○谷合正明君 公明党の谷合正明です。
午前中から大変にお疲れさまでございます。
私も、今の農政の議論は、本当に国民的な議論が巻き起こっていて、特に農業に携わっていない若い世代も含めて議論がなされているというふうに私は認識をしております。これはかつてないことだと思っております。そういう意味で、今回、民主党さんの方から議員立法という形で本法案が提出されたということについてはまず敬意を表したいと思います。
ただ、一方で、午前中の質疑から聞いている中で、この法案を聞いている中で問題があるとすれば、一つはその実現性の問題であろうと。それは、戸別所得補償制度に必要な一兆円の話なんですけれども、一兆円の財源の積算根拠であるとかその確保の在り方について、これからの議論の中で更に詳細に詰めていくんであろうとは思いますけれども、今もってまだその点ははっきり示されていないと思っております。
もう一つ、この法案というのは、どちらかというと今の危機的な農村状況を救うためのものであると。逆に言いますと、中長期的な農業構造の展望についてどのようにこの法案が位置付けられているのか、どういうふうに民主党さんは中長期的な農業構造の展望について考えているのか、その点について若干まだ分からないところがございます。
さらに言うと、対象農産物でありますとか対象農家でありますとか生産数量の目標などの詳細については政令事項にゆだねられておりまして、政令になっていることが悪いということじゃなくて、今後のこれ議論の中でいかにできる限り明示されていくのかと、そういうことが大事であろうと思っております。
そういう観点で、今日はまず初回ということでございますので、総論に近いところからまず質問させていただきたいと思っております。
まず、農業者戸別所得補償制度の目的のところなんでありますが、目的については、「食料の国内生産の確保及び農業者の経営の安定を図り、もって食料自給率の向上並びに地域社会の維持及び活性化その他の農業の有する多面的機能の確保に資することを目的とする。」と、幾つか項目が書かれております。民主党は、食料・農業・農村基本法については賛成されていると。しかしながら、今回の法案については、基本的には十アール以上のすべての販売農家に対して支援をしていくんだということでございます。そうすると、基本法の理念、例えばそれは、強い体質の農業構造を確立していく、そういったところに矛盾していくのではないかと、そういうふうに思わざるを得ないわけでございます。
その点、まず民主党の方で、基本法が目指す望ましい農業構造についてどんなビジョンを持っているのか、まずその点について伺いたいと思います。
○高橋千秋君 お答えしたいと思います。
地域の事情については委員ももうよく御存じのことだろうと思うんですが、やっぱり農業は地域性というのが非常にあります。やっぱり北海道の農業と私の出身であります三重県の農業、それからこの関東近県の農業だとか九州だとか、それぞれ違います。産物も違いますし、やり方も違うし規模も違う。それぞれの地域に合った農業の姿というのがあるはずなんですね。ところが、今のそれぞれの委員からもお話があったかと思いますが、高齢化がどんどん進んできて担い手がいなくなってきている。もうこれ、あと数年もすると、本当にこのままほっておくと壊滅的になってしまうんではないかなという危惧があります。その中で、私たちはこの法案の中にも、先ほど読んでいただいた目的の中にも入っておりますけれども、やはり、それぞれの地域の豊かなその地域性を生かしていくということと、今すぐの部分の危機を救っていくということが大変重要なことになってきます。
効率性を否定するものではありません。先ほど集落営農の話が出ましたし、さっき言われた農業の力を強くしていくという部分を否定するものではありません。しかし、できるところ、現実的な対応をしていかなければなりません。そのためにこの戸別所得補償という形でそれぞれの農家に対して持続していける、農業をこのまま続けていける、その地域がそのまま生き残っていけるということのためにこの法律が効用が出てくるというふうに私たちは考えています。それが私たちは望ましい日本農業の姿ではないかなというふうに思います。
過去、戦後ぐらいは、約八割ぐらいの方が、日本人は、日本の国民は農家だったんですね。それがどんどんどんどん変わってきました。当然、時代の変化によってそれぞれの対応はしていかなければなりませんけれども、しかし地域の農村のところは変わっていない、むしろ疲弊をしてきている、それを守っていくにはこういうやり方が一番現実的な対応ではないかなというふうに考えております。
○谷合正明君 そうしますと、やはりこの法案というのは、まずもって今そこにある危機を救っていくんだというところに主眼があるということだというふうに認識しましたけれども、そういう意味ではこれは歯止めであり緊急措置的な政策ということになるんでしょうか。
