますが、総理提案では道路の整備計画は五年に縮小するとのことであります。その場合、計画規模についてはどのように見直していく考えなのか、総理にお尋ねいたします。
次に、道路特定財源が一般財源化されたとしても、真に必要な道路整備は進めていかなければならず、必要な道路整備財源は確保していかなければなりません。特に地方からは、地方の道路整備がなおざりにされるのではないかとの懸念が広がっています。こうした不安は無用である旨の説明や配慮が求められますが、改めて今後の道路整備に向けた姿勢、特に地方の道路整備についての考え方を、総理並びに冬柴国土交通大臣にお伺いいたします。
第三に、受益者負担についてお伺いします。
道路特定財源は受益者負担の原則に基づいて、自動車関係諸税を自動車ユーザーに負担をお願いしてきました。そこに今回総理の方針が示されたわけでありますが、一般財源化ということは受益者が自動車ユーザーから国民全体に広がったと見ることができます。そのような考え方でよいのか、そしてなぜ受益を国民全体に広げようと考えられたのか。総理は、環境、救急医療や少子化対策へ充てることを例示されましたが、これら諸点について、改めて国民に説明すべきでありますが、総理の御見解をお伺いいたします。
第四に、暫定税率についてお伺いいたします。
総理は、今年度の暫定税率は維持することを表明されました。私も、地方財政の混乱、今後の道路整備、夏の洞爺湖サミットを控え環境問題への影響、今後の少子高齢化に伴う財政需要等を考えれば当然であると考えます。
しかしながら、いったん暫定税率の失効により価格が下がり、短期間のうちに暫定税率の復活に伴い再度価格が引き上げられると、国民にとってはこれまで以上に負担感を抱かせることとなります。改めて税負担を求めることについて、国民の理解と協力が必要不可欠であり、十二分に説明を尽くすべきであります。どのように国民の理解を得て暫定税率の復活を進めていくのか、お伺いいたします。
総理が言うように、一般財源化し使途を拡大していくのであれば、来年度以降は一体どれだけの税が必要なのか、国民への説明が必要不可欠です。暫定税率についても、このまま暫定措置でよいのでしょうか。また、税制の抜本改革に当たっては、複雑に九種類の税が課せられている自動車関係諸税、とりわけ取得と所有に関する税率は整理簡素化することが重要と考えます。こうした自動車関係諸税の在り方について、総理の御見解を賜ります。
第五に、道路特定財源の不適切な利用についてお伺いします。
野党だけでなく、私ども与党にとっても言語道断の無駄遣いであると、怒り心頭に達しております。現在、国土交通省内に改革本部を設置して、間もなく最終的な取りまとめが行われる予定と聞きます。与党もこうした無駄遣いをなくすための提言を政府に行っています。道路行政に対する国民の信頼を取り戻すためには、道路財源における支出の適正化、効率化を徹底的に図っていかなければなりません。
そこで、冬柴国土交通大臣に、今後そうした不適切な利用をどのように一掃するのか、また道路関係公益法人をどう改革していくかについて、御決意を伺います。
あわせて、公益法人については、不要な内部留保金は国に寄附をすべきと考えますが、大臣の御見解を伺います。
さらに、道路関係公益法人以外でも、政府全体で行政と密接な関係にある公益法人については、速やかに集中点検を実施し、支出の無駄を徹底的に是正していくべきでありますが、政府としていつまでにどのように改革を進めていかれるのか、総理の基本的なお考えをお示しください。
最後に、暫定税率の失効に伴い地方自治体で起きている混乱、窮状について、その収拾策をお伺いします。
暫定税率が消えることによる収入減は、地方財政だけでも、国からの交付金を含めて一兆六千億円。多くの地方自治体では、予定していた道路事業の入札や契約を凍結するような事態も生じ、雇用にかかわる深刻な影響も出ています。単に道路整備ができないだけではなくて、生活にも大きな影響を与えることが危惧されています。例えば、宮城県の知事は、私学への補助金や病院事業への補助金などを削減することになり、結果的に子供を持つ家族や病院に通院している人たちなどに影響が出ると思うと発言されています。
そこで、現在のところ、暫定税率切れに伴い地方自治体の予算執行にどのような影響が及んでいるのか、増田総務大臣にお尋ねいたします。
さらに、暫定税率失効期間中の地方の税収減に対して、何らかの緊急的な財源措置を講ずべきと考えますが、最後に総理の御見解をお伺いします。
地方自治体においては、税収減の影響を受けてやりくりができるのは四月末までが限界との苦しい声も聞かれます。地方の意見を十分配慮しながら、国の責任において適切な財政措置を講じるよう訴えて、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣福田康夫君登壇、拍手〕
