○谷合正明君 公明党の谷合正明です。
本日は海洋基本法を中心に質問をさせていただきます。
改めて申し上げるまでもないわけでありますが、我が国は四方を海に囲まれておりまして、大小合わせて六千八百もの島々から成っておる国でございます。海岸線の長さにおきましても世界で六番目の長さを有している国でございまして、先ほど海の面積は世界で六番目という話もございましたが、海と陸を合わせても世界で九番目の面積を誇る世界の有数なる海洋国家でございます。
しかしながら、これまで我が国は近隣諸国と比べまして、総合的な海洋政策が出遅れていたと思っております。我が国の海洋政策が国家戦略として一元的に進めることができなかったその阻害要因、一番大きな要因は何であると認識されているのか、まずお伺いいたします。
○衆議院議員(塩谷立君) 我が国では、これまで海上の安全確保、あるいは海底資源の開発、漁業資源の管理、海洋環境の保全、あるいは外交、さらには研究開発の推進等々、広範な分野にわたる海洋政策については、大変な課題に対して縦割り行政というそういったこともあり、内閣官房においてもその調整を行ってきたわけでありますが、必ずしも十分でないということは今御発言のとおりでございまして、これに対して、国の安全確保等も含め、様々この時代の変化になって、海洋にかかわる案件がまた多く出てきた。そういう観点では、この海洋政策をより強力に推進していくことが必要であるということで、この海洋基本法を制定するに当たって、大変その点が重要な点だと思っております。
今回、海洋基本法については、多くの方々の努力で提案されて審議されるということは非常に我が国の海洋政策についても重要であって、この前進を我々としては期待しておるところでございまして、今後具体的な案件に対しても、この海洋基本法の制定によって総合的に調整して進められるものと確信を持っているところでございます。
○谷合正明君 その総合的に推進する、調整する役割として、このたび総合海洋政策本部が内閣官房の方につくられるわけでございます。
先ほど、縦割りの弊害という話もございましたが、ますますこれから海洋政策が増えてまいると、そういった中であくまでもこの政策本部というのはスタートであって、つくったからといってすぐにうまくいくか、機能するかどうかというのがまた一つの議論だとは思います。これは運用の問題かもしれませんが、この総合海洋政策本部が軌道に乗るためには一番何がポイントなのかということをお伺いいたします。
○衆議院議員(石破茂君) それはもう一言で言っちゃえば総理大臣の強力なリーダーシップ以外あり得ないということです。ですから、どこに置こうが、内閣官房に置こうが内閣府に置こうが、それはどっちでもよかったわけですが、何で内閣官房に置いたかといえば、最終的な総合調整の権能を持っているのは内閣官房であるということが決定的な理由であったと思っております。
では、内閣官房に置いたらちゃんと動くのかといえば、やはりそれは総理大臣がこの認識を持ち、今まで各省ごとの縦割りで弊害が生じておったという御認識をきちんとお持ちになって、強烈なリーダーシップの下にまさしく最終的な総合調整権限というものを生かすか生かさないかということでありまして、どこに置くのかと同時に、まさしく委員御指摘の運用、そのかなめは総理大臣のリーダーシップ以外にあり得ないと思っております。
○谷合正明君 よく分かりました。
それはやはり総理の強いリーダーシップが必要であろうと。また、この質問の後ほどで政策担当大臣の在り方に、在り方というか、だれがふさわしいのかについても伺いたいと思うんですけれども。
まずその前に、我が国の海洋政策が遅れてきたもう一つの理由としては、縦割り以外には公海自由原則をこれまで掲げ続けてきた過去があるというふうに言われております。例えば水産業一つに取りましても、我が国の水産業、水産資源に対する認識というのは、法的にも自然の恵みとして無主物、所有者がいないとされる、そういう位置付けがされておって、したがって早く取った者勝ちだと、そういうような発想になりがちではございました。
しかしながら、海洋レジームの変化によりまして、この公海自由原則から資源管理原則に変化しまして、漁業あるいは大陸棚資源、深海資源などが国家あるいは人類共通の財産として管理されることになったわけでありますが、現実にはまだまだ法的にも海洋に関する国内法が追い付いていないということもあります。