○高橋千秋君 まず地力を付けるということが大変重要なことではないかなというふうに思います。ただ、我々は、先ほど委員が冒頭のところでお話をされました中長期的な部分、このことによって自給率を十年後に五〇%、最終的には六〇%若しくはもっと上げていきたいという、そういう目標がございます。今、このことによってそれぞれの農業を続けていただくということから、中長期的には自給率を更に上げていくと、これは決してアドバルーンではございません。
○谷合正明君 農業を続けていただくということなんですが、午前中来の答弁の中で、今はまだ農業の受け手が十分にいないというお話もございました。正に農業の受け手ができるようにしていくために、具体的にどういう手段と、またその道筋というんでしょうか、実現していくのだろうかと、そういう素朴な疑問があるわけです。
今、だからこの法案ではとにかく緊急の課題に対処するんだと、その間に受け手を育成していくんだろうと思いますけれども、受け手を育成するその道筋が余りよく見えないんです。
○高橋千秋君 先ほど申しましたように、それぞれ持続して、農業を続けていっていただくということが大変重要なんですね。
農水省が取っているアンケートの中でも、集落営農の中で一番困っているのは何ですかという質問の中で、その担い手がいない、地域のリーダーになる人がいないということなんですね。これはやはり、今農業をそのまま続けていただける若い方もそのままやっていただけるために今の緊急的な措置も要るかも分かりません。しかし、この農業の戸別所得補償の中には、今農業をやっておられない方、この方も販売農家の要件を満たすということであれば、その方々にもこれの支給はしていくということになっております。
その意味で、新たな方々の参入も当然歓迎をいたしますし、それぞれの地域の方々の、今やっておられる方々が、今の状態であればもう来年ぐらいでやめようかという方が大変出てくると思うんですね。そうではなくて、やはりきっちりと経営が安定するということが目に見えてくれば農業をやっていただける、その方々に受け手になっていただく、いわゆる担い手になっていただくということだと思います。
○谷合正明君 それは、所得補償で、いわゆる水田農業の後継者が生まれるというふうに考えていらっしゃるわけですか。
○平野達男君 まず、規模を拡大をしてもいいという農家がどのように考えるだろうかということを考えてみる必要があると思います。
まず、米価の動向がどうなるか分からない。将来とももし仮に米価の下落が見込まれる、特にもう需要の減少があるんじゃないかというような話は、見込まれるんじゃないかという話は私も午前中にさせていただきましたけれども。そういう状況の中で、米価が下落するというような、例えば米一つ取ってみましても、見通しがあった場合には要するに農業収入が減ってくるわけでありますから、こういう状況の中で規模を拡大するというインセンティブは非常に小さくなると思います。要するに、リスクを抱えるという要素も強くなってくるんだろうと思います。
まず、規模拡大農家については、規模拡大してもいいという農家にとっては、将来の見通しについてある程度の展望が開ける。それは、農業をやることによって農業収入がある程度の額が確保されるという見通しがあるということが一つの大きな要素だと思います。今回の戸別農業者所得補償法案につきましては、そういった米価の変動リスクについて所得補償という形で一定の額を交付するということで、まずその目的にかなうものだというふうに思っています。
一方、今もう一つ大事なのは、これは何回も私この委員会で申し上げましたけれども、規模の小さい農家というのは、特に高齢者農家というのは自分の労賃を考えなくてもいい、物財費赤字になっても何とかとにかく農地を守らなければならないということで守っている農家もいる。だから、その人たちが今この段階で米価が仮に落ちてきて、いや、もうできなくなってしまったといって離脱されるのが一番怖いんです、受け手がいませんから。そういう中で、農地の流動化とか組織化というのは一遍に進みません。そういう中で、そういう受け手にとっても出し手にとってもまず一定の所得補償をしながら地域の状況に応じた、地域の中の話合いの枠組みを設定して、集落営農でありますとか農地の流動化を進めるというのも大事ではないかというふうに思っています。
もっとも、ただ、それはそういうところもありますし、私どもは同時に、農業についてはできれば大きな大規模な農家、小さな農家、そういうところが混在して存在するのが望ましいと思っています。しかし、小さな農家が存在するためにはどうしても兼業機会がなくちゃ駄目だ。ところが、今の地方の中山間地域なんかでは兼業機会がどんどんどんどん失われています。どうしても中規模の農家、小規模な農家ではやりにくいという状況になっているのも事実でありますし、プラス、先ほど言いましたような高齢化の進行に基づいて、多分これから十年間、私は地域によっては相当の構造変革を迫られる地域が多いと思います。
そういう中でどうやってその農地を守っていくか、地域の農業を守っていくか。そのためには農業者にとってまず一定程度の所得が確保されるということの見通しが立つことがまず必要な条件、幾つかの条件があると思いますけれども、必要な条件の一つだというふうに思っております。
