○谷合正明君 公明党の谷合正明です。
本日は、総理入りの教育関連三法の質疑に質問させていただく機会をいただきまして、大変に感謝を申し上げます。
私の方から、まずこの法案について、この法案がまず大きく二つの流れを受けての改正であると。それは、まず一つ、昨年の教育基本法の改正を受けての成立を図るものであるということ、もう一つは、いじめ、未履修あるいは学力低下問題、そういった学校現場で起きている実際の諸課題、これを少しでも前進させるんだと、そういう二つの大きな流れをくんでの法改正であるわけでございます。
そこで、今回の法改正が果たして教育基本法の、昨年もう十二分に議論いたしました教育基本法の理念をしっかりと踏まえたものなのか、そして、実際に教育現場ではいじめがなくなるのか、学校でぎりぎりの踏ん張りを見せていただいている教職員の方が本当に助かったと言えるものであるのか、そういったことが大事なんだろうと思っております。
私たち公明党は、未来に責任を持つ政治ということを掲げております。なかんずく、子供たちの未来に責任を持つ、未来を確たるものにするということを訴えております。日本の未来を考え、教育改革を大きく前進させることが、まず本当に必要であろうと思っております。
そこで、まず、冒頭私が申し上げたとおり、本法案が教育基本法で議論してきた、あるいは与党でもう七十時間近く議論してまいりましたこういう議論、結論を十分に踏まえてのものであるのか、逸脱するようなことはないのかという基本的な点をお伺いしたいと思います。
特に、愛国心について様々な議論をした、それを踏まえて文化、伝統を尊重し、国と郷土を愛する態度を養うという文言になったわけでございます。これが、このたびの学校教育法の改正の中では義務教育の目標に規定されることになりました。私の方から、こうした議論を踏まえて、教育関連三法、とりわけ学校教育法は、そうした多年にわたる基本法改正の議論や骨格をしっかりと踏襲したものであるのかについて、まず総理にお伺いいたします。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 教育基本法の改正については、与党内でも随分議論がございました。自民党と公明党の中において、特に愛国心をめぐる議論がございました。
我が国と郷土を愛する態度について様々な議論があったわけでございますが、そうした議論を踏まえて改正教育基本法はできたわけでございまして、国会の場におきましても、言わば我が国と郷土を愛する態度ということは、例えば統治機構を愛すとか、そういうことを全く意味していない、あるいはまた、子供たちの内心に入っていってそれを評価するものでもないということは、もう既にはっきりと申し上げてきているとおりでございます。
そこで、義務教育の目標として、改正教育基本法を踏まえて、義務教育の目標として、我が国と郷土の現状と歴史について、正しい理解に導き、伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する態度を養うことを規定をいたしているわけでございます。この規定は改正教育基本法を受けたものでございますが、国会での御審議で明確にされました改正教育基本法の精神をしっかりと踏襲をしたものであるということを申し上げておきたいと思います。
○谷合正明君 今総理からお答えいただきましたけれども、同じ点について伊吹文部科学大臣、お答えいただければと思います。
○国務大臣(伊吹文明君) 総理の御答弁に付け加えることはございません。その趣旨に沿って学習指導要領等の作成には十分意を尽くしたいと思います。
○谷合正明君 そこで、私、次に質問させていただきたいのは、教職員の皆様へのサポート体制ということでございます。
教育は教師で決まると。特に子供たちというのは教師から触発を受け、学ぶ喜びを知るものでございます。しかし、言われているとおり、現在の学校の現場での学校の先生の皆様、本当に忙しい。仕事量も増えて負担も増え過ぎて、すっかり疲弊しているという声もお伺いいたします。実際に私と同じ世代で学校の教師として仕事をしている者から聞いても、やはり本当に事務作業も多いんだと。しかも、公立学校へ行きますと、パソコンすら一人一台ないような状態だと。テストやそういった事務作業をするものに関しては、個人情報もあるので学校の共有のパソコンを使わなきゃいけない、それをみんなが並んで順番待ちで使っているような状態だと。むしろ、そういったもう環境をしっかり、働ける環境を整えてほしいということを訴えておりました。
さらに、今、付け加えますと、理不尽な親からのクレームということが今話題になっております。例えば、うちの子供には自宅で掃除させていないので学校でもさせないでほしいとか、そういったことを要求してくるとか、トラブル相手に対して転校させろとか、そういったことも教師を一つ一つ悩ませる大きな要因になっているわけでございます。かつてはこういったことに関しては、経験豊かなベテランな先生方が新任の教師さんにうまく助言しているという関係があったそうでございますけれども、今はもうそれも期待なかなかできないと。
