○谷合正明君 公明党の谷合正明です。
私も、山内委員に続きまして、アフリカ問題について、またアフリカに強く関連します感染症対策あるいは基礎教育支援について質問をさせていただきます。
まず、冒頭の質問は、先ほどの山内委員との質疑にかぶるわけでありますが、改めて我が国のアフリカ支援の戦略についてまず外務大臣にお伺いしたいわけであります。
特に、明年はTICADそしてG8のサミットが我が国で行われます。TICADは、もう文字どおりアフリカ開発会議、アフリカが主要のテーマになっているわけであります。これは日本がイニシアチブを取ってやってきた会議であります。また、G8サミットにおきましても、もうここ数年アフリカの成長あるいはアフリカの平和と安定あるいは保健の向上と、そういったことが主要な課題になっております。
小泉元総理がアフリカ向けのODAを倍増するという公約を掲げ、それ以来、我が国のODAの在り方というものが非常に注目をされているわけであります。この三年間の倍増というのは、まだ見通しというか、明るいという答えは先ほどございましたけれども、今後その三年間のみならず、将来にわたってこのアフリカの支援額というものをどうやって財政の厳しい中でかち取っていくというか増やしていくのか、そういったこと。あるいは、そもそも明年に向けての我が国のこのアフリカ開発、何に重点的に支援をしていくのか、そういった戦略的なところについて、まず冒頭、高村外務大臣にお伺いしたいと思います。
○国務大臣(高村正彦君) 二〇〇五年の四月、アジア・アフリカ首脳会議において、我が国は今後三年間でアフリカ向けODAを倍増することを表明したわけであります。これは二〇〇三年実績を基準として二〇〇七年対アフリカ向け実績として約十七億ドル、約千八百億円でありますが、これを目指すものであります。特に、本年は、本件公約の達成が求められる年であることから、ODA予算が全体として削減されている中、アフリカ諸国に特に関係の深い予算を可能な限り増額して、またアフリカ向け案件を積み上げることなどにより、これを実現すべく努力をしていく所存でございます。
我が国は、アフリカ支援に当たっては、特にアフリカ開発会議、TICADプロセスを基軸として、インフラ整備を通じた貿易投資促進などの成長の加速化、ミレニアム開発目標の達成や平和の定着を含む人間の安全保障の確立、環境、気候変動問題への対応などの分野を重視しつつ取り組んでいく考えでございます。
○谷合正明君 私は、このアフリカ支援につきましては、私が議員になる前、日本のNGOでアフリカ等で働いてきた、現場でやってきた者として、やはりミレニアム開発目標であるとか人間の安全保障といった正に現地の人に本当に役に立つ支援、またそういった現場でたくさんの多くの日本人職員が働いておりますけれども、日本人職員が誇りを持てる日本の支援というものを是非やっていただきたいと。そうした中で、感染症対策であるとか基礎教育支援というのは非常に大事な分野であろうと思っております。
例えば、グレンイーグルズ・サミットのときに、G8各国が二〇一〇年までに援助総額を五百億ドル増額させるということを公約したわけでありますが、しかし現在のペースが続くと約二百七十億ドル下回る見込みであるというふうにも聞いております。この二百七十億ドルがあれば、例えば子供、女性、HIVの陽性者の保健ケアに活用されると五百万人の命が救えると。あるいは、結核の薬、一人十二ドルでいえば、二十二億人分にも値するとも言われております。TICADⅣにおきましては、ストップ結核ジャパン・イニシアチブを提唱する予定と仄聞をしております。
しかしながら、一方、世界エイズ・結核・マラリア対策基金に対して、我が国は新規資金の拠出表明を見送る方針を固めたというような報道も報じられたり、あるいはアフリカなどで主要な結核治療薬の調達センターである世界抗結核薬の基金ですね、GDFといいますけれども、財務理事国四か国のうち日本だけ拠出金がないという現状もあるというふうに伺っております。やはり明年に向けて日本のしっかりとしたイニシアチブを発揮するためにも、エイズ、マラリア、結核などの感染症対策を主要議題として、また言うだけじゃなくてしっかりと取組を、実行を強化するべきであると、そのように思っておりますが、この感染症対策についての取組について、外務省の方にお伺いをいたします。
○政府参考人(鶴岡公二君) 感染症対策についてのお尋ねがございました。
HIV、エイズ、結核、マラリアまたポリオなどの主要感染症、さらには鳥・新型インフルエンザといった新興感染症は、開発途上国国民の一人一人の健康問題にとどまりません。それらの国々の経済社会開発への重要な阻害要因となっております。また、感染症は容易に国境を越えて他国に広まる可能性がある地球規模の問題でありまして、ミレニアム開発目標、その中でも目標の六には、HIV、エイズ、マラリアその他の疾病の蔓延の防止が掲げられておりまして、その目標の達成のために国際社会が一致して協力をすることが求められているところでございます。