○谷合正明君 例えば高齢農家、今は平均年齢も大分高いわけでございますけれども、そして小規模農地でやっているという農家がいると。そういった方の離脱を防ぎたいんだという、所得補償によってですね、ことだとは思うんですが、一方でそれが逆にかえって、十アール以上という対象面積を言われましたけれども、零細な農業構造をかえって固定化させてしまうのではないかという懸念もあるわけでございますけれども、その辺りについてどういうふうに見解を持っておりますか。
○平野達男君 いわゆるそういう所得補償をしますと農業構造が固定されるというのは、まあこれ一般的な理論としてはそうなるんだろうと思います。
しかし実際には、今、米に限って言いますと、米の米価水準というのは、本来ならば離脱する農家が頑張っているという、いわゆる経済学とか理屈の世界を超えた世界が今起こっているということがまず一点あります。それからもう一つは、農業構造の固定をするというお話がございましたけれども、今農山村は、特に農山村は、今までに経験したことのない、固定どころじゃない、どんどんどんどん変わっていくというそういう状況もあるのも事実です。それは何かといいますと、残念ながら農業人口減少社会に入ってきて、農業従事者が減ってくるという事実です。
だから、そういう事実の中で、そういう現状の中でどのように地域農業を守っていくか、農地を守っていくか、農業を守っていくか、農村振興を図っていくか。そういうことを考えたときに、私どもは、まずは今、現に農地を守っている人、農業をやっている人、それは特に高齢者で赤字覚悟でやっている人、農業に対する意欲、耕作しなくちゃならない意欲、こういうものを大事にしなくちゃならないということですべての販売農業者というふうに位置付けているわけでありまして、理屈は固定ということになると思いますけれども現実は全然違うということでありまして、その現実論を踏まえた政策であるということを御理解いただきたいと思います。
○谷合正明君 こういう、先ほど来という、一時的な、あるいは歯止め策であるとか緊急措置的であるとか、そういった政策なわけでございます。
そういった中で、将来展望の中で受け手を今後それによって出てくるだろうと言われるんですけれども、かえって、逆に聞きますと、こういった法案、この法案を、これは時限立法ではないんですけれども、これずっと続けていかれるのかという素朴な疑問はあるんですけれども、その点、どうでしょう。
○平野達男君 まずはこの法律に基づいて、今迎えつつあるような様々な困難な状況、そして農村は先ほど言いましたけれども大きく変わっていく、それに的確にこたえながら、地域農業、農山村の状況、農山村の振興に資するような運営をやるべきだというふうに思っております。それ以上のことについては、まずはこの法律の運用、これをしっかりやることだということで考えているということでございます。
○谷合正明君 次に、食料自給率との関係について質問をいたしたいと思います。これも目的の中にも食料自給率が向上ということで明記されております。
まず、この戸別所得補償によって食料自給率が必ず上がるという、その根拠というのはどういったものなんでしょうか。
○舟山康江君 まず、自給率を上げるためには、生産面と消費面も当然ですけれども、両者が協力しなければ達成できませんけれども、本法案では生産者側の供給体制の底上げということを中心に考えております。
まず、自給率の向上を目指した毎年度の全体の目標を国が、先ほど平野委員からも御説明ありましたけれども、ガイドライン的に設定することを考えております。その目標に従って、国、都道府県、市町村が連携して毎年それぞれ目標を設定するんですけれども、そのとき、自給率の低い作物の増産を図るような政策誘導、つまり、例えば今で言えば麦とか大豆とか自給率が非常に低いですよね、輸入に大部分を頼っているというようなものがありますけれども、そういったものは加算措置などでそういう生産振興を図っていくということで生産者側の供給体制を底上げして、自給率向上に結び付けていきたいというふうに考えております。
今なぜ作っていないかというと、やっぱりこれはもうからない、生産費も賄えない、生活できない、だから作らない。ということで、やはりこの政策のポイントは、国が直接そこに支援をして生産を刺激していくということに、作ってもらうようにするということにあると思います。
○谷合正明君 先ほどガイドラインというような話も出ましたけれども、自給率目標から逆算して、それぞれの品目ごとに、まず確認ですけれども、自給率目標を設定して、そして生産量も決めていくということになるんでしょうか。
○舟山康江君 そのような逆算して個別に設定するということは想定しておりません。
○谷合正明君 今のところ、品目ごとに自給率、全体の自給率についてはたしか十年後に五〇%ということですね、将来六〇%という数字が出ているんですけれども、今、対象品目というのは米と麦と大豆出ていますけれども、それぞれについて自給率の目標というのはあるんでしょうか。
○舟山康江君 やはりそれは先ほど申しましたとおり、全体として自給率の向上目標に従って国がガイドライン的に大体設定はしますけれども、それはその時々の需給バランスによって変動し得ると思うんです。ですから、ぎちっと麦がどれだけ、大豆がどれだけということで決める必要はないというふうに思います。