そこで今回の法律案があるわけでありますが、この法律案の意義について、また果たす役割についてどのように考えていらっしゃるのか、お伺いいたします。
○衆議院議員(大口善徳君) もちろん公海なんかの航海の自由あるいは航行の自由というものはしっかり確保されなきゃいけないことは確認をしておきたいと思うんですが、この法案の第一条に、「海洋が人類をはじめとする生物の生命を維持する上で不可欠な要素である」、こういうように海洋というものをこの第一条で位置付けておって、そして我が国はこういう海洋法に関する国際連合条約等に基づいて、「我が国が国際的協調の下に、海洋の平和的かつ積極的な開発及び利用と海洋環境の保全との調和を図る新たな海洋立国を実現することが重要である」と、こういうふうに記述し、そして、「海洋に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって我が国の経済社会の健全な発展及び国民生活の安定向上を図るとともに、海洋と人類の共生に貢献することを目的とする。」と、こういう形で目的の中、第一条の中でこの海洋というものを位置付け、そしてまたこの法律の目的を位置付けているわけでございます。
したがって、この法案は近隣諸国との海洋権、海洋権益の争いを意図するというものではもちろんなく、国連海洋法条約等による海洋に関する国際的なルールにのっとり、海洋に関する我が国の利益を確保するとともに、海洋環境の保全等の国際的な義務を果たしていこうとするものでございます。我が国が海洋政策について国家戦略を持って海洋政策が総合的、体系的に推進されることとなるものと期待しております。
○谷合正明君 分かりました。
具体的な法案の中身に質問をさせていただきますけれども、この海洋基本法を受けて期待されるものの一つとしては、鉱物資源の開発、利用について書かれた第十七条の部分があると思います。
この第十七条におきましては、石油、可燃性天然ガス、あるいはマンガン鉱、コバルト鉱といった、これはレアメタル、希少金属が具体的に明記されております。特にレアメタルについては、陸上部での埋蔵量が少ない上に、偏在性の高い金属でございますので、日本はこれほぼ大半を輸入に頼っております。しかし、電子部品だとか燃料電池でございますとかそういった分野で非常に大きな需要が見込まれております。海外の需要に左右されないで必要な数量を安定した価格で確保したいという要望もあるわけでございますが、本法律を受けて、この鉱物資源の開発、利用の推進のために海洋産業の振興をどのように図っていくことが望ましいと考えているのか、その点についてお伺いいたします。
○衆議院議員(西村康稔君) お答えをいたしたいと思います。
委員御指摘のとおり、我が国はいわゆる資源小国でありまして、石油のみならず鉱物資源も大宗を海外に依存しているという国でありますけれども、御指摘のとおり、我が国の排他的経済水域を始めとしてこの権益の及ぶ水域には様々な鉱物資源の可能性が指摘をされているわけでありまして、この資源の安定供給の観点から極めて重要な、この開発は極めて重要な政策課題であるというふうに考えているところであります。
その考えに基づいて十七条を作らせていただいたわけでありますけれども、これまで何が、どんな資源がどこにあるのかというデータがなかなか十分に取得をされてないということがありますので、そういう水域については国が積極的に物理探査などの資源調査を展開をしておりまして、その調査結果を民間企業にいろんな形で提供していくということでありまして、この調査、そして調査結果の提供が非常に重要な役割を果たしているというふうに認識をしております。
この海洋基本法の成立に伴いまして、是非政府が積極的にこの資源調査、更に言えば開発に取り組んでいくことを期待をしているところでありますけれども、委員御指摘のとおり、我が国周辺、具体的に言いますと、レアメタルがあるそういう鉱床が期待をされておったり、あるいはメタンハイドレート、これはシャーベット状になった天然ガス、メタンでありますけれども、これも我が国が消費する一年間の天然ガスの消費量の百年分ぐらい埋蔵量があるんじゃないかというふうな指摘もありまして、言わば資源小国である我が国が海洋資源を積極的に探査、調査そして開発することによって資源大国になり得る可能性を秘めているということでありますので、いずれもこのような調査は基礎的な段階でありますけれども、引き続き政府としては、是非、調査を積極的にやってほしいということでありますし、そういう認識であるというふうに聞いております。
