○谷合正明君 公明党の谷合です。
午前中から質疑を聞かせていただきまして、いかに地域公共交通の置かれている状況というものが厳しいかということが分かってまいりました。
特に、三大都市圏以外、ここ三十年間でマイカーと公共交通機関の利用割合が著しく変化して、マイカーは八四%でしょうか、公共交通機関が一六%ということになりまして、確かにそういう実感も地域に住んでおりますとあります。
しかし、一方で、その一六%が、例えば学生であるとか高齢者といった方が入るというわけなんですが、一人の人生にとらえ直してみると、人生八十年と考えたときに、マイカーに乗れない期間というのがあるわけでありまして、免許は十八歳から取れますけれども、ざっくり言って、生まれてから二十歳あるいは七十歳以降、合計しますと八十年のうち三十年近くは、これから例えばマイカーではなくて公共交通機関にお世話になるとか、あるいは公共交通機関を大切にしなきゃいけない期間があると私は思いました。
ですので、この公共交通の活性化、再生を考えたときに、特にそのサービスの需要者の観点が大切なわけでありますが、地域住民といったときに、その対象というのは、その利用者のみならず一人一人が持ち合わせなきゃいけない課題なんだなということを私は午前中の質疑を聞いて思ってきたわけであります。そういう意味で、本法案は時宜を得た法案であると考えております。
ところで、ちょっと気になる点が幾つかございまして、この地域公共交通総合連携計画の説明を聞かせていただいた中で、例えばLRTであるとかBRTであるとか、あるいは、私も北海道で視察させていただきましたけれども、DMVといった次世代の新しいタイプの新事業の制度化といったものが焦点となっているような印象を受けたわけであります。
しかしながら、地域、全国見渡してみますと、こういった事業を計画しているところというのはなかなかそうはございませんでして、私としては、この法案というものは、例えばバスであるとかタクシーであるとか、そういったこれまでの公共交通のことを含めたものでなければならないんだろうと。特に今、在来のバス、タクシー、鉄道の公共交通の在り方については、現在、交通政策審議会の陸上交通分科会の関係部会で検討されている状況でもあります。
こうした検討結果を踏まえてこの法案を練る必要はなかったのかどうか、そういったことも思うわけでありますが、この時点でこの地域公共交通活性化再生法案を提出した理由というものは何か、また、この法案でどういったことを、どういった成果を期待するのか、まず冬柴国土交通大臣の御答弁をお願いいたします。
○国務大臣(冬柴鐵三君) 地域の公共交通をめぐる環境は、非常に厳しい状況にあります。急速な高齢化の進展や地球温暖化などの環境問題等への対応の視点から、地域の公共交通機関の活性化、再生はもう待ったなしの喫緊の課題と言えると思います。
こうした状況を踏まえまして、昨年の十二月に、交通政策審議会交通体系分科会地域公共交通部会におきまして、地域公共交通の活性化、再生について、地方公共団体を中心に地域の関係者が当該地域にとって最もふさわしい公共交通は何か、その在り方について合意形成を図りまして、その合意に基づいて各自治体が責任を持って推進する仕組みづくり、このような合意形成を行った頑張る地域に対して国が総合的に支援を行うこと、あるいは地域公共交通の活性化、再生に資する新たな輸送サービスについて、その円滑な導入が行われるような環境整備を図ること等について、平成十九年度において具体化を図るべしというような中間取りまとめが行われたところでございます。
また、平成十八年の道路運送法等の一部を改正する法律案に対する衆議院と参議院の附帯決議におきましても、地域交通の充実策の検討などについて決議をされているところでございます。
このように、地域公共交通の活性化、再生は待ったなしで早急に対応すべき課題であるために、今般、地域公共交通の活性化、再生のための施策について法案化し、今国会に提出をさせていただいたというのが事実の流れでございます。
なお、今後につきましては、現在行われている交通政策審議会の議論も踏まえまして、地域公共交通の活性化、再生のための施策の充実を図ってまいる所存でもございます。この法律が成立し、活用されることによりまして、地域にとって最適な公共交通が確保され、地域の公共交通の活性化、再生が促進されるものと考えているところでございます。
そのような立場から、今回この法案を御指摘のような議論を待たずに今提案をしているところでございます。
○谷合正明君 待ったなしの喫緊の課題ということで、この時点での法案提出だということで理解をいたしました。