ですから、そういうことで、全体として自給率目標達成に資するような生産目標を提示していくということになります。
○谷合正明君 これまでの例えば新聞報道等、インタビュー記事なんかを見てみますと、例えばの形で、麦は八十六万トンから五百二十九万トンに増産すれば一〇%は自給率上がるだとか、大豆も例えば十六万トンから八十八万トンで二%上がるんだとか、菜種も百七十万トンぐらい生産すればプラス五%上がるんだとか、いろいろ言われているんですね。
ただ、そう見ると、確かにそう上がるのかなと思うんですけれども、ただ、この生産量を見ますと、果たしてそういう生産量に見合う、農地の面積から考えると果たして整合性のある数字なんだろうかという疑問があるんですが、この点についてはどうお考えなんでしょうか。
○平野達男君 今の数字につきましては、例えば過去実績に基づいて単収はどうだった、過去の例えば麦については最大の作付面積が何万ヘクタールあってそのときの収量はどうであった、そういった実績を踏まえまして、そういう数字を踏まえながら、過去に実際それだけの生産量があったわけですから、その生産量を今実際に上げたとすれば自給率がどれだけに上がるかというようなことの試算をした数字だというふうに理解しています。
今の委員の御指摘のところは、各作物について最終的に、例えば五〇%の自給率を達成するんであれば、麦、大豆、菜種とか生産数量の目標を設定して、これは何%、何%に貢献するような数字が今示せるのかどうかという、こういう御趣旨だと思いますけれども、今は、繰り返しますけれども、そういうことは今考えておりません。
あくまでも、まず、今のこれからの麦、大豆、そういったものの生産にどれだけの単価を設定すればどれだけ伸びるかということに対しての確たる要素も持ち合わせておりませんから、そういったことは、毎年度毎年度の単価の設定しながら、農家とのやり取りをしながら生産高を上げていって五〇%に目標に近づけていくような努力をするというのが正しいあるべき姿ではないかというふうに思っております。
○谷合正明君 これ、昨年ですかね、二年前ですかね、基本法骨子出された食料の国内生産及び安全性の確保等のための農政等の改革に関する基本法骨子、この中には食料自給率の目標として明確に十年後に五〇%、将来においては六〇%というふうに明記されておったと思うんですけれども、今回の法案については特段数字は入れなかったと思うんですが、この点についてはどういう趣旨なんでしょうか。
○平野達男君 前回は基本法ということで、農政の全般的な、あのときはたしか、今の基本法ですね、三月に出された基本法の話ですね、今年の、あっ、分かりました。
○谷合正明君 民主党の。
○平野達男君 失礼しました。
いずれ今回の法律はあくまでも戸別所得補償法案という、農産物を生産した農家に一定の所得補償をするという法案でありまして、この中で自給率を五〇%というのを入れますと、法案上はこの措置だけで五〇%を達成するということになりかねません。今回の措置は五〇%を目指しながらやりますけれども、この措置だけでやるんではなくて、自給率上げるためには、先ほど、これは午前中から議論るるございますけれども、米の消費を例えばずうっと伸ばせばそれで自給率が上がっていきます。そういった様々な生産がございますから、今回の法律の中には入れるのはふさわしくないということで今回の法律には入れていない、しかし、考え方は全然変わっていないということであります。
○谷合正明君 それで、麦、大豆について、ここは自給率が低いので生産振興して生産量を拡大しようという話だったと思うんですけれども、その生産費との差額の話についてはプラス、加算をしていくんだという話でした。
まず確認したいのは、麦、大豆については、いわゆる標準的な生産費と標準的な販売価格の差額で補てんをしていくのか、あるいは米並み所得を背景にして補てんしていくのか、あるいは国際市場価格との差額を想定しながらやっていくのか、そういういろいろ論点あると思うんですけれども、ここはどういう考えに基づいているんでしょうか。
○平野達男君 まず、価格というのはあくまでも市場価格ですから、国際の価格じゃないということですね。
麦、大豆につきましては、畑で作る場合と転作で作る場合というのはやっぱり考え方を分ける必要があると思います。かつての麦、大豆、麦作交付金、大豆交付金の考え方は、今の品目横断対策に受け継がれておるわけでありますけれども、あれは生産費と市場価格との差を補てんするということで位置付けられておったと思います。今回も、基本的にはその考え方を畑で作る場合には踏襲するんだろうと思っています。
先ほど、加算をするということにお話がございましたけれども、私が申し上げたのは、生産をより振興するためにはその差に更に加算することもあり得るだろうなという可能性を言っただけで、加算するということは今の段階でははっきり申し上げておりません。