今回の法案で、学校の先生たちが子供と向き合う時間を確保できるのか、子供との距離を縮めることができるのか、そういう率直な思いを持っております。この点について、池坊文部副大臣にお伺いいたします。
○副大臣(池坊保子君) 確かに、子供と先生が向かい合う時間が長ければ長いほど、子供にとっても先生にとっても幸せなことだと思います。
おっしゃるように、今教師というのは一日に残業時間が平均して二時間です。一か月で三十四時間。私は本当はもっと長いのではないかというふうに思っております。それとともに雑務が多過ぎます。
これはやはりどんなふうにしたらいいか。中央教育審議会の答申の中にも出ておりますけれども、国、都道府県、市町村からの調査、これはまとめて同じような調査を依頼されることが多いので、これを一括してまとめる。あるいは、業務日誌などの学校関連の書類の作成というのにも時間が掛かっております。これももうちょっと整理合理化できるのではないか。あるいは、学校のICT環境の整備による会議などの削減です。
これは、どちらにいたしましてもこれから文部科学省が実態調査をいたしまして、どのような形で整理合理化したらいいかということをきちんと検証し、調査し、そしていい案を更に練っていきたいと思っておりますが、今おっしゃいましたように、今は四三%しか教師にコンピューターが配置されておりませんが、これは平成二十二年度のITC新改革会議によりまして一人に一台ずつ設置しようということになっております。必ずそのようにいたします。
また、先ほどおっしゃいましたようなヘリコプターペアレントと言われますような、子供に何かあったら急遽飛んでいって苦情を言う。これは学校の先生方を萎縮したり、それからこの保護者に対する、何というんでしょうか重圧というのが強いんですね。これに対しましては、外部の方のお力をおかりする、例えば弁護士の方とかスクールカウンセラーのお力をおかりして解決に当たっていただけるよう、様々な形での教師の方々の子供と向き合える時間をつくっていくよう努力しております。
○谷合正明君 大変にありがとうございます。
今の答弁の中にも、既に学校内だけでなくて、いろいろな外部の方の取組も言及していただきました。私も、その点が大事なのかなと。学校内だけでなくて、地域で全体で教師を助けていくというかサポートしていくということが大事であろうと。
私たち公明党は、この地域で教員をサポートする体制、例えば地域の人材を活用する教員サポート制というものを創設を訴えております。熱心な教員が、頑張っている教員が意欲を持ち続ける、そういう環境を整備すべきだと考えておりますが、併せてその点についてお答えいただければと思います。
○副大臣(池坊保子君) 議員がおっしゃいますように、今学校の先生方にすべての負担が掛かっておりますが、教育基本法改正の中にも、家庭教育、地域、社会との連携というのをうたってございます。
東京都でも、私が参りました中学校では、土曜日に寺子屋といって、地域の方々のお力をおかりして授業をしていらっしゃいます。あるいはまた司書ボランティアだとか部活動のコーチ、このためには、学校が学校支援本部というのを設置して、どういうふうに運営したらいいか、コーディネートがしっかりできているところはこういうことがきちんとやれております。私が住んでおります京都もやっておりますし、岡山市でも、例えば校門でのあいさつ運動あるいは登下校の付添いまた教科指導の支援というふうなことをやっておりますので、いい事例を文部科学省としては情報公開しながらモデルをみんなに示して、こういうことを推進してまいりたいと思っております。
○谷合正明君 どうもありがとうございます。
次いで、教育委員会の独自性について、その点についてお伺いしたいと思います。
午前中の質疑の中にも同じ趣旨の質問が出ました。教育委員会制度については、例えばいじめ問題についてうまく対処できていなかったとか、あるいは形骸化しているだとか、そういった御批判もあるわけでありますが、しかしだからといってこの教育委員会そのものをなくせということには至らないのではないかと。教育委員会そのものを、むしろ今まで足らざるところを補う、補強するという形をしっかり取ることが大事ではないかと。本来、教育委員会が持つ独自性を発揮してもらうためにはそういったことが必要ではないかなと私は考えております。
この点について、また、そもそもこの教育委員会制度の在り方について総理の御所見を伺いたいと思います。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) この委員会におきましても、教育委員会の在り方また制度について随分御議論をいただいたんだろうと、このように思います。