先ほど申し上げたように、地域公共交通というのは近代的な交通機関だけで構成されているものではなくて、既存の伝統的な地域公共交通が各地域において今なお圧倒的な存在であるわけであります。市町村が作成することとされております地域公共交通総合連携計画がその名称にあるように、地域公共交通についての総合、そして連携計画であるならば、既存の地域公共交通との調整は避けて通れない課題、事項であります。
地域公共交通総合連携計画におきます既存の地域公共交通の位置付けというのはどうなるのか、また特定事業がなければ地域公共交通総合連携計画は成立し得ないのか、そういった点についてお伺いをいたします。
○政府参考人(宿利正史君) 谷合委員御指摘のとおり、私どもは、地域公共交通の課題は、一つは多種多様であるということと、もう一つは、やはり従来の一般的な輸送手段でありますバスであるとか、タクシーもありますし、それから地方の鉄道などがいろいろ切実な課題にさらされているということだと思っております。
委員御指摘のように、この法律の中でLRTでありますとかBRTでありますとか、それからDMVとか、新しいタイプの輸送形態が目に付きますけれども、これはLRTなどは特定事業ということで、この法律の中で特に法律の特例を定める必要がありましたから言わば目に付きやすい形で出てきております。それから、DMVも新地域旅客運送事業ということで、特別の事業開始の手続をこの法律で定めますので法律の中で非常に表に出てきておるということでございます。
したがいまして、通常のバスのいろいろなサービスの改善を図るとか、地方鉄道の改善を図るとか、あるいはそれの維持のために地域でいろんな取組をすると、先ほど来出てきておりますようなものは当然この法律の主たるターゲットでありまして、これは地域公共交通総合連携計画の中で地域の皆さんで創意工夫していただく、その最も中心的なメニューだと考えております。
したがいまして、今二番目に御質問がありました特定事業が含まれない地域公共交通総合連携計画があり得るのかということでありますが、これは当然あり得るわけでありまして、私どもは、一般的には特定事業やそういう新旅客地域運送事業というようなものが登場しない地域の方がむしろ圧倒的に多いのではないかと考えております。
○谷合正明君 分かりました。
それで、その地域公共交通総合連携計画、ちょっと長いんであれですけれども、その作成主体につきまして、今回市町村が主体となるわけでありまして、私も地域の住民の公共交通の事情をよく知る市町村が主体となるべきであると考えます。
しかしながら、一方で、そのすべての市町村がそういう総合連携計画を作成する人材であるとかキャパシティーを持っているかというと、そうでもないというのは実情なのではないかなと思うわけでありますが、そういった現実もありながら、今回この総合連携計画の作成主体を市町村とした理由は何なんでしょうか。
○政府参考人(宿利正史君) 先ほど来、地域の範囲という議論がありましたけれども、日常生活や社会生活が通常行われる範囲ということで、一般的には市町村の区域がおおむね妥当するかと思っております。
その場合に、それぞれの地域で、自らの地域で一番ふさわしい公共交通の在り方を協議会を通じて議論していただくわけでありますから、その場合の中心になるのは、地域住民の移動手段の確保についての行政上の責任を有し、また地域の実情に最も精通していると考えられる市町村が中心的な役割を担うのが最もこの制度の目的を着実に実現するためにふさわしいと考えたわけであります。ただ、その範囲が複数の市町村にまたがる場合には、複数の市町村が共同して計画を策定するということが可能なように手当てをしております。
なお、都道府県につきましては当然一定の役割を期待しているわけでありまして、この法律の中では、市町村の区域を超える広域的な見地から、必要な情報提供でありますとか技術的助言などを都道府県にお願いしたいと考えておりまして、そのような規定を手当てしているところでございます。
○谷合正明君 複数の市町村が主体となることもできるということですが、例えば鉄道再生事業についてそういったケースになるわけでしょうか。都道府県を作成主体とした方が、特に鉄道の場合は地域性から考えると妥当なのではないかなと思うわけでありますが、その辺はどうなんでしょうか。
○政府参考人(宿利正史君) 鉄道の場合も、確かにかなり長い路線から比較的短い路線までいろいろありますけれども、しかし活性化、再生というのが切実な課題になっている地域を想定してみますと、やはり地域の住民あるいは利用者が鉄道路線を本当に維持をしようと考えるのかどうか、いろんな努力をしてより良いものにしようかどうかということを決めていくわけでありますから、基本的にはやはりその市町村の単位で、今住んでいる方に考えていただくというのがいいと思っております。