それから、もう一つの問題ですけれども、水田の転作作物として麦、大豆をやるというのは、これはもう転作奨励金という長い歴史がありまして、今はそれは産地づくり交付金ということで位置付けられたわけでありますけれども、米を作ったときの差額を補てんするという交付金と位置付けられておりまして、私どももこういう考え方の交付金は必要だというふうに思っておりまして、ですから、この法律の中で米に代わる作物の要素を加味するということはこのことを指しています。
つまり、生産費と市場価格との価格の差を基本とした補てんに加えて、転作の場合は更に米の所得との関係で一定の加算をする。ただし、それを米並みの所得でやる必要があるかどうか、これは今の段階ではっきりそういうことを考えているというわけではありません。
○谷合正明君 そう考えても、転作率が四割になっている中で、よっぽど麦、大豆より米の収益差が、もし米に対して補てんしていくとすれば有利になるではないかと。だから、麦、大豆の生産拡大に結び付くためには、先ほど加算措置があり得るというふうに言われましたけれども、ここがはっきり分からない限り、先ほど言ったように、この麦、大豆に生産振興というのは果たして本当にうまくいくのかという疑問があります。
○平野達男君 ですから、この法律が仮に制定されますと、この政令若しくは農水省令にゆだねているような単価については、場合によっては専門家の意見を聴きながら設定します。そしてそれを公表するわけです。その公表の単価で、例えば畑作で畑作物として麦、大豆を作る場合には、これを作った場合にはこれだけの交付金が入るというような姿が見えます。それから、転作作物としてこれを導入すればこれだけの交付金が受けられるという単価が設定されます。その単価を見ながら農業者は考えるわけです。その単価がもちろんうんと高ければ、麦、大豆の生産はうんと伸びるかもしれません。
かつて、平成十一年から平成十三年まででしたか、生産、何だっけ、名前忘れましたけれども、反当たり七万ぐらいの相当高い加算をやったときがございましたけれども、あのときはたしか麦、大豆の生産量が一気に増えました。余り増えちゃってお金が足りなくなっちゃってやめてしまった。そういった経過もございまして、この単価をどのように設定するかというのは、繰り返しになりますけれども、大変難しい判断があると思っておりまして、まあそこの判断については場合によっては専門家の意見を聴くというところは、先ほども何回も申し上げたとおりであります。
今の御質問に対する答えは、いずれそういう単価を見ながら生産者が、じゃこの生産に参加するかどうかということを決めるということであります。
○谷合正明君 それは、この法律が成立して、いろんな積算をしたり財源を見たりとか、そういった後で単価というのが表示されているという理解でよろしいですか。
○平野達男君 そうです。
○谷合正明君 もう一つは自給率向上のための話で、基本的にこの法案は、供給面の立場に立って作ったものであるという説明だったんですけれども、かといって、供給だけで決まる話じゃないので、需要の側面も両面を加味しながら政策を踏まえていかないと到底達成できない話でございます。
また、特に国内生産が需要の変化に対応できてこなかったという、いわゆる国民の食生活の変化にですね、対応できなかったという、とらえ方としてはそういうこともあるわけであります。
米余りの問題というのは食生活のスタイルの変化でもあるということも、これは事実としてあると思います、私は。実際、一人当たり食べる量が半分に減ってきているわけでございます。
そういう観点からすると、特に米についてはただ生産を拡大しても需要が伴わないということなんですね。そうすると、やはりこの自給率向上のためには、国内生産が需要の変化に対応できなかった点であるとか、あるいは国民の食料消費の変化についてどう対応していくのかという民主党さんのビジョンを是非聞かせていただきたいと思います。
○平野達男君 まず、どういう状況にまず需要がこれから変化していくということについては、いろんな予想がございますけれども、仮に米の需要が減っていくということであれば、その需要に見合った供給計画を作って、そしてその計画にのっとった生産をしてもらうという需給調整を基本にやっていくということだろうと思います。
あと、他の作物については、もう委員御承知のように、菜種にしたって雑穀にしたって、麦、大豆にしても今非常に自給率が低い状況にあります。これは、国内生産が需要の変化に対応できなかったというのは、これは今までの農政の中では全くそのとおりなんだろうと思います。
こういった経過を踏まえまして、とにかく今、これからここまで落ちた自給率を何とか自給率を上げていくために、その自給率の低い作物について生産振興を図っていきたいというのが今回のこの法案の趣旨であります。
○谷合正明君 後段の方ですね、いわゆる食生活のスタイルや国民の食料消費の変化について、それは米を食えとか、それは義務化できる話じゃないんですけれども、ただ、その点については、米の消費拡大というのは非常に大事な話であると思っておるんですが、この辺どのようにされていこうとしているのか、お聞かせください。