教育委員会については、その役割を十分に果たしてきていない、責任を果たしてきていないという議論がありますし、私もそういうところも一部にはあったんだろうと、このように思うわけでありますが、しかし、教育委員会というのは、本来、教育に極めて情熱と熱意を持った、見識を持った様々な分野の方々が入っていただいて、そこで地域の教育について役割を担っていただいて、また教育においてその役割を果たしていただくことによって教育の水準を維持をしていくということは十分にこれは大切な役割であり、この可能性というのは私は間違いなくあると、このように思うわけでありまして、教育委員会にしっかりとその本来の役割を果たしていただくことによって、更に私は教育現場も向上していくということになっていく、そしてまた、社会総掛かりで教育の再生に取り組んでいくという上においては、教育委員会というのは様々な方々に参加をしていただく仕組みになっていますから、そういう意味においても、社会総掛かりという意味においても教育委員会という存在は私は極めて有意義であろうと、このように思います。
今回の地教行法の改正案におきましては、合議制の教育委員会が自ら管理、執行する必要がある事項を明確化するとともに、教育委員会は、活動状況の点検、評価を行い、議会に報告をするなどの措置を講じて教育委員会の責任体制の明確化や体制の充実を図ることといたしています。国民の皆様から信頼される教育行政の体制を構築すべく断固として取り組んでまいりたいと、こう考えているところでございます。
なお、今回の地教行法の改正による指示や是正の要求は、教育委員会が自浄能力を発揮をせず、十分な責任を果たせない場合に、国民の権利を守るため国が必要な関与を行うものでありまして、教育現場の問題に関してより適切な是正、改善を図ることが可能となるものと、このように考えているところでございます。
いずれにいたしましても、言わば政治的な中立性を保ち、高い見識を持った様々な分野の方々が集まるこの教育委員会という仕組み、これは私はとっても大切な仕組みであり、本来の能力、また機能を発揮をしていただければ必ず教育の質の向上につながっていくと、このように確信をいたしております。
○谷合正明君 教育の質の向上とともに、例えばいじめ問題の克服についてもこの教育委員会制度の役割というのもあると思います。そのいじめ問題について質問させていただきます。
先日、統計が出ました。自殺者が九年連続で日本全国三万人を超える中で、とりわけ学生生徒の自殺が八百八十六人と過去最悪の結果であるということが分かりました。その中でも学校問題を原因とするケースが急増しておりまして、学校現場を取り巻く問題が深刻化しております。学校問題の中には当然いじめが含まれます。
約今から十年前に、岡山県の総社東中というところで、ある生徒がいじめを苦に自殺をいたしました。それを機に、毎年その中学の生徒会の皆さんはいじめをなくしていこうという啓発運動を続けてこられました。今年、図らずも、総理に届けたメッセージに対して総理の方から直接その中学校の生徒の皆様にメッセージをいただきまして、大変心強く、また生徒たちも喜んでいたわけでございます。
ただ、いじめについては例えば昔と今では大分質が違ってきているというふうに言われております。私、この「教室の悪魔」という本を読みました。いじめの実態と解決策について書いた本なんですが、一言で言うと大変にショックを受けました。大人が見抜けないように実に巧妙にいじめというものが行われている。あるいは、いじめの事実を必死に親に隠そうとする、それが子供の心理であるとか、加害者と被害者と傍観者というかつては三つの立場があったんだけれども、今は加害者と被害者と、被害者一人に対してあとほかの加害者全員という、そういう構図になってきていると。正に今のいじめは異常事態である。筆者は教室の悪魔と、そういうふうに呼んでいるわけでございます。
だからといって解決策がないのか、そういうことではなくて、この現代のいじめについては、まず大切なのは、親、教師、大人たちが子供のいじめ、どんなに巧妙ないじめでも大人たちは絶対に見抜くんだと、絶対にいじめは悪なんだといったことを毅然とした態度を示すことが大事であるというふうにこの本にも書いてありますし、私もそういうふうに思っております。そのためにも公明党は、子供、保護者、教師などがだれもが安心して相談できる体制整備というものを訴えております。外部の専門家を加えた第三者機関による、例えばレスキュー隊という、いじめレスキュー隊というものの創設です。
これらの提言も含めまして、いじめ問題に対しどのように取り組んでいかれるのか、総理の御決意をお伺いいたします。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) ただいま谷合委員から御指摘がございました総社東中学校の生徒の皆さんからお手紙をいただきました。教育再生を進めている私たちに対して、大変苦しい思いをしている子供たちがいることを知ってもらいたいと、そしてそれを克服するためにみんなで頑張っている中学生がいることも記憶をしておいてもらいたいということも書いてありました。やはり自分たちでできること、これは当事者以外の生徒もみんな自分のこととして考えて取り組んでいこうと、そういう気持ちが伝わってきたわけでありまして、そこには、例えば総社の東中学校の人権宣言において命、心、勇気という三つのキーワードがあるということも書いてあったわけでございますが、やはりいじめをなくしていくためにも社会総掛かりで取り組んでいく必要があるわけでありますし、クラス、そして先生、地域、両親はもちろんでありますが、もちろん国も都道府県も大きな責任があるんだろうと、このように思うわけであります。