このような観点から、我が国といたしましても、明年のTICADⅣまたG8サミットを開催することを念頭に置きながら、我が国の高い医療水準やODAを含む国際貢献の実績を有効に活用しつつ、G8の枠組みにおける各種イニシアチブ及びWHOを始めとする保健分野の国際機関及び基金及び官民パートナーシップとの協力に引き続き積極的に参加していく考えでございます。
○谷合正明君 通告、特にしてなかったんですけれども、先ほど申し上げた具体的な世界抗結核薬基金の拠出等、もしお分かりであれば答えていただきたいんですが。
本年三月に安倍前総理に実はエイズ・結核問題に取り組むザンビア人の活動家が直接お会いしていただきまして、拠出については検討するというふうな言葉をいただいたというふうに聞いております。これも、我が党もこの問題については、結核は昔の病気じゃなくて、今実は日本は先進国の中で一番結核の多い国になっておりまして、遠い国の問題じゃなくて我が国の問題でもありまして、この辺りについてもしお分かりであれば答えていただきたい。
○政府参考人(鶴岡公二君) 安倍前総理のところにズルさんが御案内をいただきまして御面会いただいたということは私どもも承知をしております。また、その際、ストップTBパートナーシップを始めとする結核対策の重要性を訴えられたこともよく承知をしております。
現在、日本国内におきましても結核関係の団体が連合して、日本自身の問題であるとともに、アフリカを中心とする世界各国における結核対策について、日本がこれまで蓄積してきております知見とそれから活動ぶりを参考にしながら、より積極的に対応すべきであるといういろいろな御指摘をいただいております。外務省といたしましても、このような団体と協力をしながら、また厚労省とも連携を組んで積極的に結核対策に取り組みたいと思っております。
他方、具体的な機関にいかほどの予算を現時点において講じるかということにつきましては検討中でございまして、御指摘のとおり機関によっては日本の拠出がこれまでなされてなかったところもございます。他方、世界基金という三大感染症を担当しているところにつきましては、我が国としてもこれまでも応分の協力をしてきておりますし、今後の拠出につきましては、政府の代表から応分の負担をするということを表明しております。
御指摘のとおり、具体的な資金拠出額については、予算、制度の関係、その時期の問題もありまして表明しておりませんけれども、是非とも実質的な貢献を行うべく努力を今後とも傾注してまいりたいと思っております。
○谷合正明君 是非、感染症対策、特に結核対策含めましてしっかりやっていただきたいと思います。
次に、基礎教育支援について質問をいたします。
ミレニアム開発目標においては、二〇一五年までに初等教育の完全普及ということを目標にうたっております。これは、日本を含めましてこれが合意されたわけでありますが、ただ、今のところ、ユネスコによりますと、すべての子供たちが学校に行くためにあと七千七百万人の子供たちが学校に行かなきゃいけない、そのためには一千六百万人の教員を増やす必要があるというふうに言われております。
なかなか学校に行けないという理由は、例えば家庭の貧困であるとか学校の問題というのもございます。国によっては、一人の子供を小学校に行かせるのに一か月ぐらいの収入が必要な国もあったり、あるいは学校の問題というのも、特に途上国の公立学校の教員というのは公務員でありますけれども、給与も低い上に給与の未払という問題もございます。結果的にどうなるかというと、私もアンゴラに行ったときに経験したんですけれども、中学校とか小学校に入学をさせるために実は親からお金を取ると。ある国では、実際に私の同僚の現地のスタッフは、入学のためにイリーガルな五百ドルを学校の先生に渡してようやく入学させてもらうというようなことも起きておるわけであります。
ところで、日本の今のODAの教育支援というのは、教育支援にも高等教育あるいは初等教育、基礎教育、いろいろあるんですけれども、高等教育、大学への留学生の支援などに充てられる高等教育については、五二%ほど教育支援のODAの中で占められている。しかしながら、幼稚園から中学校までの基礎教育に充てられる教育援助というのは、教育ODAの中の一八%となっております。二国間ODAに占める基礎教育援助額の割合というのは、我が国の場合は〇・九%でありまして、これはほかの国に比べますと半分以下になっておりまして、この辺りが非常に弱いなと。
今、二〇一五年までに初等教育の完全普及ということを考えますと、日本の教育支援はもう少し基礎教育分野に援助の質を、量もそうですが質を高めなきゃいけないなというふうに私は思っているわけであります。