ただ、御指摘のように、鉄道のケースは複数の市町村にまたがるケースがかなり多いと思われますので、複数の市町村で考えていただいて、都道府県は広域的な見地から指導、助言、情報提供といった役割を担うことになろうかと思います。
○谷合正明君 都道府県のそういう意味では役割というものを改めてしっかりと私も分かりましたけれども、この鉄道事業については連携計画がまとまるような措置を国としても都道府県を通じてやっていただきたいと思っております
次に、財政措置でございます。
いろいろ受皿等を今回決めたわけでありますが、やはり財政措置がどうであるかといったところが地域の一番の関心主体でございます。
岡山にRACDAという路面電車と都市の未来を考える市民グループがございます。これ全国展開もしているわけでありますが、二〇〇二年に県内の電車・バス経営者、先ほど和歌山市の南海電気鉄道の貴志川線の事業の話をされたと思うんですけれども、その貴志川線の経営を引き継いだところが岡山のそこの会社なんですけれども、そのRACDAがその岡山の経営者に働き掛けまして、市内の路面電車に一両、一編成低床車両を導入いたしました。
これは二〇〇二年の話なんですが、二・四億円のうち国と県が約一・一億円。市民からの寄附が大体約五百万円集まったそうなんですね。全国でも注目されたケースでございました。しかしながら、それ以来は、低床車両、LRVのニーズは非常にある一方で、その導入が二〇〇二年に一回あったきりで終わっているということでありまして、ちなみに岡山市の姉妹都市でありますサンノゼ市というところがあるんですけれども、ここは同じ二〇〇二年に、市内の路面電車全車両六十両をその年に一気に全部LRVにしたそうでございまして、そのRACDAの会の方が言われていたのは、本当にLRTとかいうのを推進したいんだけれども、なかなか財政の問題があって行き詰まっているようなお話を聞きました。そこで、LRTの整備にも制度、財源、つまり国の積極的関与が必要だとその会は考えているわけであります。
今回の法案でも、上下分離、交付税措置、地域協議会など前進しているわけでありますけれども、この岡山でもそれぞれいろいろな事業者、住民とかいろいろなアクターがありまして、自助努力をして追求しても、LRVのもう一車両を購入するその財源をどうするのかと、非常に難しいんだと、地域協議会で協議した結果、やはりそこで行き詰まるんではないかというようなことを言われていたわけであります。
そこで、本法案では、地域公共交通特定事業や新地域旅客運送事業を制度化するに当たっての前提条件あるんですけれども、今の財政支援措置をどうするかということがかぎであります。本法案提出に当たりとられた予算措置がわずか二・六六億円にすぎないといったところで、先ほど午前中からの質疑で、地域の公共交通というのは、その地域における公共財的役割は非常に大きなものがあるんだという議論を通じてきますと、この財政措置をどうしていくのかということが課題であると思います。
別に私は、岡山のLRTがどうとかいうことじゃなくて、一般論としてこの問題についてまずどう考えるというか、今回どのように具体的に検討されているのか、お聞きいたします。
○政府参考人(宿利正史君) 谷合委員御指摘のとおり、財政措置、財政支援の内容をどうするかということは極めて大きな課題だと思っております。今委員から御指摘がありました二・六六億円につきましては、これはあくまでも計画策定経費、地域公共交通連携計画の計画策定経費として十九年度予算に新たに盛り込んだ新規予算の部分であります。
したがいまして、計画が策定されました後、この計画に基づいて行われるいろいろな事業、今委員の御指摘ありましたLRTの整備というようなものが仮に計画に位置付けられたといたしますと、既に国土交通省の中にこのLRTの整備を進めるための三つのタイプの補助制度がありまして、相当額が予算化されております。これを効果的に私どもは適用、配慮をしていきたいと考えておりますので、それを十分活用していただけることが可能かと思います。
さらに、午前中の質疑でもありましたように、なお財政支援措置の拡充であるとか工夫といったことが今後の課題としてもちろんあり得るわけでありますが、そういうことについて私ども幅広くこれ勉強を続けていかなければならないし、そういったものを実現すべく努力をしなければならないと考えております。
○谷合正明君 是非よろしくお願いいたします。