このいじめの問題につきましては、二十四時間態勢の統一の番号による相談体制を緊急に整備をいたしました。そしてまた、スクールカウンセラー等の教育相談体制の充実を図ってきたところでありますし、また、そもそも学校におきましても、いじめはだれにでもどこの学校にでも起こり得ると、要は早期の対応が必要であると、こういう気持ちで取り組んでいただいているわけでございます。
今後とも、そうした地域の取組も含めまして、社会総掛かりでいじめを根絶をしていくために全力を尽くしていきたいと、こう考えているところでございます。
○谷合正明君 大変にありがとうございます。
国民総掛かり、社会総掛かりの教育というお言葉が出ました。言うまでもなく、教育というのは、学校教育だけでなくて、地域、家庭、社会、全体がかかわっていかなければならない、これが教育基本法の改正のときにもしっかりとうたわれたわけでございます。例えば、既に始まっている「早寝早起き朝ごはん」運動、これも当然でしょうし、あるいは静岡県で取り組んでおります大人から青少年へ声掛け運動、おはようとかそういう声掛け運動、こういう具体的な実践の運動、これが、地域の青少年は地域で育てるという運動というのが本当に今必要なんだなと、観念論だけでなくて具体的な実践を伴った行動、これを国民総掛かり、社会総掛かりでやっていかなければ教育の再生はないと思いますが、この総掛かりの教育ということについて、総理の決意をまず伺いたいと思います。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 今委員がおっしゃった「早寝早起き朝ごはん」、これはもう学校だけではできないわけでありまして、正に御家庭、御両親、保護者の協力がなければできないわけでございます。これをやっていただいた地域や学校では、例えば学力については明らかな変化が出てきていると、こんな陰山先生からの報告も受けているわけでございます。
やはりこれは先生だけに任せるのではなくて、またこの二十年、三十年で大きく社会も家庭も変わってきました。言わば核家族化をして、言わば家庭、家族における教育力というか、そういうものが低下をしてきていますし、地域社会がだんだんコミュニティーとして機能しなくなった中にあって、近所のおじさんやおばさんが子供たちを時には注意したり指導したりという、そういう機能がなくなっていく中にあって、やはり学校に大きな負担が掛かっている。ここで改めてやっぱりみんなで教育、やっぱり子供を育てていこうということが大切であろうと、このように思うわけであります。
その中の一つの施策としては、放課後子どもプランというのがございますが、これをみんなで、社会で、放課後にいろんな社会経験を積んだ方々が子供たちにいろんなことを教えたり、一緒に遊んだり、あるいは一緒にいろんなことを体験したりということで参加をしていただきたいと、こう思っているわけでありますが、このように社会が一緒に参加できる仕組みをしっかりと整えていくことも重要であると思っております。
○谷合正明君 同じ点につきまして、この総掛かりの教育について、伊吹文部科学大臣の御決意、御所見を賜りたいと思います。
○国務大臣(伊吹文明君) 時代の変化とともに、大変豊かな国になりましたので、社会状況が大きく変わっております。核家族が進んでおりますし、共働きも当たり前の状態になっております。そういうところで、従来、地域社会あるいは家庭が果たしていたしつけの力あるいは教育力というものが極端に落ちてきておって、学校現場にその重荷がほとんど掛かっているというのが現状だと思います。先生がおつらいというのは正にその社会的な構造変化の所産だと思いますので、今総理が申しましたように、地域社会や家庭を復活させるということも大切なんですが、同時にその役割をやはり社会総掛かりでカバーしていくと、これが学校協議会とか公明党さんがおっしゃっている放課後子どもプランとか、こういうところで結実をしていると思います。
○谷合正明君 ありがとうございます。
いずれにしましても、本法案が現場の皆様から本当に少しでも生徒と接する時間が増えた、距離を縮めることができた、本当に現場でぎりぎりで踏ん張っていらっしゃって頑張っていらっしゃる方について、本当に助かったと言っていただけるように、この中身、教育再生について私も取り組んでいきたいと思いますし、どうぞよろしくお願いいたします。このことを申し上げまして、私からの質問とさせていただきます。
ありがとうございました。