さらに、この海洋基本法と併せて安全水域法の成立がなされれば、安全水域を設定してその開発が進むということでありますので、この二本、海洋基本法と安全水域法併せて早期の成立をお願いをして、是非、政府の取組を、一層の取組を期待をしたいというふうに思うところであります。
○谷合正明君 正に今おっしゃられた国、政府が積極的に関与していくという部分であると思いますが、もう一つ可能性のあるものとしては海洋の自然エネルギーというものが私はあると思っております。海洋の自然エネルギーを合算すると、現在の人類が使用している全エネルギーを上回るという試算もあるそうでございます。
海洋の自然エネルギー、例えば波、潮の干満の流れ、あるいは海洋中の温度差、あるいは洋上の風力発電といったいろいろなものがあるわけでありますが、コストや技術の問題もあるわけでございますが、この本法律を受けて、この海洋エネルギーの開発、実用化の可能性、これどのように広がっていくことを期待するのか、先ほどの同じような趣旨になるかと思いますが、よろしくお願いします。
○衆議院議員(西村康稔君) 委員御指摘のとおり、鉱物資源のみならずこの海洋を活用したエネルギー源、御指摘の波力発電であるとか潮汐発電というんですかね、潮の干満とか流れを活用した発電、あるいは海洋の温度差を利用した発電、こういったものの可能性も指摘をされているわけでありまして、国内で過去様々な実証実験を行ってきておりますけれども、現在のところ航路標識のあのブイ、ブイ向けの波力発電を除いて実用化には至っていないというのが現状であります。
一方、海外では、波力発電についてはイギリスで、潮汐発電についてはフランスで、幾つかの例は実用化された例があるところでありまして、この海洋基本法の制定を契機に、いま一度海洋を活用したエネルギー源としての海洋の活用方法を是非政府においても検討を進めていただきたいというふうに思うところでありますけれども。発電効率の低さとか、おっしゃられたコスト、経済性の低さというのがありますので、直ちに実用化できるということはないと思いますけれども、洋上の風力発電なども北欧を中心に世界ではこれかなり実用化されております。日本ではまだ北海道の二基だけと聞いておりますけれども、私の地元兵庫県の淡路島でも洋上でやりたいという人もおりますので、そういう意味ではこういう法律、この法律の制定を契機にそういった動きが広がればというふうに期待をしているところであります。
政府の方におきましても、是非、積極的に支援をして検討していくということでありますので、研究開発も含めて更なる取組を応援しておきたいというふうに考えております。
○谷合正明君 ありがとうございました。
続きまして、第二十五条の二項に掲げております海岸管理の取組について質問いたします。
第二十五条の二項に、沿岸の海域及び陸域のうち特に海岸に着目しておるわけでございますが、なぜ海岸に着目したのかと。また、その海洋と沿岸域の一体的管理をどのように進めていくことが望ましいのか、その点についてお伺いいたします。
○衆議院議員(大口善徳君) この二十五条の一項は、沿岸の海域とそして陸域について一体的な施策を講ずると。そして、特にこの二項で沿岸海域及び陸域のうち海岸というものに着目をしてこの規定を置いた。これは公明党の議員からの非常に強い要望がありまして、これが入ったわけでございます。
そして、これは海岸というのは津波、高潮、波浪等の厳しい条件下にあると。それから、多様な生物が生息、生育する、そして独特の景観を有していると、こういう特性が集中しているということ。そして、近年、海岸侵食が非常に速いペースで進行していると。また、地球温暖化に伴う海面上昇、こういうこともあって、一層海岸侵食が進行しているところが懸念される。一九〇八年から一九七八年の間、年七十二ヘクタールの侵食が、一九七八年から一九九二年の間、百六十ヘクタール毎年侵食している、こういう状況があるわけでございます。
そこで、この二十五条の二項というものを置いて、しっかりとこの海岸について、この海岸の防護、海岸環境の整備及び保全、海岸の適正な利用の確保に国が十分留意すべきことという形を規定させていただいたわけであります。
また、海岸と沿岸域の一体的な管理については、沿岸域の海域においてその問題が汚水の排水やごみの流出等を通じ陸域の諸活動に起因していることから、海域について施策を講ずることだけでは沿岸の海域の資源、自然環境がもたらす恵沢を将来にわたって享受することが困難である、こういうことからでございます。