それで、午前中にも出た話ですけれども、道路特定財源をこの地域公共交通の財源として使えないかと。実際今でも使われておるわけであります。その対象も徐々に広がってきて、例えば、ゆりかもめの下の部分であるとか、東京の地下鉄十三号線ですかね、あるいは京都の地下鉄東西線等には道路特定財源が使われていて、さらに、その先にどこまで拡充するのかといったところが関心のあるところであります。
道路特定財源の使途を是非この地域公共交通の整備、維持運営に充てていただきたいと考えているわけでありますが、その点について改めて道路局長の方にお伺いいたします。
○政府参考人(宮田年耕君) 午前中も答弁を申し上げました道路特定財源制度、受益と負担の関係で成り立っておる制度だというふうに理解をしておりまして、しかも、本則税率の二倍から二・五倍の暫定税率を掛けてお払いをいただいている、道路整備のために暫定税率を払っていただいているというそういう構図でございます。
したがいまして、私、午前中に納税者の理解ということを申し上げました。例えば新交通とかバスとか路面電車、そういうものを整備することによって自動車交通が転化し、現道がすいて、渋滞が解消して納税者の利便が図られると、こういうものについては私理解が得られるんだろうと。そういうことで今まで例えばバス交通の支援でありますとか路面電車、委員御指摘のように地下鉄、新交通、都市モノレール、そういうもののインフラ部分にお金を投入してきております。更に申し上げますと、交通結節点の改善事業、乗換えがやりやすくできるようなもの。それから、もうちょっと大物でありますと、連続立体交差事業、いわゆる踏切除却の最も大きなやつでございますが、単独立体もございます。そういうものの整備をしてきております。
午前中も申し上げましたが、公共交通の整備あるいは支援ということも大事でありますし、道路整備の課題、極めて重要だろうと思います。特定財源制度の趣旨にのっとりまして、今後とも納税者の理解を得て公共交通の支援ということを考えてまいりたいと思います。
○谷合正明君 是非よろしくお願いいたします。
それでは、協議会の中の話、法案の中の協議会の中の話に移らせていただきます。
この協議会につきましては、協議会参加者の協議結果の尊重義務というものが付けられておりますけれども、実際に協議結果に従わなかった場合というのはどうなるんでしょうか。あるいは、協議結果が、いろいろな事情変更等あると思うんですけれども、どうしても協議結果に従うことができなくなった場合という、そのような場合にどのように対処すればよいのか、お伺いをいたします。
○政府参考人(宿利正史君) この法案の中では、協議会における協議が調った事項について、谷合委員御指摘のとおり、協議会の構成員はその協議の結果を尊重しなければならないという努力義務を規定しております。これはやはり、この協議の実効性、計画の実効性を確保するためにこのような枠組みが効果的であると考えているわけでありますが、しかしながら、性格としては、その協議尊重義務に従わなかったときに何らかのペナルティーが用意されているというような性格のものではございません。そういう法律上の努力義務に従って努力をしていただくということが求められているわけであります。
今委員からお話がありましたように、協議で合意が調って以降、事情変更その他によりまして、だれが見ても明らかにその合意事項を守ることが困難なような事情、あるいは不可能になったような場合に、その当事者が協議結果について尊重義務を履行できないということは当然ケースによってはあり得るわけでありまして、そのときに、ここで法律が求めている尊重義務違反に当たるというようなことではないと、そういう正当な合理的な事情がある場合には違反にはならないというふうに理解しております。
○谷合正明君 分かりました。
協議会の役割というのは非常に重要なわけでございます。協議会におきましては、地域総合的にこの公共交通をとらえていくんだということであります。この地域総合的にとらえていくということがこれまで欠けていた視点であるというように私も国土交通省の方から説明を受けました。正にそうなんだなと私は思うわけであります。
しかしながら、市町村によっては、例えば先ほど話題にしましたけれども、リソース、技術力を考えると、その地域全体のすべての交通機関を含めた計画を合意の下に策定するというのは現実的には大変困難なこともあると。また、現実的な対応として、議論されるべき交通機関の特性とカバーするエリアを踏まえて検討の対象を絞り込むということもあるのではないかなと、あえてですね。その方がその地域の、総合的にとらえなきゃいけないわけでありますが、その方がよりベターになるということもあるのではないかなと思うわけであります。