その中で、例えば援助額の問題もあるんですけれども、経常経費という問題があります。途上国の教育予算の九割は教員給与といった経常経費になっております。一割が学校建設とか教員養成。日本の基礎教育支援というのは、この経常経費については支援は原則しないという方針というか考えであったというふうに私は理解しているわけであります。
まず、これから考えていくと、この基礎教育支援、とりわけこの経常経費に対する支援の在り方が問われると思うんですが、今この経常経費、私は支援を拡充する方向で、まあ全部を支援しろとは言いませんけれども、拡充する方向でやっていくべきだと思うんですが、この辺りの見解についてお伺いしたいと思います。
○政府参考人(鶴岡公二君) 御指摘のとおり、教育は国民一人一人が自らの手で自立するために必要な能力を身に付けるための手段として極めて重要であると考えております。このような認識に基づきまして、我が国はODA大綱におきまして教育分野の支援を重視すると明記しております。
具体的には、基礎教育におきましては、成長のための基礎教育イニシアティブ、これに基づきまして、学校建設などのハード面の支援とともに、教員養成などのソフト面の支援を組み合わせて、教育の機会の確保及び質の向上に向けた取組を積極的に支援してきております。また、職業訓練、高等教育などの開発途上国の国づくりを支える人材を育成するための支援も行っております。
また、これらに加えまして、お尋ねのような開発途上国の教育予算に対する資金協力につきましては、初等教育の完全普及の達成を目指す国際的な支援枠組みといたしまして、二〇〇二年四月に設置されましたFTI、ファスト・トラック・イニシアティブ、これに対しまして我が国としても関連基金への新規拠出を行う旨表明をしております。この基金を通じまして、今御指摘ございましたような途上国側の教育のソフトのインフラ整備につながることを期待をしておるわけでございます。
このような取組を更に積極的に展開することによりまして、我が国といたしましても教育分野での国際協力を更に推進してまいりたいと思っております。
なお、経常経費について、全く対応しないということを何も決めているわけではございませんので、その事情を勘案しながら、また今いただいた御指摘も念頭に置いて検討を進めてまいりたいと思います。
○谷合正明君 世界銀行によりますと、すべてのドナー国の教育援助額の三分の一がコンサルタントに支払われていると見積もられております。だから悪いとかいうことじゃないんですけれども。
基礎教育分野で最も額の大きい学校建設、我が国の援助の話をしていますけれども、学校建設の一般無償資金協力は今タイド、つまり自国の企業しか調達の対象となっていないと。結果的に、例えばカンボジアでは学校建設費、一つの教室当たり約三百九十万円、これ二〇〇三年の値ですけれども、掛かっていると。例えば、これはNGOとかアジア開発銀行でやれば六十万から百三十万円で済むというふうなことも指摘をされております。ですので、同じODAの基礎教育支援に向ける援助額が同額だとしても、工夫の仕方によってはより効果を発揮すると私は思っておるわけです。
今例えば経常経費支援も可能にする貧困削減戦略支援無償ですとか、あるいは先ほど言ったタイドじゃなくて現地の業者を使ったり現地調達ができるようなコミュニティ開発支援無償といったメニューも随時外務省さんの方で用意していただいておりまして、このことは私はすごく評価しておりまして、こういったプログラムをしっかり拡充をしていただきたいと、この点については要望をさせていただきます。
先ほどFTIについてもう既にコメントをしていただきました。来年はG8サミット、我が国が議長国にもなりますので、このFTI、つまり途上国の中でも国家教育計画をしっかり持って実行するという意欲を持つ国に対して優先的に支援するメカニズムなわけでありますけれども、そこに二つの基金があると。例えばそれが触媒基金である、教育計画開発基金という基金があるわけでありますが、そこの基金に対して日本が拠出してきた金額というのは、これは二〇〇六年に初めて日本が拠出したというふうに理解しておるわけでありますが、ほかの国に比べてまだやはりここは低いわけでございます。そういう意味では、日本が積極的にこのFTIの仕組みを使って基礎教育分野の経常経費の問題も含めて対応していくべきであると、そのように申し上げたいと思います。
先ほどの答弁に補足するような形でもし答弁があれば御答弁いただきたいと思います。
○政府参考人(鶴岡公二君) FTI、先ほど御紹介したとおりでございますが、我が国の拠出につきましては、二〇〇六年のG8、サンクトペテルブルク・サミットに際しまして、FTI関連基金に対し新規拠出を行うことを表明しておりまして、本年度中に合計二百四十万ドル分を拠出する予定としております。