○高橋千秋君 午前中にも澤委員の方からこの会館でおにぎりが買えないという話がございましたが、やはり日本型食生活というのを随分前から振興していこうということで随分活動もしてまいりました。これはやはり継続をしていくべきだろうと思いますし、今、日本食というのは非常に見直されている中で、やはり今はチャンスではないかなというふうに思います。
ただ、それだけで、さっき委員が言われたように米食えと言ってもそう簡単に増えるものではありませんから、それは並行してやっていくものだろうと思います。そういう食生活の変化に対応した需給調整ということと、それからほかの作物を増やしていくということ、それとともに日本型食生活等のそういう需要を増やしていくという努力というのはやはり継続して並行しながら、そのほかにもまだ取れる方法があるかも分かりません、そういう努力をしていくということは大変重要なことだろうと思います。
○谷合正明君 分かりました。
これはこの法案についての話じゃないんですけれども、民主党さんが食育基本法について当時反対されたのというのが私はちょっと残念だったんですけれども、食育基本法について反対されたと思うんですよ。そうすると、この今の日本型食生活の見直しという点と、何か、民主党さんがどういうふうに考えて、矛盾があるんじゃないかなと思うわけですけれども。この辺はちょっと通告していなかったので、もし、答えられる範囲で答えていただければと思います。
○平野達男君 いずれ地産地消ということを私どもはずっと言ってきております。衆議院議員の篠原孝さんの発明に係る言葉でありますけれども、できるだけ地場で生産したものを食べようじゃないかと。ですから、その流れでいけば、国でできるもの、この国で生産できるものをできるだけ食べていこうということについては、終始一貫した民主党の方針であります。
そういう中で、自給率がここまで下がってきたということもこれありで、まずは地場のものを、例えば米についてはできるだけ消費を拡大する。麦についてもできれば地場産の麦を消費してもらう。大豆については、遺伝子組換え大豆が最近たくさん入っているというふうに言われておりまして、食の安全という観点からもいろいろな問題点が指摘されています。そういった問題点の指摘にこたえるためにもできるだけ地場産の大豆を消費するとか、生産をして消費してもらうとか、そういうことについては積極的にやっていくべきだというふうに思っています。
○谷合正明君 分かりました。結構でございます。
次に、財源について質問を移らせていただきます。
これも先ほど自民党さんの質疑の中で分かった話で、私は最初、一兆円の積算根拠というのはどういうものでしょうかという質問通告をしていたわけでありますが、まあ積算というものじゃなくて、一兆円というのはそれを確保する宣言だというふうに、ある意味そういうふうに宣言されましたので、そうすると私もこの質問はなかなかできないんですけれども。
ただ、やはりいろいろな報道によると、例えば民主党さんは米二千億とか麦約三千億、大豆六百億とか、あるいはその加算部分に六百億とか、いろいろな数字が出てくるんです。
○平野達男君 試算。
○谷合正明君 試算。試算ですけれども、ただ、ちょっと、やはりその一兆円の積算根拠というのは試算であるとは思うんです。その辺についてもう少し具体的におっしゃっていただければと思います。
○平野達男君 そういった表をいろんな方々の要請に基づいて作って出したという経過はあることは承知しております。
ここで大事なことは、そういった表を作るときに、こういうものを積み上げていって一兆円ですという表では作っておりません。まず、ある程度一兆円を前提にしながら、米、麦、大豆ということで、本当にこれでどこまで自給率が達成できるんだろうかという、あくまでも一定の仮定に基づいている試算をしています。ですから、そういった試算をやるにしても、こういうふうに積み上げて一兆円ということではなくて、ある程度一兆円を目標にしながら、ブレークダウンをしながらいろいろの計算をしているというのがその試算の実態です。
そして、ですから、今回の場合、積算根拠はあるのかということに関していえば、繰り返し申し上げているとおりでありますけれども、今の段階できちっとした単価水準は決まっていない、作物についてもぎっちりとまだ、政令に委任されておりますけれども、きちんとした決めが残念ながらできていないと。そういう中で、積み上げていって一兆円という数字は出せないということであります。
○谷合正明君 一兆円という数字が、今その数字であれば必要最低限のものは十分賄えるという判断の数字なのか。あるいは、一兆円というのは場合によってはこれはもう上回ることもあり得ると。どちらの数字なんですか、これは。
○平野達男君 一兆円を一つの枠としまして、私どもは米生産をきちんとやっていく、それで一方で自給率五〇%をやっていきたいというふうに考えております。
この一兆円で、じゃ、しからば本当に五〇%達成できるのか。これは今の段階では、かくかくしかじかで、こうこうこうで五〇%を達成できるという明確な根拠を持ち合わせているわけではありません。しかし、一兆円というそのお金を使いながら、いろんな単価を決めていって、米には幾ら、残ったお金の中で例えば麦、大豆にこれで幾らで自給率を上げていくと、そういうことの政策を実行していくということであります。