○内閣総理大臣(福田康夫君) 谷合議員にお答えをいたします。
三月二十七日に発表した私の提案の真意及び実現に懸ける決意についてお尋ねがございました。
私は、国会審議がなかなか進まない中で、野党との協議を前進させることが必要との強い思いから、野党の御意見も踏まえて見直すべきものは大胆に見直すという決意の下に新たな提案をお示ししました。
先般、私の提案を踏まえて、政府・与党決定として道路特定財源制度は今年の税制抜本改革時に廃止し二十一年度から一般財源化と明記し、また、一般財源としての使途の在り方は与野党協議会で協議、決定としたところであります。今後は速やかに与野党協議が行われ、野党におかれても協議の中で建設的な提案をいただくように期待をいたしております。
政府提出法案と道路特定財源の一般財源化の方針についてお尋ねがございました。
平成二十年度予算の裏付けとなる税制関連法案及び道路財源特例法案については、地方財政や国民生活の混乱を最小限にするために一刻も早い成立が必要と考えております。
その上で、政府・与党決定の方針を踏まえ、道路特定財源制度は今年の税制抜本改革時に廃止し二十一年度から一般財源化することとし、与野党協議を鋭意進め、合意が得られれば法律の手当てが必要なものについては手当てしてまいります。
中期計画を五年に短縮した場合の計画規模についてのお尋ねがございました。
昨年末の政府・与党合意では、道路の中期計画の計画期間を十年間、事業量を五十九兆円としたところでありますが、国会審議などを踏まえ、今般の政府・与党決定では、計画期間を五年としたところであります。計画規模も含め、新たに策定される中期計画の具体的内容については、与野党間で協議することを提案しており、その協議も踏まえつつ検討を進めてまいります。
その際、日本の将来のあるべき国土像や地方経済の自立、活性化の必要性等も踏まえたものにする必要があると考えます。
地方の道路整備についてのお尋ねでございました。
活力ある地方を創出するために様々な活動の基盤となる道路が果たす役割は非常に重要であります。地域の物流や日々の通勤に必要な道路の渋滞解消、子供の通学路の安全対策、災害に耐えられる橋梁の維持補修など、必要な対策は着実に実施しなければならないと考えております。
今般の政府・与党決定においても、財源制度の見直しに際して、地方財政に影響を及ぼさないように措置する、また、必要と判断される道路は着実に整備するとしておりまして、今後とも厳しい財政事情の下で重点化、効率化を図りながら、地域の必要性に根差した道路の計画的な整備を進めてまいります。
次に、道路特定財源の一般財源化による受益者についてお尋ねがございました。
三月二十七日、私は、道路特定財源制度は今年の税制抜本改正時に廃止し二十一年度から一般財源化、暫定税率分も含めた税率は、環境問題への国際的な取組、地方の道路整備の必要性、国、地方の厳しい財政状況を踏まえて検討との考え方を明らかにしたところであり、先般、この私の提案を踏まえた政府・与党決定も行われました。
一般財源としての使途の在り方につきましては、現行の課税の趣旨から考えると、納税者たる自動車ユーザーの理解をいただくことも必要と考えます。他方、より広い範囲の国民に受益をもたらすと考えられる新エネルギー開発、地球温暖化対策、救急医療体制の整備など、様々な政策に使えるようにすべきとも考えます。
いずれにしても、課税の趣旨を含め、今年の税制抜本改革の中で整理すべき課題と認識しております。
暫定税率の復活の進め方についてお尋ねがございました。
暫定税率を廃止すれば、国、地方合わせて二・六兆円の歳入欠陥を生じ、予算執行に深刻な影響を与えます。現に多くの地方自治体においては二十年度予算の執行を一部留保するなどの措置を余儀なくされており、影響が住民へのサービスにも及び、国民生活が大きく混乱することが懸念されます。暫定税率の維持を含む税制改正法案の一日も早い成立に国民の御理解と御協力を賜りたいと考えております。
次に、自動車関係諸税についてお尋ねがございました。
自動車関係諸税は、それぞれ創設の経緯や課税根拠がありまして、また、国、地方それぞれ貴重な財源となっております。これについては、昨年末の道路特定財源の見直しについての政府・与党合意の中で、税制の簡素化が必要との指摘もあり、今後の抜本的な税制改革に合わせ、道路の整備状況、環境に与える影響、厳しい財政状況等も踏まえつつ、暫定税率も含めその在り方を総合的に検討することとしております。