そのように、検討の対象を絞って当該交通と連携する交通機関との関係性を検討したいという市町村も出てきた場合、その法案の活用段階においても現実に即した柔軟な対応を取るべきだと考えておるわけでありますが、その辺りはどのように考えていらっしゃいますでしょうか。
○政府参考人(宿利正史君) この法案の中で地域公共交通総合連携計画の対象としております事業でありますけれども、これはやはり計画が目標としておりますものを達成、実現するために必要な事業というものでありますから、ありとあらゆるものを計画の中に盛り込むことによって実現しようと考える地域もあると思いますし、谷合委員御指摘のように、喫緊の課題となっている部分について特に取り出して計画を作ると、それによって目標を達成するということもあり得るわけでありますから、単一のある特定のテーマに絞って計画を作るということを排除するものではありません。
ただ、その際に、そういうある特定のものを対象に計画を作るときに、当然関連していろいろ考えなければならない事柄が出てまいります。その交通機関との接続を併せて改善しておく必要があるとか、そういうものは、単一のテーマを取り上げたとしても、一緒に検討されて結論を出しておきませんと計画自体がうまくいかないわけでありますから、そういう意味の総合性というものを法律は求めている、期待しているということでございます。
○谷合正明君 よく分かりました。
次に、協議会の構成員につきまして、地域住民が入っているわけであります。この地域住民の中にできるだけ利用者、例えば商店街であるとか高齢者であるとかを構成員に入れることが望ましいわけでありますけれども、先ほど私、冒頭に言いましたけれども、特定の人が使うわけじゃないと、公共交通機関、もう自ら一人一人がお世話になり、地域のことを全体考えると一人一人がその対象になるんじゃないかなということすら思うわけであります。
その利用者を構成員に入れることが望ましいと考えるわけでありますが、協議会の構成員、その選定に当たってはどのようなことに配慮すべきなんでしょうか。
○政府参考人(宿利正史君) まず基本的な考え方としては、今、谷合委員御指摘のように、利用者、つまり需要側の考え方や意見が適切に反映されるということが、この計画を真に実効あるものにするポイントだと思っております。そういう意味で、利用者が協議会参加メンバーとして法律上位置付けられているわけでありますが、一人一人の利用者をすべて協議会メンバーとするということは現実には不可能あるいは困難でございますから、そういった場合には、例えば、学生が所属しております学校であるとか、あるいは多くの労働者が所属しております企業の代表の方とか、あるいは利用者の多くが参加しておりますNPOの代表の方とか、そういう需要者側のニーズや意見を客観的にかつきちっと把握できるふさわしい主体を地方公共団体が選んで入っていただくということになろうと思います。
ただし、個々の利用者の意見が反映されないのかということでありますが、これは、この法律の中で計画の作成や変更についての提案制度が設けられておりまして、これは個々の利用者として提案をすることが可能になっております。また、計画を決める場合にパブリックコメントということで利用者の意見を市町村は聴く措置を講ずることが必要になりますが、その場合に個々の利用者として意見を述べるということが可能になっておりますので、そういう形で意見を反映することを考えております。
○谷合正明君 分かりました。
それでは、時間も余りありませんので、次の質問に移らせていただきます。それは、乗り継ぎ円滑化につきましてであります。
本法案では、乗継円滑化事業が一つ大きく打ち出されております。やはり特に都市部におきましては、駅の乗り継ぎラインの円滑化であるとか初乗り料金共通化を推進してほしいという声は非常に大きいわけであります。例えばヨーロッパには全交通機関が加盟している地域協議会というものが設置されておりまして、都市別の公共交通ネットワークというのはより緊密になっておるわけであります。
そうした意味で、乗り継ぎ、乗換駅の隣接化、統合化などの推進について、具体的な施策も含めてどう対処していく考えなのか、御所見をお伺いいたします。
○政府参考人(宿利正史君) 乗り継ぎ円滑化措置の重要性は、この法律の中で特定事業の一つとして位置付けているところからも明らかであります。この中には、先ほど御答弁いたしましたが、運行計画の改善や共通乗車船券、あるいは交通結節施設の乗降場の改善や情報提供といったもろもろのものが含まれるわけでありますが、特に物理的な対応として、そういう乗降場の改善、あるいは乗り継ぎが可能な施設の整備といったものが大きな役割、重要性を担っていることは確かであります。