しからば、五〇%を達成するために、結果的に一兆円じゃ足らないじゃないかということが出てくることも想定されます。そうしたら、そのときには、本当に一兆円、四〇%から五〇%に上げるにはこれだけのあと財源が必要ですということはその段階では示せるかもしれません。
大事なことは、そうやって自給率を上げるためのコストというものを予算などを示しながら、自給率を上げていくという実際の構図がこの政策の中では見えてくるということであります。
○谷合正明君 今は積算はきっちりとはしていないということなんですが、ただ試算としてはあるんだと。その試算で結構なんですけれども、その財源をどこから持ってくるのかという、まあそれも試算があるとは思うんです。
これもまたいろいろな報道でいろんな数字が出てきています。例えば、米の転作費を三千五百億円を全額つぎ込むこともできる、農業予算の四五%を占める公共事業、道路、橋、港湾などから、地方も含めて二兆円使われているので、例えばそこから六千五百億円は捻出可能であるとかいうこともあれば、これは読売新聞に書いてあったんですけれども、特殊法人、独立行政法人の見直しなどでひねり出す十五兆三千億円の財源から充てるとか。先日、一回民主党さんからヒアリングを受けたときには、例えば農林水産省の平成十七年度予算三兆五千億円において決算上四千五百億円の不用額が繰り越しているので左右のバランスを正していくと。いろいろな説明を受けるんですが、どれが財源として一番そのターゲットだというふうに考えているのかというのがよく分からないんですね。農林水産省の予算の枠内で考えているのか、その点について質問をさせていただきます。
○平野達男君 まず、今の農林省の予算はたしか二兆七千億だったというふうに理解しておりますけれども、その中から全部一兆円というのはこれはなかなか難しいということだけは、これは私も直観的に申し上げられることです。
しからば、今までいろんな話がございましたけれども、民主党は何やっているか。まずは財源を見いだす中で、無駄な経費、これを徹底的に洗い出そうじゃないかということでやっているわけです。そして、そういう努力を通じて、その中では発注システムを変えるとか、そういうことをいろいろ想定しておるようです。それで、十五・三兆円の財源、これには税制改正も一部入っていたと思いますが、こういった財源を生み出すということについてはマニフェストで示したとおりでありまして、今この方向に向かって具体的にどうするかというのは、この法律の枠以上に、党を挙げてまず今いろいろ検討を進めておるところだということです。
そして、しからば一兆円をどうやって捻出するか。これはいろんな今の段階でこれとこれとこれだというふうに、党として確たるものでこういうふうに決めたということについてはないというのが事実です。いろいろな議論の中で、この財源があるじゃないか、ここの財源があるじゃないかということを個々の議員さんがお話しされたことが、多分それがそのままマスコミさんに載っているという構図だと思います。
○谷合正明君 じゃ、私が先ほど申し上げた数字というのは、確たるこれと決まった話ではないと、そこからひねり出すと決めた話、数字ではないということですね。
それで、この法案審議に入る前に一回説明を受けたときに、例えば四千五百億円の農林水産省の予算上の、決算上繰越金があるんじゃないかと。私もどういうことかなと調べてみると、四千五百億円確かに繰り越しているけれども、これ全部無駄なお金なのかなと。そうじゃないと。だから、ある意味その四千五百億円の中にも項目があって、ただ単に公共工事、工事が間に合わなくて決算上年度を越えたとか、あるいは不用額という意味ではそのうち七百億円ぐらい、四千五百億の七百億円ぐらいが不用額として計上されていると。ただ、その不用額についても、これを純粋に無駄なお金としてはまだ財務省としてもとらえていないという見解だったんですけれども。
だから、いろんな数字が出ている中で、何か全部、無駄、無駄、無駄、無駄という感じで言われてしまうと、何かどこからでも何か出てくるんじゃないかという錯覚を、私はそれを国民に起こさせてしまうんじゃないかなと。確かに無駄削減というのは非常に大事な話ではあると思うんですけれども、根拠のない数字が独り歩きするのはけしからぬと思っておるわけでございますが、この点についてどうでしょうか。
○平野達男君 根拠のない数字が独り歩きするというのは、これは絶対に避けるべきだと私も思っております。
先般、私どもの福山政審会長が申し述べたというのは、事実として繰越しが四千億、不用がたしか幾らでしたか、ちょっと数字を忘れましたけれども、こういうあるということを、事実を申し上げました。その中で、ここから多分無駄なものがあるのではないかということで精査をしていきたいという、そういう趣旨だったというふうに私は理解しています。