公益法人の集中点検についてのお尋ねでございますが、国の支出の在り方について幅広く抜本的な改革を行い、行政の無駄を徹底して排除していくことが必要と考えております。
今般、特に行政と密接な関係にある公益法人に着目し、六月中を目途に民間参入の促進や随意契約の見直し等の集中点検を実施して、支出の無駄ゼロを目指すこととしたところであります。
なお、道路関係公益法人については、今週にも、道路整備特別会計からの支出の大幅削減など、抜本的な改革方針を取りまとめることとしております。
暫定税率失効期間中の地方の税収減に対し、緊急的な財源措置を講ずるべきとのお尋ねがございました。
四月十一日の道路関連法案等の取扱いに関する政府・与党決定にあるとおり、ガソリン税などの暫定税率の失効期間中の地方の減収については、各地方団体の財政運営に支障が生じないよう、国の責任において適切な財源措置を講じてまいります。その際、地方の御意見にも十分配慮してまいります。
残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)
〔国務大臣冬柴鐵三君登壇、拍手〕
○国務大臣(冬柴鐵三君) 谷合正明議員から二点お尋ねをいただきました。順次お答えいたします。
今後の道路整備に向けた姿勢、特に地方の道路整備についてお尋ねをいただきました。
日本が成長力、国際競争力、地方の活力を確保し、我々の子供や孫たちが自信と誇りを持って暮らせる安全、安心な国を実現していくためには、国家の基盤、基礎となる道路が果たす役割は極めて重要であります。
そのためにも、地域間の交流、連携の推進や物流を支える基幹ネットワークの整備、子供たちが安全、安心して通学できる歩行空間の確保、高度経済成長期に造られた橋梁の老朽化に伴い増大する維持管理や更新投資への対応など、必要な対策は着実に実施しなければならないと考えております。
特に、地方部においては人の移動の九割以上が自動車交通に依存していることも踏まえ、国土交通省としては、今後とも、地域の活性化や安全、安心の確保等を図るため、必要な予算を確保しつつ、重点化、効率化を図りながら、真に必要な道路整備を計画的に推進してまいります。
道路特定財源における支出の適正化、効率化と道路関係公益法人の改革についてお尋ねをいただきました。
道路特定財源からの支出について国民の皆様の不信を招いたことは極めて遺憾であります。また、与党のプロジェクトチームから改革案について先日申入れがあったところであり、これを真摯に受け止め、不信の払拭、信頼の回復に向けた取組に全力を挙げているところであります。
具体的には、現在、改革本部において、道路関係公益法人について、廃止、統合、民営化等による対象法人の徹底的な削減、役員数の削減等による人件費の抑制、道路整備特別会計から関係公益法人への支出の大幅な削減を目指し、鋭意作業を進めているところであります。
また、道路整備特別会計から支出を受けている公益法人のうち、内部留保の水準が三〇%を超えているなど、適切と言えないものの取扱いについては、内部留保の実態を検証の上、国への寄附を含め、真に公益的な目的に活用していくことが必要であると考えております。
さらに、地方整備局等における支出について、業務上の必要性を徹底的に検証し、無駄を一切省くという視点から総点検を行い、経費の削減と支出の適正化に関する改革方針を検討しているところであります。
いずれにしても、早急に検討を行い、近々取りまとめを行うとともに、できるものは今年度中から実施するなど、改革が加速するように取り組んでまいります。(拍手)
〔国務大臣増田寛也君登壇、拍手〕
○国務大臣(増田寛也君) 谷合議員より、暫定税率切れに伴う地方自治体の予算執行への影響についてお尋ねがございました。
道路特定財源の暫定税率の失効に伴う地方自治体への影響につきましては、地方税、譲与税全体で二兆一千億円のうち九千億円減収となり、道路整備はもとより、様々な行政サービスの提供に重大な支障が生じかねません。
このようなことを踏まえ、四月一日現在における四十七都道府県の予算執行上の対応について緊急調査を実施をいたしました。その結果、全都道府県のうち四分の三に上る三十六道府県が何らかの事業の執行を保留するという対応を取っていることが分かりました。さらに、これらの団体中十一府県は経常的経費を含め道路関係事業以外の事業にまで影響が及んでいる状況であり、改めて地方の厳しい実態が明らかになったと認識をしております。
いずれにしましても、地方財政などへの影響を最小限に食い止めるためには、歳入法案の一日も早い成立が重要であります。私としても、円滑な地方行財政運営に責任を有する立場から、最大限努力を傾注してまいる所存であります。(拍手)