海洋基本法において一体的施策を講ずることが相当と認められる沿岸の海域及び陸域について、そこにおける諸活動に対する規制その他の措置が総合的に講ぜられることにより適切に管理をされるよう、関係諸機関の連携により必要な措置を講ずべきとしております。
○谷合正明君 分かりました。
特に、海岸については我が国が、先ほど申し上げましたとおり、三万四千キロメートルの海岸線を有する国でもございますし、しっかりとした管理、これは地方自治体との共同もあろうと思いますけれども、私も期待をしているところでございます。
またちょっと脱線するかもしれませんが、私も、山も海岸と、海との一体的な観点を持った方がいいのかなと。よく山は海の恋人ですか、海は山の恋人だったかな、実はそういう観点も必要なんだろうなと思っておるわけでございます。それはちょっと脱線しますので省きますけれども。
続きまして、第三十三条には海洋政策本部に海洋政策担当大臣を置くとございます。
先ほど石破委員の方から、何はともあれ総理の強いリーダーシップが必要であろうと、それはおっしゃるとおりでございます。もう一つ私は、やはりこの担当大臣の役割というのも非常に重要だと思っておりますが、この担当大臣、これだれがふさわしいのかといったところ、だれがふさわしいというのも変ですけれども、どこの大臣がふさわしいのかといったところについて、見解があればお願いします。
○衆議院議員(石破茂君) ここは、だれがというと属人的な話になってしまいますので、どの大臣がよろしいのかというようなことでお答えをするのが適切かと存じますが、これは本当に総理がお決めになることですから、これはもうどなたを総理がお選びになるかに懸かるわけですが、法案提出者の中でこれもいろんな議論はいたしました。
やはり七省庁かかわり合うわけですけれども、最も多くの分野がかかわっているのはやはり国土交通省ではないのかなという感じは持っております。つまり、海事局であり、あるいは海上保安庁でありということであります。
ですから、そういうような意味から言えば、国土交通省、国土交通大臣というのがふさわしい候補の一つではないかという、何か持って回ったような言い方で恐縮でありますが、そのようには考えておるところでございます。ただ、もう、ほかにももちろん農水ですとか環境ですとか文科ですとか経産ですとか防衛ですとか外務ですとかいろいろございますが、今の感じではそういうようなのも一つの考えかなというふうに考えておる次第でございます。
○谷合正明君 では最後に、今の答弁を踏まえて、やはり多くの分野をカバーしている国土交通大臣、担当大臣はそれは総理が任命するわけでございますが、最後に冬柴国土交通大臣に、この法律を受けて日本の本格的な海洋新時代を開くためにどのように海洋政策に取り組んでいくのか、最後に決意を聞かせていただいて、質問を終わらせていただきます。
○国務大臣(冬柴鐵三君) 四面環海の我が国でございまして、海洋から多くの恩恵を受けてきております。また、今後の我が国の発展のためにも、海洋に関する施策に強力に取り組んでいくことが必要でございます。
このため、海上の安全の確保、それから海上の治安、秩序の確保、国土保全、防災対策、海洋環境の保全あるいは海上輸送の確保、海事産業の振興、海洋気象や海底地形等の調査など、海洋政策を総合的、体系的に推進する観点から今回の海洋基本法の制定は誠に意義が深い、このように考えております。
海洋政策は広範にわたるものでありまして、我が国でも多くの省庁が関係しておりますが、今後は海洋基本法に基づき、政府一体となって戦略的に取り組んでいくことが重要である、このように考えます。
国土交通省は海洋政策の多くの分野を担っております。そのような観点から、その推進につきましては今後も積極的に役割を果たしていきたい、このような決意でございます。
○谷合正明君 我が国は、森とか水とか海とか当たり前、あるのが当たり前と思っているところがありまして、それがいつの間にか森林も資源も、あるいは私は水資源もこれからそうであると思っているんですけれども、本当に手遅れにならないうちに手を打たないと駄目になると思っております。その意味で、我が国が海洋国家になるために、国土交通大臣の先ほど御決意聞かせていただきましたが、私も含めて、委員含めて頑張っていきたいと思っておりますのでよろしくお願いいたします。
ありがとうございました。