今委員も言われましたように、繰越しもどうしても予算執行上年度がまたぐものがあります。これはどうしても繰越しをしなくちゃならない、これは避けられない繰越しであります。その一方で、いろいろな地方公共団体の財政の都合とかなんかで繰り越している予算もあるやに聞いております。こういう繰越予算は無理くり予算を付けている可能性がある。そういった事業がないにもかかわらず、予算を付けたことによって繰越ししている。その繰越しがあるということが、実は予算の補助事業の制度の性格を表すものだというふうにも考えられるわけです。だから、その繰越し即全部、全部満額が無駄なものだというふうなことではなくて、そこからスタートしていろんなことが見えますねということだろうと思います。
不用についてもそのとおりです。不用はどうしても予算の制度上、予算の仕組み上出てこざるを得ない部分もあります。これは要するに、これだけの枠を設定したけれども手が挙がってこなかったと、それで翌年も待ったけれども手が挙がってこなかったということで不用が出てくる。これは、不用自体は実は無駄なお金ではありません、国庫に戻ってきますから。ただ、問題は、そういう不用なものの予算というのは一体どういう制度上で出てくるんだろうか、その事業制度をやっぱり見る必要があるじゃないかということで、その事業制度の必要性とか効率性なんかを判断する上での不用額というのはやっぱり一つの指標になるということで、私どもの政審会長の福山氏はあの場でそういうことを申し上げたんだというふうに思っています。
いずれにせよ、それが独り歩きして全部無駄だとかそういうことを言うつもりはないんでありますし、私どももその点についてはよく気を付けて発言しなければならないというふうに思っています。
○谷合正明君 是非、この国会の質疑の中で正確なやっぱり議論が必要だと思うんですね、国民の理解という意味では。だから、そういう意味では、なかなかその積算根拠であるとか単価であるとか明示できないという御答弁ですけれども、それも含めて、例えば、今の一体どういったお金、本当に無駄なお金なのかとかいうことをできる限りこの議論の中で、質疑の中で、この参議院の委員会の中でしっかりともう明らかにできるところは明らかにしていっていただきたいと、そのように要求をさせていただきます。
時間が終わりの方に近づいてきましたので、ちょっと質問事項を飛ばさせていただいて、国民の理解というところに最後行きたいと思うんですね。
端的に聞きますと、この法案、消費者にとってどういったメリットがあるんでしょうか、この法案実現することによって。
○舟山康江君 私は、正にこの国民への理解というところがすごく大きなポイントだと思っております。
この法律というのは、端的に言ってしまえば、農業、農村、農家のためだけではなくて、これは国民のためなんだということを是非理解いただきたいと思うんです。それは、一つにはやはりこの法律が食料の安定供給に寄与するということであります。正に食料の安定供給というのは、これはもう安全保障の基本だと思っております。やはり今世界的に食料需給が逼迫傾向にある中で、やはり日本の食料自給率がもう主要先進国の中でも最低水準であるということ、それから農産物の純輸入量が世界最大であるということ、そういうことを考えますと、国内の食料供給力を高めていかなければいけない。そのためには、しかりと農業、今壊れつつある、構造改革よりも先に今農業の基盤自体が壊れそうになる今現在、その基盤をもう一度つくり直して安定供給をもう一度図っていくということが正に安心、安全につながるというふうに思うんです。
それともう一つ、これは午前中にも申し上げましたけれども、やはり農業をしっかりと守っていくという意味が、食料の安定供給だけではなくて、地域を守り、景観をつくり、水を空気をそして緑を守っていくというような非常に大きな役割を果たしていると思うんですね。このことは、正にこれは国民全体のふるさとたる地域社会をきちんと守っていくということに結び付いていくという意味では、正に農業を守る、地域社会を守るというのはもう消費者のためになるということを、是非もう私はむしろここの部分を強調して、消費者、広く一般の国民にこの法律の持つ意味を御理解いただきたいということで、是非このことはこの委員会に所属している皆様にも御理解いただいて、より広く国民へのPRに努めていきたいというふうに思っております。
○谷合正明君 消費者にとって見ますと、やはり高い米価を払う一方で、今度、所得補償するんであれば、それもまた税で納税者として負担するのかということになると思うんですね。
例えば、農家にしても、兼業農家の方が、米農家ですけれども兼業農家の方が圧倒的に多いと。労働時間にしても、これもサラリーマンのように一日八時間、二百五十日か分かりませんけれども、そうやって働いているわけでもないと。そうした中で所得補償をするのが果たして納税者の理解得られるのか。(発言する者あり)いや、だから、得られるためには、例えば今日の議論では、一兆円というのはこれは積算根拠がなくて、まだそれは獲得するための宣言であるということでは、私はまだこれ、この時点では国民の理解は到底得られないというふうに思っております。この点について最後伺って、終わりにしたいと思います。