ただ、現実には、なかなか事業者が複数にわたるということや、多額の費用を必要とするということや、改良工事その他が容易にできないといったことで、やりたくても整備や改良が進まないというのが実情かと思っております。それを進めるためには、やはり関係者が協議をして、何とか改善するためのそういう合意をつくらなければ先に進みませんので、この法案の協議会制度などを十分に活用して合意形成を図ることが重要な取組だと思っております。
○谷合正明君 続いて、公共交通機関の障害者に対する割引制度についてでございます。
特に精神障害者の割引について私、調べてみましたら、やはりほとんどの公共交通機関で進んでいない状況でございます。精神障害者につきましては、先般、障害者自立支援法が成立いたしまして、この精神障害についても位置付けが明確になったわけであります。
特に、事業者側が精神障害者の割引をなかなかできないという理由の一つに挙げていた、障害者手帳に写真が貼付されていないと、この写真の貼付の問題も、昨年の十月から写真貼付の義務化が随時始まりまして、これを受けて東京都と東京バス協会が、今年の四月から、都民に対して精神障害者の半額制度というものを導入したわけであります。
国交省としては、この障害者の割引制度、特に精神障害者の割引制度について、どのように考えていらっしゃるのか、そしてどのように取り組んでいらっしゃるのか、その点についてお伺いいたします。
○政府参考人(宿利正史君) まず、この障害者の方々に対する公共交通機関の運賃割引の性格でありますけれども、これは各交通事業者の自主的な判断によって実施をしているというものでありまして、割引で当然減収が出てまいりますけれども、これは他の利用者がその負担をしていると、こういう構図になっております。したがいまして、事業者の自主的判断にかかわる問題ということでありますが、私ども国土交通省としては、いろいろな機会をとらえましてこういう割引の導入について理解と協力を求めてきております。
今、谷合委員からお話がありました精神障害者に対する割引の件でございますけれども、これは障害者基本法の中で精神障害が他の障害と区別なく取り扱われているとともに、去年の四月に施行されました障害者自立支援法の中でも身体、知的、精神の三障害の制度格差が解消されたということがございます。また、昨年成立、施行されましたバリアフリー新法の中でも、精神障害者を含むすべての障害者がバリアフリー新法の対象として明確に位置付けられたわけでありますから、こういったことを踏まえますと、国土交通省としては、精神障害者につきましても身体障害者や知的障害者と同様の取扱いがなされることが望ましいと、このように考えております。そういう観点で、必要な協力要請を関係のところにしているところであります。
お話のように、精神障害者保健福祉手帳制度が昨年十月に改正されたことによりまして割引を実際に交通事業者が実施しやすくなったということで、東京都内のバスの割引が大幅に拡充されたといった取組が進みつつありますし、全体の傾向といたしましても、この精神障害者に対する実質的な割引は増加傾向にあると認識しております。今後とも、協力を要請していきたいと考えております。
○谷合正明君 是非、その取組を一段と強化していただきたいと思っております。特に事業者に聞いても、その知的、身体と精神を分ける明確な理由がもうないわけでありまして、全国には精神障害者の方で手帳を持っていらっしゃるのが三十八万人、約いるというふうに私理解しておりますけれども、そういった方々の公共交通機関の問題というのもあると思いますので、今回取り上げさせていただきました。
時間がありませんので、最後に環境問題と公共交通機関の観点から、これはもう質問をせずに終わりにしますけれども、今回の主務大臣には環境大臣というのは入っていないわけでありますけれども、特に地球温暖化問題を考えたときに、公共交通サービスの活性化というのも非常に大事になってくるわけであります。例えば二酸化炭素の排出量、これ一つ取りましても、バスと自家用車の割合というのは自家用車が三に対してバスというのは一の割合でありまして、鉄道というのは自家用車の十分の一の排出量で済むわけでございます。
特に、京都議定書に基づくCO2排出量の削減目標というのも国を挙げての取組でございますので、こうした問題もしっかりとこの公共交通機関の中に位置付けていただいて取り組んでいただきたいと、特に環境省との連携もしっかりしていただきたいと御要望させていただきまして、私からの質問とさせていただきます。ありがとうございました。