また、このFTIの仕組みというものは、G8の議長国がFTIの共同議長に就任するということになっておりまして、我が国は二〇〇八年一月から共同議長に就任する予定になっております。今年の議長国ドイツは、FTIの運営などに関する実務レベルの会合のほか、国際フォーラムと題する会合を主催いたしております。我が国といたしましても、来年議長となる以上、このようなFTI関連会合の主催やあるいはFTIの議論により積極的に参加するということを現在考えております。
また、予算の点につきましても、今いただきました御指摘も念頭に置いて更に作業を進めてまいりたいと思います。
○谷合正明君 是非よろしくお願いいたしたいと思います。
今取り上げたのは感染症あるいは基礎教育といった分野の話をさせていただきましたけれども、一方で、我が国の平和構築に当たる人材育成というのも非常に大事な問題でありまして、これはもう長くずっと議論されている問題であります。
本年から広島で平和構築分野の人材育成のためのパイロット事業、別名寺子屋事業というんですか、が始まりました。平和構築分野の人材をしっかり確保するための国を挙げての研修制度でございまして、私も今年一回視察をさせていただきました。九月中旬から十月末まで国内で研修をした上で、海外に約半年近く研修を国際機関等でするわけであります。
しかしながら、それだけで終わっては意味がなくて、しっかりとその後の仕事を確保するかどうかが今この寺子屋事業の大きなポイントとなっております。特に、この国際協力に携わる人というのは今二十代そして三十代に非常に多く見られます。ただ、特にNGOの分野等では、その意気込みで仕事を始めてきたけれども、しかしながら将来的に安定した仕事というものが、なかなか就職先もない、あるいは給与の問題等もございましてなかなか定着し切れないという問題がございます。
私は、この平和構築の事業、人材育成事業、パイロット事業と位置付けられているわけでありますが、これしっかりと明年以降も継続していただきたいと。そして、さらにその上で、研修先のみならず、その後の就職先の、どういった国際機関にしっかり定着してもらうかという政府としての後押しをしっかり考えていただきたい。この二点について大臣に見解をお伺いしたいと思います。
○国務大臣(高村正彦君) おっしゃるように、まず初年度である本年度事業を成功裏に実施していくことが重要だと考えますけれども、人材育成という事業自体の性質上、中長期的視座に立って運営していくことが不可欠であると、こう考えております。
そして、御指摘のとおり、修了生の就職支援は重要でありまして、国内研修、海外実務研修とともに、本件事業の三本柱の一つに掲げているわけであります。
当省といたしましても、希望就職先の関連情報の収集あるいは研修員への情報提供と助言、国際機関等への働き掛けなどを通じて、修了生の就職を全面的にバックアップしていく、そのつもりでございます。
○谷合正明君 是非、後押しをよろしくお願いしたいと思います。
最後に、官房長官にお伺いいたします。
ODAの総合戦略、またこの総合戦略がなかなか見えづらいという指摘もありまして、海外経済協力に関する重要事項を機動的かつ実質的に審議し、戦略的な海外経済協力の効率的な実施を図る司令塔の役割の会議を、この海外経済協力会議というものが設置されたわけでございます。
本年、これまでに約十回ぐらい開催されているかと思います。直近では十一月一日にアフガニスタンに対する海外経済協力について議論されていると思いますが、明年のTICAD、サミットがある中で、私は司令塔の役割とされているこの海外経済協力会議で、まずはここでしっかり議論というか戦略を国とトップが示していただかなきゃいけないと思っておりますが、今後のスケジュールまたどういったことを検討していくのかについて、最後にお伺いをいたします。
○国務大臣(町村信孝君) 委員御指摘のように、この海外経済協力会議、国全体のまあ余り戦略というとちょっと仰々しいのでありますが、国全体としてどういうふうに我が国の海外協力をやっていくのかというのを議論する場として設置をされまして、十八年の五月から、第一回目からずっと行われております。先日、今御指摘いただいたアフガニスタンに対する経済協力の会議が第十一回目ということで開いたところであります。
アフリカについて申し上げるならば、今年の四月十日にちょうどほぼ一年後にTICADを開くということを念頭に置きながら開いて、アフリカをテーマにした議論もやったところでございますが、今委員御指摘のようにだんだん近づいてもきているということもありますので、次回あるいは次々回で、この会議を開く際には大きなテーマとして、大きなテーマとして取り上げる必要があると私自身も考えておりますので、今後そのように取り組んでまいりたいと思います。
○谷合正明君 ありがとうございました。